＜Tour WILD BUNNY BLUES＞ 31本目
2025年5月25日(日) 福岡CB
書き手：佐々木亮介 (Vo, G)

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福岡のホテルで作ったデモを聴く。

「全治3分38秒」という仮タイトルは、小坂井大輔さんという人の歌集からパクったもの、あくまで仮。

ここ数年流行ってる気がするブレイクビーツ？ドラムンベース？を安易に取り入れたデモ。

自分の中でブレイクビーツ？を取り入れてるバンド音楽と言えば2000年くらいのDragon Ash、あとTHE MAD CAPSULE MARKETS、Slipknotの「Eyeless」とか。

自分がデモでブレイクビーツ？に乗せたのはハードなリフではなく、もちろんペンタトニックスケール、あとはスピッツからの影響や、6〜7年前に100gecsにやられて以降あんまりアップデートされてないままの自分のノリ、手垢のついたコード進行とやったことない進行の組み合わせ…あとは去年知り合ったLAのアニメーションアーティストIla Orbisくんが「ジブリ音楽でもレイ・ハラカミでも亮介佐々木でも共通するメロディの日本的ノスタルジーって存在していてそれが面白い」みたいなこと言ってたのを真に受けて、郷愁あるメロディ、まあそれも自分にとってはスピッツ的なるものかも知れないけど、そういうものを乗せた曲。

自分でやると当然本物っぽくならないので、その偽物っぽい部分を追求すると、結構いいじゃんとなる時がある。

自分に根ざしていないスタイルやサウンドを取り入れるのはほとんど剽窃だし空っぽではある。

でも根ざしてるつもりのものだけやってても面白くならないというか、根ざされてる側も勝手に根ざして我が物顔してんじゃねーよって気持ちになるだろうなって思うというか、自分ってそもそも自分で何の発明もしてなくて好きなものを組み合わせることで生きてきただけだから、軽薄じゃないのってつまんないよねという言い訳は常に用意している。

あとは実際のレコーディングをやるときに原典たちの枠から脱走しようとすることで面白いものを目指すしかない。

前作アルバムは山でレコーディングして削ぎ落とすことに面白さを見出していた。

次はアメリカで録音して、ミックスは全部自分で破壊的にやる、がやりたいなって思ってた。

せっかく生きてるんだしめちゃくちゃやっちゃお〜みたいに思ってた。

んだけど、メンバーと話しているうちに普通に録音しましょうという真っ当な結論に至り、今は作曲自体のアイデアにノーブレーキで進んでみることで一つ活路を見出そうとしている。

史上最もポジティヴなアルバムになるかも知れない。

まだ分からない。

あ、ノスタルジーと言えば、岡山ペッパーランドで演奏した後、オーナーの能瀬さんともそれについて話した。

能瀬さんは歩く芸術辞典のような人だから、ノスタルジーというキーワードをきっかけにして瞬く間に様々な文脈からいろんなアーティストや著作を教えてくれた。

池本喜巳さんという人の『Future Nostalgie』という写真集や、保田與重郎という批評家の話など。

次の自分の何かになるかも、ならないかも。

福岡でも一生懸命演奏した。

楽しかった。

来てくれた人、ありがとう。

先日レコーディングした最新曲は、気づいたら200曲を超えてしまった自分のディスコグラフィの中で最も好きな曲だ。

それって新曲できるたびに思うことじゃないんだ。

嘘じゃないっす。

6月13日はゼップ・ダイヴァーシティへどうぞ。

──佐々木亮介

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