【インタビュー】Ran、“好き”を描いた新曲「予感」にコラボ三部作の収穫「自分自身の大事な思いを裏切ってはいけない」

■生きづらさも肯定する
■そこが変わったら自分じゃない
──キーワードである“好き”は、完成した「予感」という曲の中では直接的なワードとしては出てこないですが、どう表現しようと思いましたか?
Ran:今回は歌詞が5〜6回変わっているんです。その過程では“好き”っていう言葉をサビに置いたこともあったんですけど、それはやっぱりしっくりこなくて。というのも今まで私は曲を書くときに、“好き”っていうことを伝えるために、どれだけ比喩を使ったり、どれだけ他の言葉を使って表現するかを考えてきたので、“うーん”ってそこで思って。
──歌詞に“好き”という言葉をそのまま出すのはやはり違うなと?
Ran:はい。それで、自分のやり方に変えたんです。決して“好き”と書くことが悪いわけじゃなくて、その言葉に至るまでの表現が薄すぎた、みたいな。自分の“好き”が物事の主軸になっているという方向に練り直していったんです。たしかに私自身も、音楽や曲を作って歌っているけど、歌うことが好きとか、言葉が好きっていうことが真ん中にあるんですね。日々いろんなことがあって、悩んだりもするけど、そこで自分自身の大事な思いを裏切ったり、蔑ろにしてはいけないなというところを曲の主軸にしようと。

──うまくいかないことに悔しい思いをしたり、余計なことばかりが目についてしまったり。そういう中で、時に眩しく晴れた空を睨みつけたり、空の青さを見上げたりと、さまざまな視点や心境が描かれています。聴く人それぞれの気持ちが反映されるような曲だと思いますが、曲にはRanさん自身の体験なども含まれていますか?
Ran:実は「ご飯の食べ方」をリファレンスとして出していただいたときに、“やめてくれー”って思っちゃったんです(笑)。あの曲を書いたのは6年前の18歳のときで、当時は周りにいる人みんなが敵に見えていて。思春期をこじらせて上京してきた頃だったんですよね。今振り返ればかわいいなとも思いますけど(笑)。晴れの日も嫌だし、曇りの日も嫌だし、雨の日も嫌だしっていう。“なんで今日会社に来なくちゃいけないんだ!”とか、“なんでこの曲を書いた経緯を説明しなきゃいけないの?”とか思っていたので。そういうなかでも、“やっぱり音楽が好き”っていうのが一番にあったんですよね。そういう思いを大事に、今できる自分の表現で歌っていこうと思いました。
──今だからこそ書ける曲でもありますよね。晴れた空を睨んでいるだけではないところまで持っていけているのは。
Ran:そうだと思います。18〜19歳のときだったら出てこなかっただろうなと思う言葉もありますし。タイアップで“こういう曲がほしいです”というテーマの中でも、自由に表現できる場があって。自分の曲と向き合うことや、言葉選びやメロディを作りにさらに深く向き合わせてもらえたなと思ってます。
──特にここは自分ならではの表現ができたというフレーズはありますか?
Ran:2番Aメロの“居心地わるさに 袖まくる仕草 そんなことばかり 気にしていたいよ”っていう部分が一番好きなんです。私自身は居心地が悪いときに、袖をまくったりしないんですが、居心地悪いなと思ったときって、自分もそうだし、相手はどう思ってるのかな?って気にしたりするじゃないですか。気まずい空気が流れたなとか、何か言っちゃったかなとか。でもそういうことを考えなくなったら終わりだなって思うんです。そういうところを気にしちゃうのも私だし、ある種の生きづらさも肯定するというか。“そこが変わっちゃったら自分じゃないでしょ”っていうマインドを書いた部分だったんです。
──ブルーな憂いを帯びたギターサウンドから、サビではストリングスが入って爽快感や疾走感が増していくサウンドが印象的で、ドラマティックな曲となりました。このアレンジイメージについては、編曲の宮永治郎さんとも話したんですか?
Ran:ディレクターさんと、「こういうストリングスを入れて、壮大で深みあるところがほしいな」という話をして、アレンジを宮永さんにお願いしたんです。今回、初めてストリングスのレコーディングに立ち合わせていただいたんですけど、本当に素晴らしく、圧倒されました。しかも今回は、楽器を録った後、すぐにボーカルのレコーディングをしたんですね。楽器のレコーディングに立ち会った後だったので、曲への理解度がより増して、細かいところまでさらにリアルに感じられて、命を吹き込むことができました。ただの音でなく、弾いている人の感じが見えたことが、すごくよかったんです。
──ミュージックビデオや、Ranさん自身も出演するCMでは、船の上でのライブシーンがあるそうですね。どんな仕上がりになりそうですか?
Ran:フジトランス グループさんは物流の会社なので、大きなコンテナ船を所有されているんですが、その船のデッキの一番上でライブをするシーンがあったんです。実際にそこで働いている従業員の方々が観客役として出演してくださりました。皆さんにお会いできて、曲にノってくださったのも嬉しくて。そこでまた曲ができたことを実感しました。







