【コラム】ライブ盤が再燃、福山雅治や髭男、布袋寅泰やUVERworldなど映像作品付属ライブCDに注目が集まる理由

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“ライブ盤”の話をしよう。およそ'80年代の頃まで、アナログレコードが主流だった時代にライブ盤は特別な存在だった。スタジオ録音にはない熱や生々しさをダイレクトに刻んだ、特に洋楽ロックのジャンルでは未だ見ぬアーティストへの憧れをかきたてる必聴アイテムだった。ストーンズ、フー、ツェッペリン、パープル、フランプトン、オールマン等々。ソウルやファンクの世界もしかり。クラシックやジャズの世界ではむしろライブ盤が基本だったともいえる。日本でも'80年代までに活躍したアーティストのディスコグラフィーには、ポップス、ロック、歌謡曲に至るまできっと1枚はライブ盤がある。当時破格の150万枚を売ったBOØWY『LAST GIGS』を筆頭に、メモリアルな性格の名作が多い。

CDの時代になってもMTV『アンプラグド』シリーズなどライブ盤の名作は多いが、'90年代の日本は音楽バブル期。ハードの普及と高画質化と高音質化の追い風を受け、ライブ盤は映像作品のDVD、そしてBlu-rayへとその座を譲る。視覚の刺激が聴覚の興奮を凌駕するのは仕方がない。CDから配信へ、メディアが急速に変化していった事情も大きい。2000年代にデビューしたアーティストのディスコグラフィーにライブCDがあるのは極めて稀だ。しかし2020年代に入り、再び流れは変わりつつある。ライブ盤が復活している。どこで? 映像作品のパッケージの中で。


そして福山雅治が、LIVE FILMとして完成させた映像作品『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』(Blu-ray & DVD)だ。同映像作品にもライブ音源CDが2枚組で付属される(※ファンクラブ限定BROS.盤と初回限定盤のみ)。福山雅治のバンドといえば、バンドマスターの井上鑑を筆頭に伝説的ミュージシャンがずらりと並ぶ。類稀なる熟練スーパーバンドのプレイとライブアレンジで鳴らされるライブ音源が素晴らしいのは容易に想像がつく。また今作は最新技術を用いて、福山本人が目指す理想のライブの音が収録された。ドルビーサラウンドMIXされたLIVE FILMの映像は、まさにライブ映像作品としての新境地に至っている。視覚の刺激と聴覚の興奮がタメを張る、理想のライブの音、理想のライブ演出、理想の映像世界を表現した作品だからこそ、映像だけでなくライブCDとして付属することは必然なのかもしれない。福山雅治の初監督作品、お勧めだ。

ほかにもたくさんある。UVERworldが2023年リリースした日産スタジアム公演<男祭り>の映像作品(初回限定盤)にはオーディオトラックセレクションと題してライブCDが付いていた。彼らの映像作品にはほぼ毎回ライブCDが付属する。Official髭男dismが2021-2022年に開催したアリーナツアーの映像作品には「CD Only」盤があって単独で買うこと可能だ。2023年のmiletの初武道館を記録した映像作品(初回限定盤)にもライブCDが。2024年に出た布袋寅泰のBlu-ray映像作品(初回限定盤)にもライブCDがあった。リストはさらに続く。共通点はライブ盤で聴くにふさわしい、最高レベルの演奏と音質を誇ることだ。





ライブ盤復活の理由はたぶんいくつかある。近年の大型フェスの定着とライブパフォーマンス重視の流れの中で、熱度の高い生歌を追体験できるアイテムとしてリスナーに求められていること。よりコアなものをヘッドホン/イヤホンでパーソナルに聴き込むなど、多様化するニーズの中で相対的にライブ録音の価値が上がったこと。配信よりも音質が良く、映像作品を見るよりも手軽ということもある。録音技術の進化も欠かせない。作り手としては映像作品のスピンオフ的に、安価で制作・供給できるメリットもあるだろう。

そして何より、アーティスト側の“いいライブをいい音で聴いてほしい”という熱意がある。ライブパフォーマンスに価値基準を置くタイプのアーティストが増えているからこその、ライブ盤再評価。先に書いた福山雅治の作品も、山木秀夫、高水健司、今剛ら日本最高レベルの演奏が聴ける。主役の歌はもちろん、演奏の細部に耳を傾けるタイプのマニアックな音楽ファンが増えているのも理由のひとつだろう。

サブスクリプションや配信はなんといっても手軽で便利、ライブラリーの大きさも群を抜く。CDは音質、耐久性、コンパクトなパッケージの魅力に優れていて未だ健在。アナログ盤は独特の音の深みとアートワークの表現力で着実に復活中。新しいメディアが古いメディアを駆逐するのでなく、特長を生かして共存している2024年現在の日本の音楽シーン。廃れたかに見えたライブ盤が復活しても不思議はない。ただの映像作品のおまけではない、ライブ盤の楽しさを再チェックしてみよう。

文◎宮本英夫

■『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』

2024年12月18日発売
予約リンク:https://lnk.to/fm_livefilm2023
作品詳細:https://fmsp.amob.jp/mob/news/news_show.php?site=F&ima=0502&cd=12637


■『UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium』

2024年3月6日発売
販売リンク:https://uverworld.lnk.to/0lbdMo
作品詳細:https://www.uverworld.jp/news/detail/2731


■『Official髭男dism「one-man tour 2021-2022 -Editorial-」@SAITAMA SUPER ARENA』

2022年10月5日発売
販売リンク:https://hgdn.lnk.to/one-mantour2021-2022-Editorial-
作品詳細:https://editorial-saitamasuperarena.ponycanyon.co.jp



■『GUITARHYTHM Vll TOUR FINAL “Never Gonna Stop!”』

2022年7月3日発売
販売リンク:https://Hotei.lnk.to/g7tourfinalPR
作品詳細:https://www.beatcrazy.net/posts/pages/mncfgp


■『COMPLEX 20240515-16 日本一心』

2024年11月6日(水)発売
予約リンク:https://umj.lnk.to/AYcEEyQW
作品詳細:https://www.universal-music.co.jp/complex/news/2024-09-10/

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