【インタビュー<後編>】フルカワユタカ、「days goes by」を語る「誰かと作るというデカいテーマ」
■「オマエのちょっとズッコケたところ
■もうバレてるから」と言われる(笑)
──では「days goes by」のアダルティな各楽器パートのアレンジはどのように?
フルカワ:まず僕が作ったデモはループでしたね、ベースもサビのフレーズをずっと繰り返すみたいな。ひと口にファンクと言っても、TGMXさんはPファンク寄りだけど、僕はアフリカ音楽に近いループものが好きだったりするんですよ。ただ展開に関しては、僕は主旋律のメロディアスなものが好きだから、そこで起伏をつけていくような。この曲も繰り返しだったバックトラックから、ベース抜いたりとかをTGMXさんがやりました。それがバッチリはまってると思います。逆に言うと、メロディはほとんどデモのまま。アレンジをイジっていく感じでした。
──2サビ後の展開部もTGMXさんのアイデアですか?
フルカワ:その2拍3連の展開自体をTGMXさんがつけたのかな。ちなみにアルペジエーターは僕が入れました。
──フルカワさんっぽい音です(笑)。
フルカワ:でしょ? たぶん知ってる人はどこが僕でどこがTGMXさんかわかると思いますよ(笑)。
──女性のゲストヴォーカルというアイデアは?
フルカワ:UCARY (UCARY & THE VALENTINE) ちゃんですね。もともとのデモも2サビから主旋律がファルセットで、その上のハモも自分のファルセットで入れてたんですね。ただ、“ファルセットになるんだったら女性の実声を入れたほうがいいかな”とアレンジ的な意味で思ったし、アルバムに収録されたときに女性ヴォーカル楽曲は効果的なんじゃないかと。というところで、僕はゲストヴォーカルを呼ぶっていう感覚があまりないので、TGMXさんと相談しながら進めましたね。
──話は飛びますけど、アルバムには豪華ゲストヴォーカル陣が参加することも発表となってますよね。
フルカワ:TGMXさん曰く、メインヴォーカルじゃない人のコーラスが入ったほうが、音に奥行きとか立体感が出るっていう。しかも、自分とのストーリーがある人を呼んだほうがいいっていうところで、例えば市川(LOW IQ 01)さんとかバンアパ(the band apart)の荒井とかはTGMXさんの提案だし、夜ダン(夜の本気ダンス)は僕らチームからの提案です。
──アルバムの仕上がりが楽しみです。「days goes by」の歌詞は全編英語ですが、フルカワさんから作詞家さんへテーマ的な指定は?
フルカワ:それを今回一切やってないんですよ。たとえばこの曲だと、UKのロックとかダンスのバンド名やアーティスト名を出しながら話をした感じで。
──歌詞の内容としては、僕と君という男女間のストーリーですか?
フルカワ:和訳は僕がやったんですけど、英詞は雰囲気的なもので、英単語を機械的に並べたようにドライなんですね。それをハードな男女の話、僕と君のストーリーとして日本語で意味合いを持たせたというか。恋愛にもとれるし、ソウルメイトにもとれるように。
──歌詞に関連しているのか、花を持ったフルカワユタカというコンセプトのシングル用写真がファンの間でザワッとしました(笑)。
フルカワ:ははは。まあ、ざわめきますよね。この写真に深い意図はなく、カメラマンさんからの提案だったんです。「フルカワさんは、ロックスターとおっしゃってるので、花を使って撮ってみたい」と。モリッシーの写真に花を持っているものがあるらしいですね。結果、とてもファニーでカワイらしい、自分っぽくないものに仕上がりましたね。それはそれで新しい一面なんだけど、あまりにも今までのイメージとかけ離れたので、撮影した中で僕が選別した折衷案が、あの横顔のカット。もしかするとカメラマンさんが選別したカットをメインの写真にしたら、もっと世間がザワッと……(笑)。
──それが、前回のBARKSコラムで使用した花を持って笑顔の?
フルカワ:そうそう。けっこうガッツリ急にスイッチを入れ替えた感じになってますよね(笑)。ただ僕は、写真となるとカッコつけるところがあって、もうそのトリガーを外してもいいのかなって。それは市川さんとかACIDMANの大木とか、バンアパの荒井にも言われるんですよ。「オマエのちょっとズッコケたところ、もうバレてるから」って。
──いや、ダダ漏れですよ。
フルカワ:ははは! BARKSのコラムでは僕のそういうところを書いてるわけだし、「もう見せてもいいんじゃないの?」って言われるんですけど、やっぱりすでに出ちゃってるんだ(笑)。だから、もしかしたら花の写真も、その着地点のひとつだったりするんですよ、僕の中では。けっこうみんなからの評判もよくてね、横向きの写真。だったらもうちょっと攻めてもよかったのかな、僕が臆病になっちゃったかな……っていうか僕、そもそもモリッシーじゃないんで(笑)。もちろん写真としては気に入ってますよ。
──では、シングルの話に戻りますが、11曲収録されたデモ音源はどれも完成度の高いものばかりで。
フルカワ:ありがとうございます。ドーパン時代にメンバーに聴かせてたデモはもっとラフでしたけど、基本的に僕は、作曲段階からコンプとかEQとか掛けながら録るのがクセになっているんですよ。ミックスもしてますし、なんだったらトータルコンプみたいなセルフマスタリング作業みたいなことまでやっちゃってるので。
──デモとは言え、ひとりの作業ではないんですよね? バンドでやってるプリプロ音源的なものも入ってます?
フルカワ:いや、これ全部僕ひとりです。
──えっ!? ベースもドラムも?
フルカワ:ドラムは打ち込みもありますけど、僕が生ドラムを叩いている曲もありますよ。「ケモノ」がそうかな。
──完全にバンド感あるじゃないですか。
フルカワ:バンド感ありますよね(笑)。自分ひとりでやると、より同じグルーヴが出るんです。ただ、今はもう物理的に生ドラムが録れるデモ環境にないので、「ケモノ」以降のデモはほぼ全部打ち込みですけど。
──そもそもデモを入れようっていうアイデアは?
フルカワ:僕発案です。シングルリリース自体はメーカーから提案されたものですけど、おもしろいシングルにしたかったんですよ。それにさっきも言った通り、どっちみちカップリングを入れるとしたら本気になるじゃないですか、それが僕の性分なんで。渾身の1曲をカップリングに削られるのも体力的に大変なので(笑)。とはいえ、リミックスもイヤだし、そこで思いついたのがデモ音源。ヒントはフォールズ (英国の5ピースバンド) の2枚目『トータル・ライフ・フォーエヴァー』リミテッドエディションです。それはスタジオで木琴叩いてるだけのデモ音源もあったり、もっとラフなんですけどね。デモ音源の発表は1回やってみたいと思ってたんで、メーカー担当者に「カップリングは曲じゃなくていい?」って訊いたら、「むしろおもしろいほうがいい」って言われて、「じゃあデモを入れたい」と。
──どんなふうにセレクトした11曲ですか?
フルカワ:ハードディスクに保管してるものから、“これ入れたいな、聴かせたいな”っていうものを、ある種、雑に。もちろん急いで作ったデッサン的なデモもあったんですけど、結果、ちゃんと作り込んだやつというか、クオリティのしっかりしたデモが残ったかな、並べていく過程で。あとひとつ言えるのは、ドーパン時代に作ったデモは1曲も入れてないです。未発表曲がいっぱいあるので、入れようと思えば入れられたんですけど、それはルール違反な気がしたから。ハヤトとタロティが知ってる曲は1曲も入ってないです。
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