【インタビュー】リトルブラックドレス、「逆転のレジーナ」リリース「この曲のためにすべてが揃った」
■純粋な夢や希望の大切さに加えて
■困難な時代を生き抜く意志も曲に込めたいと思いました
──では、映画『怪盗クイーンはサーカスがお好き』の主題歌である新曲「逆転のレジーナ」が出来上がるまでの話も聞かせてください。
LBD:主題歌のお話をいただいたのは去年の夏なので、ずっと言えなかったこのタイアップを“ようやく公表できるー!”という嬉しさがありますね(笑)。えーと、その時期はコロナの感染拡大が厳しい状況で、映画の制作陣の方々と対面でのミーティングはできず。リモートで作ってほしい曲のイメージをお聞きしたりしながら、打ち合わせがスタートしていきました。私はもともと『怪盗クイーンはサーカスがお好き』の小説(講談社・青い鳥文庫)を小学生の頃に読んでいたから、まずは自分で曲を作り始めてみたんです。
──読んでいた作品のタイアップを手がけるなんて、素敵な巡り合わせですね。
LBD:はやみねかおるさんのシリーズは、小学校の図書館で人気だったんですよ。“今日は青い鳥文庫を読みましょう”という授業もあって、感想文を書くときに選んだりしていました。でも、まさか主題歌を担当させていただくことになるなんて、自分でも驚いてます! 大人になってもう一度読んでみると、作品の印象が大きく変わっているのも面白くて。子供の頃はクイーンやサーカス団から、夢と希望を追うようなキラキラ感だけを受け取っていたんですけど。
──大人になった今は、もっと深いところが読み取れたと。
LBD:そうなんです。クイーンの美学とか、サーカス団が決闘を申し出た理由とか、当時わからなかった部分が伝わってくるのが新鮮でした。だからこそ、子供の頃に抱いていた“○○がしたい”“○○になりたい”みたいな純粋な意欲ってかけがえのないものなんだなと思いましたね。あと、この『怪盗クイーンはサーカスがお好き』って、コロナ禍に対するメッセージを含んだ作品のようにも感じられて。
──というと?
LBD:改めて原作を読み返したとき、この作品には“悲しみが変えた世界”が描かれているなって。そういう感想が強く残ったんです。“この果てに何があるのだろうか”“私たちは何を受け取るべきなのだろうか”と感じたので、今の世の中の状況に自然と重ね合わせられる気がしたんですよね。これまでコロナの影響で先の見えない、予測ができない日々を過ごしてきたけれど、それでもこの悲しみが変えた世界の向こう側に何かがあることを信じて、自分たちは日々暮らしている。純粋な夢や希望の大切さに加えて、困難な時代を生き抜く意志も曲に込めたいと思いました。
──曲作りの過程はどんな感じだったんですか?
LBD:最初は1人であれこれやってみたものの、『怪盗クイーンはサーカスがお好き』への想いが強すぎたせいか、作っても作っても“もっとこうしたい!”となってしまうような感じで。どうにもこうにも、自分の中から出てくる曲のクオリティが情熱に追いつかないもどかしさがあったんですよね。なので、歌詞の面でたびたびアドバイスをいただいて、プライベートでもかわいがっていただいている及川眠子さんに作詞をお願いさせてもらったんです。で、主題歌の話が決まる直前くらいに、作曲家の林哲司さんと初めてお会いできる機会もあって。
──すごいタイミングだったんですね。
LBD:たまたまなんですけど、ババッとピースが揃った感じがしました。私がシティポップにめっちゃハマって、林さんが作った曲を自分のラジオ番組でよく流していたりしていて、林さんに曲を書いていただけないかお願いしました。打ち合わせの次の日にこの曲を送ってくださったんです。
──林さんは映画の主題歌として曲を書かれたわけではなく?
LBD:お願いした段階ではタイアップの話はまだ何もなくて、シンプルにリトルブラックドレスのために曲を書いてくださったんです。それなのに、今回の主題歌にとてもふさわしい曲になっていて。デモアレンジもまさに杏里さんの「悲しみがとまらない」のような、ロックテイストがありながら林さん節が効いているかっこいい感じだったので、“これは絶対に歌いたい!”と思いました。
──だんだんと主題歌のイメージが固まっていって。
LBD:そのあとは早かったですね。本間昭光さんにはインディーズ時代からアルバムプロデュースなどでお世話になっていたし、ポップスのみならずアニメの劇伴でもご活躍されているので、今作の編曲をお願いさせてもらった形です。本当にいろんなタイミングがよかったのと、関わってくださった方々の気持ちやご縁だったり、すべてが奇跡的にギュッと合わさって完成した曲だと思ってます。
──及川眠子さんが作詞を、林哲司さんが作曲を、本間昭光さんが編曲を手がけ、素晴らしい仕上がりとなった「逆転のレジーナ」ですが、リト黒さんが改めて気に入っているポイントを教えていただけますか?
