| ──まず今回のタイトルの意味は?
柳田久美子(以下、柳田):島本理生という私が好きな作家に「リトル・バイ・リトル」っていう本があるんです。少しずつ明るく前向きになっていこうっていう話で、そういう意味合いがいいなって。このアルバムも、曽我部恵一さんと4年ぶりに一緒にやった作品だったので、最初にやった頃よりは少しずつ成長しているだろうし、これからも少しずつ成長していきたいと思って、それでこのタイトルにしました。
──曽我部さんと久々のタッグで9日間、みっちりレコーディングをしたんですね。
柳田:最初はデモを作ろうみたいな感じでスタジオ入ったんですけど、結局やっていったら、それが本チャンになっちゃったっていう。でもね、私は今まで、すでに出来ている曲にいろいろ言われたことがなかったんですけど、その時はけっこう厳しいことも言われました。もうちょっと踏み込んで詩を書いてもとか、まだ詩が殻につつまれているというか。そういう助言を受けながら曲作りに取り組みました。
──その9日間で一番辛かったことは?
柳田:4年前は高校生だったし初めてのレコーディングということで、何もわからない状態だったんです。4年経って、私もレコーディングやライヴを重ねて成長しているので、曽我部さんも私を一人のミュージシャンとして扱ってくださるんです。その分、いろいろ要求もあって、そういうものに対して、自分も応えたいし負けたくないというか。くらいついていってやるっていう感じだったので、自分としては辛いというか戦いというか。でも、それに対して私がしゅんとしてしまったら、何も始まらないですからね。
──恋愛が創作活動の大きな動機になっていますが、やっぱり自分の歌作りには恋愛の気持ちが一番大事?
柳田:恋愛がやっぱり、興味があるというか、そいうことなのかなと思います。恋愛をする気持ちって、日常生活を含むいろんなことにも繋がってるかなって思うんです。
──比較的に悲しげな曲が多いと思うんですが。
柳田:一番気持ちが揺れ動く時っていうのが、別れちゃった時とか、あとは反対に恋が始まる時とかじゃないかって思うんですね。そいうのを曲にしたい。だから“ラブラブで楽しいよ!”みたいのは、あんまり書けないですね。
──今回のアルバムは、歌詞とメロディーがとてもよく調和してるというのを感じます。その辺は意識して作ったのかな?
柳田:はまりが悪いのは私は嫌いで、メロディーに一番気持ちよく乗る言葉を選びたいですよね。歌っていて気持ちいいっていうのが、私の中の一番のポイント。だから、“詩”っていうよりも“歌詞”。その歌の内容や意味にこだわるというより、気持ちよくメロディーにのる言葉を選んでしまう。ちょっと意味がおかしくてもいいやっていうか。
──そこがとても自然に聴けるいい部分だと思うんですよね。でも、柳田さんらしい、とてもへんてこな感じで、すごく面白いんですけど。
柳田:私、変な響きが好きみたいなんです。周りのミュージシャンにもよく言われるんですけど、なんか不協和音が好きみたいで、不協和音になるとグッとくると言うか。
──今回のアルバムで、自分のベストな言葉とか、フレーズはありますか?
柳田:「恋に恋して」っていう曲は、曽我部さんに“もっとリアルにもっと殻から抜け出して詩を書いて”って言われて取り組んだ歌なので、その殻を破って自分なりに出せた答えかなって思います。
──アルバムのトップに「女の子」という非常に短い曲がりありますね。
柳田:これはフレーズができただけで、曲の形にできなかったものなんです。曽我部さんに“あなたはシンガーソングライターなんだから、最高のフレーズだったり、ちょっとしたものも持ってきてくれたら、後は僕が考えますから”って言ってもらったんです。それを言われた時に、自分でハッとしましたね。私はシンガーソングライターなんだから、できた材料を渡しちゃってもいいんだっていうか。パスしちゃっていいんだっていうか。それで、このフレーズを気に入ってもらえて、そのまま入れちゃったんです(笑)。
──最近の柳田さんのビッグ・ニュースというのはありますか?
柳田:フェンダーのテレキャスというエレキギターを買ったんです。いろいろなミュージシャンの人に相談してとりあえず買ってみたんですけど。いずれギター・ソロを。
──ギターソロ!? そっちに行くんだ(笑)。
柳田:ライヴでいずれやりたいですね。
──音楽以外のビッグ・ニュースは?
柳田:最近、ミュージシャンの方とかといろいろ知り合いになって、前作品のプロデューサーの高野さんがサポートやっているGRAPEVINEの方とお酒を飲んだり、一緒にバーベキューをやったり…。それってビッグ・ニュースですか?
──自分の殻を一個一個破っていくっていうことじゃないですか?
柳田:良かったー。じゃ、ビック・ニュースで(笑)。
取材・文●森本智 |
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