【Hotwire Music Business Column】2006年の音楽業界を振り返る、そして2007年の展望

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昨年、日本の洋楽部門で最も大きな売り上げを記録したのは、ダニエル・パウターの「バッド・デイ」とジェイムス・ブラントの「ユー・アー・ビューティフル」といった歌を前面に出した楽曲だった。

ライヴ音楽にとっては、フジロックとサマーソニックが二大フェスとして君臨し続けている。その他では、ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、マドンナ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズといった大御所アーティストの売り上げが目立った。また日本では、ビヨンセ、シアラ、リアーナ、ジョン・レジェンド、ニーヨ、ブラック・アイド・ピーズといったポジティブでルックスの優れたヒップホップ/R&Bアーティストが支持されている。

邦楽アーティストで売上1位を獲得したのは、その派手なネイル、見事なカメラワークによるグラビアと露わなホットパンツ姿で日本中の注目を集めたセクシー・アーティストの倖田來未だ。アメリカのセクシーアイドルの象徴だったブリトニー・スピアーズ、ジェシカ・シンプソン、ジェネット・ジャクソンの人気は下降したというのに、面白い現象である。映画『NANA』のキャラクターと本当の自分の間で分裂症気味の中島美嘉も日本で人気がある。2006年の日本のパンクとインディーズ・ロックはELLEGARDENを筆頭にその勢いを継続した。ELLEGARDENや数多くの日本人バンドは海外で勢力的に演奏を行なっている。最近、海外でコアなファン層を集めているのが、Dir en grey、D'espairsRay、陰陽座、Kagrra,などの日本のヴィジュアル系バンドだ。もう1つ業界の中で目立ったトレンドは、ベテラン・アーティストの現在までの楽曲コレクション盤の売り上げが大きかったことで、そのいい例がオフコースの『オール・タイム・ベスト』の大成功である。

洋楽では、サーフィン/ビーチ系のゆったりとしたフィーリングに、キャット・スティーブンス的な自己探究心とボブ・マーリーを彷彿させるスピリチャルな価値観をミックスさせたシンガー/ソングライターの活躍が目立った。そのトレンドをリードしているプロサーファー/ミュージシャン/映画プロデューサーのジャック・ジョンソンはアニメ映画『キュリアス・ジョージ』のサントラを担当、売上第一位を獲得してその多才ぶりを証明した。彼は現在もサーフィン関連の映画プロデュースを続けている。オーストラリア人サーファー勢のウィル・コナーズとボー・ヤングも日本で根強い人気がある。ベン・ハーパー、ドノヴァン・フランケンレイター、シム・レッドモンド、ジョン・メイヤー、ジョン・クルーズ、スライトリー・スチューピッド、マイケル・フランティ、ALO、ミシカ、ブルー・キング・ブラウンらも同様に日本で支持されているアーティスト達だ。

国境を越えたコラボレーションも最近増えており、布袋寅泰はブライアン・セッツァーと共にレコーディングとライヴ演奏を行なった。またPE'Zもイギリスのシンガー、ネイト・ジェームスとレコーディングしたアルバムが近日リリース予定だ。DJ KENTAROは現在ヒップホップ界のセンセーション、スパンク・ロックと待望の新作の制作に入っている。

ジャズにとっては比較的元気な年だった。間もなく新作をリリースするノラ・ジョーンズの作品はいまだに驚異的に売れ続けており、ジェイミー・カラム、マイケル・ブーブレ、ロバータ・ガンバリーニ、マデリーン・ぺルー、ダイアナ・クラール、リズ・ライトといった若手シンガーが注目されるのに貢献している。日本のジャズ界も同様に元気で、非常に商業的なもの、クラブキッズ受けするジャズファンク、即興演奏を得意とするバンドから、フジロックとジャイルズ・ピーターソンのニュー・イヤー・ショーで総勢30名のメンバーをなんとか舞台に乗せたア・ハンドレッド・バーズの様な素晴らしく完成度の高いモダン・ビッグバンドまで、多様性に富んだスタイルの若手ジャズミュージシャンの活躍が目立って増えてきている。

たくさんの興味深い事が起こっている中、音楽業界は確実に大きい変化を迎えている時代に来ている。CDの売上が下落する一方で、新たに音楽を宣伝し広めるのに利用できる様々な方法が生まれてきている。2007年が音楽業界にとってどの様な1年になるかは断言できないが、インターネットと携帯電話がその方向性を定める中心的な存在感を増していくだろう。


キース・カフーン(Hotwire
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