【インタビュー】yutori、今鳴らすべき音への確信が宿る2つの新曲完成「私の歌を聴け、 声を聴け」

2026.10.10 12:00

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■この歌詞の語彙ってどっから出てくるんだろう
■ライティング能力に普通にびっくりしました

──この「秘密」って、皆さんがおっしゃっているように、客観的に見たときの“yutoriってこうだよね”っていうところの真ん中をついている曲だと思うんですけど、それに対する4人の解像度みたいなものがぐっと高まった感じがするんですよね。“ここだよね”っていうところをしっかり射抜いているというか。

浦山:そうですね。もちろん4人もなんですけど、レコーディングのエンジニアさんだったりテックさんだったりもそれに近かったというか。もう全員で指さして「ここだよね」ってバーンと決まったんで、そこに行き着くまでが早かったんです。

──今回は前作のEP以降、久しぶりのリリースでもあり、この曲はノンタイアップでもあるわけですけど、ここでこういう王道というか、yutoriど真ん中みたいな曲を出すというのは、yutoriにとってはどういう意味を持っているんでしょうか?

佐藤:10月にツアーがあるんですけど──。

──うん、2マンツアー<対 vol.2>ですね。

佐藤:そのツアーの直近のリリースってなると、対バン相手のお客さんもきっと聴いてくれるだろうなと思ったんですよね。そのなかにはyutoriのことをあまり知らない人もいると思うので、じゃあいわゆる王道ギターロックで、かつyutoriらしいとされる成分を多く包み込んだ楽曲にしようっていう。今ライブでやっていても、そんなにトリッキーな曲ではないので、お客さんがわかりやすく“あ、これ好きだ”みたいな顔で聴いてくれるんです。それはすごく嬉しいですね。

浦山:こっちもやってて、気張らなくていい曲というか。等身大でやれる曲。直近のライブで何回かやったんですけど、それはすごい感じます。

内田:あとはこのあとに「声」という曲が控えていることも意識しました。「声」のほうは、歌詞の内容だとか、ちょっとyutoriっぽさとは違う部分を書いてるなと思うんです。だからこそ、その前にちゃんと自分たちっぽいものを出していったほうが、「声」もより理解してもらえるんじゃないかなっていう意識もあった。

──なるほど。いや、その通りの曲になったんじゃないかなと思いますし。しかもこの曲、聴いた後の感覚として、重たいこと言ってるなとも思うけど、でも妙なポジティヴさがあるっていうか、いけるみたいな。

内田:ちょっと清々しいというか、吹っ切れる感情になります。

──その「声」はTVアニメ『朱色の仮面』のエンディングテーマですが、おっしゃるとおり「秘密」とはまったく違う一面を見せる曲で。

浦山:そうですね。

内田:「秘密」もソリッドにしたいって言っていたんですけど、それ以上に尖っていますね。

浦山:これはタイアップの面白いところだなと思うんですけど、原作を読んで曲を作っていく中で、自分だけじゃない感覚があるんですよね。作品がヒントをくれているというか、普段だったら出てこない語彙だったりがすらすら出てくる。今回はそれで最初、殴り書きのように書いて、そこからそれをもうちょっと自分っぽくというか、リリースしたときにyutoriの曲として受け取ってもらえるように書いていった感じでした。

豊田:作品といい意味でシンクロしすぎない、yutoriらしさをちゃんと取り入れた曲になりつつも、激しい、ロックっぽい要素も入っていて。ベーシストとしては本当に激しく弾くことだけが俺の役割っていう感じでした。ベースもギターもボーカルも全部、アニメにもyutoriにもふさわしい曲になったなと思いますね。

──うん、ちょっとヘドバンできそうな感じですよね。

豊田:そうです。

浦山:それは結構意識して弾いてもらいましたね。

──内田くんのこの曲の第一印象はどういうものでした?

