【インタビュー】アングラV系バンド・怪人二十面奏、ニューALは「自分にとって最後の作品になってもいい」
8月5日に渋谷REXにて開催されるBARKS主催イベント<千歌繚乱vol.21>に、怪人二十面奏が出演する。
◆ニューアルバム 試聴動画
怪人二十面奏は、“頽廃芸術”を掲げアンダーグラウンドな匂いを漂わせるヴィジュアル系バンド。様々なスタイルのバンドがいるヴィジュアル系シーンでも、異色の存在だ。
そんな彼らは6月26日に2年ぶりのフルアルバム『聲命力』をリリースする。<千歌繚乱vol.21>でも披露されるであろう本作、そして彼らが今考えていることについて、インタビューを行った。
※本記事は8月5日に渋谷REXで開催される<千歌繚乱 vol.21>において、来場者限定で配布される「千歌繚乱 ARTIST BOOK」掲載のインタビューの一部を事前に公開するもの。「千歌繚乱 ARTIST BOOK」では各出演者への一問一答アンケートなど、より深い内容が掲載されている。
◆ ◆ ◆
──まずは結成のいきさつを教えてください。
マコト(Vo):もともと以前バンドを一緒にやってたんですよ。そのバンドを解散して3年くらいかな? お互い別々に活動してたんですけど。そのバンドではKENさんがメインで曲、僕が歌詞を書いてて、要は僕らは中心人物2人だったんですよ。10年くらい一緒にやってきた、切っても切り離せない関係性というか。本来であれば同じメンバーで新たにバンドをやるとなったら、やってきたことプラスアルファ、幅を広げる要素を入れると思うんですけど、怪人二十面奏では今までにやってきたことの中でも“核心”になっている部分……暗く、濃く、ドロドロした部分だけを突き詰めた、もっと幅を狭くした音楽をやろうと思ったんです。やっぱりアンダーグラウンドな世界が好きなので。そういったバンドをやる上でKENさんが必要だなと思って声をかけさせてもらいました。
──音楽性を絞るって大変なことですよね? 絞られた中でいろんな表現をしなければならないでしょうから。
KEN:確かに一点集中っていうか、限られた中でメリハリを持っていろいろな曲を作っていかないといけない大変さはあるんですけど。まあでも核心を突くところをズバッとやったほうがいいかなと思って。
──怪人二十面奏での活動は約4年になりますが、結成時から変化した部分はありますか?
マコト:やっぱり昔僕らがバンドをやってた頃とはシーン全体の活動のスタンスが全然違ってるから、その時代の流れに合わせた活動をしないといけないわけで。今までと同じように活動してても変わっていっていると思うし。
──そういう意味では音楽性も時代の流れで多少変わってはいるんですか?
マコト:いや、音楽性だけは変わらないですね。正直、今僕らがやってることが古いのか新しいのかわからないんですよ。もしかしたら新し過ぎてお客さんがついてきてないのかもしれないし、古いから単純にお客さんがついてきてないのかもしれないし。そこでシーンの流れに合わせて音楽性をコロコロ変えてしまうのは違うなと。それに、やりたくないことはやりたくないし。音楽性だけは変わらずにやっていれば、いつか怪人二十面奏の音楽がハマる時代が来るかもしれないと思ってずっとやってますけどね。まあ今のところ来てないんですけどね(笑)!
──そうですか(笑)!? 今作の『聲命力』は、“怪人二十面奏ってこんなカッコいいバンドだったの!?”と改めて痛感させられた素晴らしい作品でした。1stアルバム『怪人二十面奏』から2年ぶりのリリースになりましたね?
