【レポート】TETSUYA (L'Arc-en-Ciel)、＜LIVE 2021 “THANK YOU”＞完遂「アルバムの全曲を披露したいと思います」

2021年にソロデビュー20周年を迎え、前作から約10年ぶりとなる3rdアルバム『STEALTH』を10月6日にリリースしたTETSUYA (L'Arc-en-Ciel)が、＜TETSUYA LIVE 2021 “THANK YOU”＞と銘打ったライヴを10月10日、LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)にて開催した。

◆TETSUYA (L'Arc-en-Ciel) 画像

毎年実施している恒例バースデーライヴ(誕生日は10月3日)という位置づけながら、今回はソロデビュー20周年、3rdアルバムリリース直後、コロナ禍の影響から約2年ぶりの有観客ライヴ実施となる。スペシャルという言葉が似つかわしい、華やいだ空気に包まれたライヴ当日は、感染症対策による入場者制限の限界までファンがTETSUYAを祝福した。


場内が暗転して憂いを帯びたオープニングSEが流れると同時に客席は総立ちとなり、ライヴはエモーショナルなミディアムチューンの「REGRET」から始まった。ステージ前面に降ろされた紗幕に様々な模様が描き出される中、その中央に立って抑揚たっぶりのヴォーカルを聴かせるTETSUYA。紗幕越しに見える姿はリアルと映像の中間という感じがして、不思議な感覚に襲われる。そんな視覚効果と歌声、力強さと煌びやかさを併せ持ったサウンドなどがひとつになったインパクトは絶大で、ライヴが始まると同時に、すべてのオーディエンスがステージに惹き寄せられたことが如実に感じられた。

その後は一気に場面を変えて、明るくハジける「Make a Wish」、軽快に疾走するバンドサウンドと甘い歌声のマッチングを活かした「READY FOR WARP」をプレイ。ブラックにブルー系のタータンチェックをあしらったトップスにデニムのボトム、そしてサングラスという出で立ちで華やかにパフォームしながら歌うTETSUYAの存在感は圧倒的だ。放たれる眩いオーラとタイトなサウンドの心地よさにオーディエンスのテンションも高まり、ライヴが進むに連れて場内の熱気はどんどん高まっていく。


「こんばんは、TETSUYAです。新しい会場、気持ちいいですね。アルバムが出たので、今日はアルバムの全曲を披露したいと思います」──TETSUYA

MCを挟み、続くブロックではグラムロックが香る「愛されんだぁ I Surrender」やソリッド＆スタイリッシュな「誰がために鐘は鳴る」、クールな歌中と心が張り裂けるようなサビを融合させた「FATE」などが演奏された。最新アルバム『STEALTH』収録曲である「誰がために鐘は鳴る」は今回のライヴでステージ初披露されたわけだが、1980年代のニューウェイブを思わせる音源トラックとは一味異なるロックテイストを押し出したアレンジが施されていた。これが非常にカッコいい。初めて演奏する新曲でスタジオ音源とは異なった魅力を提示する辺りはさすが。TETSUYAの新たな顔に触れられることも含めて「誰がために鐘は鳴る」は強く印象に残る1曲となった。

「やっと大文字のTETSUYAになってきました（笑）。小文字のtetsuyaから大文字のTETSUYAに戻って、今週末また、小文字のtetsuyaに戻ります（笑）」──TETSUYA

現在、L'Arc-en-Cielのライヴツアー＜30th L’Anniversary TOUR＞真っ只中であり、ソロ活動と併行していることを文字表記の違いで表現した粋なMCにて客席を沸かせつつ、ライヴ中盤はメロディアスかつ抒情的な「REVERSE」、煌びやかな哀愁を纏った「lonely girl」、ストリングスやピアノをあしらった壮大なサウンドと情熱的に歌い上げるヴォーカルをフィーチャーした「Time goes on～泡のように～」などを披露。シリアスかつ翳りを帯びた前述のセカンドブロックからロマンチックな中盤に移る流れは実に見事で、強く惹き込まれずにいられない。ライヴ会場を非日常空間に変えるTETSUYAの巧みさを改めて実感したことに加え、それぞれの楽曲のエモーションを十二分に表現するヴォーカルも魅力的。今回のライヴではTETSUYAのシンガーとしてのスキルがさらに高まったことを随所で感じられた。


