【連載】Vol.036「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

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ザ・ローリング・ストーンズのシックスティーズ音源『オン・エア』をじっくり聴こう! PT2


▲提供:ユニバーサルミュージック

『ON AIR』リリースで60年代ストーンズをこのところ味わいたくなって、当時の彼らのいろんな音源&映像をひっぱり出して楽しんでいる。表紙写真に掲載したショットのカメラに“RSG!”と記されているけど、これは当時イギリスで大人気だった音楽TV番組“Ready Steady Go!”(63~66年放映)のことで、ストーンズはこの番組によく出演していた。その「レディ・ステディ・ゴー!」(爺はVol.3のライナーを担当していた)や「HULLABALOO」ほかのレーザー・ディスク(LD)、そして映画「ビート・パレード」(T.A.M.I.Show)のDVDなど…、年末年始も“ON AIR”ワールドに浸りそうだ。


▲LD「レディ・ステディ・ゴー! Vol.1」 from Mike’s Collection


▲LD「HULLABALOO」(バック・カバー) from Mike’s Collection


▲DVD「T.A.M.I.Show」 from Mike’s Collection


▲映画「ビート・パレード」のプログラム from Mike’s Collection


▲映画「ビート・パレード」のプログラム12頁から。湯川れい子さんと星加ルミ子さんが推薦コメントでストーンズを大絶賛! from Mike’s Collection

2017年MBSアワード“グランプリ”に輝いた『ON AIR』。“じっくり聴こう!”のPT2、今回も収録順にまたまたジャケットやBookで遊びながらスタート・ミー・アップ!!!


▲提供:ユニバーサルミュージック

(10)The Last Time
65年リリースのヒット・チューン。その年のストーンズ・ファン忘年会で、同年からストーンズ・シングルの曲調がキャッチーになっていったのはこのナンバーがきっかけだったということで大いに盛り上がった。ジャガー=リチャード(ズ)の共作だが、60年にステイプル・シンガーズが発表したゴスペル・シングル「This May Be The Last Time」が下敷きになっている。65年3月1日録音で6日放送“Top Gear”のこのヴァージョン、コーラスがとても魅力的な雰囲気を醸し出している。なぜかエンディングというか後半で繰り返されてしまうパートがある編集ミスが…。「レコード・コレクターズ」1月号で佐藤三十郎さん(お元気ですか!)が、そこが“残念”と記されているけど、“リアル・タイム派&今でもライヴ追っかけ隊”としては、当時の雰囲気がダイレクトに伝わってきて、このちょっぴりおかしいなと感じるところをニコニコしながら楽しんじゃっている。やっぱ爺ですね(冷や汗)。


▲「シングル・ボックス(1963-1965) from Mike’s Collectio

(11)Cry To Me
ソロモン・バークの名作ソウル・バラードで、ベティ・ハリスもレコーディング。ストーンズは後者からのカバー。でもソロモンは僕のインタビューで自分の楽曲を彼らが取り上げたことをとても喜んでいた。65年8月20日録音で9月18日放送“Saturday Club”。このヴァージョンを初めて聴いた時のマイ・メモから。 “ミックのソウルフル・ヴォーカルにレコード以上に感激” “演奏もレコード以上にタイトだ”“トーキング調のミックの歌詞に言いまわしに拍手”“コーラスも良い”“ミックのOH YEAHでフィニッシュ”。
そしてJ写などで遊ばしてもらっているコーナー、ここでは68年11月20日リリースのLP『決定盤!ローリング・ストーンズ・デラックス』。


▲LP『決定盤!ローリング・ストーンズ・デラックス』 from Mike’s Collection

手前味噌だがRSFC会長をしていた高校3年生の時に僕が企画したアルバム。FC会員に会報やレコード&フィルム・コンサートを通じて投票を呼びかけ、その投票結果をもとに12曲を選曲した。実はファンからの投票は少なかったが、その当時、日本で未発表になっていた「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」を強引に加えさせてもらった(輸入盤をオーダーするのはまだまだ大変な時代だった)。バック・カバーには“日本ローリング・ストーンズ・ファン・クラブ企画”とクレジットされている。完成までの道程はライナーノーツに記した。


