【インタビュー】オール・ザット・リメインズ、より加速する大いなるチャレンジ
キルスウィッチ・エンゲイジやシャドウズ・フォールらと共にメタルコアの盛り上がりを力強く牽引、シーンに確たる存在感を示して以降も留まることなく音楽的進化を遂げ続けてきたアメリカ東海岸マサチューセッツ州スプリングフィールド拠点の実力派5人組オール・ザット・リメインズが、2015年発表の『ジ・オーダー・オブ・シングス』に続く8枚目のフルレンス作品『マッドネス』を完成させた。
◆オール・ザット・リメインズ画像
<LOUD PARK 15>参戦直前に加わったアーロン・パトリック(B)を含む布陣で初めて制作されたこのアルバムで、彼らは持ち前のキャッチーなメロディ/ハーモニー指向をますます強化、さらにエレクトロニック・ミュージックの要素を大胆に導入するなど、これまで以上にチャレンジングな一歩を踏み出している。バンドの野心的な取り組みがふんだんに詰め込まれた今回のアルバムについて、中心人物フィル・ラボンテ(Vo)がインタビューに応じてくれた。
――前作からおよそ2年ぶりとなるニュー・アルバム『マッドネス』が完成しましたね。ミュージシャンの多くが「これまでの中で新作がベストだ」と言うものですが、あなた達の場合は今回、心からその自信があるのではないかと思います。実際、いかがですか?
フィル・ラボンテ:ああ、そのとおりだよ。これまでとはかなりスタイルの違うレコードを作って、俺達自身、自分達の世界を広げようとしたからね。そういうことをやっているバンドはそれほど多くはいない。どのバンドもいつも自分達の世界を広げようとして違うことをやってみるわけじゃないし、むしろ最も成功したレコードと同じようなものを書こうとしてしまう。最初からうまくいくことがわかっているようなレコードをね(苦笑)。でもまあ、それだって必ずしもうまくいくとは限らないけど。人は何度も何度も聴いてきたものではなく、新鮮に聴こえるものに惹かれるものだからさ。
――これほど従来とは異なるスタイル作品を発表することに、ある程度のリスクも覚悟していたのではないかと思うのですが…。
フィル・ラボンテ:いや、俺達はただ自分達の領域を広げたかっただけだよ。俺達が話していたのはそのことだけだった。他には特に、今このレコードをリリースする理由というのはなかったね。俺達は新しいレコードを作るたびに“前のとは違うものを作りたい”と思っているし、今回はこういうアルバムを作るのが最良だと感じたからそうしたまでさ。新しいプロデューサーと、新しいスタジオで、これまでとは違った曲の書き方を試してみてね。
――今回ハワード・ベンソンを初めてプロデューサーに起用していますが、彼はバンドのどんなところを引き出してくれたと思いますか?
フィル・ラボンテ:メンバーの中でも、ハワードと最も密に仕事をしたのは俺だった。俺は他のみんなより長く彼と一緒にレコーディングしていたからね。ちなみに、ボーカルのレコーディングはハワードの家でやったんだ。スタジオから2マイルほど離れた場所にある普通の家でね。あれはとてもレイドバックしていて、穏やかで、良いやり方だった。楽しかったな。彼はボーカル面でベストなパフォーマンスを引き出す術を知っているんだ。それこそ俺達が特に狙っていたことでもあるわけだけど、彼は声のどのトーンを出させるべきか、どういうパフォーマンスをさせるべきか、本当に正確に把握していたよ。
――曲によっては、リフではなくボーカル・メロディから書き始めることもあったそうですね。これまでオール・ザット・リメインズが、ヴォーカルやコーラス・ワークの充実、メロディやハーモニーの洗練といった方向で音楽的進化を遂げてきたことを考えると、異例とはいえ、そのやり方はとても理に適ったものだったように思えます。
フィル・ラボンテ:俺達は以前からいつも“曲”を書くことを最優先にしてきたからね。すべてのバンドがそうというわけではないけど、中にはギター・ソロだけでなくドラム・ソロなども入っていたりして音楽パートがとにかくたくさんになりすぎ、その複雑さのせいで曲の焦点がぼやけてしまっているようなバンドもいると思うんだ。例えば、曲の中心となるものがコーラスのシンプルなメロディだったりギターのラインだったりする場合でも、他のものがあまりにたくさん詰め込まれすぎているせいで、それがクールなものであったとしても、本当に際立たせるべきものがどれなのか選べなくなっていたりする。だから俺達は、その曲の中で本当にクールなものをひとつかふたつ選んで、それが中心になるように書いているんだ。言うなれば、曲の中にパートを書いていくのではなく、中心となるそのパートの周りに曲を書いていっているという感じだろうね。
――なるほど。そうして書かれた新作からは既に「マッドネス」「セイフ・ハウス」「ヘイロー」などがシングル・カットされていますが、反応はいかがですか?
フィル・ラボンテ:とてもポジティヴだよ。本当にポジティヴな反応で、俺自身もちょっと驚いているくらいさ。どういう風に受け入れられるか、自分でもよくわかっていなかったしね。だけど、たくさんの人達がインターネットで話題にしてくれているのはすごくエキサイティングなことだと思う。おかげで「マッドネス」はアメリカのチャートを上昇中だ。トップ20位以内に初登場して、まだ上昇している。素晴らしいことだよ。まだツアーを始めてもいないのにね(笑)。しばらくしたらツアーが始まるから、そのサポート次第でどうなるかだな。たくさんのメタル・キッズが聴いて気に入ってくれるとうれしいんだけど。それこそ俺達の望んでいたことなんだからさ。
――ツアーの具体的なスケジュールはどうなっていますか?
フィル・ラボンテ:アメリカでのツアーは5月に始まるんだ。4月にも何度かショーをやるよ。夏にはふたつのツアーをやろうという話をしているところだけど、具体的には今はまだ話せないんだ。まだちゃんと決まっていないからね。まあ、そのうちわかると思うよ。
――ちなみに、今回も来日公演の予定はありますか?
フィル・ラボンテ:そうなってほしいね。ぜひそうなってほしい。早くキミ達に会いに行きたいよ!
取材・文:山口勝正
オール・ザット・リメインズ『マッドネス』
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※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.セイフ・ハウス
2.マッドネス
3.ナッシング・アイ・キャン・ドゥー
4.イフ・アイム・オーネスト
5.ヘイロー
6.ラウダー
7.リヴァー・シティ
8.オープン・グレイヴ
9.ファー・フロム・ホーム
10.トラスト・アンド・ビリーヴ
11.バック・トゥ・ユー
12.ネヴァー・ソーリー
《ボーナストラック》
13.ザ・サンダー・ロールス [ガース・ブルックス カヴァー]
【メンバー】
フィル・ラボンテ(ヴォーカル)
オリ・ハーバート(ギター)
マイク・マーティン(ギター)
アーロン・パトリック(ベース)
ジェイソン・コスタ(ドラムス)
◆オール・ザット・リメインズ『マッドネス』オフィシャルページ