【ライブレポート】aikoがくれた愛情の証

2020.10.19 12:00

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10月17日に自身2度目となるオンラインライヴ<Love Like Rock〜別枠ちゃんvol.2〜>を行ったaiko。

◆ライブ画像(8枚)

20時を開演としていたライヴは、寸分の狂いもなく、時間ピッタリに始まった。SEに乗ってメンバーがステージに登場し、フロアからの歓声に包まれながらaikoがステージに登場する……といった“いつもの光景”はそこには無く、始まりの余白を持たせずに、「雲は白リンゴは赤」を1曲目にライヴは突然始まった。何処からともなく勢いよく走って来た車に、突然乗っけられた気分である。

会場でaikoの登場を今か今かと待ち侘びるドキドキ感が無いことから、“突然みんなの心を拐って一気にボルテージを上げてやろう!”と考えた、楽しませ上手なaikoの仕業だったのだろうか。

そんな突然の始まりにまんまとハマり、2曲目に届けられた「あたしの向こう」では、ステージ狭しとステップを踏みまくって歌うaikoの歌声に声を重ねていた自分に気付いた。あー、もう、めっちゃ楽しいじゃん。

ここからしばらくの間、1人の空間でaikoを独占出来ると思うと、“やっぱりライヴは生以上のものは無いよなぁ”と思っていた気持ちを直ちに改め、“これはこれで今しかない楽しみ方だよな!”と、女心と秋の空並みに寝返った。

それほどまでに一瞬にして齧り付かせてしまうとは、さすがはaiko。魔性の女である。

生成りの総レース仕立ての、たっぷりとしたオールインワンに秋色のオレンジコンバース。柔らかい着ぐるみを纏った様な姿は、なんとも愛らしい。これぞ唯一無二の“aikoという生き物”だ。

円の中心で歌うaikoを取り囲む様にメンバーが位置するステージの使い方は、フロアライヴの様な構成だ。これまた、有観客ライヴでは見ることの出来ない立ち位置である。

ときおりメンバーと目を合わせながら歌うaikoを、メンバーが放つ音が包み込む。その構成は、いつも以上にaikoが音を纏い、自由に泳いでいる印象を受けた。

いつもはライヴを観に来てくれたお客さんに囲まれ、歓声の海の中でちゃぷちゃぷと泳ぎまくるaikoだが、今日は一緒に戯れてくれる波は無い。故にちょっぴり“ぼっち感”が寂しそうだが、しかしaikoには画面越しに観てくれている“みんな”の姿が見えていた様である。

リズミックな楽曲に軽やかに乗って歌った「ドライブモード」。ど頭からここまで全力で歌い続けたaikoの額には、4曲目にしてうっすらと汗が滲んでいた。

「改めまして、aikoです。こんばんは。<Love Like Rock〜別枠ちゃんvol.2〜>。前回行ったのが3月だったので、約7ヶ月ぶりのライヴです。こんなに時間が経っていたなんて、何してたんやろな? なんとなくこの7ヶ月は、いろんなことがあり過ぎて、いろんなことが抜けてる気がしますけど、今日は、いろんなことを取り返すためにこのライヴをやります。なので、みなさん、最後までよろしくお願いします」

そんなaikoのMCに、スタッフ達が拍手を贈る。身内からの拍手を受け、ちょっぴり恥ずかしそうに“ありがとう”を言いながら、aikoは続けて「桃色」を届けた。シンバルのカウントから始まるイントロが、ディープなロックナンバーかと錯覚させるこの曲がとても好きだ。

しかし、歌い出しからは、そんなイントロを裏切るかの様にキャッチーでキュートなメロと歌詞が周囲をaiko色に染めていく。ドラムソロから繋がれた、細かく上下する難解なメロディが特徴的な「冷凍便」では、メンバーの外側を回りながらカメラに元気に手を振って見せた。

ライヴなら花道をくるくると回って踊りながら走っていただろうなぁ。と、これまでのライヴの景色を画面のaikoに重ねてみたりした。やっぱり生で会いたくなる。そこに、タイミングよくこの曲の一つの見せ場でもある後半部分を担うジャジーなブロックが流れ込んで来た。

グリーンと赤の照明の中でジャジーなメロに声を置くaikoの表情がアップになると、より歌詞がグッと胸の奥に入って来た。生のライヴじゃここまで表情見れないもんね。これはこれでaikoを近く感じることが出来ているのかも。と、またまた女心と秋の空並みに配信の魅力へと寝返った。

寂しげなメロディと、高く張り上げられた声で歌われる切ない歌声が心を撫でる「格好いいな」では、強い光がaikoを逆光で照らしつけていく。幻想的な場面に響く歌声は、観客の居ない静けさを感じさせた。