▲LP『決定盤!ローリング・ストーンズ・デラックス』バック・カバー from Mike’s Collection

そして、ライナーノーツにはその後お亡くなりになられるまで35年近くに亘って公私供お世話になった大先輩の評論家、福田一郎さんが寄稿された。もちろんこれは僕のリクエストである。その一部を再現させていただく。

1年半ほど前のことになるが、ローリング・ストーンズ・ファンの人たちと親しく話し合う機会があった。その席で強い印象を受けたことがある。ローリング・ストーンズ・ファンというものは、決して音楽に偏向していないということだ。つまり、熱烈なファンほど、他の歌手やグループに対し、ともすると排他的になろうとするものだが、ストーンズ・ファンは、進んでビートルズの才能なり曲の良さを認めようとするし、未知の音楽への探求心も旺盛なのである。ここから音楽を楽しむ心が広がってゆき、その人の血となり肉となって、豊かな心を築いてゆくという理想を、ストーンズ・ファンは、よく知っているようだ。海を隔てた日本で、これだけ理解度の高いファンを持っているということは、アーティストにとって貴重な宝といえるだろう。

福田先生からこんなにも素晴らしいお言葉を頂き多くのストーンズ・ファンが大感激した。以来、僕は2002年まで先生へ年賀状をお送りさせていただいた。思い起こすとシェリル・クロウ、ネヴィル・ブラザーズほか多くのコンサートで隣の席に座らせてもらった。90年代からはストーンズ最新情報のことで頻繁に電話やEメールをいただいた。直接の案内はブルース・ギタリストの菊田俊介さんにお任せたしたけど、シカゴ/サウス・サイドのブルーズ・クラブに行ってみたいというリクエストにもお応えした。機会ある毎に読ませていただいている先生著の「テメエットリのジャズ」はマイ・バイブルだ。


▲「テメエットリのジャズ/福田一郎」(朝日新聞出版サービス) from Mike’s Library

(12)Mercy Mercy
R&Bフリークにはその名をよく知られているドン・コヴェイの64年ヒット。65年8月20日録音で30日放送の“Yea!Yea!”から。トニー・ホールのMC入りヴァージョンが収録されているのは大々拍手なのだ。このヴァージョンを初めて聴いた時のマイ・メモをここでも記す。“ミックがソウルフル”“ファルセット気味のコーラスが良い”“ブライアン・ジョーンズのサイド・ギター!”“have mercy ×2 on me”でフィニッシュ。


▲ブライアンの衣装 from Kiyoshi Matsumoto Collection


▲日本盤シングル「マーシー・マーシー/ドン・コヴェイとザ・グッドタイマーズ」 from Mike’s collection

(13)Oh! Baby(We Got A Good Things Goin’)
65年8月20日録音で9月18日放送“Saturday Club”から。アップ・テンポのR&Bチューン、テキサン・グルーヴをダイナミックに味わえるのだ。オリジナルはバーバラ・リンの64年のチャート・イン・ナンバー(Billboard誌HOT100 69位)。バーバラの84年来日公演が懐かしい。久しぶりにLive in Japan聴いてみよう。そういえば、彼女が元気なパフォーマンスを飾っている映画「I AM THE BLUES」(2015)がわが国でも18年に公開されるらしい…(^v^)。


▲NL/LP「BARBARA LYNN」 from Mike’s Colllection

(14)Around And Around
チャック・ベリー58年のヒット・シングル「Johnny B. Goode」B面ソング。アニマルズやスパイダースのヴァージョンもグッドなのだ。64年7月17日録音で23日放送“Top Gear”から。このヴァージョンを初めて聴いた時のメモには“キースのGTR イイゾ×3”。


▲DE/2nd LP「Around And Around」再発盤 from Mike’s Collection

(15)Hi Heel Sneakers
ストーンズ初出楽曲。チェッカー(チェス)所属だったOHW(ワン・ヒット・ワンダー)、トミー・タッカー(オルガンも得意だった)、64年の唯一のヒット曲(普通OHWはTOP40を基準に語られるが、TTはHOT100/96位にもう1曲チャート・インさせている)。Vol.34で触れたように64年4月10日プレイハウス・シアターでの演奏が“The Joe Loss Pop Show”で生放送された。ライヴ感溢れた雰囲気が噴出なのだ。
尚、Vol.31で“Joe Loss”のLがRになっていたので、ここに訂正させていただく。多くの方々からご指摘いただいた、多謝!


