【ライブレポート】ギズモドローム、超絶技巧とパーティー・フィーリング
ロック界のスーパーグループ、ギズモドロームによる日本初集結ライヴ(2018年4月9日@オーチャードホール)は、超絶技巧とパーティー・フィーリングが複雑に絡み合って織り成す音のタペストリーだった。
◆ギズモドローム映像&画像
スチュワート・コープランド(ポリス/ドラムス、ヴォーカル、ギター)、エイドリアン・ブリュー(キング・クリムゾン/ギター、ヴォーカル)、マーク・キング(レヴェル42 /ベース、ヴォーカル)、ヴィットリオ・コズマ(PFM/キーボード、ヴォーカル)という実力派ミュージシャン4人が集結。はたしてどんなライヴを見せてくれるか緊張感の張り詰めた会場で、観衆を迎えたのはスチュワートが笑顔を浮かべながら、ギターを抱えて歌いまくる姿だった。デタラメ(良い意味で)エスニック言語の歌詞が飛び交う「アミカ・ピパ」を1曲目に持ってきたことで、場内のピリピリした空気がスッと和らいだ。
レゲエのリズムを取り入れた「マン・オン・ザ・マウンテン」、コーラスを歌わずにいられない「ステイ・レディ」と、ギズモドローム流のポップで攻める“楽しい”ショー。スチュワートの妙なはしゃぎっぷりは序盤こそ観衆を困惑させたが、ギターを抱えてギュイーンとポーズを取ってみたり、ギタースタンドを蹴ってみたり、その奔放なステージ・パフォーマンスの一挙手一投足から目が離せない。ポリスのステージでは見ることが出来なかった彼のフロントマンぶりは我々をグイグイと引き込んでいく。
会場が大きく沸いたのは4曲目、「ミス・グラデンコ」のイントロが奏でられたときだった。ポリスのモンスター・ヒット・アルバム『シンクロニシティ』(1983)からのナンバーだが、本家ポリスのライヴではおそらく演奏されることがなかったレア曲。とはいっても年季の入ったロック・ファンが多くを占める場内ではお馴染みのナンバーのようであり、イントロだけで敏感に反応する。
そしてギズモドロームがもはや変態に近いスーパー・テクニカル集団であることを我々に再認識させたのが「エレファント・トーク」だった。エイドリアンのギターがゾウの鳴き声を上げる、1980年代キング・クリムゾンの代表曲のひとつ。「ギズモドロームの音楽はスラッピングを必要としていない」とマークは語っていたが、この曲では遠慮なくバリバリスラッピング・ベースで腰骨を撃ち抜く。スチュワートも一転真剣な表情で、手数の多いドラム・ビートを叩き出す。いずれも際立ち過ぎる個性の持ち主だが、それをまとめ上げる役割を担っているのがヴィットリオのキーボードだ。楽曲の輪郭をくっきり明確にするプレイとバック・ヴォーカルを聴かせる彼だが、単なるサポート役に留まることなく、バンド・サウンドにアメリカでもイギリスでもない異国情緒をもたらしている。
ギズモドロームのファースト・アルバム『ギズモドローム』からの楽曲に加えて、ポリスの「ダズ・エヴリワン・ステア」「暗黒の世界(Darkness)」、スチュワートの変名プロジェクト“クラーク・カント”の「エクセシズ」、エイドリアンのソロ曲「ヤング・ライオンズ」など、次々とレアな曲が飛び出し、観客はどの曲にも熱い反応を見せる。けっこうなマニア層が集まっていることも確かだろうが、この4人による押し引きのツボを心得たプレイを得て、それぞれの楽曲がさらにスリリングに昇華されていたため、曲を知らなくても十分以上に楽しめる約1時間半のショーであった。
本編ラストに演奏された「スピン・ディス」では4人のテクニックが噛みつき合うインストゥルメンタル・ジャムも披露。バンドが現在も進化過程にあり、さらなるプログレッションへと向かっていくことを予感させた。
ライヴ本編では着席していた観衆だが、アンコールではもう我慢できないかのように総立ち、身体を動き出す。それに応えてバンドはキング・クリムゾンの「セラ・ハン・ジンジート」、そしてポリスの「ボムズ・アウェイ」でショーを締め括った。
メンバーの豪華さに比して、わかりやすいビッグ・ヒット曲こそ少なかったものの、マニア心のツボを突く選曲、そして達人たちによる高度過ぎるプレイは、たっぷり満足させるものだった。長いキャリアを持つベテラン揃いとはいえ、まだライヴ・デビュー1ヶ月でこの高密度のライヴ・パフォーマンスは驚嘆に値する。これからギズモドロームがどのように進化していくか、見届けたくなるステージだった。
文:山崎智之
写真:Masanori Doi
ギズモドローム 『ギズモドローム』
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【通常盤CD】¥2,500+税
※日本語解説封入/歌詞対訳付き
1.ゾンビーズ・イン・ザ・モール
2.ステイ・レディ
3.マン・イン・ザ・マウンテン
4.サマー・イズ・カミング
5.スウィート・エンジェルズ(ルール・ザ・ワールド)
6.アマカ・ピパ
7.ストレンジ・シングス・ハプン
8.ライド・ユア・ライフ
9.ズバッタ・チェベ
10.スピン・ディス
11.アイ・ノウ・トゥー・マッチ
12.スターク・ネイキッド
【メンバー】
スチュワート・コープランド(ドラムス/ヴォーカル)
マーク・キング(ベース/ヴォーカル)
エイドリアン・ブリュー(ギター/ヴォーカル)
ヴィットリオ・コスマ(キーボード/ヴォーカル)
◆ギズモドローム レーベルオフィシャルページ