【ライブレポート】 “和楽器バンド”として歩む「新章」

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和楽器バンドが、<REACT-新章->と銘打ったツアーを完走した。

◆ライブ画像

今年6月にユニバーサルミュージックとのグローバル パートナーシップ契約を締結した和楽器バンド。本格的な海外進出を視野に入れ、新たな一歩を踏み出した。

そんな彼らが掲げた「新章」という言葉。それは“和楽器バンドがもはや「特殊なバンド」ではなくなった”ということを意味するのかもしれない。和楽器バンドにとって1年半ぶりの本ツアーを見て、筆者はそう感じた。

いや、メンバーが8人もいること、尺八・津軽三味線・箏・和太鼓というパートが存在していること、鈴華ゆう子(Vo)と町屋(G&Vo)という男女2人がボーカルを務めること……そもそも一般的なスタイルのバンドではない。だがしかし、もう「和楽器とバンドが融合した、唯一無二のバンドです」という説明は必要なくなった。単に「和楽器バンド」というだけで十分に人々を魅了していける、そんな「新章」が始まったのだと感じたのだ。


もちろんそれは、“和楽器バンドが唯一無二ではなくどこにでもいる普通のバンドになった”、というわけではない。よこすか芸術劇場で行われたツアーファイナル公演も、彼らにしかできないライブであり、エンターテインメントであった。そして嬉しかったのは、このツアーで和楽器バンドが見せてくれたライブは、これまで彼らが歩んできた道の続きにあるものだったということ。

前向きで未来を予感させる「新章」という言葉だが、ある意味では「変わってしまうのではないか」とも思える。だが今回のツアーは、“変貌”ではなく、和楽器バンドの魅力を再確認すると同時に、よりスタイリッシュに、より歌の力を感じさせてくれる“進化”だった。

そう思った理由を考えるにあたり、少しライブを振り返りたい。荘厳なOverture〜ReAct〜にのせて組子の障子を模したステージセットが開くと、逆光に照らされて立つ8人。朝日を背に一歩を踏み出す、そんな決意を込めた光景に見えた。「和楽器バンドのライブへようこそ、行くぞ!」という黒流(和太鼓)の鬨の声には、「ああ、彼らのライブだ」と感慨深くなりつつも、これから見せてくれるステージへの期待が高まる。


まず1曲目「雨のち感情論」から、演出の美しさに驚かされた。星の映し出されたスクリーン、青いレーザー照明、それにファンのかざすペンライトの光が相まって、まさに歌詞の“君と夢見た銀河”の様相だ。そこから「天樂」「吉原ラメント」と、ボカロ曲のカバーから始まった和楽器バンドらしい2曲が続く。「吉原ラメント」での遊郭にいるような艶っぽい演出も美しかったのだが、この2曲で感じたのはこれまでよりもぐっと8人の音が聴きやすくなったこと。

これだけの楽器と音数がありながら、しかも型破りな形式で転調の多いボカロ曲をカバーしてもなお聴きやすいのだから、メンバーの奏者としての技量は推して知るべし。他のバンドでは聴けない尺八とギターのアンサンブルや強弱を自在に操る黒流の和太鼓も耳を楽しませてくれるし、亜沙(B)と蜷川べに(津軽三味線)の華のあるステージングも目が離せない。

和風のバンドというと艶やかさやツヤっぽさを想像してしまいがちだが、それだけではないのが和楽器バンド。「蜉蝣」「Strong Fate」ではロックバンドとしての一面を見せてくれる。激しさを孕んだこの2曲を、あえてゆらりゆらりと舞いながら妖しげに歌う鈴華ゆう子。町屋のテクニカルなギターと山葵(Dr)の轟音ドラムが、その世界を彩っていく。そこに神永大輔(尺八)の激情を含んだ音色と、いぶくろ聖志(筝)の爪弾く繊細な音が乗るものだから雰囲気は最高だ。


もちろん“和”の良さを詰め込んだ楽曲は彼らの真骨頂。スクリーンに投影された障子に雪景色が透けて見える演出で披露された「細雪」、舞い散る桜を背に歌われた「なでしこ桜」。こういった和のメロディーを感じさせる楽曲は、和楽器バンドの面々だからこそ真に奏でられるものだ。ライブ終盤での「暁ノ糸」もそう。“ずっとこの音に浸っていたい”と、何度も心がぎゅっと締め付けられた。たまらなく幻想的で、切なく、儚く、凛として、美しい。ロックな一面、雅な一面、エモーショナルな一面、このバンドは一体どれだけの顔を持っているのだろうか。

