【インタビュー】柴崎浩 [WANDS]、『BURN THE SECRET』ギターサウンドを語る「さらに多面的に」

ポスト

ついにWANDSのニューアルバム『BURN THE SECRET』が10月28日に発売となった。21年ぶりのオリジナルアルバムの登場となるが、果たしてどのようなアルバムになったのか。

◆WANDS 画像 / 動画

当然ながら第5期WANDSによる新曲に注目だが、これまで時代を飾ってきた名曲も新たに収録されている。あまりにヒットを飛ばし、あまりに完成度が高く、あまりに多くの人々の心に浸透しきってしまっているWANDS楽曲だけに、過去曲を新たにレコーディングするのは、想像以上にチャレンジングな作品づくりだったことだろう。

長きギタリスト人生を歩む中で、柴崎浩は、偉大なる過去のWANDSをどのように乗り越えたのか。ギタープレイヤーとしての彼から、第5期WANDSが成し遂げた魅惑のサウンドワールドを紐解いてみよう。

   ◆   ◆   ◆

■今は若いころ好きだった感じに
■少し戻っているようなところがある

──あ、上原さん (いきなり上原大史[Vo]を発見)、上原さんもギター上手いですよね。

柴崎:うまいよね。

上原:そんな、全然ですよ(笑)。柴崎さんをみていると、いやもう“これがプロっていうんだな”って。僕なんかアマチュアみたいなものなんで。

──ヴァン・ヘイレンのボーカルがデイヴ・リー・ロスからサミー・ヘイガーに替わって、ステージでもサミーがギターをガンガン弾いていたでしょう?

柴崎:弾いてましたね。

──上原さんもWANDSで弾けばいいと思うんだけど…。

柴崎:あるかもしんないですね。

上原:あははは(笑)…需要があれば、ね。

柴崎:歌うっていうのは結構大変だから、余裕が出てきたら。

上原:機会がありましたら。

▲nishgaki guitars Amnis Novus (Hiroshi Shibasaki Specs)
材の選定や形状をはじめ、柴崎本人の指向性をビルダーの西垣氏とディスカッションしながら製作されたオリジナルモデル。ネックシェイプ、ピックアップ(Suhr Thornbucker)、ブリッジ、ノブやスイッチのポジション等は柴崎自身が指定したもの。「抱き寄せ 高まる 君の体温と共に」「賞味期限切れ I love you」「真っ赤なLip」「明日もし君が壊れても [WANDS 第5期ver.] 」「もっと強く抱きしめたなら [WANDS 第5期ver.] 」「世界中の誰よりきっと [WANDS 第5期ver.] 」「アイリメンバー U」のレコーディングで使用されたメインギター。


──いきなり失礼しました。それにしてもWANDSの曲というのは、リフもオブリも裏メロも完成度が高くてリアレンジの隙きが全くないんだと改めて痛感しています。

柴崎:やりようがないことはないんですけど、拒否反応を示す人が多いだろうなとも思いまして。

──拒否反応?

柴崎:その曲が馴染むまでには時間もかかるだろうし、馴染まないかもしれない。みんなの記憶にあるそのままの形で演ったほうが、多くの人にとってWANDSの今のヴァージョンとしてすんなり入っていくのかなと思うんです。そういう考えで、あまり変えない感じでレコーディングしました。

──そこには20年以上の時間経過があるわけですが、レコーディングしてみて自分自身の変化や発見はありましたか?

柴崎:単純に“フレーズがつたないなぁ”って思うこともあるし、逆に“いいのを思いついてるじゃん”っていうのもあるし。

──若さゆえのパッションでしょうか。

柴崎:そういうフィーリングはありますよね。“かましたろ”みたいな気概を音から感じたりはする。当時に比べてフレーズのボキャブラリーも増えてるし、うまくなってると思うんですけど、フレーズの発想とかは意外と変わってなくて(笑)、“ああ、当時からこういうことやってたのか”みたいなのは思ったりしましたね。

──昔の自分、すげえなって感じ?

柴崎:結構“いいフレーズやってるねえ”とは思いました(笑)。今はもうちょっと発展させたものもやってるけど、当時からそのアプローチをやってたんだ……みたいな。

──本人に限って気付いていないという(笑)。サウンドの好みは変わってきていますか?

柴崎:音楽人生で言うといろいろ変わってきています。今は、若いころ好きだった感じに少し戻っているようなところがあるかなって思ってますね。

──わかりやすく言うとal.ni.coではなくWANDSサウンド?

柴崎:そういう感じです。

▲Ernie Ball Music Man John Petrucci6 G54517
ドリーム・シアターのジョン・ペトルーシのシグネチュアモデル。アーニーボールミュージックマン特有の“4対2”のペグ配列は柴崎のオリジナルモデルAmnis Novusにも採り入れられている。ピエゾピックアップを搭載。「明日もし君が壊れても [WANDS 第5期ver.] 」「もっと強く抱きしめたなら [WANDS 第5期ver.] 」で使用。


──使っている機材は違えど、何を使っても自分の好きな音に向かってしまう感じですか?

柴崎:そういうのもある気がしますね。それと、今と当時では時代があまりにも違うので出す音も時代の影響は受けてると思います。一方で、多分メロディっぽいものや歌う時のタイム感とかはそんなに変わってない感じ。「世界が終るまでは…」のイントロのメロディみたいなところとかは、変わってないように思いますね。

──人でいうと“喋り方”みたいなものでしょうか。

柴崎:そうですね。しゃべり癖みたいなものと基本的なトーンっていうのは変わらないのかな。ピッキングのフォームとかは結構変わったと思うんですけど。

──意識的に?

柴崎:ある時期からすごくピックを深く持つようになったんです。親指がすごくいっぱいはみ出てるというか、関節近くで持ってるみたいな。

──親指の奥のほうで持つ感じですね。それはどうして?

柴崎:あるフレーズをコピーしているときに、その人がそういう握りだったので試しにやってみたら、そのフレーズはうまく弾けたんですよね。他のフレーズはその持ち方だと弾きにくかったりするんだけど、なんかそれが定着してきた。あと、速く弾くときのピッキングの仕方も相当変わってますね。前は、基本的にはオルタネイトピッキングが基本だったんだけど、今はダウンダウンとかアップアップとか、もっと流動的になってきました。

──ピックはどんなものを?

柴崎:前はティアドロップでしたけど、今はマンドリンピックという小さいピックを使っています。

──先がとんがって頭がハート形の?

柴崎:そうそう、すごいちっちゃいやつ。

──落としませんか?

柴崎:すごい落とします(笑)。

──それは何がいいんですか?

柴崎:手の中でコントロールしやすいというか、無意識に演奏中に持ち直したり変えたりするのが何となくしやすいっていうんですかね。

──持ち方や当て方を、プレイによって細かく変えているんですね。

柴崎:はい、変えてます。

◆インタビュー【2】へ
この記事をポスト

この記事の関連情報