【ライブレポート】<千歌繚乱 vol.21>、ソロ&ユニットだからこその魅力

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BARKSが出演者をセレクトし開催されているヴィジュアル系イベント<千歌繚乱>。

◆ライブ画像

21回目を迎えた今回は、KØU(ex.CLØWD)、LAPLUS、怪人二十面奏、新井崇之(LIPHLICH)、WING WORKSという面々が集まり、8月5日に渋谷REXで開催された。

顔ぶれからわかるとおり<千歌繚乱 vol.21>は、ソロアーティストや2名からなるユニットなどにスポットをあてたイベントライブとなった。ソロアーティストやユニットは、異なる指向性を持ったメンバーが集まっているバンドよりも表現したい世界観や伝えたいメッセージなどが明確なことが特色といえる。そのため、開演前からいつも以上にさらに濃い<千歌繚乱>になるだろうなと思っていたが、予想が外れることはなかった。


先陣を切ってステージに立ったKØUのライブは、緊迫感を湛えた歌中とアッパーなサビを配した「the Fuck’n marching hymn」で幕を開け、ダンサブルな「Worry?」に移行する流れからスタート。ステージ中央に力強く立ち、「生ぬるいライブをする気はねぇからな! 声、聞かせてくれ!」とアジテートしながらパワフルな歌声を聴かせるKØUは強い存在感に溢れている。キレのいいサウンドやサポート陣(上手ギターは、元CLØWDの冬真)のフィジカルなパフォーマンスなども相まって、ライブが始まると同時に強くステージに惹きつけられた。

その後もテンションを落とすことなく、アップテンポの「Heads-up」やR&Rテイストを活かした「Fly High」、煌びやかな「ユメヒト」を相次いでプレイ。“激しさ”という芯を持ったうえで幅広さを見せる辺りはさすがだし、深みのある低音域から突き抜けるようなハイトーンまで自在に操るKØUのボーカルは実に聴き応えがある。KØUが放出するエネルギーに牽引される形でオーディエンスのボルテージも高まり、場内は熱い盛り上がりを見せた。

ソロ活動を始めたばかりとは思えない、完成度の高いライブを披露してみせたKØU。初期衝動に溢れたステージや楽曲は本当に魅力的で、彼が自身の目指す方向性に自信を持っていることもうかがえた。KØUがソロ・アーティストとしても篤い支持を得ていくことは間違いなさそうだ。

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暗転した場内にサイバーなオープニングSEが流れ、行来(Vo)の「始めようか、渋谷! 最高に楽しい夜にしようぜ!」という熱い声が響き、LAPLUSのライブは「Mr.PRAYER」から始まった。力強く疾走するサウンドと行来の情熱的なボーカルの取り合わせは心地好さに溢れていて、オーディエンスは早くもタオル振りや折り畳みといった熱いリアクションを見せる。オープニング1曲で場内を一つに纏めたことには、圧倒されずにはいられなかった。

その後はダークな歌中とダンサブルなサビの対比が印象的な「梟」や、キャッチーなホラーテイストを配した「GHOST SHIP」、ラテンっぽい味わいの「HIDE&SEEK」などを披露。昨年11月のメンバー脱退を受けて、現在のLAPLUSは行来とsatoshi(Dr)の2人体制で活動しているわけだが、メンバー脱退によるパワーダウンは全く感じさせない。全身を使ったステージングを展開しながら情熱的な歌声を聴かせる行来と、クールな表情でタイト&テクニカルなドラミングを決めまくるsatoshiは貫禄に満ちているし、サポートメンバーが織りなす上質なプレイも光っていた。


プリミティブなロック感とポピュラリティーを絶妙にバランスさせたLAPLUSのあり方は本当に魅力的だ。行来とsatoshiの2人体制でいくにせよ、彼らの指向性に賛同するメンバーを加えるにせよ、LAPLUSとしての道を突き詰めていってほしいと思わされる上質なステージだった。

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マコト(Vo)とKEN(G)からなる怪人二十面奏は、サポート陣も含めて軍服をモチーフにした衣装でステージに登場。妖しさを放ちながら突き進む超高速チューンの「消心叫奏シネマ」を皮切りに、レトロテイストを活かした「G,J クローバー連続殺人事件」や、切迫感に溢れた「狼」、コアとレトロを融合させた「劣等感」などを相次いで聴かせた。

