【ライブレポート】BAND-MAID、『Epic Narratives』という壮大な物語

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11月26日、東京・Zepp Haneda (TOKYO)でのお給仕(ライヴ)をもってBAND-MAIDの<ZEPP TOUR 2024>が幕を閉じた。

◆ライブ写真

名古屋、大阪、東京を巡演するわずか全4公演のコンパクトなツアーではあったが、今年最後のお給仕となるそのファイナル公演に触れた筆者は、意欲的な創作活動とライヴ活動の相乗効果の高さを実感させられることになった。ライヴバンドとしての成長/進化がその後の作品づくりに効力を発揮するだけではなく、クリエイティヴ面での充実がパフォーマンスの向上にも繋がるのだということを思い知らされたのだ。


開演定刻の午後6時を5分ほど過ぎた頃に場内は暗転し、ステージを覆う紗幕には今回のツアーのシンボルというべきギターで武装した女性の後ろ姿が浮かびあがる。どうやら彼女の名前はNINAというらしく、その凛としたたたずまいが素敵だ。そしてオープニングSEが流れる中、手拍子と歓声を受けながら5人がステージ上の配置に就くと、一瞬の静寂を挟んでいきなりSAIKI(Vo)が「Forbidden tale」を歌い始め、紗幕に映し出された歌詞が目まぐるしく移り変わっていく。イントロのない楽曲を幕開けに据えるという行為は客観的にみてもかなりの度胸を要するものだと思われるし、展開の豊富なこの楽曲は、9月に発売された最新アルバム『Epic Narratives』の収録曲の中でも高難度な部類に入るものだろう。しかし彼女たちは一糸乱れぬ演奏と歌唱でこの曲を再現してみせる。そして、この曲のドラマが終わると同時にAKANE(Dr)のカウントに導かれながら「endless Story」が始まり、それと同時に紗幕が振り落とされる。一気に視界がクリアになると、ステージ後方の円形スクリーンには馴染み深いリボンのシンボルマークが浮かび、躍動する5人の姿にご主人様お嬢様(ファンの呼称)たちは手を高く掲げながらのコーラスで応えていく。

そのまま曲は「Shambles」、「Sense」、さらには「Protect You」へと加速度を増すようにしながら転じていく。スクリーンに浮かぶ映像は各楽曲のスピード感や展開に呼応しながら万華鏡のごとくさまざまに様相を変え続けていき、場内をぎっしりと埋め尽くしたご主人様お嬢様たちは完璧なタイム感で声をあげ、コーラスを重ねていく。こうして最初のブロックを5人があくまで攻撃的に駆け抜けていくと、野太い歓声が湧き、小鳩ミク(G, Vo)がこの夜最初の挨拶をする。


「お帰りなさいませ、ご主人様お嬢様。やってきましたっぽ。ZEPP TOURファイナルっぽー! ソールドアウトありがとうございますっぽ! 最高の夜にする準備はできてますかっぽ?」

こうした呼びかけひとつに対するレスポンスの声の大きさが、尋常ではない。そしてこの夜のお給仕は「NO GOD」の炸裂とともに中盤へと差し掛かっていく。アグレッシヴさを維持しながらも変化に富んだ楽曲が並ぶ中、最初のリフひとつでそれとわかる「DOMINATION」の求心力にはやはり強烈なものがあるし、小鳩がギターをアコースティックに持ち替えながら始まった「Memorable」のアンサンブルの絶妙さにも磨きがかかっている。長期間に及んだ『Epic Narratives』の制作と、その期間中の多様なお給仕体験を経てきたことにより、いわゆる過去曲たちまでもが進化/深化を遂げているのだ。もちろん従来の演奏や歌唱にぎこちなさを感じていたわけではないし、あからさまにアレンジなどが変わっているわけでもない。ただ、最新曲たちを消化する過程を経てきたことによってバンド自体の地力が増し、耳慣れた曲たちがいっそうの説得力を備えたものとして届けられるようになっているのだ。当然ながらそうした相互作用は、今になって始まったものではない。むしろBAND-MAIDは、何度もそれを繰り返しながらこの地点まで到達したのである。


そしてこのバンドは、例によってギャップの大きさでも観る者を楽しませてくれる。ポップさの中にせつなさが溶け込んだ「Letters to you」で2ブロック目を締め括ると、今度はSAIKIが威勢のいい口調で「羽田、盛り上がってるか!」と呼びかける。この日はあいにくの天候だったが、好天とはやや縁が薄いとされる彼女に向けて客席から「雨、降ってるよ!」との声が飛ぶと、「知ってるよ!」と笑顔で切り返してみせ、それまでのロックバンド然としたテンションの高い演奏ぶりとは打って変わった和気藹々とした空気が流れ始めていく。さらにこの場ではKANAMI(G)からの「嬉しいお知らせ」もあった。PRSから彼女のシグネチャーモデルが発売されたのだ。しかもこれは日本人初となる快挙。彼女の言葉からは純粋な喜びと感謝の気持ちが伝わってきた。KANAMIいわくこのギターのボディの色味は彼女が初めて手に入れたギターと同じものだそうで、そうした色調の選択には「初心忘るべからず」の気持ちが込められているのだという。そうしたせっかくの「いい話」の後には最新グッズ紹介や、今年最後のおまじないタイムが控えていたりもするのだが、こうした落差の大きさもBAND-MAIDのお給仕ならではのもの。しかも、こうしたくだりを経ながら緩んだ空気を、次の曲を演奏し始めた途端に一転させてしまう切り替えの見事さにも感心させられる。