マコト:僕らはアルバムに対してすごく強いこだわりを持ってて。アルバムを作るとなったら、音楽人生も含めて、“これが自分にとって最後の作品になってもいい”と思って作るので、できるだけその時に出せるものを全部詰め込もうと。だから毎回ベストアルバムだと思って作るんですね。始動から2年間の活動の集大成が1stアルバム『怪人二十面奏』で、それから2年間の集大成、すなわち始動から入れると4年間の集大成が今回の2ndアルバム『聲命力』なんですよ。よく“名刺代わりの1枚です”って言葉聞くと思うんですけど、“名刺”というより “これがすべてです!”っていう。2019年6月現在の僕らの全部ですね。すべてを出し切った後なんで今は空っぽです、2人とも(笑)。
マコト:人間の醜い部分や、生と死をバンドのテーマにしているので、それは当然今作のテーマにもなっているんですけど。平成から令和に変わる時に作詞をしてたこともあって、“時代”っていう言葉はよく出てきてますね。自分がバンド活動をしてる中で、時代が変わるなんて今後ないかもしれないから、ここは乗っとかないとなって(笑)。ただ、僕らって平成から令和にかけて活動してるんですけど、バンドとしては昭和のイメージを残してるんで。そこは世界観を作る中で意識してる部分ではあるんですけどね。
KEN:特にアルバムの“核”になってるのは、最後の「生命力」という曲です。最初にまずマコト君から“生命力”っていうテーマがきて。当然自分も共感するテーマだし、それに見合う曲を作りたいなと。さっきマコト君が言ってたみたいに、僕も“これが最後の作品になってもいい”という気持ちで作ってるんで。トータル4分の中にいろんな要素を詰め込んで、集大成の1曲にしたいなと思って作りました。あと、先行シングルとしてリリースした「ブラックアウト ヒステリーアワー」はこのアルバム制作のきっかけでもあったんで、その曲もすごい気持ちを込めて作りましたね。昔から怪人二十面奏にはシャッフルの曲が多いんですけど、またちょっと違ったニュアンスにしたいなと思って。すごくこだわりました。
──どの曲もそうですが、1曲の中にいろいろな要素や展開を含んでいて、それでいてテンポ感とか流れがいいから一気に聴けてしまうんですよね。
KEN:雰囲気はちょっと難解に感じるかもしれないんですけど、聴いてみるとすんなり入ってきて覚えやすい、っていうところはすごく意識しますね。
マコト:メロディに対して、まあ絶妙な歌詞のハメ方ですよね(笑)。
──そうなんですよ! 本当に気持ちいいほどメロディと歌詞がハマっていて。
マコト:「近代的極東唱歌」という曲は、“1945”という数字を歌詞にハメてて。普通はあんまりしないんじゃないかなって。僕は作詞を“ものづくり”と考えてて、パズルとかプラモデルを組み立てるみたいな感じで作ってるんですよ。
──曲にもよりますが、早いテンポのメロディにもすごく言葉を詰め込んでますよね。
KEN:原曲のメロディはもっと音符の数が少なくて、“これだったら何とかブレスできるかな”っていう範囲で作ってるんですよ。そこからさらに言葉の数が多くなる部分があるんで、歌うのがもっとしんどくなってるんじゃないかなって(笑)。
マコト:そのほうが気持ちいいと思うし。とにかく言葉を詰めたがりなんですよね。
──また、マコトさん独特の言葉選びや漢字選び、表現が面白くて。
マコト:そうですね。これでもかみ砕いて書いてるんですよ。一時期プロデューサーさんが入って活動していた時に、その人がむちゃくちゃ歌詞にこだわる人で“難しいことを言うな。簡単シンプルに伝わるように、意味のあることを言え”って言われてて。僕はどっちかというと意味のない、わけわからんことを言うタイプだったんですが。今も、最初はもうちょっとややこしい感じで書くんですよ。そこから“これちょっと意味わからんな”っていうところをわかりやすい表現に変えたりしたりしてますね。
──聴き手としても、難しい漢字を調べて意味を知ることで歌詞の世界が広がったり……というところも面白かったです。
マコト:そう言ってもらえるのはうれしいですね。
──KENさんのギターに関しては、“このギターの音とプレイだから、この雰囲気が出ているんだろうな”と思う部分がすごくあったんですよね。曲作り同様、やはり音やプレイには相当なこだわりを持っていますか?
KEN:いや、普通のギタリストより全然ないです。
──そうなんですか!?
KEN:別にリードの音がギターじゃなくてシンセでも打ち込みでもいいんですよ。
マコト:彼は考え方が柔軟なんですよね。
KEN:自分の中でギターを持ってやるのが一番カッコ良く観せられると思ってるのと、一番は“曲を聴いてもらいたい”っていうだけなんです。
マコト:歌に関してもそれは同じで、“この部分がいいからこの部分を聴け!”っていうのはないですね。全体を通して聴いてくださいっていう。それよりステージングとかキャラクターを観てくれっていうほうが強いですね。
──そうなると、ライブですね?
KEN:そうですね。自分たちが作った曲で喜んでくれたり、楽しんでくれたり、泣いてくれたり……そういう姿を見るためにやってるっていうか。『聲命力』もまだライブでやってない曲があるんで、お客さんがどういう反応をしてくれるのか楽しみなんですよね。
──6月30日の横浜Music Lab.濱書房からアルバム発売&四周年記念ワンマンツアーが始まりますね!
