【インタビュー】Crystal Kay、深田恭子主演ドラマ劇中歌収録EPにジャズ「私にとってチャレンジだった」

■ジャズをリスペクトしながら
■私らしく歌う

──そして2022年12月には「Love me」をリリース。“セルフラブ”がテーマですが、現代を生きる人にとってすごく大切なメッセージが込められていて。

Crystal Kay：「Love me」は2021年10月くらいに作った曲なんですよ、実は。とにかく何か作ろうと思って、Lucas (Valentine)と一緒にスタジオに入って。そのときのデモ音源をそのまま使ってるんです。歌詞に関しては、トラックの音に導かれた感じもあるんですけど、“Why don‘t you love me”というフレーズがその場で出てきて、“みんなが感じてるのは、これじゃないかな”と思って。コロナの影響もあると思うんですけど、人と会う機会が少なくなって、SNSやインターネットを見る時間が増えたことで、以前よりも自分と人を比べてしまうというか。自分の価値は自分で決めるものだし、大切なものは此処にあるはずなんだけど、それを外に求めてしまう人も多いんじゃないかなと。だからこそ、“今リリースしなきゃ”と思って。


──Crystal Kayさん自身もセルフラブの感覚が強くなってる？

Crystal Kay：ここ2年くらい、さらに感じるようになりましたね。私の年齢的なこともあるかもしれないけど、結局、すべては自分なんだよなって。子どものとき、周りの大人に「自分を愛せないのに、人を愛せるわけがない」みたいなことをよく言われてたんですよ。当時は“なんだその綺麗事は”と思ってたんだけど（笑）、本当にそうだなって。自分のまわりに何か問題が起きていたり、クライシスのときって、人のことを思ったり、何かしてあげることはできないじゃないですか。まずは自分を整えることが大事。シンプルなことなんだけど、やっぱりそうなんですよ。

──ようやく日本でも、自分をケアすることの大切さが浸透してきた気がします。少しずつですけど。

Crystal Kay：自分よりも他人のことばかり考えてる傾向がありますからね、どうしても日本は特に。「Love me」を通して、“もっと自分をケアして”というメッセージが届くといいなって思ってます。


──2023年最初のリリースは、デジタルシングル『Start Again EP』。Amazon Originalドラマ『A 2 Z』(エイ・トゥ・ズィ)の劇中歌4曲を収録した作品で、オリジナル曲「Start Again」「How You Feel」「Spark」とノラ・ジョーンズの「One Flight Down」カバーで構成されています。

Crystal Kay：ドラマのタイアップが決まった時は本当に嬉しかったですね。劇中歌ということで、ストーリーに合わせて楽曲を作れるという楽しさ、最高でした。「アコースティックでジャジーな楽曲」というイメージで制作をはじめたんですけど、私はジャズシンガーではないし、どうしようかなと思って。いろいろドラマサイドの方と話すなかで、ジャズに精通しているシンガーソングライターのEmi Meyerさんに共作をお願いすることにしました。もともと仲がいいんですけど、連絡したらすぐに「ぜひ」と言ってくれて。今回はすべて英語詞だし、すごく自由にやらせてもらいましたね。

──生楽器の響きを活かしたアレンジ、穏やかでスムーズなボーカルも印象的でした。

Crystal Kay：それもドラマサイドのリクエストだったんですよ。なるべく静かな雰囲気で、声もあまり張らず。ジャズシンガーの方って、スペース(音の隙間)を使って遊ぶように歌うのが上手なんですよ。私は基本的にR＆B、ポップスが中心で、オンテンポで歌うことが多いから、“どうしたらいいの？”みたいな瞬間もありました。自然にジャズのテイストで歌うことができなくて、私なりに解釈しつつ、Emiにディレクションしてもらって。なんとなく雰囲気を真似することはできるかもしれないけど、それは嫌だったんですよね。ジャズというジャンルをリスペクトしながら、私らしく歌うというか。「ジャズ、似合いそう」って言わるんですけど、難しかったです（笑）。私にとってはチャレンジだったし、楽しかったですね。

──ここ10年くらい、ジャズは進化を続けていて。ヒップホップやR＆Bとも接近しているので、Crystal Kayさんがジャズテイストの楽曲を歌うのも自然な流れなのかなと。

Crystal Kay：ロバート(・グラスパー)はまさにそうですよね。2022年末の来日公演のときに久々に会ったんですよ。グラミーのR＆Bアルバム賞(「ブラック・レディオ3」)も獲ったし、すごいですよね。

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