【インタビュー】Ran、活動5周年の集大成アルバム『awkwardness』に「日常にあるさまざまな違和感」

2025.07.30 12:00

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Ranが本日7月30日、フルアルバム『awkwardness』をリリースした。活動5周年の集大成として届けられるアルバムには、2024年に発表した新山詩織、mihoro*、植田真梨恵とのコラボ三部作や、フジトランスグループTVCMソング「予感」、「あなたと」「シトラスを奪って」といった既発楽曲6曲に加え、書き下ろし新曲2曲の計8曲が収録された。

◆Ran 画像 / 動画

アルバムタイトルの“awkwardness”(アークワードネス)は、“不器用さ、ぎこちなさ、居心地の悪さ”といった意味を持つ言葉だ。新しいものを受け入れ、様々なことにチャレンジしてきた5年間。それら経験から得た“心地のいい違和感”はRan自身を成長させ、変わらぬ本質と広がる未来を浮き彫りにしてきた。「日常のさまざまな違和感を切り取った」という歌詞が、中毒性の高いオルタナサウンドと融合することで加速する不完全な美は、紛れもないRanの等身大を表していると言ってもいい。

アルバム制作、コンセプチュアルなアートワーク、そして9月からスタートするツアー<Ran LIVE TOUR 2025 -awkwardness->についてじっくり訊いたロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■ギリギリまで楽曲制作をしていたので
■一枚を通してリアルタイムなアルバム

──アルバム『awkwardness』が7月30日にリリースとなります。2024年から活動5周年記念企画として、新山詩織さん、mihoro*さん、植田真梨恵さんとのコラボ3部作のリリースや、初のテレビCMソング「予感」リリースなどが続きましたが、アルバムは活動5周年の集大成ともなるものです。まずは、完成した手応えから聞かせてください。

Ran:“間に合った!”というのが一番でした(笑)。今までに配信リリースした曲も収録しているんですけど、結構ギリギリまで楽曲制作をしていたので、一枚を通してリアルタイムというか、デビューして5周年の集大成らしいアルバムになったなと思います。

──アルバムの全体像については、イメージしていたものはあるんですか?

Ran:既発曲はもちろんですけど、今年リリースした「予感」がキーになるとは思っていたんです。アルバムタイトルの“awkwardness”という言葉には、“違和感”とか“ぎこちなさ”、“ちょっと手慣れない感じ”という意味合いがあるんですね。なぜこのタイトルにしたかというと、初めて作曲を外部の方にお願いして私は作詞を手掛けた「シトラスを奪って」や、コラボ3部作もあって。サウンド的な新しい試みや、このアルバムに至るまでに個人的にもいろんなチャレンジをしてきたんです。そのすべてに一貫したテーマ……日常にあるさまざまな違和感を描いたものが多いなと思って。“awkwardness”をテーマにしたアルバムにしようかなというイメージはずっとありました。

──「なんでもない人」と「少女たち」は新たに書き下ろされた曲ですが、「少女たち」は長く温めていた曲でもあるそうですね。

Ran:そうなんです。2021年とか2022年にはワンコーラスぐらいできていて。いつかのタイミングで作品として出せればいいなと思っていたものが、やっとここで出せた感じです。

──なぜタイミングを待っていたんですか?

Ran:当時はアレンジとか何もしていない段階の弾き語りデモとして残していたんです。初期にリリースした「黒い息」(2020年発表ミニアルバム『無垢』収録)という曲があって。それと似ているわけではないんですけど、自分的にはかぶる部分がありつつ。もっと言葉の言い回しや表現をうまくできたらいいなとずっと思っていたんです。結果、今このタイミングで、その作業ができたという。

──弾き語りのデモとしてできた後は、誰にも聴かせていなかったんですか?

Ran:当時のディレクターさんとマネージャーさんとは共有していて。実はそのときのディレクターさんが、今回の「少女たち」制作に参加してくれているんです。「この曲、覚えていますか?」っていう感じで曲を提出したら、「ああ!」と言ってくださって。でもライブだったり、外に向けては全然出してなかったですね。

──「少女たち」はどういった思いをもとに出来上がったのでしょうか。曲作りのきっかけはどういうものでした?

Ran:今もあると思うんですけど、当時、ネットやSNSに匿名で質問できるサービスがあって。私が19〜20歳のときだったと思うんですけど、ある質問をしたら、その答えとして“さびしいひとですね”って言葉が返ってきたんです。実際に会ってもいない人に、そうやって嫌われるみたいな感じは学生時代にも経験したことがあって。“なんでなんだろうな”といろいろ悩んでいた部分ではあったんですけど。ただおそらく、それを送ってきた人も同世代だろうなと思いながら、書きはじめた曲です。

──“さびしいひとねって言われた それだけが救いの様だった その少女も今は誰かと 友達になっているのかな”という歌詞から「少女たち」は始まります。この曲は、身勝手に投げかけられる言葉に対して、怒りを向けるものではないですよね。

Ran:そうです。そういう言葉に怒るというよりは、慣れてしまったというか。受け流すことを身につけている自分が書いた、という感じですね。

──スルースキルっていうものですかね。ワンコーラス分は元々あったもので、そこから、今だから書けた言葉だなと思うものはどんなところですか?

Ran:1番の歌詞はわりと当時のまま残っているんですけど、2番の“傾けた指の頬を撫でたら さかむけで少し傷んでた”とかは今の言葉ですね。心情を言わずとも気持ちを表す部分を絶対にどこかに入れたいなと思っていたので。今、この言葉が書けたことは嬉しかったですね。

▲「少女たち」ミュージックビデオ監督:植田真梨恵

──「少女たち」がアルバムを締めくくる曲ですが、Ranさんにとって何か大事な思いがあったという感じですか?

Ran:そうですね。この曲はちょっと不気味なイントロから曲が始まって、少し異彩を放っているというか。アルバムにはいろいろなタイプの曲がありつつも、この曲だけ裏返されているみたいなイメージだったんです。「予感」という曲は絶対にアルバムの1曲目に持ってきたいと思っていたんですけど、最後に何の曲を聴いてほしいかなと考えたら、「少女たち」だったんです。

──高揚感のある「予感」で始まって、いろいろなシチュエーションに寄り添うような曲が並んだ中で、最後に伝える焦点をギュッと絞って語りかける鋭さを感じます。

Ran:久しぶりに“私”とか“あなた”といった言葉を使わずに、とつとつとした言葉だけで曲を書いたので。

──どこか不穏さも漂うようなオルタナティヴなサウンドも他の曲と違うムードになっていますが、アレンジを手掛けた村田有希生さんには、サウンドイメージをどう伝えたんですか?

Ran:リファレンスみたいなものが、ひとつも浮かばなくて。4拍子ではないので、どこか童謡っぽい感じもあるし、とにかく不気味な感じがいいなとか。あとは自分の経験から書いた曲だということも村田さんにお伝えして。そうしたら、このアレンジが上がってきたので、もう“拍手!”という感じでしたね(笑)。これはライブでどういうふうになっていくのかもすごく楽しみです。

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