【コラム】SixTONES、鮮やかな染め分けで魅せる“プロの最低条件”

アイドルとして、アーティストとして、そして、俳優として活躍するSixTONES。だからこそ、その時々で見せる表情、歌声はまったく違うものを求められる。決してそこに“これでいい”ものは許されず、プロフェッショナルとしてその時に出来る120％を出し切ることが、彼らには最低条件とされるのだ。さらに、今やドラマの主演を任せられることが多いからこそ、ドラマの色によって、カラフルに自分達を染めていかなければならない。まさにニューシングル「Good Luck!/ふたり」は、全く違うタイプの楽曲を、全く違う声色で、雰囲気で、演じ、歌い上げている。まったく違うのに、それでもどちらにも根底には同じ温かな空気が流れている楽曲を聴かせてくれるのだ。

ジェシーの“Hey guys!”から幕を開けるとびきりハッピーでファンキーなポップチューン「Good Luck!」は、ジェシーが主演を務めるドラマ『最初はパー』の主題歌として書き下ろされたナンバーだ。


これまで情熱を捧げるものに出会ったことなく生きてきた26歳の利根川豪太が、ひょんなことからお笑い養成所に入所し、初めて“お笑い芸人”という夢を目指すドラマを盛り上げるにふさわしいメッセージソングとなっている。20代も半ばになって、初めて夢を目指すという現実は、なかなか難しいもの。それは周りからの目線も同じ。でも、たとえ、失敗したとしても、泣いたとしても、転んだとしても、“カッコ悪くてもいいんじゃない？”と軽快に背中を押してくれるこの曲は、多くの人たちの勇気となるはずだ。とはいえ、ただの底抜けの明るい曲になるのではなく、“0点でも100点でも　自分らしけりゃ満点だろ”と言い放ってくれる優しさと、田中樹がＣメロで差し込むラップで“まだまだそんなもんじゃねぇだろ？”と言い放ち、“ヘラヘラしてる裏の努力”はみんな知っていると強い言葉で肯定してくれるこの曲は、いま、迷いながらも、苦しみながらも、夢や目標を目指す人たちに聴いてもらいたい、力強い曲となっている。笑える人は強い人だ。笑っていれば、道は開ける、ありのままの自分を愛していこうというメッセージに、ぜひ元気をもらって欲しい。
　
対する「ふたり」は、京本大我が主演のドラマ『束の間の一花』の主題歌として書き下ろされた、お互いを想い合う気持ちが切なく、苦しく、そして強く胸を締め付けるラブソングとなっている。


このドラマは、2年前に余命宣告を受けた大学生の一花と、その大学で哲学を教える、彼もまた余命宣告を受けた萬木先生の物語。京本は、萬木先生を演じる。このドラマに沿って書き下ろされたこの曲は、ふたりでいる大切な一秒、一秒を愛おしく愛でるような、温かい曲となっている。ただ、幸せはいつまでも続かないもの。それをこのふたりが痛いほど分かっているからこそ、どんなに温かい言葉も、切なく、儚く響くのだ。さらに、サビに向かって盛り上がっていくストリングスがその気持ちを彩るように美しく響き渡っていく。余命宣告がなければ、気づかなかった何気ない毎日の瞬間が、狂おしいほどに切なく、愛おしく描かれている曲となっているのだ。そんな、自分以外の人を強く、愛おしく思う気持ちを、彼らは、身体中から絞り出すように、どうしようもないほど切なく歌い上げていく。静かなピアノのアウトロが消えていく頃、思わず泣いてしまいそうになるのは、それだけ世界観を強く築き上げているからこそ。そして、注目してもらいたいのが、MVだ。それぞれが憂いを帯びた表情で歌い上げていくのだが、ラストの京本に注目してもらいたい。ドラマの物語を暗示するものなのか、それとも――。（ちなみに松村北斗は猫を抱いています！）

まったくタイプの異なる楽曲を1枚のシングルで表現するからこそ、あらためて彼らの表現力の幅を感じることができるはずだ。そして、この2曲を聴いたいま、次はどんな姿を見せてくれるのか、さらにワクワクさせてくれる。どんな姿も、完璧に演じ、そして曲として表現してくれるSixTONES。アイドルとして、アーティストとして、俳優として、さらに成長した姿を、楽しみにせずにはいられない。

文◎吉田可奈

▲「Good Luck!/ふたり」通常盤