【インタビュー】TSUKEMEN、「400本のライブ経験が違う世界を見せてくれた」

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2010年3月にアルバム『BASARA』でメジャーデビューして以来、リリースした作品はすべてクラシックチャートで1位を獲得してきた、3人組のアコースティック・インストゥルメンタル・ユニット、TSUKEMEN。2015年4月には、『Opus.1~FRONTIER~』と、10月には映画音楽のカヴァー集『TSUKEMEN CINEMAS』をリリース。クラシック音楽の裾野を広げるために進化し続ける彼らのポリシーやスタンスを届けるインタビューをお届けしたい。

◆TSUKEMEN~画像~

■この三人でいるとお茶を飲んでいるような感覚でライヴを作り上げることができる
■三人で重ねた時間とライヴの本数ってやっぱり大事だなと思いました


――2015年でメジャーデビュー5周年を迎えたそうですね。

TAIRIKU:結成自体からは8年になるんですけど、三人のやりたいことをすり合わせて溶け合うまでに何年かかかったんです。それが5年目の節目でようやく、それぞれが自分を全部出してもストレスなくまとまっていくようなサウンドになってきたかなという感じがします。

――クラシックの楽器を使っているユニットにしてはライヴの本数もすごく多いですし、そういう活動の成果ですかね。

SUGURU:そうかもしれないですね。自分の師匠から言われた言葉なんですけど、例えばピアニストにも、クラシックで上手い人はいるけど、やっぱりライヴはたくさんこなさないとダメだと。師匠はもう70歳近いんですけど、1000本近くライヴを経験しているんです。「まずは500本を目指して、次は1000本やったら、俺くらいの域には達するかな」って(笑)。僕らは今までに400本近くのライヴをやらせてもらってるんですけど、ライヴの本数が少ない人とライヴをこなしている人では、見えて来る世界が違うって言うんですよ。僕ら、ちょうど1月~2月は作曲期間だったり、いろんな準備期間だったんですけど、昨日、2時間のTSUKEMENライヴをやらせてもらって、今年はここからライヴ活動が始まるんです。久しぶりに三人で弾いた時に、「家だな」と思いました。


――ライヴの会場が?

SUGURU:いえ、この三人で居る空間が。普通、ステージの上って緊張するところですよね。でも、この三人でいると、お茶を飲んでいるような感覚で息をしているようにライヴを作り上げることができる。三人で重ねた時間とライヴの本数ってやっぱり大事だなと思いました。

――「せーの」の言葉も何もなく、アイコンタクトすらなく、呼吸だけでピッタリ合う感じですもんね。

KENTA:そうですね。誰も見なくても不思議と合うんです。

TAIRIKU:熟年夫婦みたいになりつつあるかもね。目配せしただけで、「お茶ですね」っていう絶妙のタイミングで演奏できるようになってきた。

――2015年の4月にリリースした『Opus.1~FRONTIER~』は初のフルオリジナルアルバムで、10月にリリースしたアルバム『TSUKEMEN CINEMAS』は映画音楽のカバー作品ですよね。これまでもアニメの曲やゲーム音楽など、いろんなジャンルの楽曲をレパートリーに持ってらっしゃいます。いろんなジャンルの曲をやる上で、TSUKEMENとしてのルールってありますか?

SUGURU:まずは自分たちの好きなことをやるというのがあるんですけど、その前に、僕らのベーシックにはクラシックがどうしてもあって。TSUKEMENというグループとしての立ち位置、目標っていうのはクラシックなんです。今って、なかなかクラシックの音楽業界が広がっていかない状態。なので、クラシックに興味がない人に少しでも流行らせたいという思いがあります。クラシックの中ではピラミッドの頂点ではなく、本当に一番下の裾野の部分の需要を増やすということが大切だなと。小さい子が僕らに憧れてバイオリンを始めたり興味を持ってくれたりね。


▲SUGURU

――なるほど。

SUGURU:それと……アーティストとして自分たちでしか出せないものを出す。流行らせるというザックリしたものじゃなくて、僕らのところに来ないと聴けないものを持ちたいというのがあるんです。例えば「童謡を演奏してほしい」となった場合、僕らが演奏しても、他のアーティストと同じだとしたら面白くないですよね。僕らにしか出せない色や、オリジナル曲を求められるように、初期の頃からオリジナル曲は大事にしているんです。それによって、自分たちの居所を作っていかなければいけないと思います。

――カバー曲をやる場合の選曲はどうしてるんですか?

KENTA:どのジャンルも構えることなく、やってみたい曲を提案し合います。そこで「この曲は合わないだろう」ってなったら、再考して、「面白いね!」ってなったら、すぐにやってみるんですよ。あとは、もうちょっと上の世代の方から「こういう曲がいいんじゃない?」って紹介してもらったり。その時、その時で、自分たちが話し合って良いと思った曲をやる。ただそれだけです。


▲KENTA

――カバー曲って、ユニットなりの個性もわかりやすいと思うんですが、TSUKEMENならではの、三人で出すと生まれる音もありますよね。響きというか。

TAIRIKU:結果、そういうものが出ていたら嬉しいですね。自分たちはそれに甘えてはいけないと思っています。そういう自分たちの個性を追求していくと、やっぱりオリジナル曲が一番大事というところに行き着く。そういう意味で、『Opus.1~FRONTIER~』は、初めてのフルオリジナルアルバムということで、大事な滑り出しになったと思います。

SUGURU:「響き」という部分では、「他と違うようにしよう」っていうことは意図的に考えていないんです。ヴァイオリンはヴァイオリン、ピアノはピアノで、お互いに、アンサンブルの中で良い音というのは考えていますが。ただ「良い音」と言ってもいろいろあると思うので、僕らの中での「良い音」をしっかり追求しています。個人的には、まだそれは足りていないので、そこは死ぬまで伸びていくと思うし、毎年、毎年、違う味が楽しめるんじゃないかと思います。

――「TSUKEMEN」だけに(笑)。

SUGURU:ははは(笑)。そうですね。また上手くなったなとか、今、ちょっと迷走しているなとか、感じることもあるかもしれないですけど。

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