【インタビュー】TETSUYA (L'Arc-en-Ciel)、ソロ20周年と『STEALTH』を語る「途中で諦めていたら、このアルバムはなかった」
ソロデビュー20周年を迎えたTETSUYA (L'Arc-en-Ciel)が10月6日、3rdアルバム『STEALTH』をリリースした。『COME ON!』以来、約10年ぶりのオリジナルアルバムに収録されたナンバーは全11曲。この10年間にシングルリリースされた「Make a Wish」「Time goes on 〜泡のように〜」「愛されんだぁ I Surrender」や、EP「I WANNA BE WITH YOU」など代表曲に加えて、4曲の新曲が収められた。その旋律は突き抜け、L'Arc-en-Cielのリーダーでありベーシストとしてはもとより、作曲者としての評価も高いTETSUYAならではのメロディーセンスと歌が存分に味わえる仕上がりだ。
◆TETSUYA (L'Arc-en-Ciel) 画像
アルバムタイトルの『STEALTH』は“内密”や“ひそかなやり方”などの意を持つ言葉であり、自身のアパレルブランド“STEALTH STELL’A”に冠されたワードでもある。ちなみに同ブランドのコンセプトは“もっとも謙虚な星は、もっとも暗い夜に一番輝く”というもの。全11曲に込められた気品や実験性の高さもヴァリエーションの豊かさも、輝きを放って美しい。
BARKSでは、アルバム『STEALTH』収録曲の制作背景や各楽曲へのこだわりと聴きどころをはじめ、20年を振り返りつつソロワークスについてじっくりと語ってもらった。なお、同インタビューでは<TETSUYA LIVE 2021 “THANK YOU”>についてのコメントを掲載しているが、後日改めて、そのレポートもお届けする予定だ。
◆ ◆ ◆
■L'Arc-en-Cielのレコーディングのときも
■「記念に僕も歌っていいですか?」って
──ソロデビュー20周年を飾るアルバム『STEALTH』は、これまでシングルやEPとしてリリースされてきた楽曲に加えて、初音源化となる楽曲など全11曲が収録されています。前アルバムから10年ぶりのアルバムですし、その間に素晴らしいをたくさん生んでらっしゃるので、選曲するのが大変だったと思うんです。既発曲を含めて収録曲はどのように決められたのでしょう?
TETSUYA:今から思えばですけど、わりと無計画にシングルやEPをリリースしちゃってた部分もあったなと思って。いずれアルバムを出すというのは当然じゃないですか、我々ミュージシャンの仕事としては。アルバムって考えたときに、てんこ盛りというか幕の内弁当過ぎて、“おなかいっぱい、もういいや”ってなっちゃうのも良くないと思っているので、アルバムとして楽曲を並べたときに程よいバランスというか、小一時間通して聴いて、リピートしたくなるようなものをって考えたときに、この選曲になりました。
──ということは、収録曲はTETSUYAさん自ら選曲したということですね?
TETSUYA:最終的にはそうですね。
──その選曲はアルバム全体の流れを踏まえて決定したものだと思いますが、“どうしてもこの曲は収録したかった”というような思い入れの強い曲があったら教えてください。
TETSUYA:EP(「I WANNA BE WITH YOU」)収録曲が、ほとんど入っているんですけど。そこがさっき言った無計画な部分で。誰も考えていなかったんですよね。当時、旗振り役みたいな人がいたのかいなかったのか、今となってはわからないんですけど。僕としてはすごく大事な曲達だったので、次のアルバムに入らないっていうのは抵抗があったんです。だから入れたい。となると、バランスを考えた場合、新たに足す曲っていうのはこの曲達かなという。
──前アルバム以降、シングル3作品とEP1作品をリリースされているので、これまでの作品を並べてみました的なアルバムを作ることもできたと思うんですが、決してそうはなっていなくて。既発曲の数々にTETSUYAさんの深い思い入れがあって、その曲達をアルバムで改めて紹介したいという気持ちが込められているように感じました。
TETSUYA:そうですね。既にリリースされている曲も、この並びでこう聴くと、また違う聴こえ方すると思うので。