ただ楽曲を披露していくだけではなく、「鏡花水月」では各楽器のソロや鈴華ゆう子の詩吟調の歌唱も堪能できる。一つ一つの音色が美しく、8人合わさった時の音とはまた違う魅力を感じさせてくれた。結成時の「和の良さを伝えていきたい」という和楽器バンドの思いは、しっかり伝わっている。それに負けない洋楽器隊の圧倒的な演奏力も素晴らしい。また、「極限双打」では黒流の和太鼓と山葵のドラムが共演。打楽器が2つ存在している和楽器バンドならではのショータイムだ。観客とのコールアンドレスポンスを挟みながらも、怒涛の打ち合いが繰り広げられた。


また、和楽器バンドの魅力のひとつである飾らないMCも健在。ほぼアドリブで進行するMCでは、このツアーを振り返っての思い出が語られる。町屋に代わって山葵がめちゃくちゃ飲むようになった話や、神永大輔がある公演で尺八を入れた荷物を全て忘れてしまった話など、自由すぎるトークが繰り広げられた。

2月に行われる集大成を見せるライブ<大新年会>が両国国技館での開催であることに寄せて亜沙が「ま、俺らは今回相撲を取るんですけどね。」というと、黒流が大相撲の寄せ太鼓を完全即興で再現してみせる場面も。誰かが喋れば誰かが突っ込む、仲の良さが伺えるシーンだ。鈴華ゆう子は「ツアーを重ねてお互いを知る。6年目、まだ知らないことが多いんです。バンド感が上がっていくのがツアー」とも語った。長くバンドを続けていくことすら大変な時代にあって、このメンバーたちは楽しく活動していると思うと、こちらまで嬉しくなる。

そんなMCを挟んでライブ終盤には、老若男女のファンが集う和楽器バンドにぴったりの楽曲も披露された。タオルを回して一体感を生む「雪影ぼうし」に、明るく楽しい「あっぱれが正義。」だ。着物を召した婦人も、鈴華ゆう子と蜷川べにに野太い歓声をあげていたロックなお兄さんも、子どもたちも、みんながひとつになって笑顔を見せていたのが印象的だ。こういった楽曲があるからこそ、様々な層にファンが生まれるのだと思う。そしてアンコールでは挑戦的な新曲「Ignite」、大人気曲「千本桜」も披露。


つまりこの日は、聴きどころも見どころも盛りだくさんで、和楽器バンドのいいところを詰め込んだライブだったと言える。演出で見せ、多彩な楽曲でファンを魅了し、時にはとことん切ない思いにさせ、楽しませ……ここには書ききれないくらいの魅力にあふれていた。これだけのライブをしているのだから、もはや「和楽器とバンドが融合した、唯一無二のバンド」という冠はいらない。「和楽器バンド」というひとつのバンドとして、素晴らしいのだ。これまで積み重ねてきた経験をしっかりとモノにして、彼らはこれから自分たち自身を武器にし「新章」を歩み始める。

最後のMCで鈴華ゆう子が語る。「私たちは楽しみというものを提供し続けなければいけないといつも責任感のように思っているんですが、移籍の前の五年間というのはとにかく私たち目の前の毎日を精一杯走り抜ける感じだった。これからはもっともっと“音楽”したいなと思っています。突っ走って“目の前にあることをやらなきゃ”じゃなくて、もっとしっかり“音楽”をして皆さんの元にしっかり届けていきたい」と。

これは「新章」への宣言であっただろう。1年半という期間を経てこの言葉を聞けたこと、進化し続ける素敵なバンドに出会えたこと、そして今日この日に新しいステージに立ち会えたことが、嬉しい。これからもまた、彼らが奏でる音楽を聴きたい。

取材・文◎服部容子(BARKS)
写真◎上溝恭⾹ / Kyoka Uemizo

セットリスト

M0.Overture〜ReAct〜
M1.雨のち感情論
M2.天樂
M3.吉原ラメント
M4.蜉蝣
M5. Strong Fate
M6.細雪
M7.鏡花水月
M8.月に叫ぶ夜
M9.なでしこ桜
M10.シンクロニシティ
M11.極限双打
M12.雪影ぼうし
M13.暁ノ糸
M14.あっぱれが正義。
アンコール
EN1.Ignite
EN2.千本桜

CONCEPT EP「REACT」

2019年12月04日(水)リリース

■初回限定映像盤(DVD付)
UMCK-7042 ¥2,500(税抜)
DVD収録内容
・Behind The Scenes of REACT 〜Recording Documentary〜
REACTのレコーディング現場に密着したドキュメンタリー映像
・Ignite Music Video
・Ignite Music Video Making

