【インタビュー】BAND-MAIDの新たなる挑戦
日本での知名度もアップする中、北米ツアー5公演がソールドアウト。ロンドンでもホールで公演を開催するなど、ワールドワイドなバンドへの道を切り開きつつあるBAND-MAIDがメジャー3rdアルバム『CONQUEROR』をリリースする。トピックスはデヴィッド・ボウイ、T・レックスなど数々の大物ミュージシャンを手がけたトニー・ヴィスコンティがプロデュースした楽曲が収録されていることだ。レジェンド的存在のプロデューサーの目に止まり、「こんなカッコいいガールズバンドが日本にいたとは!」と惚れ込まれた彼女たち。アルバムにはハードでアッパーな曲のみならず、持ち前のメロディの良さを活かしたミドルバラードも収録されている。親密な関係になったというヴィスコティとのレコーディングでのエピソードをふくめ、文字通りワン・アンド・オンリーなBAND-MAIDの魅力がたっぷり詰め込まれた新作について5人に話を聞いた。
◆ ◆ ◆
■詐欺かなと思ってしまったんですけど(笑)
──日本のみならず、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでお給仕を重ねているBAND-MAIDですが、今回のアルバム『CONQUEROR』を作る前に共有した想いはありましたか?
小鳩ミク(G&Vo/以下、小鳩):いつもは「さあ、アルバムを作りましょうっぽ」って制作に入るんですけど、前回のアルバム(『WORLD DOMINATION』)がツアーの合間のあわただしい作業だったということを踏まえて、その後からはリリースに関係なく、つねに制作をするようになったんですっぽ。なので、いままで録りためていた曲を集めて、足りない部分を補っていったので、これまでとは違う作り方ですっぽね。お給仕の中で刺激を受けながら「こういう曲が欲しいね」って曲を作っていったので、テーマがあるとすれば“お給仕”がふさわしいと思いますっぽ。
──『CONQUEROR』というタイトルには“征服者”という意味もありますが、世界征服を目指すBAND-MAIDのど真ん中ですね。
小鳩:そうなんですっぽ。『WORLD DOMINATION』もパンチの効いたタイトルで世界征服を掲げていたので、それに負けず劣らずの強さだったり意志が伝わるものがいいなって。
SAIKI(Vo):最初は『FUTURE CONQUEROR』にしようって言ってたんだけど、意味が限定されてしまうから、もっと自由に捉えられるような言葉のほうがいいんじゃない?って話になって。
小鳩:そう、そう。私たちが未来の征服者になってやるっていう意味で最初は考えたんですけど、そういう想いも込めつつ、『CONQUEROR』のほうがいろいろな解釈ができるなって思ったんですっぽ。
▲小鳩ミク(G&Vo)
──アルバムにはトニー・ヴィスコンティからの熱烈なオファーを受けて制作したミドルロックチューン「The Dragon Cries」が収録されていますが、BAND-MAIDのアメリカのライブにも見にいらっしゃったんでしょ?
SAIKI:そうなんです。そのときは制作が終わった後で。
小鳩:2日間、見にきてくださったんですっぽ。
SAIKI:別れ際はみんなで涙ぐんでね(笑)。
小鳩:親戚と別れるぐらいの感じで(笑)。すごく仲良くならせていただいたっぽ。
──そもそも、一緒にやることになったいきさつというのは?
小鳩:「The Dragon Cries」の作詞をしてくださったトーマスさん(Thomas Kenney)がBAND-MAIDのことを知っていてくださって、一緒にやりたいと思ってくださったみたいなんですっぽ。トーマスさんはトニーさんと長年の付き合いなので「日本にこんなにカッコいいガールズバンドがいるんだけど、よかったら一緒にやらないか?」って声をかけたら、お互いに日本が大好きなことも判明して意気投合して「ぜひ!」ってことになったらしいですっぽ。そこからBAND-MAIDが所属するレコード会社に直接オファーしてくださったんですけど、私たちとしてはあまりにネームバリューがある方なので「本当にご本人ですか?」って(笑)。
──トニー・ヴィスコンティのことは知ってました?
