【ライブレポート】CROWN HEAD、初ショーケース<Secret Showcase Climbing>に決意や覚悟「幸せな人生を生きています」

結成からわずか2ヵ月で、橋本環奈主演TVドラマ『天久鷹央の推理カルテ』のオープニングテーマを担当するというチャンスを掴み、ドラマのために書き下ろした1stデジタルシングル「Hidden」でメジャーデビューを果たした日韓混合4人組ロックバンドCROWN HEAD。その彼らが6月6日、東京・代官山SPACE ODDで<1st ONEMAN LIVE ~Secret Showcase Climbing~>を開催した。
CROWN HEADにとって初めてとなるこのライブ。メジャーデビュー前からSNSを通じて、彼らのことを応援していたファンに加え、音楽および放送業界関係者やクリエイターにも向けたお披露目だったことが、彼らの鳴り物入りのデビューをより一層印象づけるものとなったが、CROWN HEADの4人は自分達に寄せられる大きな期待に応えるように「Hidden」1曲だけでははかりしれないバンドのポテンシャルをたっぷりと見せつけ、ライブを見応えあるものにしてみせたのだった。

「ユニバーサルミュージックにもさまざまな諸先輩のバンドがいますが、CROWN HEADと言えば、ユニバーサルミュージックの代表的バンドというくらい活躍してもらうことを楽しみにしています」という所属レコード会社の藤倉CEOのメッセージと、「このバンドは2ヵ月ほど前に幾つもの偶然が重なり、奇跡のように誕生したバンドです。そして今日、まさにここから歴史が始まります!」というオープニングムービーのナレーションに送り出されるようにメンバー達がオンステージ。
早速披露した「Hidden」で煌めきを放つエモーショナルなロックサウンドとともにMoto(Vo)のハイトーンボイスとLumel(B, Vo)の力強い歌声が掛け合うツインボーカルの魅力、いや、威力を見せつける。そして、そのまま「Therapist」に繋げ、メランコリックなバラードにhiroto(G)がチョーキングでフレーズを泣かせながら加えたロックなギターソロもまた、このバンドの魅力であることをアピール。
「もうやっちゃったからね、(みんなが)知ってる曲」──さあ、ここからどうしようというニュアンスを滲ませながら、Tasuku(Dr)が言ったその言葉はもちろん、彼一流のジョークだ。メンバーをカートゥーン化したMVをバックドロップに映し出しながら演奏した「Cheese」は、この曲のみ撮影を解禁して、サビの直前にポーズをキメるメンバー達の姿をスマホで捉えてもらうことで、観客をより能動的にライブへと巻き込み、自分たちのペースへと引き込んでいった。


そこから一転、続く「ブルーシンドローム」ではバラードと思わせ、2番からテンポアップ。観客を跳ねさせると、16ビートと8ビートを巧みに使い分けながらリズムを刻むLumel、この曲でも激しいソロをかき鳴らすhiroto、フィルインをたたみかけ、サビを盛り上げるTasuku──楽器隊の3人がMotoの歌の裏で絶妙なアンサンブルを繰り広げる。
そんなふうにバンド然としたライブを見せる一方で、中盤のブロックではライブとは違うやり方で支持を集めてきたSNSの動画コンテンツをライブハウスのステージで再現してみせる。Tasukuがカホンを演奏した“Acoustic特別コーナー”では、彼らのTikTokの人気コンテンツであるマッシュアップを立て続けに披露。事前に募った観客からのリクエストをもとに、この日、彼らが披露したのは、BTS × 嵐、ジャスティン・ビーバー × VAUNDY、tuki. × New Jeans、TWICE × モーニング娘。の巧みなマッシュアップだったのだが、複数の曲をシームレスに繋げるテクニックやコンテンツとしてのおもしろさもさることながら、時に掛け合い、時に歌声をハモらせるMotoとLumelのボーカリストとして異なる魅力をよりわかりやすく観客に見せつけたところにこそ、このコーナーの見どころがあったと思う。

さらにこの日、バンドはカバーも2曲披露した。マイケル・ブーブレの「Home」は、祖国の韓国を離れ、日本で活動しているLumelが「僕みたいに地元を離れて、がんばっている方々に聴いてほしい」という思いを込め、リードボーカルを担当。深みのある歌声でじっくりと歌い上げ、観客を魅了する。
「先週、TikTokにアップした動画の再生回数が60万回を超えました。その曲をやります」という曲紹介に客席から悲鳴に近い歓声が沸いたカバーの2曲目は、優里の「恋人じゃなくなった日」。同期でピアノを鳴らし、オリジナルのニュアンスを生かしながら、ロックバラードにアレンジ。hirotoのギターソロを含め、ダイナミックな演奏をストレートに観客にぶつけたところに曲の魅力だけに頼らない、ロックバンドらしい矜持を感じたのだが、その言葉はテレビアニメ『転生宗主の覇道譚 〜すべてを呑み込むサカナと這い上がる〜』のオープニングテーマに決定したことを発表して、観客を喜ばせてから演奏した「鬼灯」にこそ使うべきだろう。ギターソロでエンディングと思わせながら、バンドの演奏はまるでブレーキが焼き切れてしまったようにタイトルコールから再びサビになだれこむと、ファンキーなグルーブをうねらせ、さらに白熱していく。
シンガーとして活動していたMoto以外の3人にはそれぞれにバンド歴があるからこそだとは思うのだが、結成からわずか2ヵ月。4人の演奏からはすでにダイナミックなグルーブが感じられる。この2ヵ月、彼らがどれだけ濃密な時間を過ごしてきたのかは推して知るべし。