刺々しさを感じさせる暗いテイストでいながら極端にウェットではない楽曲や、アブナさを振りまいて歌うマコトとミステリアスなKENが生み出すケミストリー、シアトリカルな味わいなどが一体になった怪人二十面奏の世界観は強固な“病みつき感”を備えている。“爽やか”や“ロマンチック”といった味わいは皆無で、ライブが進むに連れて闇が深化していく彼らのライブは観飽きることがなかったし、マコトの心に突き刺さってくるボーカルやKENのカラフルなギターワーク、サポート陣の安定したプレイなども楽しめた。オーディエンスの反応も上々で、場内はライブを通して大いに盛り上がっていた。


怪人二十面奏のライブを観て強く思ったのは、コンセプトが明確かつわかりやすいアーティストは説得力があるなということだ。的を絞ったうえで、そこに磨きをかけて良質なものを揃えていることも彼らの強みといえる。一色で染めたライブでいながら物足りなさを感じることはなく、“また見たい!”と思わせるポテンシャルの高さが光っていた。

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新井崇之のライブはサポート陣がファンキーなサウンドを奏でる中、ハットを被り、キラキラと輝くメタルフロントのゼマイティスを抱えた新井が姿を現し、のっけから速弾きを決めるという印象的なシーンからスタート。その後は心地好いグルーブをフィーチュアした「No.6」や、爽快感に溢れた「tadaima」、“Wow Wow”という合唱を配したダンサブル&アッパーな「m.s.n」といった表情豊かなインストナンバーを、たっぷりと聴かせてくれた。

キャッチーなメロディーパートをテイスティーに奏でつつ、ソロパートでは滑らかな高速フレージングやスウィープ・ピッキング、タッピングなどを織り交ぜたテクニカルなプレイを披露。いわゆる“弾きまくり系”でいながら常に歌心に溢れているのはさすがの一言だし、感情を露わにして熱くプレイする新井の姿も実にいい。ワウやPUの切り替えを使った細やかなトーン・チェンジなども含めて、見どころの多いライブで大いに楽しめた。

ライブ中のMCで新井が語った「歌の代わりに、ギターが歌ってくれる。僕が伝えたいことはギターの音で感じてください」という言葉どおり、様々な感情や情景が浮かんでくる彼の楽曲は魅力に富んでいる。なにより、“みんなで楽しもう!”という気持ちを押し出したライブをしているのは大正解といえる。笑顔で溢れた場内を見て、インストゥルメンタルに馴染みのない人も彼のライブを楽しんでいることがはっきりと感じられた。

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多彩かつ濃いライブに場内がいい雰囲気で盛りあがる中、華やかなオープニングSEが流れ、RYO:SUKEの「さぁ、始めようか!」という声が響く。ひと際熱い歓声があがる中、トリを飾るWING WORKSのライブはヘヴィネスと洗練感を融合させた「VAD†MAN」から始まった。近未来的なイメージの衣裳を身に纏って、熱い歌声を聴かせるRYO:SUKEの姿に目を奪われずにいられないし、圧倒的な重厚感とソリッドさを併せ持ったサウンドは気持ちを引きあげる力を放つ。ライブが始まると同時に、渋谷REXの場内はWING WORKSの世界へと染まった。

その後はサイバー&ラグジュアリィな「未完成サファイア」や、和テイストをあしらった「不死鳥-FENIX-」、アッパー&ワイルドな「SiLiConE」などをハイエナジーにプレイ。スクエアなEDMテイストと生々しいバンド・サウンドを巧みにマッチングさせたサウンドは魅力的だし、RYO:SUKEが「不死鳥-FENIX-」で日本刀を手にパフォームしたり、ライブ後半では鮮やかな色彩を放つLEDジャケットに着替えたりと“魅せること”を重視したアプローチも見事。RYO:SUKEの世界観を構築する能力の高さを、あらためて感じることができた。