KEN:今回のアルバムが中心にはなるんですけど、全5公演あるのでいろんなライブができるかなと。
マコト:僕らのスタンスとして、同じツアーでもセットリストは毎回バラバラなんですよ。会場によって当然、雰囲気や広さも違うし、自分らとお客さんの視界も違うし。だったら会場毎にセットリストを変えようと。一番最後にやった曲を、次のライブでは1曲目にやることもあるし。1本1本違うほうが“次、どんな曲やろ?”って常にワクワクがあって面白いので。
──ファイナルは7月25日、TSUTAYA O-WESTで行われますね。
マコト:O-WESTって、ヴィジュアル系シーンにとっては一番最初の目標であったり、1つの壁だと思ってて。今までのバンドでは何度もやってきたんですけど、怪人二十面奏では頑なにやろうとしなかったんですよ。言うても去年、東京キネマ倶楽部でやったり新宿ReNYでやったりしてるんですけど、WESTってちょっと違うなと思ってて。やろうと思えばできるんですけど、ちゃんと意味のあるWESTをしたいなと思ったら、4年かかったんですよね。たとえ数字として結果が出なかったとしても、バンド的にはもうWESTでワンマンをやってもいいだろう、と今回の2ndアルバムを作って思えたので。
KEN:WEST以降も実際にスケジュールが入ってるし、その後のことも考えてるんですけど、WESTでどんな気持ちになれるかっていうのがすごく重要だと思ってて。それぐらいの想いがありますね、最高傑作だと思えるアルバムが作れた後だけに。
マコト:8月5日に<千歌繚乱>の出演も決まってるんですけど。気持ち的には7月25日のO-WESTがダメだったら、そのまま僕は実家に帰ろうかなって(全員爆笑)。だから8月5日出られるかどうかわかんないです!
──それは困りますっ(笑)!。それくらいの気持ちでO-WESTに挑むと。
マコト:今までも毎回、ワンマンのファイナルをやる度に言ってきてるから嘘臭く聞こえるかもしれないですけど(笑)、まあ今回は勝負やと思ってますね!
──今お話に出ました、8月5日に渋谷REXで開催される<千歌繚乱>ですが。無事に出演してくださいね……?
マコト:これはね、出演します!怪人二十面奏かどうかはわからないけど(笑)。僕ら2人は必ず行きます!
──対バンのメンツはどうですか?
マコト:LIPHLICHとの絡みはちょいちょいあるんですけど、新井(崇之)くんソロは初めてですし、RYO:SUKEくん(WING WORKS)も結構久しぶりだし。比較的絡みのない人たちですね。逆に、絡みのない人たちとできるっていうのはすごいありがたいし、うれしいですね。
KEN:仲のいいバンドの人たちとのイベントって楽屋から楽しかったするんですけど、それだけでは生まれないものもあるし。やっぱりこう一番カッコいいバンドと思われたいっていう意識もあるから。だからWESTで最高のライブをして、自信を持った状態で<千歌繚乱>に臨みたいですね。
マコト:ワンマンの直後って結構テンションが高いので。しかもね、REX自体あんまり出たことないので。新鮮なところでできるのも楽しみやし。頑張りたいなと思います。
取材・文◎牧野りえ
◆ ◆ ◆怪人二十面奏が出演する<千歌繚乱vol.21>は、8月5日(月)渋谷REXにて開催。チケットの購入は◆コチラから。
<千歌繚乱 vol.21>
会場:渋谷REX
出演:新井崇之(LIPHLICH)/ WING WORKS / 怪人二十面奏 / KØU / LAPLUS
チケット:
【先行抽選受付】
6月3日(月)12:00~7月18日(木)16:00
チケット購入ページURL:[チケットデリ] http://ticket.deli-a.jp/
【一般先着受付】
7月19日(金)12:00~8月4日(日)
チケット購入ページURL:[イープラス] https://eplus.jp/sf/detail/2950490001-P0030001
主催・制作:BARKS(ジャパンミュージックネットワーク株式会社)
『聲命力』
BDBX-0059 ¥3,200(税抜)
1.犯行声明 -インストルメンタル-
2.ダムド
3.可不可
4.G,Jクローバー連続殺人事件 -新録-
5.近代的極東唱歌
6.狼
7.ヲルガン坂に見る夢は -新録-
8.明日へ -新録-
9.砂の街
10.ブラックアウト ヒステリーアワー
11.噫無情 -新録-
12.生命力
<怪人二十面奏 単独公演巡業二〇一九「汎幸聲命」>
2019年7月7日(日)新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2019年7月14日(日)心斎橋FANJ
2019年7月15日(月・祝)奈良NEVER LAND
2019年7月25日(木)TSUTAYA O-WEST
開場/開演:17:00/17:30
7/25 渋谷のみ18:30/19:00
料金:前売り¥3,800/当日 ¥4,800 ※1DRINK別途
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