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──まずは初来日ということで、東京の第一印象から聞かせてもらえます?
PHOENIX (B): まず予想と違ってたのは、空港に着いたらまさにそこがビルだらけの東京なんだろうと思ってたのに、全然違ってたこと。で、1時間もすればそんな景色の中に飛び込むことになるんだろうなと思ってたら、道の両脇はずーっと緑がいっぱいでさ(笑)。空港って東京の外にあるんだってね。でも渋谷とか出かけてみたら、クールだったよ。
JOE(DJ): 俺は新宿に行ったんだ。ビルの大きなスクリーン(おそらく新宿ALTAのことだろう)にビキニのネエちゃんが映ってて、思わず足を止めちゃったね(笑)。
MIKE(Vo): 実はそれでJOEが2時間ほど迷子になってたんだ(笑)。
JOE: ハハハ。で、その後は原宿に行ったんだ。目的地はキディランド。オモチャをいっぱい買ったよ。ロボットをね。ガンダムとかエヴァンゲリオンとか。
──あ、そういう趣味なんスか?
MIKE: JOEは帰りの飛行機でタイヘンなことになるよ。ロボット専用のバッグが必要だし、「すいません、そこの席、ロボットのために空けてもらえますか?」って訊かなきゃならなくなる。「できれば窓側がいいんですけど」って(笑)。
JOE: ご心配なく。コーヒーの紙コップに切り込みを入れて、ロボット専用の椅子を作ったから(笑)。カーテンをちょっと切り刻めばクッションも作れるし(笑)。
──器用なんですね(笑)。ところで滞在先のホテル周辺には、随分とファンの女の子たちが集まってたようですが。
JOE: ああ…。だけどみんなPHOENIX目当てなんだ。俺が声かけたら「PHOENIXはどこ?」だって(笑)。きっとこの髭が気に入られてるんだろうな。この色の髭が(笑)。
PHOENIX : 空港にもファンが来てたな。
MIKE: まったく予想してなかったけどね。でも日本のファンはみんな礼儀正しいというか、場をわきまえてくれてるからいいよね。ホテルにやって来るような子たちでも、目当てのメンバーのサインを手に入れたら、そこで帰ってくれる。街にくりだす時にまでついてくるわけじゃないし、部屋まで押しかけてくるわけでもないから。
──アメリカのファンは違う、と?
MIKE: ツアー・バスに押しかけようとするファンは確かにいるね。だけどホテルの場合は大丈夫。ジェイムズ・ボンドじゃないけど、俺ら、みんなカッコいいカヴァー・ネームを使ってるから。
──シークレット・ネームを?
MIKE: 俺たち、秘密結社だから(笑)。
PHOENIX : ちなみに俺のシークレット・ネームは××××だけど。
──ジョン・ボン・ジョヴィは昔、ハリー・キャラハン(ダーティ・ハリー)の名前で泊まってたらしいけど(笑)。それはともかく、音楽の話を。今や誰もがLINKIN PARKを、最も活躍ぶりのめざましい若手バンドとして見ているわけですけど、そんな現状についてはどう思ってます?
MIKE: もちろん大満足してるよ。
JOE: 期待以上だよね。
PHOENIX : ま、正直に言えば、いろんなことを期待してはいたさ。だけど過剰な期待はガッカリの素だろ? だから「アメリカ国内で8000枚も売れたらいいとこかなあ」とか思ってたんだ。
MIKE: おいおい、マジ?(笑)
PHOENIX: ホントだよ。だけどリリース後、最初の1週間だけで45000枚とかクリアしちゃってさ。「いったいどこの誰が俺たちのアルバムなんか買ってくれてるんだろう?」って不思議に思ったもん。「ウチのおフクロだけじゃ、そんなに何枚も買い占めらんないぜ!」って(笑)。
──で、そんなにも早く成功を手に入れられた理由は、もう自分たちなりに解明できました?
JOE: 見当もつかないね。
PHOENIX : 俺はわかってる。MIKEが日系人だから(笑)。
JOE: それはヨーロッパで売れてる理由じゃなかったっけ? ちなみにオーストラリアで売れてるのは俺が韓国人(コリアン)だからだけど(笑)。
 ▲“コアラ”と“コリアン”が韻を踏んでるからね(笑)…って、んなことあるかいっ! |
PHOENIX : なにしろオーストラリアの象徴ともいうべき“コアラ”と“コリアン”が韻を踏んでるからね(笑)。マジメに答えると、理由なんてものはわからない。ただ、3年間にわたってソング・ライティングを重ね、楽曲に俺たちのエモーションを存分に注ぎ込んできたこと、“これぞ自分たちの音”というべきものを確立できたことは、意味が大きかったんじゃないかと思う。で、結果、それが人々に伝わっただけのことで…。何故そんなにもコトがうまく転がったのかは、自分たちでは分析できないよ。
JOE: もちろんポピュラーになりたいとは思ってた。だけど、2~3枚目のアルバムあたりでそうなれたないいなっていうのが本音だったからね。こんなに早く結果に結びつくことになるとは思ってもみなかったよ。
──即座に成功をおさめたりすると、生活環境が急変したりとか、本当の友達が誰なのかわからなくなったりするっていうじゃないですか。そういうことも経験しました?