ここでSAIKIがひとたび姿を消し、次なるブロックは小鳩がリードボーカルを受け持つ「Brightest Star」からのスタートとなった。そのクロージングを受けて最新作の最後に配置されていたインストゥルメンタル曲「Get to the top」が炸裂し、4人の演奏はそのままセッションへと突入していく。こうした場面ではことにMISA(B)のベースのうねりが印象的だ。しかも今回のツアーでは、この位置に限らず随所にセッションパートが設けられていた。そこには単純に場面転換的な意味合いもあるはずだが、実際にそうしたパートに触れた時に感じさせられるのは、いずれもそれに連なる楽曲の発展形ともいうべき様相を呈している点だ。つまり演奏技術を見せつけることではなく、楽曲をいっそう表情豊かなものにしていくことを目的としているのだ。そして同時に感じさせられるのは、そうしたセッションパートに盛り込まれた要素が次なる楽曲に向けてのヒントにも繋がっていくのではないか、ということ。そうしたきわめてバンド然とした音楽的体質をBAND-MAIDは持ち合わせている。

ザクザクと空間を切り刻んでいくかのような「After Life」から、穏やかな空気感をまとった「Bestie」、さらには優しさに満ち溢れた「The One」へと曲が続いていくと、ふたたびセッションパートを挟みながら「Choose me」が爆裂。そうした緩急に富んだ流れを経ながら、ZEPP TOUR最後の夜は最終局面へと突入していく。2024年を振り返るトークパートを経たのち、SAIKIが「みんな、ラストスパート行けんのか!」と扇動の声をあげると、けたたましいほどのギターの高音に小鳩の叫びが同調する。最新アルバムにおいて曲調的にも歌詞的にもささくれだった攻撃性が印象的だった「Toi et moi」の登場だ。しかもそのまま「HATE?」に雪崩れ込んでいくという波状攻撃が展開され、フロアに渦巻く熱はいっそうの高まりをみせていく。しかもさらに、まさしく火に油を注ぐかのように「Unleash!!!!!」が解き放たれ、打ち上げ花火のように炸裂した「TAMAYA!」がフロアを揺らす。そんな熱い流れを受けながら最後に披露されたのは、最新作の幕開けを飾っていた「Magie」だった。どんな場面に配置されても華やかさを如何なく発揮しながら会場内に一体感をもたらすこの曲には、やはりクロージングというポジションも似合っている。


ただ、その「Magie」でこの夜が終わることはなかった。SAIKIが「ありがとうみんな。またお会いしましょう!」、小鳩が「BAND-MAIDでしたっぽー!」と呼びかけたのち、5人はステージ上から去ったが、ほどなくふたたびそこに姿を見せた。もちろんアンコールを求める声と手拍子が止まなかったことも、この想定外の再登場の一因ではある。ただ、それ以上に、終盤に差し掛かるパートで披露された「Choose me」に伴うセッション・パートにちょっとした綻びが生じていたことが、彼女たちのなかでは大きかったようだ。5人とも、今年最後のお給仕に悔いを残したくなかったのだろう。SAIKIの「みんな、欲しがりだなー!」という言葉に導かれながら、ふたたびそのセッションと同楽曲を披露するという異例の展開に、ご主人様お嬢様は出し惜しみのない声援を送っていた。そして小鳩が「2025年にお会いしましょうっぽ。BAND-MAIDでしたっぽー!」と最後の挨拶をすると、何故かAKANEはKANAMIをおぶってステージを後にしていった。その時点で、開演時から130分ほどが経過していた。


終演後にはスクリーン上で、2025年1月に配信シングルがリリースされ、その先には新作EPが控えていること、メイドの日にあたる5月10日から新たなツアーが実施されることなどが発表された。会場を後にする人たちの顔はとても満足げなものに見えたし、筆者自身も満ち足りた気分を味わえていた。しかも『Epic Narratives』という意欲と冒険心に満ちた作品に伴う壮大な物語は、年が変わってからも続いていく。まずは次なるシングルがどんな楽曲であるかが気になるところだが、2025年がいっそう盛りだくさんな年になることを期待し、このバンドのさらなる飛躍を信じながら、次なる展開を楽しみに待ちたいところである。

取材・文◎増田勇一
写真◎伊東実咲

セットリスト

2024年11月26日@Zepp Haneda Set list
1 Forbidden tale
2 endless Story
3 Shambles
4 Sense
5 Protect You
6 NO GOD
7 Play
8 Go easy
9 DOMINATION
10 Memorable
11 Letters to you
12 Brightest Star
13 Get to the top
14 After Life
15 Bestie
16 The one
17 Choose me
18 Toi et moi
19 HATE?
20 Unleash!!!!!
21 TAMAYA!
22 Magie
EN Choose me

ライブ情報

■BAND-MAID番外編お給仕(ライブ)
2025年2月3日 東京 LIQUIDROOM ebisu
2025年2月17日 東京 LIQUIDROOM ebisu
https://bandmaid.tokyo/contents/766655

■お盟主様限定(ファンクラブ限定)アコースティックツアー
2025年3月20日 BAND-MAID Billboard Live Acoustic Tour OSAKA
2025年4月13日 BAND-MAID Billboard Live Acoustic Tour TOKYO

■BAND-MAID TOUR 2025
第1弾開催日程
5月10日 東京 LINE CUBE SHIBUYA
5月17日 広島 CLUB QUATTRO
5月18日 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
5月25日 静岡 浜松窓枠
5月31日 新潟 LOTS
6月20日 大阪 ゴリラホール
6月21日 大阪 ゴリラホール
6月28日 宮城 仙台GIGS

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