【インタビュー】Azavana、初のフルアルバムに現在に至るまでのバンドの軌跡「みんながいろんなことを抱えながら生きている」

2026.04.04 19:00

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Azavanaが3月12日、自身初のフルアルバム『生きていたいと流れ着いたこの街で』をリリースした。2026年初頭より関東圏を中心に開催してきたワンマンツアー<心音>のファイナル公演となったZepp Shinjukuでは、いち早くアルバムの世界観を予感させるライヴを展開。4月からは、<1st Full Album Release Tour「生きていたいと流れ着いたこの街で>を東名阪のCLUB QUATTROにて開催し、アルバムに込めた意味をさらに深く追求していく。

Azavanaが1stフルアルバム『生きていたいと流れ着いたこの街で』に描いたのは、過去から現在に至るまでのバンドの軌跡であり、未来へと繋がるストーリー。アルバムというフォーマットが持つ意味を改めて提示しつつ、今の彼らだからこそ表現できる思いと音が刻み込まれたかたちだ。その制作背景から楽曲の細部に至るまで、収録された1曲1曲について遼(Vo)、詩結(G)、S1TK(Dr)に訊いたインタビューをお届けしたい。

1stフルアルバム『生きていたいと流れ着いたこの街で』

   ◆   ◆   ◆

■別々のバンドをやっていたメンバーが
■各々の武器をひとつにして進んでいく

──まず、Azavana初のフルアルバム『生きていたいと流れ着いたこの街で』が完成した率直な感想からお願いできますか。

詩結:制作期間はワンマンツアーと同時進行だったのもあって、だいぶ目まぐるしかったんですよ。でも、いざ完成形を聴いたときは“いいアルバムができたぞ”って素直に思いましたね。アルバムとしての聴き応えがあるっていうのかな。近年、アルバムを通して聴くっていう文化は、ちょっと薄れてきていると思うんですよ。

──サブスク全盛の現代においては、そうですね。

詩結:でも、“アルバム1枚を通しての意味”みたいなものをちゃんと現代に取り戻す作品にできたと思うんです。

S1TK:アルバムが完成して一番大きく感じたのは達成感ですね。ミックスにも立ち会ったんですけど、そのときに“あのデモがこんなふうに変わったんだ”っていう楽曲に対する発見とか、“こういうアプローチをしたんだ”っていうメンバーに対する新しい発見もあって。制作過程で楽曲に命が吹き込まれるっていうことを実感したし、それも踏まえていいアルバムだなと思います。

──多忙な中でのアルバム制作だったと思いますが、遼さんはいかがでしたか?

遼:朝までレコーディングして、そのままワンマンライヴに向かうような、本当に今までに経験したことがないくらいのハードスケジュールでしたから。でも、やっぱり“1stアルバム”ということもあって、気合いは入っていました。

遼(Vo)

──その“1stアルバム”にはどんな青写真があったのでしょう?

遼:まず、『生きていたいと流れ着いたこの街で』というタイトルは1stシングル「灰色の海を泳ぐホタル」の歌詞から持ってきているんですけど、これはAzavana始動にあたっての思いを曲にしたものだったんです。別々のバンドをやっていたメンバーが各々持っていたものや培ってきたものを一つにして、これからAzavanaとして進んでいくっていうメッセージを込めたんですね。過去の意思も大切にしながら辿り着いた場所が、このAzavanaというバンドだと思うので、バンドの名刺になるようなアルバムにしたかった。結果、納得のいく仕上がりになりました。

──明確な作品像がある中で、制作はどのように進めていったんですか?

遼:いわゆる選曲会を開いて、ただ作った曲を寄せ集めたようなアルバムにはしたくなかったんです。そのことは、初めからメンバーにも伝えていました。シングル曲も含めて、全ての楽曲がピースとしてハマる曲順もそうですし、最初から最後まで順に聴くことでストーリーを感じさせる流れにもこだわりました。

詩結(G)

──詩結さんもおっしゃった“アルバム1枚を通しての意味”ですね。では、収録曲1曲ずつ順を追いながらお訊きします。1曲目はインストゥルメンタル「「」」で、ワンマンツアー<心音>ファイナルのZepp Shinjuku公演のオープニング曲としても披露されました。

遼:<心音>ツアーの地方公演で使っていたSEにバンド演奏を混ぜて作った曲です。ドラムから始まって、ひとりずつ音を重ね、その最後に全員の音が一つになるようなイメージで作りました。タイトルはアルバム全曲を聴いてもらって、聴いた人それぞれに決めてほしい。だからタイトルは付けずに「「」」と表記しました。

S1TK:自分も、ドラムからベース、そしてギターとひとりずつ音を重ねていく流れの曲がほしかったので、それがアルバムのSEっていうのは、おしゃれでいいなと。

詩結:それぞれ短いセクションの中でも、メンバーのキャラクターがわかりやすいプレイで構成されてると思うんですよ。Zepp Shinjuku公演でもアルバムと同じく「「」」から「Erica」に続く流れだったんですが、いい緊張感を持ちつつ披露できたんじゃないかな。

──遼さんの中には、その流れも構想としてあったんですよね?

