【インタビュー後編】FINLANDS「まだ全然、恋愛篇が終わりそうにないんですよね(笑)」
今年の11月に結成10周年を迎え、第1弾配信シングル「like like」をリリースしたFINLANDS。結成時の想いや自身の性格についても語ってもらった前編のインタビューに続き、後編では10年間を振り返って、塩入にとってのターニングポイント、結婚、出産を通して感じたことを軸に第2弾配信シングル、10周年ツアーについても予告してもらった。挑戦し続ける結婚生活なだけにまだまだ“恋愛篇”が終わりそうにないと言う塩入がミュージシャンの視点で明かした私生活とは?
■ライブであちこち廻りながら曲を作って
■全く今までと変わらない感じでやっていきます
――FINLANDSの10年にはいろいろなことがあったと思いますが、塩入さんが転機だと思う出来事を3つピックアップすると?
塩入冬湖(以下、塩入):今の事務所に入った2015年が最初の転換期だと思います。物理的に環境が変わったという点で。
――そこでプロ意識だったり、何か変化があったんですか?
塩入:高校を卒業してすぐにインディーズレーベルでCDを出して、そこからトントン拍子で前の事務所に所属して、いろいろなことをサポートしてもらっていたんです。言ってしまえば、すごく無知な状態でFINLANDSを立ち上げて活動していて、途中から「こんなに人に助けてもらってたんだ」「私たちってこんなに何もできなかったんだ」って思い知ったんです。人間としてもバンドマンとしても、もっとちゃんとしなきゃと思った3年間でもあったので、今の事務所に入った時にはすごく安心感がありました。
――逆にホッとしたということですか?
塩入:そうですね。自分たち主導でやっていくのが前提ですけど、誰かに何かがあった時には相談できたり、悩んだりした時には吐き出していい人がそばにいてくれるんだなって。今の事務所に入ってからは心に少しゆとりを持つ活動ができるようになりました。
――なるほど。2つ目の転換期は?
塩入:今では恒例になっている2デイズのワンマンライブ<記録博>を初めて開催した2018年ですね。FINLANDSは2015年から2017年までとんでもない本数のライブをやり続けていたんです。その3年間で得たライブの知識や出会った人によって変化したことが多かったので、それをきちんと還元して活動していきたいと思った年が2018年。それまではバンドはこれをしたら次はこれっていうふうにテンプレートを踏んでいこうとしていたんですが、自分たちから発信する方が面白いって思い始めたのが<記録博>だったんです。そこから待っているだけじゃなく自発的になっていった気がします。アイディアを具現化する力もついてきたんじゃないかな。
――2019年にコシミズカヨ(B.Cho)さんがFINLANDSを脱退したのも転機だったのでは?
塩入:2019年はFINLANDSが私ひとりになった年ですね。自分にとっては転換期というより、ガムシャラ期みたいな。ひとりになったことは外から見たら大きな変化だったと思うので、だからこそ、逆に変わらないでいようと努めていた1年です。FINLANDSのよかった点だったり、活動のペースだったり。
――だから、ライブの衣装のイメージも変えなかったんですか?
塩入:見た目というより、ペースだったりライブの感じが変わらないように努力していました。でも、変わらないでいるのってすごく窮屈だなと思うようになって、そういう変化もあって、新しくなっていこうというか、今の良いところを放出していった方がいいんじゃないかと思うようになったんですよね。
――そういう心境の変化がもっと多くの人に聴いてほしいと思うようになって、アルバム『FLASH』(2021年)に繋がったんでしょうか?
塩入:まさしく。
――ただ、人間関係を狭く深く築いていくタイプの塩入さんにとって、コシミズさんの脱退はショックだったのでは?
塩入:そうですね。ただ、2015年にリリースしたミニアルバム『ULTRA』の中に収録されている「ULTRA」は、いつか私はひとりになるんだろうなっていう未来を見据えて作った曲だったんですね。それが1年後なのか5年後なのか10年後なのかはわからないけれど、カヨはすごく優しくて穏やかで私とは真逆な人間なので、いつか熱量や人生観に違いが出てくるんじゃないかなって。ただ、いつか辞めるんだろうって思いながら一緒にやっていたわけでもなく、人生の変化が訪れるのは悪いことではないという覚悟というか、想定はしていたので、もちろん寂しい気持ちはあったんですが、きちんとお互いに見送れたと思います。脱退ってネガティブなことに見えるけど、お互いに人生を決める上で、良い転機だったと思いますね。
――では、2021年の結婚、出産はミュージシャンというフィルターを通して、どんな経験でしたか?
塩入:インタビューの最初の話(前編)に戻るんですけど、1年後のことも想定していないので、私自身、結婚するともしないとも思っていなかったんですよね。小さい頃から何歳までに結婚してとか考えたことがなかったので、したいとか、したくないとか、そういうことも思っていなかったんですが、「結婚するなら、この人じゃないと絶対にイヤだ!」って思う人(ミュージシャン、画家として活動するイトウTHEキャンプ)と結婚できたんです。
――素晴らしいことです。
塩入:ただ、結婚したらもう恋愛の歌は歌わなくなるんじゃないかという想定はしてたんです。生きていく中、変化することに逆らわないで、人生を通して曲を作り続けたい、それが曲を作る面白さだとずっと思ってきたんですが、いざ、結婚したら、人間愛とか自然の美しさとかを歌う気にはなれなくて、まだ全然、恋愛篇が終わりそうにないんですよね(笑)。「結婚して子供産んだら、歌う曲、変わるでしょ?」ってよく言われたんですが、私、毎日、夫に失恋しているような気持ちで生活してるんですよ。
――ん? どういうことですか?
