【レポート】ACIDMANの大木伸夫、プラネタリウム公演<LIVE in the DARK>で「星空と共に音楽をお楽しみください」
コニカミノルタプラネタリウム主催の音楽イベント<LIVE in the DARK>へ、大木伸夫(ACIDMAN)の出演が遂に実現した。“遂に”と書いたのには訳がある。元々2017年に<LIVE in the DARK>がスタートした当初、第一回出演者としてオファーされていたが、スケジュール等が合わずに実現せず。そして2022年夏、満を持して出演が決定したものの大木の新型コロナ罹患のために開催は叶わず。しかし、プラネタリウムの満天の星の下で歌ってほしい、歌いたい、双方が持ち続けた強い願いが遂に叶う時が来た。
◆大木伸夫(ACIDMAN) 画像
奇しくも、2023年はドイツでプラネタリウムが誕生してから100周年。公演の延期が結果的にアニバーサリーイヤーに重なったことには、偶然を超えた運命的なものを感じる。2023年2月、東京・コニカミノルタプラネタリウム“天空”、福岡市科学館ドームシアター(プラネタリウム)、バンドー神戸青少年科学館ドームシアター(プラネタリウム)の3ヵ所で6公演開催された<LIVE in the DARK>ツアー。全公演ソールドアウトとなった貴重なライブの中から、東京公演の模様を振り返ろう。
「こんばんは。ACIDMANボーカル&ギター、大木伸夫です。ようこそお越しくださいました。この贅沢な環境でやらせてもらって感謝しています。今からどんどん夜が更けてまいりますので、星空と共に音楽をお楽しみください」──大木伸夫
全天周を覆う、オレンジ色に暮れなずむ夕景にぴったりの1曲目は「赤橙」。ライブハウスともスタジオとも違う、丸天井に反響する艶やかなアコースティックギターと、空から降るような声の響きがいい。やがて夜の訪れと共に満天の星空が姿を現し、軽快なリズムに乗せて「FREE STAR」が始まる。バンドバージョンとは構成を変え、自由なテンポチェンジを繰り返しながら、激しさよりも温かさを届けるアレンジ。歌声に浸りながらリクライニングシートに深く身を沈めると、天頂近くにすばるが、やや下にオリオンが、赤いアルデバランが、北極星が、そして天の川がゆっくりと回転する。大木の言う通り、なんて贅沢な環境だろう。
「僕は宇宙が大好きで、宇宙の歌をいっぱい歌ってきています。それは子供の頃の原体験からで、僕が音楽を作るテーマは、人はなぜ生まれて、どうして死んで、宇宙はどうやって生まれて、なぜ終わってしまうのか。不条理な世界に生きている中で、でもこの瞬間を共に生きる、そういう歌を作ってきました」──大木伸夫
僕たちはここで出会う前に既に何度も出会っていたんじゃないか。仏教の“対面同席五百生”という言葉を紹介し、「銀河の街」を歌う。全天周の映像は、地平線を取り囲む深い森から遥かな山脈へ、雪山へ、そしてオーロラへ。ダイナミックに移り変わる風景の中で無数の星が瞬き、流れ星が落ちる姿が、大木の歌う言葉とシンクロする。いつかどこかでこの景色を見たような気がする、それはドラマチックなデジャヴの感覚。
「次の曲はカバーです。初めて聴いた時になんて素晴らしい歌詞とメロディなんだ、シンプルイズベストとはこういうことだなと思いました。星について、純粋な少年のような心で歌われた歌です」──大木伸夫
作詞は北野武、作曲は玉置浩二。大木の弾き語り公演でもよく歌われる「嘲笑」の、この日のために作られたような言葉とメロディを、自分の歌以上に慈しむように歌う。それがうれしい。続いて歌われた「世界が終わる夜」は、イントロにルーパーエフェクターを使った美しいギターアンサンブルを配し、およそ10分に及ぶ大曲へと進化。アコースティックの枠を超える激しく熱い歌を包み込むように、全天に広がる星雲、銀河、銀河団の群れと、宇宙空間に浮かぶ地球、その向こうに昇る太陽。悠久の時と空間を超える壮麗な映像美に思わず息を呑む。今回の映像演出を担当しているのは、現在全国配給作品として各地で投映されている、大木監修のプラネタリウム番組『星になるまで』も担当したサイエンスアート社。大木伸夫の、ACIDMANの音楽の世界観を深く理解した演出だ。