遼:はい。「「」」からのつながりを考えて作ったのが、「Erica」です。

詩結:遼から「Erica」のデモが上がってきた時に、まずは諒平(G)がアレンジをしたんですけど、その時点ではローのリフが前面に出て、いわゆるハードロックっぽい雰囲気だったんです。そこから「もっと幻想的な雰囲気がほしい」という遼のリクエストとともに僕にアレンジが回ってきて、今の形になったんですよ。

遼:ヴァースはなるべく抑えて、サビで爆発させるようなイメージを伝えながらアレンジしていきました。ギターアレンジもデモの時点であまり作り込まず、ふたりのギタリストの個性をガッツリ入れてほしくて任せたんですよ。

詩結:僕は全体的にシューゲイザーっぽく、後ろでワーッと雰囲気を作るようなギターアプローチをしています。あとはBメロの両サイドのクリーントーンも、特に印象的に聴こえるんじゃないかな。ここはベースがコード進行を引っ張っていて、その上でツインギターが装飾音としての役割を担っているんです。

S1TK:ドラムは曲の流れに沿って、AメロとBメロは疾走感を出したかったので、ハイハットの使い方にこだわりました。ドラムに関してもわりと好きにやらせてもらえるので、その都度マイブームとか、やったことがないアプローチも織り交ぜながら叩いています。

S1TK(Dr)

──「Erica」という言葉は花の名前だと思うんですけれど、Azavanaの原点作品でもある「カトレア」に続いて、花の名前がつけられた楽曲が出てきたことも興味深いです。

遼:“エリカ”の花言葉が“孤独”や“寂しさ”で、過去のことにも触れて書いたんですけど。そういった過去から今につながっていくということを表現しました。だからこそ、“この位置”に並べたっていうのもあります。

詩結:ちなみに、諒平は「エリカって誰やねん!」って言いやがりましたけど(笑)。

──諒平さんらしい(笑)。遼さんのおっしゃる“この位置”というのは、3曲目の「灰色の海を泳ぐホタル」に続く位置ということも含めて?

遼:はい。“過去のことにも触れて書いた”「Erica」から、『灰色の海を泳ぐホタル』の“今”につながっていく流れも、初めから決めていました。

──この機会にうかがいたかったのですが、遼さんの中で“ホタル(蛍)”というモチーフはどういった意味合いで使っている言葉なんでしょう?

遼:“ホタル”は以前から使っていたワードで。蛍に儚さや命を強く感じることもあって、自分の中でテーマにしていました。

──ある種、“命”の象徴といいますか。

遼:そうですね。それも踏まえて自分が掲げていた“ホタル(蛍)”、楽器隊はもともと“灰色の迷宮”という意味をバンド名に持って活動していたこともあったので、「灰色の海を泳ぐホタル」というのは両方を示すワードをタイトルにしたというのもあります。

──その「灰色の海を泳ぐホタル」に続く楽曲が、「TATTOO」です。

遼:ダークな雰囲気の曲があまりなかったので作りました。変わったリズムも入れたい要素のひとつではあったし、今までにはなかった音色も使って、ちょっと遊んでみました。

──エスニックな雰囲気があって、歌も妖艶な感じですよね。そういった部分を強調させるギターアプローチは必要不可欠です。

詩結:やっぱり一番耳につくのはイントロをはじめとするペダルエフェクターを駆使したノイジーな遊びフレーズじゃないかと。ただ、案外アレンジが難しかったのは、Aメロ裏のアルペジオだったんですよ。メロディーラインとシンセフレーズの間を縫って結びつけるようなプレイは、緻密に作り上げましたね。自由に暴れるアバンギャルドなプレイの一方で律儀さがある。その両極端な要素が同居している曲です。それと、遼が最もこだわっていたのが、1サビ終わりのクリーントーンの掛け合いパートで。

遼:ツインギターがアルペジオで交互に掛け合うっていうのもなかなかなかったので、作曲段階から入れていたんです。

──ドラム始まりもポイントですよね。

S1TK:ドラム始まりの曲がほしかったんで、“遼、ナイス!”と思いました。「TATTOO」はライヴのセットリストのどの位置に入れてもハマる曲だから、盛り上がる雰囲気を壊さないように、結構シンプルなドラムにして、要所要所に自分のこだわりを入れながら、いい感じに仕上げられました。Aメロは16ビートなんですけど、普通のドラマーはひとつのハイハットで叩くところを、僕はL/Rのハイハットを使っているんです。インチも小さいのでタイトで粒立ちが良いし、普通のビートにも臨場感が生まれるんですよ。

──ちなみに「TATTOO」はベースも肝となっていますが、今回のアルバムはリズム隊としてはいかがでしたか?

S1TK:Яyu (B)とは長くやってきていることもあって、阿吽の呼吸ができているので。だからこそ安心して任せられるし、向こうもそうなんじゃないかな。性格は全く違うんですけど、ライヴでも音源でもシンクロしているなって思います。

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