【速レポ】<中津川ソーラー>佐野元春 & THE COYOTE BAND、「R&Rは古い世代と若い世代をつなぐ虹のようなもの」

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ロックンロールは、やはりティーンエイジャーのための音楽なのだ。デビューから数えて38年のキャリアを持つ還暦を超えたベテラン (と言うには、そのルックスはあまりにも精悍だが)と、彼をサポートするTHE COYOTE BANDのライヴを見て、筆者が改めて感じたのは、それだった。

◆佐野元春 & THE COYOTE BAND 画像

その意味で、この日のキモと言えるのは、「ここにいる10代と20代前半の男の子と女の子に向けて歌いたいと思います」と前置きしてから歌った「純恋」だった。THE COYOTE BANDと作った2017年発表のアルバム『MANIJU』に収録されている、このロックンロールナンバーで、佐野が歌ったのはタイトルどおり恋に落ちたとき、誰もが感じる無敵感、万能感だ。「みんな、いい感じ?」とゴキゲンな調子で佐野が声をかけるくらい、この曲から観客の盛り上がりがぐっと温度を上げたのは、曲調が初期の彼を思わせることもさることながら、やはり前述した歌詞が観客の心のどこかに残っている10代の頃の感情を刺激したからだろう。




「この素晴らしいフェスを主催したのは、佐藤タイジ君。クリーンなエネルギーでフェスをやる。思っても実現するのは大変だ。このイベントで演奏できて、とても光栄に思います。これからもずっと続けてください」──佐野元春

そんなMCを挟みながら、佐野の音楽を聴いてきた世代のミュージシャンからなるTHE COYOTE BANDと作った黒っぽいノリの曲を演奏した前半も良かったが、「純恋」からの5曲がすごかった。前に突き進みながら、ぐっと重心の低い演奏で、じわじわと盛り上げた「禅ビート」、1992年にテレビドラマ『二十歳の約束』の主題歌に使われ、多くの人の記憶に残った「約束の橋」の2曲で、ぐんぐんと上がっていった会場の温度は、往年の名曲「SOMEDAY」で一気に沸点に達した。




その「SOMEDAY」を演奏する前のMCがふるっていた。

「(一つ前に演奏した) サンボマスターはいつまでもロックンロールを信じている。素晴らしいことだ。僕も僕なりに信じている。ロックンロールは古い世代と若い世代をつなぐ虹のようなものだ。そう思う。(その2つの世代が) 見ている景色は違うかもしれない。でも、自由で明るい未来に向かっていこうという思いは同じだ。そんな思いを込めて、歌います。歌える人は一緒に歌ってください」──佐野元春

佐野による「Let's go!」という呼びかけをきっかけにサビが観客による大きな合唱になったことは言うまでもない。そして、グランジィなギターの音色とともにロックンロールの先駆者の1人であるエディ・コクランにオマージュを捧げたイントロからなだれこんだデビュー曲「アンジェリーナ」で、さっき沸点に達したと思っていた観客の盛り上がりは、さらに大きなものに。「SOMEDAY」や「アンジェリーナ」を繰り返し、繰り返し、聴いていた10代の頃の気持ちが蘇った。10代の頃、夢中になっていた曲を、それから数十年経ってから、楽しめていることがうれしかった。



ロックンロールの魔法にかかった頃の気持ちに戻ることができるのがロックンロールを聴く醍醐味だと思う。その意味では、やはりロックンロールはティーンエイジャーのための音楽だと思う。しかし、そのロックンロールを信じる気持ちがあれば、60歳を過ぎてもロックンロールは演奏できるし、50歳を過ぎても心から楽しむことができる。この日、筆者は改めて、そんなことを、佐野元春 & THE COYOTE BANDのライブに教えてもらったのだった。

取材・文◎山口智男
撮影◎柴田恵理

【佐野元春 & THE COYOTE BAND@REDEMPTION STAGEセットリスト】

01. 君をさがしてる
02. 空港待合室
03. La Vita é Bella
04. 新しい雨
05. 純恋
06. 禅ビート
07. 約束の橋
08. SOMEDAY
09. アンジェリーナ

■<中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2018>

2018年9月22日(土) 岐阜県中津川公園内特設ステージ
2018年9月23日(日) 岐阜県中津川公園内特設ステージ

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