「LOOKING FOR LIGHT」で幕を開けたライヴ後半では、「Can’t stop believing」「I WANNA BE WITH YOU」といったアッパーかつ爽やかなナンバーを畳みかけるようにプレイ。ステージの上手と下手を行き来してフィジカルに歌うTETSUYAの姿と躍動感に満ちたサウンドに気持ちを引き上げられて、腕を振ったりジャンプしたり、揃いの振りをしたりと華やかなリアクションを見せるオーディエンス。TETSUYAならではといえる柔らかみのある熱気が奏功して、場内には一体感を湛えた心地よいムードが充満した。

その後、本編のラストソングとして、爽やかでいながら強く心を揺するせつなさを放つ「ARIGATO」が届けられた。希望を感じさせるライヴ後半を、こういったエモーショナルなナンバーで締め括るセンスも素晴らしい。「ARIGATO」を聴かせてTETSUYAがステージから去った場内は、感動的な余韻に包まれていた。


アンコールはスローチューンの「白いチューリップ」から。同曲ではステージ後方に設けられたサブステージに、ミュージッククリップ同様、花の精を思わせる純白の衣装を纏ったダンサーが姿を表し、楽曲の抑揚に寄り添ったコンテンポラリーダンスを披露。アーティスティックな演出によって「白いチューリップ」の神秘的な雰囲気がさらなる深まりを見せた。

続けて、ポップな「Eureka」とブルースブラザース風の男性ダンサー2名が加わってオーディエンスの熱気に拍車をかける「Are you ready to ride?」をプレイ。１曲目で惹き込んで、2曲目で開放するというアンコール構成も秀逸だ。アンコールも最後まで魅せる、というスタンスからはTETSUYAのストイックなプロッフェショナリズムが感じられた。



そして、ダブルアンコールを求める声に応えて、TETSUYAがステージへ。

「ありがとう！ アルバム『STEALTH』の曲は全曲披露したんですけど、でも、もう1曲、今年作った曲あったなーと思って。だから、やっちゃおうかな。もう1曲聴いてください「FOREVER」」──TETSUYA

という言葉と共に曲が始まるかと思いきや、バックバンドのJuicy-Bananasが「ハッピーバースデー」を奏で、ステージにバースデーケーキが持ち込まれるというサプライズ。TETSUYAにとって完全に予想外の展開(同バースデーライヴではお馴染みの光景だが、これまでアンコール中に行なわれることがなかったため、今年はないものだと思い込んでいたようだ）にとまどいつつ、「ありがとう」と幾度となく口にするTETSUYA。メンバーから誕生日プレゼントとしてヘッドマッサージ機が贈られて、TETSUYAがケーキのロウソクを吹き消すというハートウォーミングなステージに、客席からは温かさに溢れた拍手が湧き起こった。

その後は、L'Arc-en-Cielの新曲「FOREVER」(2021年9月発表)を披露。アッパーかつロマンチックな曲調は心地よさに満ちて、TETSUYAが昇華したエモーショナルなヴォーカルも聴き応えがある。誕生日の祝福とL'Arc-en-Cielの新曲をカヴァーするというダブルサプライズにオーディエンスがさらに高揚し、場内を笑顔で埋め尽くして＜TETSUYA LIVE 2021 “THANK YOU”＞が幕を降ろした。



スペシャルライヴにふさわしい充実した内容で楽しませてくれたTETSUYA。上質な楽曲と表情豊かなヴォーカル、ストーリー性を感じさせる構成などがひとつになったライヴは魅力に富んでいて、優れた映画を観た後のような充実感を味わうことができた。また、音楽性をより広げたと共に、歌唱力や魅せ方といった面にさらなる磨きがかかっていたことも注目といえるライヴだっただけに、今後の活動にも大きな期待を寄せずにいられない一夜となった。

取材・文◎村上孝之
撮影◎緒車寿一