【インタビュー3/3】マーク・キング「新しい歴史に、すごいスリルを感じているよ」
スチュワート・コープランド(Dr/ポリス)、エイドリアン・ブリュー(G/キング・クリムゾン、デヴィッド・ボウイ)、マーク・キング(B/レヴェル42)、ヴィットリオ・コスマ(Key/PFM)からなるロック界のスーパーグループ、ギズモドロームへのインタビュー第3回は、マークに話してもらった。
レヴェル42を率いて活動してきたマークは数々のヒット曲を飛ばし、2017年4月には日本公演を行ったばかりだ。現在進行形のアーティストである彼がギズモドロームにおいて占める役割はどのようなものか。
──2017年4月、レヴェル42での日本公演はどのような経験でしたか?
マーク・キング:日本でプレイするのはいつだって最高の気分だよ。日本の文化/食べ物/気候/建築/美術…すべてが素晴らしい。イギリスやヨーロッパとはまったく異なっていて、毎回フレッシュな経験をすることができる。4月のショーでは「Build Myself A Rocket」という新しい曲をプレイしたんだ。2013年に発表した『Sirens』EPに収録した曲だよ。今、続編EPの『Sirens II』を作っているところだ。2018年には発表したいと考えているけど、急にギズモドロームが忙しくなってきてね。プロモーションをしたり、打ち合わせもあったり…それでレヴェル42はひと休みなんだ。でもギズモドロームでのワールド・ツアーが終わったら再開させるつもりだ。
──デビューから何度も来日してきましたが、日本はどのように変わりましたか?
マーク・キング:初めて日本に行ったのは1984年だったかな。カシオペアと一緒にプレイしたのを覚えているよ(Jax Jazzfunk '84)。彼らは素晴らしいテクニックを持ったジャズ/フュージョン・バンドで、当時まだイギリスには日本の音楽の情報があまり入ってこなかったから、こんな凄いバンドがいるのか!と驚いた。彼らとは友達になったよ。それから30年以上が経って、日本の人々は国際的になったと思う。英語を話せる人が増えたし、和服を着ている人は減ったね。西洋化されたと言えるかも知れない。もちろん、それが悪いと言うつもりはないよ。世界全体がそうだからね。日本独自の伝統と西洋文化の影響がクロスオーヴァーしているのが好きなんだ。私が行ったことがあるのは都市部だけだけど、もっと地方にも行ってみたいね。
──4月にレヴェル42として来日した時点で、ギズモドロームのアルバムは完成していたのですか?
マーク・キング:ほぼ完成していたよ。アルバムを作り始めたのは去年(2016年)の7月だった。その直前、スチュワート・コープランドからメッセージがあったんだ。「やあマーク、イタリアで一緒にバンドをやらない?」ってね。もう30年以上スチュワートのドラム・プレイのファンだったから、喜んでイタリアに行くことにした。彼と共演できるというのは、世界中のあらゆるベーシストにとって魅力的なはずだよ。しかもギタリストがエイドリアン・ブリューと言われたら、断ることはもはや不可能だった。ヴィットリオ・コスマとはそれまで会ったことがなかったけど、実際に一緒にやってみたら、彼はすごく頭が良い人で、素晴らしい音楽の才能を持っていて、寛大な人物だということがわかった。私はただベースを感情のおもむくままに弾きまくるだけだから、彼みたいなインテリジェントなミュージシャンは尊敬するよ。スタジオで10日間作業して10曲をレコーディングした。すごく速い作業で、1980年代初めに戻ったようだった。全員が同じスタジオ・ルームにいて、どの曲もせいぜい2~3テイクしか録らなかったけど、それで十分だったんだ。ギズモドロームみたいな音楽をやっているバンドはどこにもいない。とてもユニークで、そうであることを誇りにしているよ。
──エイドリアンはミラノに招かれたとき「あくまでセッションだと考えていたのに、気がついたらバンドに巻き込まれた」と笑っていましたが、あなたはどうでしたか?
マーク・キング:まあ、スチュワートからもらった最初のメールに「一緒にバンドをやらない?」と書いてあったから、バンドだとはわかっていたよ(笑)。当初はスチュワートのバンドでプレイするんだと思っていたけどね。メールをもらった7時間後には荷物をまとめて、イタリアに向かっていたよ。エイドリアンもこのバンドの一員であることを楽しんでいるし、すべてがうまく落ち着いた。
──作曲/ソングライティング面では、どのように関わっていますか?
マーク・キング:「ライド・ユア・ライフ」と「スピン・ディス」は私が曲のアイディアを出したし、「マン・オン・ザ・マウンテン」のコーラスのメロディも私が書いたものだ。レヴェル42では自分が歌うことを前提にして曲を書くから、ギズモドロームでの作業は新しい試みだった。スチュワートは独特な個性を持ったボーカリストでストーリーテラーであり、ナレーターであり、そしてシンガーでもあった。フランク・ザッパやレナード・コーエンを思い出したよ。コーラスはエイドリアンと私が担当したし、チャレンジを楽しむことができた。
──スチュワートと初めて会ったときのことを覚えていますか?