「コロナのせいでみなさんに会えないので、配信ライヴをしようと思ってこうやって今日の日を迎えることが出来たんですけど、本当はみなさんに早く会いたいなと思っています。頑張ってます。しっかり汗もかいてます。この服(衣装)はね、汗をかくとどんどんどんどん溶けていく仕組みになっているので、最終的にはもう……。みなさんお金を払って配信ライヴを観てくれているので……。」

これこれaikoさん。今日は生配信ですから……。そう。aikoの生ライヴでは、中学生レベルの下ネタはオキマリの光景なのである。

ということで、ある意味オキマリの光景ではあったのだが、まさか、ここから音数の少ないアコースティックブロックに繋がれるとは思わなかった。

しかし、よくよく振り返ってみれば、これもまたよくある光景だ。底抜けに自然体なaikoは、通常のライヴでも、“中学生レベルの下ネタ”からバラードへと繋ぐこともしばしば。ってことは、全ては通常運転という訳だ。

aikoはここから「こいびとどうしに」「夢見る隙間」「星のない世界」と、アコースティックバージョンで歌を届けたのだが、中でも、「夢見る隙間」は、昨年の夏に渋谷Bunkamuraシアターコクーンで行われた『立川談春 35周年記念公演 玉響~tamayura~』のみ(2回公演)で届けられて以来の歌唱だったという特別なアレンジでの披露となった。

アコースティックという音数の少ない中で聴くaikoの歌は、更に心地良い響きを宿す。

「ライヴが出来るのは嬉しいけど、こうやって1曲1曲過ぎてって、“あぁ、もう終わりなんやな”って思うと寂しく感じますね。このセットも、今日この日の為にスタッフさんが作ってくれて。今日1回しかここで出来ないなんて勿体無いし。毎月10日はaikoの日とかってやれたらいいですよね(と、ここで、メンバーから“15日でしょ”とのツッコミが入る)。あ、なるほど! “15=aiko”ね! たしかに。ありがとうございます(笑)。これからも頑張ります。そして、みなさんに1日でも早く会える日を願って。たくさん曲を作って頑張りたいと思います! (ライヴで)初めて歌います。みなさん、聴いて下さい。10月21日に発売になります、ニューシングル「ハニーメモリー」です」

イントロを設けない、いきなりの歌い出し。10月9日に先行配信でリリースされたこの曲は、未練という後悔が胸を締め付ける、甘く切ないラブバラードだ。テレビの生放送での歌唱はあったものの、こうして自らのライヴで歌われるのは初となる。

歌い出し早々に置かれた“君がいないと味がしないんだ”という、主人公の心に大きな穴がぽっかりと空いているのを痛いほど感じ取れる、これ以上にない的確な感情表現は、何度聴いても強烈に胸を突き刺してくる。しかし、こうしてaikoのライヴ空間でこの曲を聴くと、公開されてまだ1週間しか経っていないのに、早くも昔からずっとaikoに歌われて来たかの様な存在感を放っていた不思議に驚いた。きっとそれほどまでにaikoの中から自然に生まれた感情で描かれた歌詞であったに違いない。

“曲はライヴで育つ”というが、ライヴが出来ない今、aikoはちゃんと1人でこの曲を大切に育てているのだろう。ライヴで観るこの曲は、ミュージックビデオで観る寂しさが勝るイメージよりも、ずっとずっと激情的だった。ライヴだときっと、主人公を歌うaikoを、未練という後悔がより締め付けるのだろう。こんなにもライヴで曲を変化させられるアーティストは、そういない。

「久しぶりにこんなに声を出したり、汗をかいたのが7ヶ月ぶりなので……。みんなと会うのが当たり前で、アホなことをして、冗談ばっかり言って過ごすことが当たり前やったのに、そういうことが出来なくなる時代が来るなんてびっくりですけど……。私たちは年齢を重ねたからまだいいけど、小学生のみんなとか、学生さんたちはほんまに可哀想やなって思う。何か出来ることがあったらいいなって思いますね。歌うことでみんなが笑ってくれたりとか。デビューして21年やし、だいぶメンタルも強くなってるから、ずっと喋り続けられるんやけど、配信やからあんまりアホなこと言われへんしね(笑)。私なんて、バナナ無くてもなんぼでもスベってるからね(笑)。あ、でもな、知ってた? 実際には、バナナより長葱の方が滑るらしいで! テレビでやっててん!」