(c)Y. Beletsky (LCO)/ESO
(c)Y. Beletsky (LCO)/ESO
「生きることは素晴らしいことだと思うし、死ぬことは悲しいことだけど、宇宙のスケールから見ると僕らの命も、地球の命も、たった一滴の物語なんです。命は終わりがあるから輝くもので、夜空の星は周りが暗いほど美しく輝く。星空を見て、想像して、自分の人生を重ね合わせて、そうするだけで明日の生き方が変わりますよね。少しでもポジティブになって、生きるってすごいなという思いを共有し合えたらいいなと思います」──大木伸夫
今日はちょっと真面目モードでお送りましたと笑いながら、いざ歌い始めると神秘的な物語の語り部として圧巻の歌を聴かせる。バンドバージョンでも常に最高レベルの感動を届けてくれる名曲「ALMA」は、弾き語りのシンプルな歌にも関わらず、いやむしろそれ以上にエモーショナルに響く。この曲に合わせて作られたのだろう、実際のALMA電波望遠鏡が遥かな宇宙に向けて電波を飛ばす映像が、その感動を倍加させる。天の川が回り、銀河が遠ざかる。凄い、降るような星だ。
(c)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
M. MacGregor; NASA
ESA Hubble, P. Kalas; B. Saxton (NRAO/AUI/NSF)
Kitayama et al
ESA Hubble Space Telescope
Hyosun Kim et al.
Visible light image: the NASA
Benisty et al.
NRAO/AUI/NSF; S. Dagnello
S. P. S. Eyres
国立天文台
「今日は本当にありがとうございました。最後に、プラネタリウムっぽくないけど、クラップできますか? もうすぐ夜が明けるので、明るく終わりたいと思います」──大木伸夫
満場の賑やかなクラップと、明るく弾む「Your Song」と共に静かに夜が明けてゆく。それはライブの臨場感と、映画のような非日常感と、プラネタリウムならではの全天周演出が織り成す60分のスターツアーズ。<LIVE in the DARK>で体感する大木伸夫の歌は、ACIDMANの音楽をこれまで以上に深く大切なものに感じさせてくれる、素晴らしい体験だった。次の機会がもしあれば必ず見てほしい。ACIDMANの未来にまた一つ楽しみなコンテンツが追加された。
取材・文◎宮本英夫
撮影◎西槇太一
■コニカミノルタプラネタリウム主催イベント<LIVE in the DARK> SETLIST
2. FREE STAR
3. 銀河の街
4. 嘲笑
5. 世界が終わる夜
6. ALMA
7. Your Song
▼東京公演
2023年2月7日(火) コニカミノルタプラネタリウム天空
・1st stage 18:00開演 (17:30開場)
・2nd stage 20:00開演 (19:30開場)
▼福岡公演
2023年2月11日(土) 福岡市科学館ドームシアター(プラネタリウム)
・1st stage 17:00開演 (16:30開場)
・2nd stage 19:00開演 (18:30開場)
▼神戸公演
2023年2月18日(土) バンドー神戸青少年科学館ドームシアター(プラネタリウム)
・1st stage 16:30開演(16:00開場)
・2nd stage 18:30開演(18:00開場)
■<ACIDMAN LIVE in FUKUSHIMA 2023>
▼チケット
¥8,000/税込
※6歳以上有料。座席が必要な場合は6歳未満も有料となります。
※ライブ収益は全額「東日本大震災ふくしまこども寄附金」に寄付されます。
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