JOE: いや。俺、友達多くないから(笑)。
MIKE: ていうか、俺たち自身が友達同士だからね。
PHOENIX : BRADは俺のカレッジ時代のルームメイトだったし…。
MIKE: 俺はJOEの、カレッジ時代のサンドバッグだったし(笑)。
PHOENIX : アルバムが売れたことで、ツアーに出っぱなしの生活が始まって、家からはずっと離れたまんまだし、地元の友達と顔を合わせる機会なんてのもほとんどない。だから、よくある“成功した途端に誰もが友達ヅラするようになる”みたいなのは、この時点ではまだ味わってないよ。
MIKE: 逆に、地元の友達連中は、もう4年前には俺たちから離れていってるよ。「よおMIKE!」って誘われても、「ゴメン、バンドの練習があるから」って具合だったし。するとみんな、「もうMIKEを誘うのはよそうぜ」ってことになる。俺たちが曲作りに明け暮れてた頃、そうして去るべき者は去り、バンドの結束は固くなっていったんだ。でも、友情は大事にしたいと思ってる。可能な限りね。人間としてノーマルなことだと思うから。
JOE: 要は俺たち全員が友達で、ここ5年ほどツルんでて、たまたま今では行動範囲が広がって、ツアー・バスや飛行機で移動して、日本にまで来ちゃうほどになったっていうだけのことなんだよ。コレをやりながら楽しんでる友達同士だってことに、何ら変わりはないんだよね。
──ツアーの生活は、楽しめてます?
JOE: まだ長すぎるほどにはツアーしてないから、おカゲさまで無事だよ(笑)。プレイすることはもちろん、ファンとコミュニケイトするのも楽しいし。
MIKE: ステージでプレイする瞬間が、1日のクライマックスになってるんだ。そんな日を、毎日のように繰り返し過ごしてるんだから、楽しくないわけがないよ。
PHOENIX : ちょっと謙虚に言えば、音楽に関わりながら毎日を過ごせてるっていうだけで、自分としてはすごい満足なんだ。とてもグレイトなことだと思ってる。こういう活動環境を得られてる現実に、心から感謝してるよ。で、ツアーというのは確かに家が恋しくなるものではあるけど、俺は自分のベッドや枕がないと眠れないようなヤツでもないし…。むしろ恋しくなるのはメキシカン・フードだな(笑)。メチャクチャ好きなんだ。同じアメリカの中でも、サザン・カリフォルニアから出た途端、全然メキシカン・レストランが見当たらなくなったりするんだよ。
JOE: タイ料理でもいいんだけどね、俺。
MIKE: 地元でだったら、どこに行けばベストなメキシカンを食えるかわかってるだろ? だけどツアー中、旅先ではそうはいかないからね。そういうことさ。
PHOENIX : 地元だったら『ペドロズ』だよな。『タコ・メサ』もウマい。
MIKE: 俺は『タパティオ』。ウマいぜ、あそこは。
PHOENIX : ウソだろ? 『タパティオ』は酷いよ。
JOE: 俺はレンジでチン!するブリトーでいいや。あれはマジにウマい(笑)。
──あのぉ、ローカルな話についていけないんですけど。皆さんがメキシコ料理が好きなのはよ~くわかりましたんで(笑)。
PHOENIX : OK。でもサザン・カリフォルニアに来たら『ペドロズ』に行けよ。チーズ・ブリトーが絶品だから。まさに、アメイジングだから!
──その手の食べものが、ツアーの必需品だってことですね? 日本での食事は大丈夫なんですか?
PHOENIX : いやぁ、日本での食生活はサイコーだよ。
MIKE: しゃぶしゃぶをご馳走になったし。きっとあれ、高かったんだろうな(笑)。でもマジ、過去1ヵ月の中でベストな食事だったよ(笑)。とにかく、食べものにしろ何にしろ、日本に来てからはすべてが予想以上なんだ。
PHOENIX : 名の売れてるレストランとかって、評判倒れなことあるじゃん? 名前ばっかり有名になって、肝心のメシはどんどんマズくなっていく一方っていう最悪のパターン。だけど日本では、いつでも、何もかもがサイコーなんだ。
JOE: 旅先でウマいものが食えるのが一番嬉しいかな。ツアーの楽しみのうち半分がそれだって言っても過言じゃない。食べものでその国の素晴らしさがわかるっていう部分もあるし。
PHOENIX : コレがヨーロッパだとキツいんだよ。口蹄液と牛の問題だけじゃなく、フランスとかスペインとかだと、とにかく食事が面倒なんだ。3月のほとんどをDEFTONESとのヨーロッパ・ツアーに費やしたんだけど、あれは、とんだ腹ペコ・ツアーだった。食うべきものが見つからないんだ。
MIKE: あれはフランスだったかな。ピザなら問題ないだろうと思ったら、そこに乗ってるチーズがえらくクセの強いヤツで、腐ってるんじゃないかっていうくらいクサいんだ。だから、絶対安全だと思ってたピザでさえ食えなかったもん。
JOE: で、それからの30分間、俺たちマクドナルドを探しまわったんだ(笑)。
PHOENIX : アメリカ大使館に「アメリカン・フードはどこで食べられますか?」って訊いたら絶対「マクドナルド」って答えるよな(笑)。実際、あのツアー中は、そんな冗談が流行ったんだ。
──要するに、正しい食生活はいいショウをするための鍵である、と。
全員: YEAH!!
