【インタビュー】サカノウエヨースケ、永遠に光り輝く青春のJ-POPへの愛が結実した新曲「抑えきれない僕らのJ-POP」
■このジャンルレスな4曲が僕が今持っているボキャブラリー
■いろんなものを飲み込んでようやく自分の曲を作れるようになった
──そもそも、ヨースケさんの思うJ-POPとは?
ヨースケ:J-POPは「日本語で歌われているもの」という定義です。今回8センチCDのコレクターの方とお話しする中でたどり着いた答えでもあるんですけど、今は日本語オンリーのDJイベントでDJ和さんとかが活躍されていて、そこでJ-POPという冠がつく中の楽曲は、日本語で歌われていれば電気グルーヴもTMネットワークも、Mr.Childrenもゆずもジャンルは一切関係ないんですね。とはいえ僕は小さい頃、ボン・ジョヴィはJ-POPだと思っていたんですけど。
──あはは。なぜでしょう。
ヨースケ:小学校の頃にめちゃくちゃ流行っていて、普通にMr.Childrenやオリジナルラヴと同じ棚にボン・ジョヴィもあったんです。町にCD屋さんが一軒しかない田舎で育った自分からすれば、ボン・ジョヴィはJ-POPというくくりだったんです(笑)。J-POPという名のもとに日本語で歌われている曲でさえあれば、どんなジャンルも飲み込めるものだと思うので、定義としては“日本語で歌われていればJ-POP”という、便利な言葉ではあると思うんですけどね。
──おそらく発生は90年代初頭で、J-WAVEが言い出したというのが定説になっていますね。それ以前は歌謡曲、アイドルソング、シンガーソングライター系はニューミュージックとか呼ばれていたり。小宮さんが坂本九さんを挙げられてるのは、J-POPと呼ばれるはるか以前の曲ですけど、遡ってそう呼ぶのも有りだと?
ヨースケ:そうです。もう一つ定義があるとすれば、国民的な大衆歌ということで、坂本九さん、松任谷由実さんとかもそうだと思います。今回洋服メーカーのSHIPSの原副社長にコメントをもらっているんですが、SHIPSのブランド・イメージ自体が大瀧詠一さんのナイアガラ・サウンドから始まっている。“J-POPという定義からズレないかな?”という話もあったんですけど、国民的な大衆ソングという意味ではJ-POPという大きな傘の下で位置づけてもいいんじゃないかということでコメントをもらったんですね。
──たぶん100人いたら100人違うんじゃないですかね。J-POPの解釈は。
ヨースケ:こんなに定義がそれぞれにある言葉も珍しいんじゃないかなと思いますね。2019年現在で言うと、韓国のK-POPにはわりとはっきりしたイメージがあって、USやUKのヒットチャートのサウンド感をファッションとダンスと歌で見せるという、あのサウンドを聴くとみんなK-POPだと認識しますよね。でもJ-POPはトレンドだけを追いかけるジャンルじゃないから、定義がそれぞれ違っていて面白いと思います。だけど良かったですよ。一時期はJ-POPというジャンルだと、なかなかCDも取り扱ってもらえなかった時もあったんで。
──おや。そんな時代があった。
ヨースケ:インディーズという舞台でJ-POPを掲げてやっているアーティストは数が少ないんですよ。みんな当然J-POPに影響を受けてるんですけど、ロック、パンク、ヒップホップ、クラブミュージックとか、ジャンルが細分化されている中で最も売れないというか、あまりスポットライトが当たらないのがJ-POP。J-POPを掲げているとCD屋さんがあんまり取ってくれない時代もあったんですよ。
──それは恐ろしいアンビバレンツですね。最も広いくくりが最も届きにくいという。
ヨースケ:そうなんです。だから90年代の8センチCDが商品にならないという、最初の話とリンクはするんですけど、そういう時代を経て、逆にそこからブレイクスルーして、あいみょんみたいにフォーキーな人とか、いろんな人がいろんな影響の受け方で、いろんな定義を引っ提げて今のミュージックシーンにはいっぱいいるので、漠然としていたJ-POPが一つの枠組みになってきたというか、風向きが変わって来てる気がしているんですけど、そこに至るまでに19年ぐらいかかっているということですね。サカナクションが新曲で90年代フレイバーの作品を出されたりとか、そういうこともありますし。J-POPに抵抗感があった時代を経て、ようやく今出せるかなという感じがしてます。
──実際ここにあるヨースケさんの新曲4曲は、ジャンル的にはバラバラですよね。思い切りキャッチーな「抑えきれない僕らのJ-POP」、めちゃファンキーな「SEXY」、EDM感のある「BE MY GIRLFRIEND」、アコギ弾き語りの「僕の強さ僕の弱さ」とか。この4曲の幅広さが「これがJ-POPだぜ」という主張でもありますか。
ヨースケ:そうです。このジャンルレスな4曲が僕が今持っているボキャブラリーだと思うので。アーティスト活動を経て、作家活動を経て、アーティストじゃない時代も経て、デビュー当時のプロデューサーだった浅倉大介さんしかり、20代を一緒に過ごしたプロデューサーの須藤晃さんしかり、そういう方たちにいろんなことを教えてもらう時期から、いろんなものを飲み込んでようやく自分の曲を作れるようになった、自分のボキャブラリーがここにあるんだと思います。
──リード曲だけじゃなくて、このEP全体がヨースケさんの歴史かもしれない。もう一度J-POPを旗印に進んで行くぞと宣言する「抑えきれない僕らのJ-POP」があって、2曲目の「SEXY」は…あんまり深い意味がないですかね(笑)。
ヨースケ:全然ないですね(笑)。気持ちいいビートとコードのループ感だけ。こういうの好きなんですよね。
──心変わりするなら僕にしときなよ~って、どこかで聞いたフレーズが入ってるのも素敵です。3曲目「BE MY GIRLFRIEND」はどんなイメージで?