LBD:いっぱいありすぎて、全部を言うのは難しいですが(笑)。そうだなー……林さんのメロディはAORをベースにしつつも、日本人特有の憂いや水っぽさがある印象で素敵なんですよね。そのニュアンスをたぶん無意識のうちに受け取って、眠子さんの歌詞がちょっと湿り気を含んだものになったところも好きです。私が「悲しみが変えた世界というテーマを感じた」とお伝えしたことも、もちろん影響していると思うんですけど。
──リトルブラックドレスらしい“翳り”も意識されたんだろうなと思います。
LBD:そうかもしれないですね。“強欲な魂で手に入れる”という表現は、単に前向きさを出す感じとはぜんぜん違いますし。人間の欲が見えるような、アタックの効いたフレーズがちりばめられているのがたまりません。歌っていても、情景をさらりと歌う冒頭の部分と、エモーショナルに振り切って歌うサビとで、メリハリを付けることができて感情を乗せやすいんですよ。そのあたりもすごいなって思いました。
──サビ頭のメロディもインパクト抜群でした。1回聴いただけで覚えちゃうキャッチーさがある。
LBD:めちゃめちゃキャッチーですよね。厳密には違うんですが、杏里さんの「悲しみがとまらない」を彷彿とさせるような、あのメロディがほんの少し浮かぶ感じもいいなって。サビ頭に“悲しみ”という言葉を乗せることは、林さんの曲に仮歌を入れ始めていた段階で私が決めていたんです。なので、そこを活かしながら眠子さんに書き上げていただきました。
──アレンジに関しては、何かディレクションされたことはありましたか?
LBD:映画の制作サイドの声を含めて、私が持っていた主題歌のイメージを本間さんにお伝えしました。たとえば、サーカスの華やかさが想像できるブラスサウンドを入れてほしいとか。インディのときにリリースした「野良ニンゲン」のような、疾走感と華やかさを掛け合わせたテイストになったらいいなとなんとなく思っていたんですけど、主題歌ポテンシャルのある抜きん出たアレンジにしていただき感謝してます。
──ボーカルで意識された点は?
LBD:やっぱり、物語の主人公になり切ることですね。クイーンが空を舞って、悲しみの中でうずくまっている人たちに星を降らせるイメージかな。これだけのクオリティの楽曲を上げていただいたわけですから、私は最高の歌を乗せなきゃいけない。そこに全力を注ぐのみでした。だって、何回聴いてもそう感じるんですけど、眠子さんの詞、林さんの曲、本間さんのアレンジだからこそ、「逆転のレジーナ」はこんなにも素晴らしいんだとしか思えなくて! 運命だったんじゃないかっていうくらい、この曲のためにすべてが揃った感覚があるんです。
──確かに。まだ観られていないんですけど、映画にもきっとハマっているんだろうなと思いました。
LBD:ご覧になった方にもそう感じてもらえたら嬉しいですね。ちなみに、私は仮段階の本編を観させていただいたんですけど、眠子さんは映像をまったく観ないで歌詞を書かれているんですよ。どんな作品なのかは、口頭で大まかにお話ししただけ。にもかかわらず、これほどまでに完璧すぎる仕上がりだなんて……もう、恐れ入ってしまいます。
──前2作のシングル「夏だらけのグライダー」「雨と恋心」は女性の切ない感情が印象に残る楽曲でしたけど、「逆転のレジーナ」はキリッとしたかっこよさやミュージカルのように歌い上げるボーカルが際立っていますね。
LBD:「夏だらけのグライダー」「雨と恋心」では、まだ気付いていなかった女性の心情みたいなものを引き出していただいたような感じでしたけど、今回はもともと立っている私のポジティブな性格だったり、素の自分で勝負できた曲かなと思います。聴いてくれた方に元気になってもらえたらというテーマがありますしね。それと、劇場アニメのクイーン役の声優が元宝塚歌劇団の男役トップスターの大和悠河さんなのも大きくて。
──どういうことですか?
LBD:私、宝塚の男役に憧れがあって。なってみたいくらい好きだったので、“もし自分がクイーン役だったら”なんていう妄想もしつつ、そういったかっこよさが薫る歌いっぷりが少し出ましたね。クイーンは年齢・性別が不詳の設定なんですけど、そのへんも意識して歌っています。
──「逆転のレジーナ」というタイトルもかっこいいです。
LBD:レジーナは“女王”という意味なんですけど、主題歌としてのフィット感はもちろん、女性の自分がこれから長く歌い続けていけることも考えて、眠子さんが絶妙な塩梅のタイトルを付けてくださったんだと思いますね。
──曲を聴いていていちばん感じたのは、最高のメンツを迎えて大好きな歌を歌える喜びがあふれていることでした。
LBD:喜びはもう、隠しようがないほど出まくっています。『怪盗クイーンはサーカスがお好き』に対する思い入れも強いし。
──“好き”が原動力にあって、見事に昇華されている感じなんですよね。それは<CITY POP NIGHT>を観たときに思ったこととすごく近かったです。あのライブでもレジェンドを迎えつつ、ステージを本当に気持ちよさそうに満喫されていたので。
LBD:あははは(笑)。とことん楽しんじゃうところは、まさしく自分らしいと思います。やっぱり、リトルブラックドレスにしかできないことをやっていきたいんですよ。歌謡曲そのものだけじゃなくて、歌謡曲を作ってこられた作詞家さん、作曲家さん、アレンジャーさんも大好きだし、奥深くに込められた想いを知ったうえで、まだまだ歌謡曲の可能性を追求していきたいと願っているから。そういう姿勢をもって名だたる方たちと何かを生み出すのは、私にしかできないのかなと感じています。
──<CITY POP NIGHT>に出演した山木さんも、「逆転のレジーナ」にドラムで参加されているんですよね?
LBD:順序的には「逆転のレジーナ」のレコーディングで叩いていただいたのが先なんですよ。本間さんがバンドメンバーとして連れてきてくださって、それで<CITY POP NIGHT>にも繋がりました。「お忙しい中だと思うんですけど、実は今度こういうライブがあって……」とダメ元でお声がけしたら、「たまたま空いてます!」みたいな感じで決まったんです。
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