──ところでそのライヴは、アルバムとはどんな風に違ってるんです?
MIKE: アルバムでのサウンドを極力確実に再現しようとはしてるけど…
JOE: よりライヴ、だよね。
MIKE: うん、そうとしか言いようがないかもしれない。部分的にはライヴ用にアレンジし直してるところもあるし、本来アルバムではCHESTERが歌うってるところを俺が歌ったり、その逆の場合もあるし。あらかじめ録音されたCDとかMDとかの音源を使うのがイヤだったから、JOEがスクラッチするビニール盤も自分たちで作ったオリジナルだし。ライヴならではのいいヴァイブが絶対そこにあると思うよ。みんなもそれを感じると思う。
PHOENIX : エネルギーとかエモーションといったものを、まったく損なわない状態で音源を作ることは不可能に近いと思うんだ。だけどライヴ・ステージでは、それを生々しく、100%放出できてると思う。
JOE: でも、期待し過ぎないで(笑)。俺たち、そんなにスゴ過ぎるバンドじゃないから。単なる6人の男たちがやってるだけのことだから(笑)。
──LINKIN PARKを指す場合のみならず、音楽を形容する言葉は日に日に増えてますよね。ニュー・メタルとかハイブリッド・ロックとか。どう呼ばれるのが好きですか?
MIKE: 個人的にはハイブリッド・ロックっていうのが好きかな。
JOE: 俺はヤだなあ、それ。
MIKE: ということからもわかるように(笑)、とにかく特定の言葉では形容しきれないのが俺たちのサウンドなんだ。でも、うん。少なくともメタルではないと思う。
JOE: 曲によっても違うし、同じ曲の中でさえも、ヒップホップ色の濃い部分もあれば、メタリックな部分もある。だからってメタルと呼ばれたいわけでもない。特定の名前をつけたり名乗ったりすることは、自分たちの作る音楽そのものを制限することにも繋がり兼ねないと思うからね。ま、いつかきっと、誰かがいい言葉を編み出してくれるさ(笑)。キミが考えてくれてもいいし(笑)。それでもきっと俺たちは変わり続けるから、毎日のように呼び名が変わることになるんだろうけど(笑)。
──なるほど。ところで自分たちの成功を確信できた瞬間というのは、いつでした?
JOE: 翌週にすべきことがあると気付いた時、かな(笑)。実際、今はこの夏いっぱいやることが決まってるんだからね。“オズフェスト”に出るんだ。一大事さ!(笑) すごくエキサイトしてる。
MIKE: だけど俺たち、そこで舞い上がってしまいたくないんだ。自分たちに厳しくありたいんだよ。ウンザリするほどプレイし続けても、まだ自分たちのアルバムを楽しんで聴けるようでありたい。
PHOENIX : 成功って、要するに自分たちのやってることで楽しめてる状況を得られてるってことだと思うんだ。もちろん成功にはいろんな局面があるとは思うけど、少なくとも俺は楽しんでる。音楽のみならずMIKEはアートワークやマーチャンダイズのデザインも手掛けてるし、JOEは映画制作の知識をビデオに活かしてる。そうやって多面的に音楽に関われることも素晴らしいと思うしね。
──本当に成功を謳歌してる感じですよね。ただし今年は『オズフェスト』のせいで夏休み返上だけど(笑)。
MIKE: 要らない要らない(笑)。
JOE: だって『オズフェスト』自体、参加バンドにとってはサマーキャンプみたいなもんだもん。ツアー・バスに違ったバンド同士で乗り込んだりとか、会場のバックヤードでバーベキューやったりするんだぜ。
PHOENIX : ロックンロール・サマーキャンプさ。10週間、同じバンドたちでサーキットするわけだから、お互いの関係もどんどん親密になっていくし、楽しみも増していく。普通のツアーとはまるで違ったシチュエーションだけど、昼間はそれなりにノンビリできるだろうし(笑)、楽しい経験になるはずだ。
──で、LINKIN PARKが次に達成したいことは?
PHOENIX : 2ndアルバムの制作に入るのを楽しみにしてるんだ。まだ赤ん坊みたいな歩みでアイディアの断片を出しつつあるだけの状態だけど、実際、新しいアイディアがたくさんあるし、この先、ツアー中にどんどんそれを積み重ねていくことになると思う。
──新しい方向性について、何かヒントをください。
MIKE: 駄目! ていうか、俺たちもどうなるか、まだわかってないんだ(笑)。 |