なんの話!?と、思わず笑ってしまうaiko流の和ませ方である。とにかく常に相手のことを考えるaikoらしい背中の押し方だ。

「恋の涙」から始まった後半戦では、またまたメンバーの外側を勢いよく走り、メンバー1人1人とコンタクトを取りながら、ラストへと更に盛り上げていった。

そして「ハナガサイタ」では、画面の前のオーディエンスに、チケット購入者にチケットとセットで送られていた“例のブツ”を振ってくれる様に誘導し、ラストスパートへと導いた。

“例のブツ”とは、自身の手描きのイラストとメッセージ入りの銀テープのことである。本当ならば、会場で客席に放たれていたであろう銀テープ。しかし、この日は、aikoとファンとの距離を繋ぐ大切な赤い糸となっていた様に思う。

「みんな今まで、いろんな状況の中、ライヴに来てくれてたと思います。毎回毎回大切な時間でしたけど、コロナになってからこんなにもライヴが大事なものだったと改めて気づきました。こんな形でこんな風に思うなんて思わなかったです。だから、今日、ライヴが出来て本当に良かったです。また絶対にみなさんに会えることを信じて、一生懸命に頑張るので、みんなも一生懸命に楽しく生きて下さい。本当にありがとうございます。でも、やっぱりみんなが居ないと寂しいですね。じゃあ、歌います。最後の曲です」

ライヴという場所を、改めて大切な掛け替えのない場所であることを噛み締めながら、画面の向こうに居るファン達にメッセージを贈ったaikoは、その言葉を歌に変え、最後に「約束」を届けた。

“いつかまた会える日が来るでしょう その日まで必ず元気でいてね”

そう歌われる「約束」は、この日が来るのを知っていたかの様なメッセージに思えてならなかった。

aikoは「約束」で本編を終え、メンバーと共にステージを後にしたのだが、再びステージに戻り、アンコールで「Loveletter」を届け、この日のライヴを締めくくった。

誰も予測しなかった新型ウィルスの感染拡大は、いろんな人の心を傷付け、そして笑顔を奪った。そんな中で、アーティスト達は今、自分達が出来ることを必死で探り、自らの音を、そして存在を求めてくれる人達の為に何が出来るかを考え、いかなる方法でそれを実現させるかを考えている。

aikoももちろんその1人。チケットと一緒に贈った“例のブツ”も、彼女が、少しでも観てくれる人達と近くで繋がっていたいと願った結果だ。aikoが一生懸命に考えた、ファン達への愛情の証である。そんなaikoの“みんな”を想う気持ちが、今回の<Love Like Rock〜別枠ちゃんvol.2〜>には、溢れんばかりに詰め込まれていたと感じた。

この日のライヴは、10月24日23:59までアーカイブで視聴可能となっているので、そんなaikoの想いを、何度でも、擦り切れるまで受け止めてあげて欲しい。

また、チケットも引き続き販売中なので、まだ“aiko未体験”という人達にも、是非この機会にaikoと出逢ってもらいたい。

aikoとの出逢い、aikoと共有する時間は、貴方を笑顔にする力と、貴方の心を柔らかくする力をきっと与えていくれるからーーー。

文◎武市尚子
写真◎(C)ポニーキャニオン

■セットリストプレイリスト
https://aiko.lnk.to/LLR_betsu2

セットリスト

1. 雲は白リンゴは赤
2. あたしの向こう
3. プラマイ
4. ドライブモード
5. 桃色
6. 冷凍便
7. 格好いいな
8. こいびとどうしに
9. 夢見る隙間
10. 星のない世界
11. ハニーメモリー
12. 青空
13. 恋の涙
14. 染まる夢
15. クラスメイト
16. ハナガサイタ
17. be master of life
18. 約束
E1. Loveletter

■aiko<Love Like Rock〜別枠ちゃんvol.2〜>

■配信日時
2020年10月17日(土) 20:00配信開始予定
※10月24日(土)23:59までアーカイブ配信あり
■チケット販売
販売期間:2020年8月30日(日)19:00〜2020年10月24日(土)18:00
料金:3,300円(税込)
※別途、配信メディアごとに異なる手数料がかかります。
■配信メディア
・aiko official Fan Club Baby Peenats
http://aiko.com/llr_betsu2/about/
・LIVEWIRE
https://livewire.jp/schedule/aiko201017/
・ローチケ LIVE STREAMING
https://l-tike.com/aiko/
■問い合わせ先
視聴方法、チケット購入に関するご不明点は、各配信メディアへお問い合わせください。
■「Love Like Rock〜別枠ちゃんvol.2〜」特設サイト
http://aiko.com/llr_betsu2/
■Love Like Rock 〜別枠ちゃんvol.2〜 グッズ販売ページ 
https://aiko.com/store/llrs2

◆aikoオフィシャルサイト

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