そして、熱量の高い演奏にはもう一つ理由が。それはバラードの「ベル」でMotoの伸びやかな歌声の魅力を存分に印象付けた直後、メンバーそれぞれに思いを語ったこの日最後のMCコーナーで明らかになる。彼らの言葉から、新たに組んだこのバンドに賭ける思いをぜひ感じ取っていただきたい。
「hirotoのことは6年前から知っていて、これが3つ目のバンド。それからLumelと出会い、hirotoが幼馴染のMotoを呼んでくれて、2ヵ月前にこのバンドを組みました。いろいろな巡り合わせがあって、この4人が集まることができました。みんなも泣きたい夜があると思うけど、自分が痛いと思ったとき、同じように痛いと思ってくれる人がきっといるはずです。今日、僕はそれを感じました。メンバー、スタッフの皆さん、来てくれたお客さん、本当にありがとうとございました」──Tasuku
「俺らはもちろん、全力でぶつかっていこうってやってきたんですけど、バンドってそう簡単にうまくいかないんですよ。今日のライブは元々、関係者に見てもらうショーケースってことで、一般のチケットは最初50枚だったんです。それが即完して、150枚まで増やしたんだけど、それも売り切れてうれしかった。このメンバーとはまだ2ヵ月なんですけど、感慨深い。Motoと一緒にステージに立つのは中学校の文化祭以来。その次がメジャーデビューってすごくない(笑)? もちろん、俺らはまだまだですけど、このメンバーとならやっていける気がするので、やっていくしかないと思ってます。本当にまだ一発目で何もないけど、これからもいろいろお届けできるように音楽もコンテンツも作っていくのでよろしくお願いします」──hiroto
「すごく幸せです。すごく楽しいです。本当に奇跡みたいなことが起きていると感じる1日でした。僕はメンタルが弱くて、すぐにネガティヴになるんですけど、最近は感謝ばかりで、幸せな人生を生きています。このショーケースには、どんな意味があるのか考えました。もう一回覚悟して、人としても、アーティストとしても成長していきますと約束する場だと思います」──Lumel
「初めてこのメンバーに会ったとき、元気がなかったんです。Tasukuさんなんて、“今までやってきたことはムダだった”と言っていました。でも、僕はそれまでの姿も応援していたし、Lumelの姿も見ていたし、hirotoのことも彼がギターを始めた頃から知っているし。そんな3人がやってきたことがムダだったと言っているのがほんとに悲しくて、“絶対ムダじゃないし、今後に繋がっていくはずだし”って思ってたけど、その時は伝えられなくて。でも、Lumelがトラックを送ってくれて、“Motoに歌詞を考えてほしい”って言われたとき、3人の顔が浮かんで、今日、最後にやる曲を作ろうと思いました。僕自身も楽器を全部売って、もう音楽はやらないと思ったことがあったんですけど、3人に出会った時に、“おまえと会えてよかった。おまえと一緒にやりたい”と言ってもらえて、また火がつきました。挫けそうになっても、次の一歩が踏み出せるように最後の曲を歌います。アンコールはありません。この曲に僕達の全てを込めます」──Moto

最後を締めくくったのは、このショーケースライブのタイトルにもなっている「Climbing」だった。バラードとも言える曲だが、タイトなリズム隊の演奏とトレブリーに鳴るギターからは、彼らがロックとして、この曲を演奏しようとしていることが窺える。曲が放つスケール感は、アメリカンロックを想起させるところも。MotoとLumelがハーモニーを重ねるメロディーには、せつなさとともに凛々しさが滲む。“We’re making a new start. さあ始まるよ”という歌詞が沁みるのは、4人がその言葉に決意や覚悟を込めたことをすでに知ってしまったからだ。
CROWN HEADの鳴り物入りのデビューは、同時に夢を諦めなかった4人の再出発でもあったところがドラマチックだった。
「必ず大きくなって、みなさんに会いにきます。待たなくていいです。必ず追いつきます!」──Moto

その言葉通り、この日、CROWN HEADは2ndシングル「鬼灯」のリリースに加え、8月9日(土)、同じ会場で<2nd ONEMAN LIVE Red Riot>を開催することを発表したのだった。この日から2ヵ月後のその日、ライブバンドとしてさらに磨き上げた姿を見せてくれるんじゃないかと期待している。
取材・文◎山口智男
■ショーケースライブ<SECRET SHOWCASE Climbing>2024年6月6日(金)@東京・代官山Space Odd セットリスト
01_Hidden
02_Therapist
03_Cheese
04_ブルーシンドローム
05_アコースティックパート ※全4~5曲
06_HOME ※カバー
07_恋人になった日 ※カバー ほか
08_鬼灯
09_ベル
10_Climbing

■1stデジタルシングル「Hidden」
2025年5月20日配信開始
配信リンク:https://crownhead.lnk.to/hiddenID
▶橋本環奈主演 テレビ朝日系ドラマ『天久鷹央の推理カルテ』オープニングテーマ
放送情報:テレビ朝日 毎週火曜 午後9時~9時54分
公式HP:https://www.tv-asahi.co.jp/ameku-takao/

■<2nd ONEMAN LIVE「Red Riot」>
2025年8月9日(土) 東京・代官山Space Odd
open18:30 / start19:00
▼チケット
スタンディング ¥3,000(税込)
https://eplus.jp/CROWNHEAD/
関連リンク
◆CROWN HEAD オフィシャルサイト
◆CROWN HEAD オフィシャルX
◆CROWN HEAD オフィシャルInstagram
◆CROWN HEAD オフィシャルTikTok







