【ライブレポート】ゲスの極み乙女。が見せたのは凄まじい集中力、そして実力
ゲスの極み乙女。のワンマンライブ<ゲス乙女大集会~武道館編~>が、3月30日、31日の2日間にわたり日本武道館で開催された。先日BARKSでは、その2日目の速報をお伝えしたが、今回は同2日目のオリジナルレポートをお届けしたい。
◆ゲスの極み乙女。 ライブ画像
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休日課長(Ba)、ほな・いこか(Dr)、ちゃんMARI(Key)、そして川谷絵音(Vo&G)がひとりずつステージに姿を現した。「ロマンスがありあまる」「私以外私じゃないの」という代表曲から幕をあけると、オーディエンスはめいっぱい身体を揺らし、応えた。はじまった!というたくさんの感激の気持ちが昇り立つようだった。開演を控えた会場は、上気した表情を見せるファンで2階席上部まで埋まっていたのだ。そして、4人+コーラス2人によるステージは、凄まじいほど集中力の高い本編を繰り広げていった。
ゲスの極み乙女。の音楽とは、ひと言で言うと、アカデミックなのに超ポップなものだと思っている。音楽的にあまりにも豊かなそんな楽曲が次々と披露され、1万人超の大歓迎を受けているという目の前の景色は、今更だが奇跡的だと思えた。ジャズやファンクやクラシックやダンス、それぞれの個性が色濃く取り入れられ、アヴァンギャルドでアクロバティックな側面もめちゃくちゃあるのに、ここまでポップにキャッチーに人に届くものなのか。また、サイケデリックでシュールなモチーフが飛び交うバックのヴィジョンも、アート性、創造性に溢れたものであったが、“ポップになり得ないものをポップに落としこむ”ことは視覚的にも達成されていた。
「煙る」でのミュージカル的なアプローチもそうだ。男女の別れを描いたこの曲は、川谷とほな・いこかがそれぞれに悲しい独白をし合うという個性的なパートがあるのだが、象徴的な赤い煙と青い煙が映るヴィジョンの様子と相まって誰がどう見ても非常にドラマチック。誰がどう見ても心に響く。そして、その直後のちゃんMARIの音圧の強いシンセの音が、さらに痛切なエモーションを助長させている。こうした音楽的な雄弁さや、ポップシーンで他に見当たらないという意味での“ユニークさ”は、ゲスの極み乙女。の楽曲の醍醐味だ。音楽というものには、まだまだ未知なる可能性が宿っていることを教えられている気にもなる。
休日課長が初めてアコースティックギターを披露した「id1」を終えると、メンバーの衣替えタイムに突入したが、その間の見せ方もすばらしかった。コーラスの2人が「いけないダンスダンスダンス」を向き合って歌い合う。美声がヴィヴィッドに響き渡る空間にあった異様な高揚感は、印象的であり、ゲスの極みのライブの象徴のようだった。
「パラレルスペック(funky ver.)」「オトナチック」というポップナンバーののち、「Mr.ゲスX」のカオティックなグルーヴによってオーディエンスのタガは外れたようだった。完全に解放されてしまったのだ。そして続いたのが「アソビ」である。うねり回るようなジャジーなテンポ感がもたらす緊張と、「パラリラパラリラ~Fu-Fu」というあっけらかんとしたフレーズの落差による巨大な盛り上がりは、狂騒そのものだった。続く本編ラストの「両成敗でいいじゃない」の大団円っぷりは、もう言うまでもないだろう。昨年2015年に彼らがおこなったアリーナツアー<ゲスチック乙女~アリーナ編~>のファイナルにあたる10月の横浜アリーナ公演では、それまでの4人の快進撃を見せつけるような“勢い“をとにかく感じさせる内容だったが、今回の武道館は、地に足のついたストイックな名演がこうして続いたことで、貫禄すら覚えてしまった。
そして、MCがほぼなかった本編とは打って変わって、みんなが大きなハンドクラップでメンバーを呼んだアンコール以降は、ゲスらしい長めのトークも楽しむことができた。リア充に憧れていたため六畳一間の自宅に10人の男子を呼びキムチ鍋をよくしたという川谷の大学時代の話や、実はお互いに相容れなかった休日課長との初対面の話など。また、「みんなありがとう! 今日は『ロマンスがありあまる』から泣きそうだった! こんなに集まってくれるとは、ドSのこの私も思わなかったのよ。みんな好きだね、ゲスの極み乙女。が!」と言ったいこかに対し、「……ドS、関係ある?」と突っ込んだ川谷に、「ない? あるでしょっ」といこかが突き返すという場面もあった(笑)。
この日のアンコールは、前日の倍の曲数となったようだ。「jajaumasan」のアッパーなムードを受けて代表曲「ドレスを脱げ」に続くと、曲中では金の吹雪も舞い、この日のライブの大成功を祝福するようだった。なおこのアンコールまでで、アルバム『両成敗』の収録曲すべてが披露された。そのすべてがハイライトのようだったため、いかにこのアルバムが粒ぞろいであるかを身を持って理解できた。
そしてダブルアンコールで「餅ガール」「キラーボール」という大定番のナンバーを演奏すると、正面、上手、下手、そして再び正面に向けて、6人は充実の表情を浮かべながら感謝の念を深く込めるように頭を下げた。そんな彼らの実直な姿もさることながら、この日を振り返ると、ステージング自体からゲスの極み乙女。の実力を知ることができ頼もしかった。実に堂々たる初武道館だった。
text by RYOKO SAKAI
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2016年3月31日 日本武道館 セットリスト
01. ロマンスがありあまる
02. 私以外私じゃないの
03. サイデンティティ
04. 星降る夜に花束を
05. 勤めるリアル
06. シリアルシンガー
07. 煙る
08. セルマ
09. 無垢
10. 無垢な季節
11. 心歌舞く
12. id 1
13. いけないダンス
14. パラレルスペック(funky ver.)
15. オトナチック
16. Mr.ゲスX
17. アソビ
18. 両成敗でいいじゃない
<アンコール>
19. 続けざまの両成敗
20. crying march
21. jajaumasan
22. ドレスを脱げ
<ダブルアンコール>
23. 餅ガール
24. キラーボール
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