ヨースケ:これは昔のファンの人たちに向けて書いた曲です。長く音楽活動を続けていくと、どんどん新しいことをやっていくことも必要なんですけど、今までの出会いをおろそかにしない作業もすごく必要。ファンに媚びるということではなく、今まで応援してくれた人がいるから今の音楽活動ができてるんで、それをラブソングにして伝えたかったんです。新しい一歩を踏み出すための「抑えきれない僕らのJ-POP」とは真逆ではあるんですけど、同じように年齢を重ねて結婚されたりしてライブに来れなくなったりする方もたくさんいて、でもこの曲を聴いたらあの頃に戻れるみたいな、そういう歌を作りたいと思ったんですね。
──そして「僕の強さ僕の弱さ」は、思いを込めたアコースティック・ギター弾き語り。6分36秒の長編。
ヨースケ:めちゃ長いですよね(笑)。これは本当は、ソニー(アンティノス)にいた時にシングル曲で出す予定だったんです。だけど、アレンジ作業をしていく段階で会社がなくなっちゃった(2004年)。当時は藤井(隆)さんやT.M.Revolutionさんが売れてたり、女優の仲間由紀恵さんがいたり、その中で僕にプライオリティが回ってくる前に会社がなくなって宙ぶらりんになってしまった曲なんですよね。それを今やってるヨースケコースケというユニットの相方(米原幸佑)が、当時よくライブを見に来てくれていて、この前のライブが終わった後に“あの曲もう一回聴きたいです”と言われて、じゃあ入れようということになりました。
──それは素晴らしいドラマですよ。ちゃんと歴史になりましたね。最初にディレクターにふと言われた言葉から、ここまでの作品ができた。これ、普通にCDショップに置かれるんでしたっけ。
ヨースケ:そうです。でもCDサイズより大きいから棚に入れられるのかな(笑)。
──どんな方に手に取ってほしいですか。
ヨースケ:やっぱり90年代J-POPといえばカラオケなので、この曲を聴いて本を見て、さらにJ-POPを好きになってもらって、カラオケで歌ってほしいんですよね。本当は「抑えきれない僕らのJ-POP」のビデオも、ザ・カラオケみたいな映像にしたかったんです。夏の海とか、イメージ映像みたいなものがあって、もやがかかった中に歌詞が羅列されるみたいな(笑)。でもこの曲をカラオケで歌ってもらって、好きになってほしいですね。いろんな年代の中に聴いてもらえたらと思います。
取材・文●宮本英夫
リリース情報
『抑えきれない僕らのJ-POP』
7/31発売!
品番:YKF-016
流通:PCI MUSIC
M1 抑えきれない僕らのJ-POP
M2 SEXY
M3 BE MY GIRLFRIEND
M4 抑えきれない僕らのJ-POP(カラオケ ver.)
ライブ・イベント情報
7月31日(水) ヴィレッジバンガード下北沢店 20:00 START
8月2日(金) タワーレコード梅田丸ビル店 19:00 START
8月8日(木) タワーレコード静岡店 18:00 START
<抑え切れない僕らのアコースティックライブ TOUR>
8月1日 静岡LIVING ROOM
8月3日 大阪CAFE ROOM(2回公演)
8月9日 名古屋DODO
8月10日 京都きんせ旅館
8月11日 神戸高架伍拾七(Coca57)
8月12日 広島フランス座
8月18日 東京蒲田温泉 (※抑えきれない僕らのJ-POPトーク& ミニライブ)
8月24日 新潟エディターズカフェ
8月25日 長野ロズベリーカフェ
8月31日 仙台STYLUS
<抑えきれない僕らのワンマンライブ with SPIRAL SPIDERS>
8月17日 新宿MARZ(2回公演)
<抑えきれない僕らのトーク&ミニライブファイナル>
9月1日(日) 新宿ロフトプラスワン)
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