【インタビュー連載 Vol.1】HYDE、「<黑ミサ>は特別なもの。これで最後に」

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■美しい建築と空を眺めながら
■表現していることすべてを楽しむ

──また一方で、ツアーに並行して7月31日および8月1日の2日間、京都・平安神宮で行なわれた<20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU>が本当に素晴らしかったです。初日の荒天さえも演出の一部であるかのような美しさで。HYDEさんをはじめ、現場のみなさんは相当に大変だったと思いますが。

HYDE:僕らが大変というよりも、やっぱり初日はいらっしゃったみなさんに用意したコンテンツをすべてお見せできなかったのが残念でしたね。本来なら開演が押したぶん、終演時刻を遅らせてでもやりきりたかったんですけど、平安神宮は規制が本当に厳しくて、音止めの時間を1分でもオーバーするとダメなんですよ。なんとかコンサートの核となる楽曲と演奏だけを残すことでギリギリ、初日公演を遂行することができましたけど、あれでもあと数十秒ズレてたらヤバかったですから。そういう意味ではかなり大変でした。でも伝えるべきは伝えられたと思うし、2日目は僕が理想とする形で平安神宮のコンサートを作れたので。2日間でひとつと考えたら、すごくいいものになったなとは思います。

──初日、雨に濡れそぼる客席をいたわって「ごめんね」と声をかけていらっしゃいましたが、それ以外は2日間通して一切、MCがなかったのも驚きでした。

HYDE:そうなんですよ。能とか狂言の舞台と同様に、そこに自分の言葉が入ってしまうことで現実感が出るのがイヤだったんです。


──このステージを神様に奉納するというような意識も?

HYDE:たしかにそういう雰囲気はありましたね。

──ステージに立っているときはどんなことを感じていらしたんでしょう。

HYDE:<ROENTGENツアー>でこれだけオーケストラと一緒に歌わせていただいていると、自分のなかでも少しずつ余裕が生まれてくる部分があって。歌うことだけじゃなく、今のこの状態を楽しもうっていう気持ちのほうがどんどん大きくなってきましたね。目の前に広がる平安神宮の美しい建築と空を眺めながら、お客さんに聴いてもらう声色を操りながら、自分の立ち振る舞いだったり、表現していることすべてを楽しみたいなって。そう思いながら、今このときしかない空に向かって歌っていました。

──衣装も全部特注で作られたんですよね。狩衣や烏帽子といった和装を最初からイメージされていたんですか。

HYDE:最初はなんとなくですかね。京都の友人や、2日目に出演していただいた能楽師の茂山逸平さんとかと話しているうちに、なんとなく「これかな?」っていう方向に決まっていきました。狩衣とか着たことがなかったから仕上がりがどんなふうになるのか少し不安でしたけど、試着してみたら思っていたよりシュッとしていて悪くないなって(笑)。烏帽子も本当なら倍ぐらい高さがあるんですけど、全体のバランスがよくなかったので短くしてもらったんですよ。白い烏帽子自体、基本的にはないらしいんですけど、趣旨や設定を説明して特別に作っていただいたんです。

──横澤和也さんによる石笛(いわぶえ)の特別演奏にも圧倒されました。

HYDE:プライベートで何回か吹いていただいたことがあるんですよ。あの石笛って人が作ったものではないんですね。人が作ったものではなく、貝が穴を掘って空けた自然の石を笛として鳴らすことによって、神様を呼ぼうとするんです。古代から神様を呼ぶ笛として継承されてきて……だから練習もできないらしいです。練習で神様を呼ぶわけにはいかないから、本番しか吹けない。それぐらい神聖なもので。吹ける人も限られていますし。


──まさに一瞬で場が清まった気がしました。他にも雅楽とオーケストラのコラボレーションや、能楽師・茂山さんの舞など随所に和の演出が取り入れられていましたよね。もともとヴァンパイアや“666”とかに象徴される西洋的かつ悪魔的なものを非常に好まれているHYDEさんが、そうした和の世界、日本古来から受け継がれてきた神聖なものに対しても深い造詣と敬意をもってご自身のエンターテインメントに取り入れられているのがとても新鮮であり、画期的だなと思ったんです。人智を超えた力みたいなところで両者に相通じるものを感じたりもされているのかな、と。

HYDE:どちらもただ単に興味があるってだけですかね。繋がっているかどうかとかは特に意識していないです。それが好きかどうかというだけ。ただ、自分の音楽に和を取り入れて表現しようというのは本当にここ最近、「ZIPANG」くらいからの話で。

──何か理由があるんですか。例えば年齢とか。

HYDE:年齢もあるし、海外に出たことによって、改めて日本の良さを感じたということでもあるでしょうね。でも、もともと嫌いじゃないですけどね、神社仏閣を訪れるというのは。

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