【インタビュー】ACIDMAN、大木伸夫が語る武道館公演の収穫と新たな挑戦「いつかは死んでしまう人生の中で、たった一滴の時間が“最高になった”と思えたら」

2026.03.31 18:00

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全国ツアー<This is ACIDMAN 2025>のファイナルとして、10月26日に開催された7年ぶり7度目となる日本武道館公演を余すところなく収録したACIDMANの最新ライブBlu-ray『This is ACIDMAN 2025 in 日本武道館』が4月1日にリリースされる。

もちろん、その一番の見どころは約3時間におよんだ日本武道館公演の全20曲には違いない。しかし、そこに3月から8ヵ月かけて、全国10ヵ所を回った<This is ACIDMAN 2025>のツアードキュメンタリーを加えることによって、今回のライブBlu-rayは、2025年がACIDMANにとってチャレンジの1年だったことを物語る貴重な記録になったことは、ここで声を大にして言っておきたい。

“これぞACIDMAN”と言えるセットリストを前もって発表してからライブに臨むワンマンライブが<This is ACIDMAN>だ。5度目の開催となる2025年は前述したとおり全国10ヵ所を回る同公演初のツアーとなった。それも含め、2025年のチャレンジがACIDMANに、どれだけ大きな成果をもたらしたのか。ツアーを振り返りながら、ライブBlu-ray『This is ACIDMAN 2025 in 日本武道館』の見どころを語ってくれた大木伸夫(Vo, G)のインタビューからぜひ感じ取っていただきたい。

ACIDMANは4月9日から、2025年のチャレンジの成果のひとつと言える13thアルバム『光学』を引っ提げたツアー<ACIDMAN LIVE TOUR “光学”>を開催する。6月27日に迎えるツアーファイナルは、18年ぶりとなる幕張メッセ公演だ。ACIDMANのチャレンジは、2026年もまだまだ続く。

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■あらゆる誤解が解けて
■僕らの音楽はもっといろいろな人に届く

──ライブ映像作品『This is ACIDMAN 2025 in 日本武道館』本編の最後でも語っていましたが、改めて2025年10月26日の日本武道館公演の感想から聞かせていただけますか?

大木:本当に感謝しかないです。7年という時間を越えて、満員の日本武道館の景色を見ることを目標に1年間ずっとやってきて、あの日ステージに出ていって、本当に2階の奥の奥までお客さんが入っている景色をまず目にした瞬間に感謝が溢れてきました。ただ、一瞬でも気を抜いたら、感極まっちゃうと思ったから、そのまま気を抜かずにやり通して、最後、ライブが終わったとき、ひとつの目標を達した歓びなのか、安堵なのかわからないけど…とても満ち足りた気持ちになれました。

──そこから時間が経つにつれ、そういう歓び以外の、もうちょっと冷静に自分たちのライブパフォーマンスを振り返る、ということもしたのではないかと思うのですが。

大木:今回、武道館公演をライブBlu-ray化するにあたって、粗編集したものを見せてもらって、ようやくライブを客観視できました。とてもいい1日だったと思うし、お客さんの表情を見ても、演出を含め、かなりレベルの高いものができたと思っています。Blu-rayを見てもらえれば、このバンドの高いポテンシャルを感じてもらえるんじゃないでしょうか。

──演奏中、LEDスクリーンに映した映像のクオリティーも高かったと思います。曲によっては、歌詞も映し出していましたが、それはやはり、どんなことを歌っているのか理解した上で歌詞もしっかりと受け止めてほしいからですよね?

大木:そうですね。もちろん、音楽って気持ちや感覚で受け止めるものだと思うから、歌詞を読んでもらわなくてもかまわないんです。だけど、客席で改めて映し出された歌詞をじっくり見たら、全然違う印象に聴こえたり、“こういうことを歌ってたんだ”って驚いたり、新たな発見があると思うんです。初めて僕らのライブに来た方もいたと思うし。だから、本当は全曲やりたいぐらいなんですけど、さすがにそれはトゥーマッチだから、僕の本質を歌っているような曲だけ歌詞を投影しています。

──演出面でいえば、ライブ冒頭の「world symphony」から紙吹雪が大量放出されましたよね。いきなりのハイライトというか、クライマックスをここに持ってくるか!?という驚きがありました。もちろん、その後もハイライトやクライマックスはそこかしこにあったんですが。

大木:それはもう、初っ端からいったれ!っていう祝祭感というか意気込みの表れですよね。

撮影◎Taka”nekoze photo”

──今回の『This is ACIDMAN 2025 in 日本武道館』は映像作品としてはいかがですか?

大木:本当に素敵な瞬間をいっぱい切り取っていただいていると思います。ディレクションは、僕の親友でもあるetudeのアキさん(小田切明広)という方で、もう15年近い付き合いなんです。僕は彼の才能に惚れこんでいるんですけど、撮影はこの1日しかないわけですから。二度と撮り直せない瞬間をいっぱい押さえてくれて、最高の作品になったと思います。僕らの音楽はもちろんですけど、僕の性格も含め、僕自身をすごく理解してくれていることが映像から伝わります。

──大木さんの視点で見どころを挙げるとしたら?

