【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.39「アラーム音」

寒いですね。スキンヘッドにはつらい季節です。髪のある人にはなかなか理解できないと思いますが、1ミリでもあるのとないのでは全然違います。例えるならば、ドライアイスを素手で掴むのと布巾で掴むのくらい違います。その証拠に冬のライブ前に頭を剃ると例外なく風邪をひきます。寝る時が要注意で、あまりに頭が冷えるので毛糸の帽子をかぶっていたのですが、朝になると脱げていることが多く、最近はパーカーのフードをかぶってスケート選手のような格好をして布団にくるまっています。人間椅子の物販に三浦吞竜さんのねぷた絵を用いたパーカーがありますが、あれを着てパチンコを打つのも躊躇われるので、寝間着として重宝しています。もったいないことです。

寒いので石油ファンヒーターがフル稼働です。自分はダイニチというメーカーのものを使っていますが、何時間か経つとプレスリーの「Love Me Tender」が流れて、「運転延長」のボタンを押さないと止まってしまいます。これが結構短いスパンでやって来るので、ずっと家にいる時は何度も押す羽目になりいらいらします。全国何万人がいらいらしています。「給油」の告知は「キラキラ星」です。最初にゆっくり流れ、いよいよ灯油が無くなると高速になって催促されます。寒い夜中や朝の運転開始すぐに鳴るとかなりのダメージをくらいます。全国何万人がダメージをくらっています。これはアラームのメロディーが良くないからだと考えます。悲しいお知らせなのに優しいメロディーだからです。何かストーブに上から目線で馬鹿にされているような気になります。「ほらほら、ぼ〜っとしてると俺、止まっちゃうよ。」「寒い中、給油いってらっしゃ〜い、行かないともっと寒いよ〜」のような声が聞こえてくるのです。

そこで浮かんだのは、ハードロックの名曲を使うという案です。「運転延長」の合図には、DEEP PURPLEの「Smoke On The Water」がどうでしょう。「火事にならない為のこのボタンだ」というメッセージを込めてです。DOORSの「Light My Fire」は邦題が「ハートに火をつけて」なのでより注意喚起になりそうですし、イントロのキーボードがアラーム向きでなかなかいいです。一方、「給油」の合図は、「もう終わりが近い」という意味を込めてLED ZEPPELINの「Stairway To Heaven」はどうでしょう。BLACK SABBATHの「Black Sabbath」で絶望感を出してもいいかもしれません。PINK FLOYDの「Echos」で寂寥感を出してもいいかと思いましたが、これだと単なるアラームブザーにしか聞こえないかも。そして、どちらも兼ね備えているのが、JIMI HENDRIXの名盤「Are You Experienced」です。「Fire」は早くボタンを押さないと止まってしまう焦燥感をよく表わし、「Purple Haze」は灯油が無くなる警告音のように聞こえます。このアルバムは本当に名曲揃いで、かっこいいリフの宝庫です。

ジミヘンはライブでよくギターを燃やしますが、火事を起こさないよう注意しましょう。火の用心。あ、また「Love Me Tender」だ。





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