■初回限定ライブドキュメンタリーブック盤(ライブドキュメンタリーブック付)
UMCK-7043 ¥2,200(税抜)
DVDトールケースサイズ エクストラパッケージ仕様
REACT TOURに密着したライブドキュメンタリーブック(64P)

■CD Only盤(通常盤)
UMCK-1645 ¥1,400(税抜)
新曲4曲+新曲のInstrumental4曲を収録。
※Instrumental収録は、CD Only盤のみになります。

[CD収録曲]
M1. Break Out
M2. Ignite
M3. IZANA
M4. 情景エフェクター
M5. Break Out - Instrumental -
M6. Ignite - Instrumental -
M7. IZANA - Instrumental -
M8. 情景エフェクター – Instrumental -
※M5〜M8は、CD Only盤(通常盤)のみ収録

・全形態共通封入特典
トレーディングカード全10種類のうち1枚ランダム封⼊
※初回プレス分のみ

・チェーン別オリジナル特典
TSUTAYA:A3ポスター
Amazon:A5ビックポストカードA
楽天:A5ビックポストカードB
タワーレコード:ICカードステッカー
HMV:アナザージャケット
UNIVERSAL MUSIC STORE:生写真1枚(全8種類のうちランダムで1枚)
(初回限定映像盤/初回限定ブック盤/CD Only盤の3形態セットで生写真8枚セット) 
その他店舗・ECサイト:ポストカード
※特典は先着となり数に限りがあります。
※一部取扱いのない店舗・オンランインショップもございます。詳しくは各CDショップにてご確認ください。

・和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT-新章-
TOUR会場限定予約特典:B2告知ポスター+チェーン別オリジナル特典 
※TOUR会場でのご予約はダブル特典となります。
※特典は商品と一緒にお渡しとなります。
※チェーン別オリジナル特典の内容は会場でご確認ください。

<和楽器バンド Premium Symphonic Night Vol.2 ライブ&オーケストラ〜 in大阪城ホール2020>

2020年2月16日(日)大阪・大阪城ホール
OPEN 16:00 / START 17:00
▼チケット
一般指定A席 ¥8,800(税込) / 一般指定B席 ¥8,000(税込) / 着席指定席 ¥8,800(税込) / BOX着席指定席 ¥10,000(税込)
※3歳以上有料/2歳以下入場不可(ただし2歳以下の場合でも膝上鑑賞可能な場合は無料で入場可)
※当日チケット料金:一般指定A席/着席指定席 ¥9,800(税込) / 一般指定B席 ¥9,000(税込) / BOX着席指定席 ¥11,000(税込)
■着席指定席について■
小さなお子様、ご年配のお客様、ファミリー、その他ライブを着席してご覧になりたいという皆様の為に、ご用意させていただく「着席観覧」用のお席です。
*ライブ中は必ず着席していただけますようお願いいたします。
*ステージからの近さを保証する座席ではございません。
*予定枚数に達し次第、終了となります。
■BOX着席指定席■
※スタンド中央前方のスペシャルシートになります。
枚数制限:お一人様 1公演につき4枚まで
[問]グリーンズコーポレーション 06-6882-1224

<和楽器バンド 大新年会 2020>

2020年2月29日(土)東京・両国国技館
open16:00 / start17:00
2020年3月01日(日)東京・両国国技館
open15:00 / start16:00
▼チケット
(1) 一般指定席 ¥8,800(税込) / 当日 ¥9,800(税込)
(2) 着席指定席 ¥8,800(税込) / 当日 ¥9,800(税込)
※3歳以上有料/2歳以下入場不可(ただし2歳以下の場合でも膝上鑑賞可能な場合は無料で入場可)
※枚数制限:お一人様 1公演につき4枚まで
■着席指定席について■
小さなお子様、ご年配のお客様、ファミリー、その他ライブを着席してご覧になりたいという皆様の為に、ご用意させていただく「着席観覧」用のお席です。
※ライブ中は必ず着席していただけますようお願いいたします。
※ステージからの近さを保証する座席ではございません。
※予定枚数に達し次第、終了となります。
[問]ディスクガレージ 050-5533-0888

【オフィシャルファンクラブ『真・八重流』チケット会員先行予約】
https://wagakkiband.com/contents/277865

◆和楽器バンド オフィシャルサイト
◆和楽器バンド ユニバーサル ミュージック アーティストページ
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