大木:もちろん全曲です(笑)。その中でもストリングスセクションの皆さんに入っていただいた8曲目の「sonet」から13曲目「廻る、巡る、その核へ」までの真ん中のブロックがあまりにも素晴らしい。気持ちの入ったボーカルもさることながら、改めて、歌詞も含め、楽曲が素晴らしいと思いました。自画自賛になっちゃいますけど(笑)。

──バラードを含め、じっくりと聴かせる曲を続けて演奏したセクションですね。

大木:ええ。そういう静かなセクションで、曲の完成度と、それを表現するバンドの集中力を表現できたっていうのは、バンド冥利に尽きるというか。長いことこのバンドをやって来たからこそできる演出だったと思います。こういうところをいろいろな人に見ていただけたら、あらゆる誤解が解けて、僕らの音楽はもっともっといろいろな人に届くだろうと思います。

──あらゆる誤解というのは、たとえば?

大木:“激しいロックバンドなんでしょ”みたいな。ロックバンドであることに誇りはあるんですけど、そう思われることに“そこまでこだわっていないんだけどな、こっちは”というか。ロックバンドっていうひとつのワードだけで、だったら聴かないという人もいるし、バンドは好きじゃないという人もいると思うんですけど、さっき言ったところを見てもらえたら、“音楽の可能性をもっと深掘りしているバンドなんだ”ってことは認識してもらえるはずだと思いました。

撮影◎ニシムラカツキ

──さっきおっしゃっていた「sonet」なんですけど、最初、ストリングスの音が聴こえてきたとき、同期で流しているんだと思ったんですよ。そうしたら幕が上がって、そこでストリングスセクションが演奏しているという。あの演出には、やられた!と感じました。

大木:幕をあのタイミングで上げることは、僕らのライブ制作をやってくれているスタッフのアイデアなんです。とてもいいアイデアだと思いながら、いつか武道館でやりたくて、1年半ぐらいずっと寝かせていたんです。やっとできる!と思って、やってみたら見事にハマりましたね。

──曲間の大木さんのMCもカットせずにBlu-rayに収録されていますが、そこも見どころですよね。

大木:今回はどうでしたっけ。見どころでしたっけ? いつも同じことを言ってるから、僕自身はわからないですけど。

──改めて、大木さんがどんなことを考えながら音楽を作っているのかを知ることができるという意味でも見どころだと思うんです。失礼ですけど正直、MC長いじゃないですか(笑)。

大木:ははは。もっと正直に言ってくださいよ(笑)。

──いや、長いMCももはやライブの見どころというか、聴きどころになっているんじゃないかと思うんです。

大木:あれでも短くしようとしてるんです(笑)。努力して、その結果があれなんです。だから、本気で喋ったら、とんでもないことになってしまう。たぶん1時間じゃ収まらないと思います。その意味では、短いMCだったと思います(笑)。

──武道館でもおっしゃっていたじゃないですか。「申し訳ないけど、この話、まだまだまだ続くよ」って。もはやネタなんじゃないかっていう(笑)。

大木:いやいやいや。あれは本当にネタじゃない。もうこの年齢になると、喋りながら、聞いていただいている皆さんの気持ちが手に取るようにわかるんです。同じようなことを、飲みの席でもずっと言い続けているので、興味ない人もいるというのはわかっているんですけど、“だけど、言わなきゃいけない時はあるだろう”って気持ちが言わざるを得なくさせるんです。だから謝って、“一度筋を通したんだから、あとは喋らせてもらうよ”っていうちょっと乱暴なやり方なんですけど、それはもうしょうがない。頭の中でも、もう時間だよってランプは点滅しているんです。でも、“今、やめたら意味ないんだ”っていう。お客さんにちゃんと伝えたいことがあって、10人のうち1人でも心が動けば、世界が変わるんだよって気持ちになるんです。そうしたら勇気が湧いてきて、伝えるしかなくなっちゃうんです。喋っても喋らなくても、どっちみち後悔しちゃうから、だったら、喋った後悔を選んでますね。

──何を喋るかはあらかじめ決めているんですか?

大木:ほとんど決めないです。デビューした頃は書いたりもしたり、前日、風呂に入りながら喋ってみたりもしたんですけど、全然うまくいかないから。ある時からその時に思ったことを喋るかたちにしました。“リリースやライブの告知はここで言おう”って決めておきますけど、それ以外のことはむしろ考えないようにしてます。

──それでもあれだけ喋れるということは、普段からそれだけいろいろなことを考えているということですよね。今回のライブBlu-rayと全然関係ない話ですけど、それを本にしてみたらどうでしょう?

大木:そういうお話をいただけるなら、ぜひやりたいです。昔、いただいたことがあって、その時はスケジュール的にできなかったんですけど、お声がけいただいたら、やらせていただきたい。子供から大人まで楽しめる宇宙論みたいなものをずっとやりたいと思ってるんです。そういう本って山ほどあって、たくさん読んできましたけど、正直わかりづらいんです。だから、ちゃんと子供でもわかるものにはトライしたいといつも思っています。

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