“電脳ワンダーランド感”を押し出した「Welcome to TRICK DWATH LAND」で場内の熱気をさらに引き上げた後、RYO:SUKEの「太陽がある限り歌い続けます」という言葉と共に「IKAROS」を披露。激しいライブをエモーショナルなナンバーで締め括る構成も見事に決まって、客席からは合唱が湧き起こる。イベントの大団円にふさわしい心地好い余韻を残して、WING WORKSのライブは幕を降ろした。

活動から7年を経た現在のWING WORKS は、非常に面白い存在といえる。RYO:SUKEが標榜してきた非日常感と彼の生き様が生むリアルさが絶妙に混ざり合って、独自のテイストを生み出しているからだ。今のRYO:SUKEは間違いなく、他では味わえないものを表現している。最新アルバム『ENTITY』で見せたWING WORKSと少女-ロリヰタ23区-を融合させた音楽性がよりRYO:SUKEにフィットしていることを感じたこともあり、今後の彼も本当に楽しみだ。

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というわけで、今回の<千歌繚乱>も観応えがあって楽しめた。ソロアーティストよりもバンドが好きなリスナーは多い気がするし、個人的にもバンドに惹かれる。メンバーのケミストリーや、複数の個性の折り重なりから生まれるチーム感が好きだからだ。だが、今回の<千歌繚乱>はサポートメンバーにもバンド感を押し出した出演者が揃っていたし、ステージに立っているメンバーの役割分担がはっきりしているため、“俺が、俺が”というメンバー揃いでゴチャついてしまっているバンドよりも良質なバンド感を備えていることが印象的だった。

そして、冒頭にも書いたように、表現したいものの明確さは大きな魅力になっていた。そういうところで、今回の<千歌繚乱>は目からウロコだったというか、ソロアーティストやユニットに対する認識をあらためる機会になった。いいソロアーティストやユニットのライブは、バンドに引けを取らない魅力に溢れている。

もうひとつ、<千歌繚乱>というイベント自体のテーマ設定やアーティストの選択も絶妙だ。毎回充実感があるし、今回も歌物の中にギターインストの新井崇之を入れ込むという面白さがある。これまで<千歌繚乱>は東京公演のみだったが、10月には初めて東名阪ツアー<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>も開催される。これを機に地方のヴィジュアル系フリークにも<千歌繚乱>に足を運んでいただければと思う。

取材・文◎村上孝之

■<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>チケット一般発売中
8月10日(土)12:00〜各公演前日まで
名古屋公演:https://eplus.jp/sf/detail/3015650001-P0030001
大阪公演:https://eplus.jp/sf/detail/3011420001-P0030001
東京公演:https://eplus.jp/sf/detail/3011430001-P0030001

<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>

■名古屋公演
日時:2019年10月10日(木)開場 16:30 開演 17:00
出演:AXESSORY / 極東ロマンス / K / JILUKA / Develop One's Faculties / breakin’ holiday
会場:名古屋ell.FITS ALL
料金:【先行チケット】4,000円(整理番号A)【一般チケット】4,200円(整理番号B)【当日券】4,500円※ドリンク代別途

■大阪公演
日時:2019年10月11日(金)開場 16:30 開演 17:00
出演:AXESSORY / 極東ロマンス / K / JILUKA / Develop One's Faculties / breakin’ holiday
会場:大阪RUIDO
料金:【先行チケット】4,000円(整理番号A)【一般チケット】4,200円(整理番号B)【当日券】4,500円※ドリンク代別途

■東京公演
日時:2019年10月22日(火・祝)開場 15:30 開演 16:00
出演:AXESSORY / K / JILUKA / Develop One's Faculties/ defspiral / breakin’ holiday / THE MICRO HEAD 4N'S
会場:高田馬場AREA
料金:【一般チケット】4,500円(整理番号B)【当日券】4,800円※ドリンク代別途

チケット一般発売
8月10日(土)12:00〜各公演前日まで
名古屋公演:https://eplus.jp/sf/detail/3015650001-P0030001
大阪公演:https://eplus.jp/sf/detail/3011420001-P0030001
東京公演:https://eplus.jp/sf/detail/3011430001-P0030001

主催:BARKS(ジャパンミュージックネットワーク株式会社)
制作:rivabook

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