塩入:毎日、「今日もうまくいかなかったな」みたいな気持ちになるんですよ。
――例えば会話していて、すれ違うとか?
塩入:そう! 相手に対する興味が過剰にあるので、相槌を打つ熱量が合わないみたいな(笑)。だから、恋愛篇が終わりそうにないんです。ミュージシャンとしては、すごく良い形の結婚だったなと思います。
――ひとりの女性としては傷ついている日々だけど。
塩入:そうですね。でも「今日もうまくいかなかったけど、明日がんばろう」という気持ちになれるので、安心感がある結婚生活というより挑戦し続けている感じなんです。
――想像よりスリリングな日々なんですね。
塩入:(笑)勝手に私がそうしているだけなんですけどね。相手は毎日、穏やかに家のこともして子育ても手伝ってくれるので。今は母親の自分と妻の自分、曲を作る自分が同じ人間なのにちょっとチグハグな感じがしているんですよね。こうやってインタビューを受けている時も「私は子供にとって母親なんだよな」と思うと、まだ自分がひとつになってないなって。
――でも、守るものができたことは大きいでしょうね。
塩入:そうですね。子供に対しては大恋愛みたいな気持ちになります。
――やっぱり恋愛なんですね。
塩入:母親だったり家族に感じた想いとはまた別なんですよね。「この子がいない未来は本当に想像できない」って。車を運転していても妙に会いたくなる瞬間があって、大恋愛みたいだなって。
――見返りを求めない大恋愛みたいな?
塩入:赤ちゃんって伸びしろがすごいんですよね。1週間前にできなかったことを大人ができるかっていったら、けっこう怪しいと思うんですけど、子供はできるんですよね。自慢するため、見せびらかすために頑張っているわけではなく、やりたいことをやっているストレートさには目を見張るものがあって、考えさせられる要素を子供からもらっている日々です。
――ちなみに「like like」に続く第2弾の配信曲はどんな曲になりそうですか?
塩入:「キスより遠く」は「like like」とはまた違う作風です。今年の4月に「ピース」という曲を配信リリースしたんですが、同じ時期に作った曲で、なぜ人は誰かに恋をしてしまうのか? とか、なぜ、こんなに爆発的に好きになるのか?とか、人類が解明できていない疑問に焦点を当てた曲です。いつか解き明かせたらいいなって、そんなことできるわけないのにたまに考えるので。
――では、最後に11月からスタートする10周年ツアー<FINLANDS TENTH ANNIV. ~記念博TOUR~>について予告をお願いします。
塩入:10年という長い時間を過ごしてきた中、ずっと見てくださっている方も、最近知ってくださった方もいると思うんですが、FINLANDSの活動って謎が多かったと思うんですよね。ライブの本数も多かったし、大きなライブハウスから小さなライブハウスまで廻って、決してわかりやすい活動ではなかったと思うんですが、今回のツアーは感謝の気持ちと「10年、こういうことをしてきたんだよ」っていう歴史をわかっていただけるような内容になると思います。今、FINLANDSを見たいと思っている全員が楽しめる“記念博ツアー”にしたいなと思っています。
――お話を聞いていると今後もペースを落とさず活動してくれそうですね。
塩入:ライブであちこち廻りながら曲を作って、全く今までと変わらない感じでやっていくと思います。
取材・文:山本弘子
リリース情報
10月19日(水)配信限定リリース
ライブ・イベント情報
2022年11月22日(火)札幌PENNY LANE24
■時間:OPEN 18:30 / START 19:00
2022年11月25日(金)大阪 BIG CAT
■時間:OPEN 18:15 / START 19:00
2022年11月29日(火)名古屋 THE BOTTOM LINE
■時間:OPEN 18:30 / START 19:00
2022年12月01日(木)福岡 DRUM Be-1
■時間:OPEN 18:30 / START 19:00
2022年12月04日(日)仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
■時間:OPEN 17:30 / START 18:00
2022年12月06日(火)横浜 KT Zepp Yokohama
■時間:OPEN 18:00 / START 19:00
この記事の関連情報
FINLANDS、夏ソング「ナイトシンク」MVに塩入冬湖のキュートなビジュアル+ツアーゲストにtricotとyonige
塩入冬湖(FINLANDS)、『ほろよい』新CMでTHE BLUE HEARTS「夢」をカバー
FINLANDS、新曲「ナイトシンク」デジタルリリース+ツーマンツアー今秋開催
【インタビュー】FINLANDS、メジャー1st EP『新迷宮』に「変わらないように変わってみるということ」
FINLANDS、メジャー1st EP『新迷宮ep』表題曲のMVに様々な視点と解釈
【インタビュー前編】FINLANDS、ごまかしのきかない恋愛の切なさを書いた新曲「like like」
【インタビュー】FINLANDSを照らした、閃きと繰り返しの日々
<やついフェス>第三弾でJagatara2020、ZIGGY、Mom、betcover!!ら
<焚キ火ノ音 -TAKIBI MUSIC FESTIVAL->、タイムテーブル発表