【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.35「お宝」
木のうろ。それは宝物がいっぱい詰まった魅惑の暗闇。小さい頃クワガタが大好きだった自分は、うろを見れば必ず手を突っ込んで宝探しをしていました。10回に1回位はお宝をゲットできるのですが、残りの9回は虚しく空を切ります。それどころか嫌な目に遭うこともしょっちゅうでした。ちらりと黒光りが動いて急いで手を入れると無数のゴキブリがザザザっとのっかってきたり、ムクドリの雛に噛みつかれたり、アシナガバチが怒って襲ってきたりと、今でも体がその感触を覚えています。それだけにクワガタのオスに出会えた時の喜びはひとしおです。大体はコクワガタかアカアシクワガタでした。メスだとがっかりです。でっかいノコギリクワガタのオスを見つけた時の感動は未だに忘れられず、時々夢にみる程です。
大人になって、お宝はクワガタからハードロックのレコードにとって代わりました。うろを手で探るようにレコードの棚を漁る毎日でした。青森にはゴマダラカミキリやウスバカミキリ級のよく見かける盤しかなかったのですが、東京に出てくるとノコギリクワガタ級の大物がごろごろしていて目が回るようでした。バイトしてお金ができるとオオクワガタ級にまで手を出すようになり、終わりの見えないプログレの果てしなさに目眩を覚えたものです。そんな頃、時代はレコードからCDにあっさり移って通販で簡単に貴重盤が手に入るようになってしまいました。ペットショップでオオクワガタをすぐ買うことができるようなものです。何日も新宿中を彷徨い歩いた自分の苦労は何だったのでしょう。最近足腰がポンコツになってきたので丁度良かったのかな。
何年もCD屋さんに通っているのに未だに出会うことができないでいるアルバムが、AC/DCの1st、オーストラリア盤の「High Voltage」と2nd「T.N.T.」です。とんと見かけません。外国のアマゾンとかで買うことはできるのでしょうが、出来る事ならお店の棚で巡り会って「おぉー!」と叫んですりすりしたいです。国内盤は出ていないので山で偶然ヒラタクワガタに出会うくらいの確率でしょうか。収録曲は編集された別物「High Voltage」や「'74 Jailbreak」等に分散していて耳にする事はできるのですが、やはり本物のジャケットを手にしながら聴きたいものです。ネットで検索するとオーストラリア盤「High Voltage」のジャケットで犬がバンドのロゴに小便を引っ掛けているのですが、生で小便の絵が見たいです。
今でも山に出かけると必ず木のうろを覗きますがお宝はほとんど見つかりません。まず穴に手が入りません。虫たちは子供の前にだけ姿を現してくれるのでしょうか。たまに雨水の溜ったうろの泥の中でもこもこ蠢く蛭のような生き物が挨拶してきますが、お前には俺くらいがぴったりだと言われているようです。
今回のマイベストテープ~昔は貴重盤だったアルバムから
A2.Vulture Blood / WARHORSE(「Warhorse」より)
A3.Gorgon / TEMPEST(「Tempest」より)
A4.ComeTo The Sabbat / BLACK WIDOW(「Sacrifice」より)
A5.Death Walks Behind you / ATOMIC ROOSTER(「Death Walks Behind You」より)
B1.Helium Head / SIR LORD BALTIMORE(「Kingdom Come」より)
B2.For Mad Men Only / MAY BRITZ(「The 2nd Of May」より)
B3.Polecat Woman / THREE MAN ARMY(「Three Man Army Two」より)
B4.The Faith Healer / The Sensational Alex Harvey Band(「Next」より)
B5.Race With The Devil / GUN(「The Gun」より)
20thオリジナルアルバム『異次元からの咆哮』
初回盤:CD+DVD ¥3,704(税別)TKCA-74561
通常盤:CD ¥2,685(税別)TKCA-74562
<人間椅子ワンマンツアー>
11月2日 弘前Mag-Net
11月4日 札幌cube garden
11月8日 神戸Chicken George
11月10日高松Olive Hall
11月12日大阪umeda TRAD(前AKASO)
11月14日博多Be-1
11月16日名古屋Electric Lady Land
11月19日東京Zepp Diver City
※詳細は後日発表
◆人間椅子 公式LINEアカウント
◆【連載】人間椅子 鈴木研一の「ハードロック喫茶ナザレス」まとめ
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