▲CD「TOMMY TUCKER/HI-HEEL SNEAKERS」 from Mike’s Collection

(16)Fannie Mae
65年8月20日録音で9月18日放送の“Saturday Club”からのストーンズ初出楽曲。ブライアンのハープをしっかり味わえるブルージーなサウンド展開。そこにミックのヴォーカル&キースのギターが絡みつきビル・ワイマンのベースとチャーリー・ワッツのドラミングが曲全体を纏めあげていく。バスター・ブラウンの代表作で、59年末から60年初頭にかけて大ヒット。R&Bチャート1位、HOT100で38位を記録。


▲CD「バスター・ブラウン/ファニー・メイ」 提供:P-VINE RECORDS

(17)You Better Move On
64年3月19日録音で5月19日放送、ロング・ジョン・ボールドリーがホストを務めた“Blues in Rhythm”から。カムデン・シアターにファンを呼んでの公開ライヴ。ミックのヴォーカルがぐっと前面に出てくるバラードチックなアラバマR&B。本当に素晴らしい出来栄えだ。エンディングで思わずカムデンの観客と一緒に僕らも拍手してしまうのだ!オリジナルは映画「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」でも紹介されたアーサー・アレキサンダーの62年ヒット作。HOT100で24位までランク・アップ。ストーンズは64年1月リリースのUK1枚目EP『THE ROLLING STONES』(当時イギリスではシングル、LPのほかにEPのチャートもあったのだ。この4曲入り7インチ33回転盤はそのEPチャートで1位に輝いた)のB面1曲目に収録された。64年2月8日~3月7日までのストーンズにとって3度目のUKツアー“ALL STRAS ‘64”でこのナンバーはセットリストに加えられた。尚、“ALL STRAS ‘64”でのヘッドライナーはジョン・レイトンでストーンズは12組中最後から4番目の出演だった。


▲UK/EP「THE ROLLING STONES」 from Mike’s Collection


▲コンサート・プログラム「ALL STARS ‘64」 from Mike’s Collection


▲コンサート・プログラム「ALL STARS ‘64」10頁目 from Mike’s Collection


▲コンサート・プログラム「ALL STARS ‘64」11頁目 from Mike’s Collection

(18)Mona(I Need You Baby)
“17”同様“Blues in Rhythm”からのジャングル・ビート・ナンバー。マラカスはミック。オリジナルは御大、ボ・ディドリー!57年4月リリースのチェッカー7枚目シングル「Hey!Bo-Diddley」B面ソング。こういった目立たない楽曲をカバーするのはデビュー間もない頃のストーンズ“特技”だったのだ。そうそう、これを聴いているとベンチャーズもボから学んでいたのがよく分る。それにしても、邦題がいつ”愛しのモナ”から“モナ”に変わってしまったんだろう。エルヴィス・プレスリーでもこういったケースに多々出会うけど、邦題はやっぱり最初のヴァージョンを大事にしましょうよ。それが文化なんだから。と言っても、こんなこと爺にしか分らんだろうな(涙、涙)。

PT3へつづく


▲73年10月リリースの日本盤EP「オールド・ロッカーに捧げる」。コンパクト・ディスク(コンパクト盤)とも称されたこの33回転7インチ・シングルのカラフル・ジャケットによる10枚シリーズ(73年10月同時発売)、全てライナーを担当させていただいた。

【LIVE INFO】
ミス・リサ・フィッシャー&グランド・バトンLIVE!


▲Pic. by Yuka Yamji

ストーンズ・ファミリーから大きく花開いた歌姫リサ・フィッシャーが2年ぶりにBlue Note TOKYOに帰ってくる。ストーンズ学院を卒業し、15年から本格的にソロとしてライヴを行っている。個性的な実力3人組グランド・バトンを率いての同年のステージにはそれはそれは魅了された…。ドラマティックでスピリチュアルな展開。個性的で上手すぎる、ストーンズ時とは異なった、リサのヴォーカルが“歌声”を超越しまるで“楽器”のような、未体験でハイ・レベルな世界がクリエイトされた。そんなLIVEがまたまた味わえるなんて、早くもリサ&ストーンズ・フリークの間で話題沸騰。18年春にはどんな世界が披露されるのか、楽しみだ!
2018年4月3日 4日
*ファースト・ステージ 17:30開場 18:30開演
*セカンド・ステージ 20:20開場 21:00開演
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/lisa-fischer/



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