【コラム】SixTONES、彼らが進む道が王道となっていく

コロナ禍という誰もが予測不能な現実に、それまで当たり前だった、生の歌、パフォーマンスを届けるライブがなくなったあの期間を、アーティスト側は、そしてファンたちはどう過ごしていたのだろうか。唯一、同じ場所で同じ時間、同じ空間を味わえる場所であるライブを観ることを、そして届けることを、大げさではなく生き甲斐にしている人たちは、とても多い。筆者もそのうちの1人だ。大好きなアーティストを目の前に、思い入れの強い楽曲のイントロが鳴った瞬間、身体中の神経が集中し、体温が上がり、これ以上ない幸せを感じることが出来る。それは、“届ける側”も同じ思いだからこそ。

SixTONESのファーストアルバム『1ST』のリリースと共に始まった全国アリーナツアー＜on eST＞。1月4日から3月28日までの開催予定だったが、コロナ禍に伴う緊急事態宣言などの影響で、3月21日までの公演を中止。代替えとして開催された無観客配信ライブを経て、ついに3月の北海道公演より有観客ライブが実施された。万全の感染対策を講じた上で、歓声はなし、マスク着用かつ、動員上限も決め、手拍子とペンライトのみ。いつもとはまったく異なる状態で行われた6月7日の横浜アリーナ公演をそのままパッケージした作品『on eST』が発売される。

◆ダイジェスト映像

スタートした瞬間、スクリーンに映し出されたのは6人の影。いつもなら歓声で埋め尽くされる幕開けだが、声が出ないからこそその「Mad Love」の低音が妖しく、身体の奥まで響き渡り、彼らが作り出す世界へと誘う。より聴覚、視覚が刺激された後、おびただしい数のレーザーと火花が彼らを包み、全英語詞によるEDMのダンスナンバー「Dance All Night」や、どこか危うさを持つ彼ららしさを堪能させてくれる「NAVIGATOR」では、身体の奥に響き渡る田中樹の低音ラップと、麗しさを感じる高貴な京本大我の歌声が重なり合うのも、彼ら“らしさ”のひとつだろう。森本慎太郎のアクロバットは映像作品だからこそ少しスローのエフェクトがかかり、さらにドラマティックな演出に。「Telephone 1ST ver」ではダンスブレイクで松村北斗がセクシーに口元に運ぶ指がクローズアップされるところも注目だ。

圧倒的なパフォーマンスで牽引した後、全力でボケ始めるジェシーを筆頭に自己紹介がはじまり、しっかりと髙地優吾が会場を盛り上げ、田中樹が「会いたかった？　会いたかった！？」と煽ったあと「俺らも会いたかった」と呟き一気に会場に来ている、そして見ている人たちの心をグッと掴む手腕はさすが。


「S.I.X」で一気にアリーナをダンスホールへと変え、感染対策の末、いつもよりも高く設定された花道を練り歩く彼らの表情は攻めつつも時折見せる笑顔が幸せを物語っている。いまの環境下を想像して作られたかのようなクラップで曲が完成するこの曲は、今後声を出せるようになったライブでもクラップは欠かせないこの曲の一部となることだろう。そのほか、銃声のように響き渡るビートにあわせて身体を揺らす「Special Order」では、6人それぞれのまったく異なる歌声、声質を堪能することができるのだ。１つ１つの個。まさに６つの音が重なり合う、彼らのSixTONESの名の由来のような６つの音色が重なった瞬間、素晴らしい音となることを、よりこの曲が証明してくれたように感じる。

そのほか、髙地と森本による温かい「My Hometown」、京本と松村による切なさ、苦しさを歌う「ってあなた」ではそれぞれの個性を全面に打ち出していく。演技の仕事も多い松村と京本だからこそ表現できるこの歌詞の奥深くの世界観は、苦しくて、苦しくて……。2人が目を合わせて歌う美しいハーモニーは必見だ。かと思えば、ＭＣではこれまでのクールさ、妖艶さを取っ払った驚くほどのはじけっぷり。このギャップも多くの人の心を掴むのだろう。

後半は圧倒的にパワフルで攻撃的な曲が並ぶ。ロングジャケットを活かした躍動感あふれるセクシーでアダルトなパフォーマンスを魅せる「Bella」や初披露の瞬間から話題となったギリギリの色気を醸し出す「RAM-PAM-PAM」では疾走感の中に艶やかさが増し、ステージを言葉通り滑り落ち、練り歩く姿は圧倒的でその世界を背負った覇者のような風格を持つ。

「NEW ERA」では他の曲とはまったく異なるジャンルであるミクスチャーロックを歌い放ち、デビュー曲「Imitation Rain」へとつなぐ。時間が経つごとに、この曲に彼らの個性が染み込み、あらためてこの曲がデビュー曲に相応しかったことを物語る。抒情的でエモーショナルで、静かに、熱い。それは台風の前の静けさのようで、それから巻き起こるSixTONESが独自の路線を突き進み、ジャニーズ事務所の中では異端児として、より多くの人たちから人気を得ることを予見していたかのよう。決して王道ではない。でも、それは王道を彼らが進むのではなく、彼らが進む道が王道となっていくのだ。そう信じ、彼らは驚くほど様々なジャンルを歌い、届け、自分達の音にしていくのだろう。この曲で“いつかはたどり着くよ／夢の世界にと歌ったように”と。

そして彼らは「ST」で、“完璧だなんて間違っても思うな／弱さのない世界は強さとは無縁だ”と歌う。たたみかけるライブの終盤で、あえてこのメッセージソングを歌う彼らの真意はわからないが、きっと、決意表明なのだろう。終わりはまだまだ未来の先。そこまで決して挑戦を辞めないという彼らの想いを感じるようなセットリストとなっていた。


アンコールではできるだけファンの近くに駆け寄りファンサービスをした後、田中樹は「正直すぐ会えると約束ができません。でも、俺らはすぐに会いたいと思うし、そのために他のことを頑張るし、（中略）会えない時間の俺らの愛情を日々届けられるように、SixTONES6人はみんなのことだけを想って毎日頑張っていますのでこれからもついてきてくれれば後悔はさせないです」と力強くコメントし、ライブの幕を閉じた。

自分達の世界観をしっかりと持ち、圧倒的かつ妖艶なパフォーマンスで魅せたかとおもえば、わちゃわちゃとじゃれ合い、そのギャップで観ている人たちを一気に引き込む。そんな彼らの魅力が凝縮されたこのライブ映像を、ぜひ楽しんで欲しい。

なお、初回盤にはメンバーによる＜on eST＞のビジュアルコメンタリーだけでなく、「うやむや」や「Strawberry Breakfast」などのミュージックビデオも収録。通常盤にはドキュメンタリー映像が収録されるなど、かゆいところに手が届く仕上がりになっているのも嬉しい。彼らのライブにふれたことがある人はもちろん、触れたことのない人もぜひ、この映像を見てその存在感やメッセージを受け取ってみて欲しい。きっと、衝撃を受けるはずだ。

文◎吉田可奈




◆SixTONES オフィシャルサイト