【ライブレポート】mzsrz、約束の地への凱旋
顔出し不要で“歌声”のみに焦点を当てたテレビ東京のオーディション『ヨルヤン』から生まれた5人組・mzsrz。
DECO*27とRockwellを審査員に迎えて行われたオーディション。その最終審査会場だったのが、今回初のワンマンライブが行われた渋谷eggman。そこで出会った彼女たちにとって今回のライヴは、自身のアーティスト人生が始まった約束の地への凱旋という意味もあった。
一貫して、敗れること、逃げること、弱いこと、違うことを全面的に許そうとする少し歪んだ応援歌をリリースしてきたmzsrz。それらは、時に冒涜的なまでに退廃的で “無色透明の不安” と “ 意味不明の焦燥” に溢れているからこそ、悩み立ち止まっている人の背中を無邪気に後ろから押すような横暴さも、前から手を引いて救い出そうとする無闇さもない。ただただ、同じ不安を抱えて真横で寄り添うのが彼女たちの音楽性だ。
今回のライヴでも、決して明るくはなかった自身の人生を吐露する場面が見られた。そこに常に現れるのは「自分なんて」という弱さ。でも、それこそがmzsrzの現在地であり、圧倒的な歌唱力=歌しかないという強みに繋がっている。だからこそ、オーディエンスは、ただの観客ではなく、一緒になって溶け合うような空間が生まれた。
ライヴは「言葉にすれば消えてしまう辞書にない感情で息してる。そんな僕らが更新され続ける日々に抗うための後進曲」というキャッチコピーで2022年12月にリリースされたばかりの6分にも及ぶロックオペラ「ストレイシープ後進曲」からスタート。
バックバンドを務めたのは、ギター・FZ(sfpr / Radical Hardcore Clique)、Mas Kimura(NOTHING TO DECLARE / JPME)、ベース・白神真志朗、ドラムス・Eiji Matsumoto(Ken Band / Radical Hardcore Clique / ex.FACT)という面々。Rock、Pop Punk、Melodic Hardcore、はたまた、Hyper Pop、Dark Pop、Trapまで、一貫したメッセージに対して異常に幅広いジャンルを飲み込んだボーダレスなエモを体現し切る多彩かつ確かなスキルとアイデアを持ったプレイヤーが集結した。
ソロコーナーでは「innocence(hitomi)」、「22歳(nicco)」、「深い森(Do As Infinity)」、「プラネタリウム(大塚 愛)」、「愛すべきひとよ(The Kaleidoscope)」と自身が所属するエイベックスの大先輩の楽曲のカバーを次々と披露。全員で、テレビ東京のオーディション番組から生まれたロードオブメジャーの「大切なもの」、そして、mzsrzが歌唱担当のCVを務めるバーチャルアーティスト・十五少女「逃避行」のカバーも演奏された。
セカイの何もかもが変わってしまった2020年末の冬至の夜が明ける瞬間に先行公開されたデビュー曲「夜明け」は、人気歌詞サイトですぐさまリアルタイム・ランキング1位に輝き、以降、「ノイズキャンセリング」「アンバランス」「エコー」「フェーダー」と、結果、6作連続同1位を獲得し続けたシングルはもちろん、1st アルバム『現在地未明』からもドラマ主題歌として話題になった「フィルター」、ライヴでは定番となっている「パンデモニウム」と「パントマイム」も披露された。
さらに、カバー曲「未来創造日記」と「リリー・ホールガール」の、未発表の2曲も今後のリリースに先駆けて初披露。リリーは “百合” で、その花言葉は『純粋』や『無垢』、ホールは “Whole” で、『少女の全て』を意味しており、いつまでも清らかなだけではいられない女の子のリアルを歌った曲で、mzsrzの次のステージの方向性を示唆するような楽曲となっている。いずれもシンガロング・パートがあり、初披露の新曲にも関わらず、オーディエンスが手を挙げともに歌う姿が、彼女たちのライヴのあるべき姿を照らしていた。
最後は、オーディション「ヨルヤン」の課題曲で、最終ライヴ審査でも同会場で歌唱した「インベーダー」で締め括られた。
2月18日(土)には、対バンを迎えて行われる主催ライヴ<水底現在地 Vol.3>が都内で行われることも発表された。彼女たちが標榜するのは、これからも“micro music(何の変哲もない日常を些細に祝って些細に呪う)”。それは、きっと、一人独りの “アナタ” にとっての “私の詩(ウタ)” だ。
セットリスト
02. ノイズキャンセリング
03. 未来創造日記(original:はるな。)
04. アンバランス(映画「ショコラの魔法」主題歌)
05. パントマイム
06. パンデモニウム(「ぷよぷよ」セガ公式eスポーツ大会「SEASON5」テーマソング)
07. innocence(original:hitomi)/ 作山由衣・ソロ
08. 22歳(original:nicco)/ 大原きらり・ソロ
09. 深い森(original:Do As Infinity)/ ゆゆん・ソロ
10. プラネタリウム(original:大塚 愛)/ よせい・ソロ
11. 愛すべきひとよ(original:The Kaleidoscope)/ 実果・ソロ
12. 逃避行(original:十五少女)
13. フェーダー
14. エコー(ドラマ「JKからやり直すシルバープラン」ED主題歌)
15. リリー・ホールガール
16. 大切なもの
17. 夜明け
18. インベーダー(テレビ東京 次世代型オーディション番組「ヨルヤン」課題曲)
- -
EN.1 フィルター(ドラマ「部長と社畜の恋はもどかしい」ED主題歌)
EN.2 パンデモニウム
EN.3 インベーダー
◆mzsrz オフィシャルサイト
この記事の関連情報
【ライブレポート】LEEVELLES主催<CROWN Fes.>に4組の親密さと熱量、「わくわくを常に探しています」
mzsrzが大原きらりのソロプロジェクトとして再始動。新体制初の楽曲「シェルター」がドラマ『SHUT UP』EDテーマに
mzsrz、ドラマ『女子高生、僧になる』ED主題歌の新曲「Odyssey」リリース
mzsrz、生駒里奈主演ドラマ主題歌に最新曲「リリー・ホールガール」が起用
mzsrz、ボカロP・はるな。の「未来創造日記」をカバー
mzsrz、東阪ワンマンライブ<軌線>開催決定
mzsrz、スペシャル企画も加えた初ワンマンをオンラインライブとして配信
mzsrz、ドラマ『ひともんちゃくなら喜んで!』OP曲を担当。しかし1話目で流れなかった理由とは?
mzsrz、かいゑ提供曲「ストレイシープ後進曲」リリース