マーク・キング:1981年、レヴェル42の初めてのヨーロッパ・ツアーがポリスの前座だったんだ。ドイツで5回のショーをやって、プロフェッショナルから学ぶことができた。ツアーを終えて彼に「これからどうするの?」と訊いたら、「荷物をまとめてアメリカに行く」と言われたよ。ポリスはヨーロッパでは既に支持されていたけど、アメリカはまだ制圧していなかった。それでアメリカ全土の小さなクラブをサーキットしなければならなかったんだ。そうして彼らは世界最大のロック・バンドになった。彼らの仕事に対する熱意は凄かったし、自分にとっての手本ともなったよ。自分も頑張らなきゃってね。次にスチュワートと会ったのは1985年だった。イギリスBBCのチャリティTV番組だったんだ(『チルドレン・イン・ニード』)。スチュワートはボーカルとギターを担当して、マーク・ブルゼジッキーがドラムス、ニック・カーショウがギター、それから『Mr.ビーン』の俳優ローワン・アトキンソンがタンバリンを叩いていた。それからずっと会う機会がなかったけど、ツイッター経由でお互いの動向をフォローしていた。同じバンドでやることになるなんて、30年前だったら夢にも思わなかっただろうね。
──レヴェル42の大きな特徴のひとつとなっているスラッピング・ベースをギズモドロームでは封印しているのは、どんな考えによるものですか?
マーク・キング:別に封印したつもりはない。ギズモドロームの音楽がスラッピングを必要としていない、それがすべてだよ。ベースの弾き方は何千種類とある。ギズモドロームとレヴェル42ではやっている音楽が異なるから、臨機応変にやるべきなんだ。「マン・オン・ザ・マウンテン」でスラッピングをしたら、ベース・ラインが台無しになってしまうだろ?まあ「スピンレス」では一部スラッピングもやっているけどね。
──ギズモドロームとしてのツアーに、レヴェル42のピート・ビギンがドラマーとして同行するとスチュワートが話していましたが…。
マーク・キング:その通りだ。私がギズモドロームでツアーに出るあいだは、レヴェル42はお休みになるわけだし、ピートのスケジュールも空くからね。スチュワートは「ドラムスを叩きながら歌うのは嫌だ」と言って、歌うときはステージの中央に立つことになったんだ。もちろんボーカルを取らないときは、ドラムスを叩くことになる。スチュワートは世界最高のドラマーの一人だし、彼が叩かなかったら大勢のファンをガッカリさせるからね!…面白いことに、エイドリアン・ブリューはギターを始める前にドラマーだったんだ。実は私もドラマーだった。ヴィットリオはマルチ・プレイヤーでドラムスもこなすし、ピートを入れれば5人のドラマーがいるバンドということになる。ショーのどこかで、5人が同時にプレイするコーナーを設けるべきだよね。ギズモドロームには、そんな自由なところがあるんだ。我々自身もライブがどうなるか、想像もつかない。それが面白いんだ。
──レヴェル42として今後フルレンス・アルバムを出す予定は?
マーク・キング:今のところないんだ。現在の音楽シーンの状況だと、ファンはアルバムを買わずに、自分のお気に入りの1曲だけをダウンロードする。だから2年に1枚、12曲入りのアルバムを出すよりも、6曲入りのEPを毎年出す方が理に叶っているんだ。レヴェル42はこれからも曲を書き続けるし、作品も発表し続ける。それがミュージシャンの生業だからね。とはいっても、それがアルバムというフォーマットになるかはわからない。EP、あるいは1曲ずつ単発で発表するかも知れないし、もしかしてライブ・オンリーになるかも知れない。実際のところ、どうしても新曲をリリースしなければならない必要に迫られているわけではないんだ。長年やっていて、それなりにヒット曲もあるから、ライブでどの曲をプレイして、どの曲をリストから落とすか、いつも頭を抱えてしまう。贅沢な悩みだよ。でもギズモドロームはまだファースト・アルバムを完成させたばかりだし、これからたくさん曲を書いて、アルバムも発表していくつもりだ。ギズモドロームでツアーとレコーディングをして、新しい歴史を作っていくことに、すごいスリルを感じているよ。
取材・文:山崎智之
Photo by Lorenza Daverio
<ギズモドローム初来日公演 2018>
4/8(日)メルパルクホール大阪 17:30 open / 18:00 start
一般発売:11/4(土)
[問]大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506 udo.jp/osaka
【東京】
4/9(月)Bunkamura オーチャードホール 18:30 open / 19:00 start
一般発売:11/4(土)
[問]ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp
http://udo.jp/concert/Gizmodrome
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