KANAMI(G):正直に言うと存じ上げてなくて。
──1970年代のグラムロックの作品が有名だから世代的にそうですよね。
KANAMI:で、調べてみたら、「こんなに凄い方が!?」って。それで詐欺かなと思ってしまったんですけど(笑)。
──プロデュースやるやる詐欺。
全員:(笑)。
小鳩:なので、最初は不安もあったんですが、BAND-MAIDの曲もたくさん聴いていただいた上で“キミたちがやりたいようにやりたいんだ”って、私たちの意見もすごく取り入れてくださって、ありがたかったですっぽ。曲のやりとりに関しては、KANAMIに任せて。
▲KANAMI(G)
KANAMI:最初はデモテープを送らせていただいたんです。反応や意見をいただいて、どんどん曲を詰めていくんだろうと思っていたら、「いいじゃん。これでいこう」って。
SAIKI:1回デモを送っただけでね。
KANAMI:一発OKでした。デヴィッド・ボウイやT・レックスをプロデュースなさっていたトニーさんから褒められたことが自分にとっても自信になりました。メロディもつけていたんですけど、ボーカルの2人はニューヨークに行ってレコーディングしたので、そこでまた変化があって。
小鳩:トニーさんのスタジオで歌録りさせてもらいましたっぽ。楽器隊は日本でレコーディングしたんですけど。
SAIKI:スタジオではトニーさんもキーボードを弾いたりして、現場でメロディが変わっていったんです。
小鳩:鼻歌歌ったりしながらね。
SAIKI:「このメロディの方がいいかなぁ」とか言いながら。「このメロディも歌詞もとても好きなんだけど、今、キミたちと作りたいんだけど、いい?」って言われて私たちはむしろ嬉しかったですね。トーマスさんもいらっしゃっていて、「メロディが変わるなら、ここの歌詞は変えよう」とか。
小鳩:で、試しに小鳩が鼻歌で歌ってみて「そこの箇所は言葉が詰まりすぎてるから変えよう。別の言葉にしてみて」っていうやりとりがあったり。いろいろなアイディアをくださって「固まってきたね。SAIKI先生、歌ってください」みたいな流れでしたっぽ(笑)。和気藹々とした雰囲気の中、いろいろな話もできたので、すごく仲良くなりましたっぽ。
彩姫:コーラスもその場で考えてたりね。
小鳩:「これ歌ってみてよ」って言われて。
SAIKI:「そんなに上のキー?」と思いながら。
小鳩:「よし! やってみるっぽ!」って。
▲SAIKI(Vo)
──そんなに貴重な体験をしていたとは驚きです。トニーさんはBAND-MAIDについてなんとおっしゃっていましたか?
小鳩:「曲が素晴らしい!」って言ってくれましたっぽ。
SAIKI:「今まで知らなくてごめんね」って謝られました(笑)。
小鳩:「こんなにカッコいいバンドがいたんだね」って。ものすごく褒めてくださる方だったんですっぽ。優しくて紳士ですし、ずっと私たちのことを気にかけてくださって自分たちを伸ばしていただいて。
──「The Dragon Cries」は、KANAMIさんの歪んだギターリフで始まりますが、楽器隊がフィーチャーされる間奏にも注目ですよね。
KANAMI:ドラムとベースのかけあいのところは大まかに“こんな感じ”ってデモを送ってAKANEとMISAにアレンジしてもらいました。
AKANE(Dr):この曲、BAND-MAIDの中でいちばんテンポが遅いんですよ。ドラムソロではガラッと雰囲気を変えてトリッキーな感じにしたくて16分音符を詰めまくっています。
MISA(B):ドラムのフレーズとの兼ね合いもあるので、2人で「ここはちょこっと変えて」ってやりとりしながら。
AKANE:「ここは音がぶつかるから、こういうリズムに変えよう」とかデータ上で何回もやりとりしました。
KANAMI:ドラムは自分には思いつかないフレーズなので「カッコいいな」と思いました。手数が多いので本番のレコーディングで叩けるのかなと思っていたら、バッチリキメてくれて。
AKANE:トニーさんにも「良かったよ!」って言ってもらえて嬉しかったですね。
SAIKI:ニューヨークでも「AKANEのドラムはスゴイ!」って言ってました。
小鳩:「MISAはなんでこんなに(フレーズが)動けるんだ!?」って。
SAIKI:「この曲をまとめられるのはKANAMIしかいない!」って褒めてたよね。
KANAMI:嬉しかったです。
SAIKI:この曲、ミックスダウンもトニーさんがやってくださったんですよ。いままでBAND-MAIDがやってこなかった思いきりの良さがあって「これがUSのロックなのか」と(笑)。
小鳩:BAND-MAIDの曲は、ギターの本数を重ねることが多いんですけど、「シンプルにして、よりみんなのカッコよさを出したいんだ」って言ってくださったんですっぽ。そう言いながら「この音、削ったらKANAMI怒るかな」って気にしていて(笑)。
KANAMI:確かにギターの感じも変わってました。トニーさんはこんなふうに音を抜いたり、オブリをこう変えるんだなって、すごく勉強になりましたし、全然、怒ってなんかないです(笑)。
──相当、BAND-MAID、気に入られてますね。
小鳩:レコーディング直後からそういう感じでしたっぽ。
SAIKI:「来年はいつ来れる? 次は長く来て」って。
小鳩:お給仕を見にきてくださったときも「また絶対、一緒にやろうね!」って言ってくださったっぽ。
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