──おっしゃるとおり違って聴こえました。それにソロデビューから20年という年月が経っているので、なかにはわりと最近になってTETSUYAさんのことを知ったリスナーもいると思うんですね。そういう人達が“どの音源から聴いたらいいんだろう?”と思ったときの入り口としてもすごくいいアルバムではないかと。
TETSUYA:そうなんですよ。僕のことをまだ知らない人はいっぱいいて。僕の存在は知っていたとしても、“TETSUYAってこんなに歌が歌えたの!?”っていうふうに言われることがすごく多くて。まあ、20年やってますからね(笑)。
──そうですよね。改めて20年前のこともうかがいたいと思います。2001年にソロ活動をスタートされましたが、たとえばベーシストとしてのスキルを活かして、ベーシストとして別のバンドを始動するということもできたと思うのです。でも、自ら歌おうと思った経緯や思いを改めて教えてください。
TETSUYA:もともと僕、歌うことが大好きなんですよ。ほっとくと普段から鼻歌を口ずさんでいたりする人なんですね。L'Arc-en-Cielのレコーディングのときもhydeの歌録りが早めに終わったりしたら、「記念に僕も歌っていいですか?」って録ってもらったり(笑)。そういうことをやってる人なんですよ。
──ええっ!? その音源、ぜひ聴きたいです。
TETSUYA:僕しか持ってなかったりすると思いますけど(笑)。それくらい歌うことが好きなんですね。だから、ソロをやるって決まったときに、当然歌うつもりというか。歌を中心にアルバムを作るつもりでソロを始めようっていう話に僕の中ではなっていたんです。だから、ベーシストとしてのアルバムを作ろうとか、そういうことは考えていなかったですね。
──シンガーソングライターとして歌うということは、TETSUYAさんの中では自然な流れだったんですね。
TETSUYA:それまでもL'Arc-en-Cielのデモを作るときは自分で仮歌を歌っていたので、歌うことがそんなに大変だとは思わずにいたんです。でも実際、“ラララ~”で仮歌を歌うのと、歌詞をつけて歌うのでは全然違っていて。ソロを始めてみて、“あれ? ちょっと歌をナメてたな”と思ったんですよ。最初の作品「wonderful world / TIGHTROPE」(2001年7月発表)をリリースしてから、“あ、ダメだな。基本的な歌のレッスンを受けなきゃ”って。そこからボイストレーニングを受けました。
──そうだったんですね。その前にレッスン経験は?
TETSUYA:いや、さっきも言ったように仮歌は歌ってたし、ライヴでもコーラスをやっていたので、歌えるだろうと。ところが、全然思っていたように歌えなくて。最初は、もっとこう表現したいと思っても、それが表現しきれなくて。
──そこで初めてレッスンに行くわけですね。
TETSUYA:普通はレッスンを受けたり、ライヴハウスで鍛えたり、ある程度歌えるようになってからデビューするじゃないですか。僕はベーシストとして世にデビューして、なんの歌の練習もしないままいきなり歌い出したので、“ナメてた”と思ったんですね。
▲アルバム『STEALTH』通常盤
──それはライヴでのことですよね。「wonderful world / TIGHTROPE」の音源を聴いたときは、初めてのヴォーカルみたいな感じは一切なかったですから。歌うことはTETSUYAさんに向いていたんだと思うんです。それにベーシストということもあって、ピッチやリズムは最初から素晴らしかったですし。
TETSUYA:うーん。でもピッチは……僕は耳がすごくいいんですけど、自分が思ったところに自分の声を持っていけないっていうのが、最初はすごく歯がゆかったですね。
──ライヴはスタジオで歌うのとは環境が違うから難しいという話はよく聞きます。モニターの問題で正確な音程で歌っていたつもりなのに……という話も。
TETSUYA:自分の歌が聴こえなかったり、楽器の音がうまく聴こえなくてバランスが取れなかったり。正確な音程で歌っているつもりなのに、録った音を後で聴いたら、恐ろしいことになっていたり(笑)。
──それは環境の問題なので、シンガーとしてのスキルとはまた別の話ですから。ただ、“ムリかも”ってなったときに歌をやめてしまう人も少なくないと思いますが、TETSUYAさんは歌を続けていこうと思われたんですね。
TETSUYA:そうですね。途中で諦めていたり、やめていたら、このアルバムはなかったので。
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