内田:《至って冷静な脳を茶化す芝居》とか、この歌詞の語彙ってどっから出てくるんだろうっていう。すごいなと思います。でも、何を言ってるか意味がわからないというよりは、ちゃんと作品に沿っている内容だったりもして。そのライティング能力に、普通にびっくりしました。ギターフレーズはわりと自由にというか、自分の得意とする、結構ハイフレットで動き回るフレーズだったりとか、すごくテクニカルなフレーズを多めに入れたっていう感じですね。

──これまでもそうですけど、ギターの芸幅が広いですよね。

内田:いや、でも自分があんまり得意じゃないフレージングも曲によってはあるんですよ。そういうときは作曲者から「こういうのを弾いてほしい」と言ってもらうんです。それを必死に頑張ってます。でもこれは、やりたいことを自由にやっても許されたので(笑)。2番以降とかは、また別のジャンルで暴れまくってる感じになっていますね。

──メロディとかもそうですけど、1番と2番で別の曲みたいな印象すらありますよね。その辺もトリックというか、アニメで流れたときとフルで聴いたときで印象が変わるという。

内田:そう、本当にそれはめっちゃ意識したというか、2番以降はめちゃくちゃにやっちゃえみたいな気持ちでやりました。

──古都子さんの歌もすごくて、音が激しくなればなるほど、歌も激しくなっていくっていう。ぶつかり合ってるような歌なんですけど。

佐藤:負けるのはダメですから(笑)。やっぱりいちばんてっぺんに立っていかないといけない役割ではあるので、そこはどれだけバックがうるさかろうが、どれだけやばいフレーズを弾いていようが、“うるせえ、私の歌を聴け! 声を聴け!”と思って歌いました。

──本当にそういう声ですよね。ちょっとがなり声みたいなのも入っていますし。

佐藤:うん、入れました。それこそ「スピード」とかと結構似たスピード感のある曲で、あれでも結構“スパーン!”っていう感じの声は使ってたんですけども、これは「H@BREAK」とか「ヒメイドディストーション」みたいな暗さ、重たさも持った楽曲なので、そこの上手い具合のミックスをしたいなと思っていましたね。

──それもやっぱりアニメとのケミストリーの中で生まれてきたということなんだと思うんだけど、蓮くんとしては、『朱色の仮面』のストーリーや登場人物に対して、どういうところでいちばん共鳴したんですか?

浦山:嘘をつくのがうまいというか、本音を押し殺しながら進んでいくっていうのが、すごく自分と似てるなと思っていて。アニメでは仮面をつけることでいろんな能力を使えるようになるんですけど、今生きていても、“ここではいい顔しなきゃな”とかっていうことってあるじゃないですか。そういうのって結局仮面をつけているのと一緒なのかもなって思うんです。アニメと今起きている物事を俯瞰して見てそこに気づけたところから、バーって書けました。1個、自分の中でテーマが決まったので。

──この曲、《ナニモノニモナレナイ》って歌うんですけど、いろんな仮面つけながら、その裏側にコンプレックスが滲む感じがリアルだなあと思います。

浦山:そうですね。何かになりたいから仮面をつけているんですけど、つけても何者にもなれないっていうのはわかっているっていう。それがこの曲では伝えたかった。その上で感情の起伏を描きたかった。

──最初は《これぽっちも後悔なんてしてない/なんて言えないよ》と言っていたのが断定形になっていったり、曲が進むごとに気持ちが変わっていくところがドラマティックですよね。

浦山:あえてなんか言いすぎないことで聴き手に委ねるというのもあると思うんですけど、これは言い切りたかったんですよね。自分の中でここまで言い切ったことはあまりなかったんです。“?”で終わるんじゃなく“そう思ってるよ”っていう。1番は仮面をかぶって、2番は仮面を外したみたいな感じだと思います。

──でもこれ、Aメロも1番と2番で違うし、新しいメロディが出てきたりもするし、単純な繰り返しじゃないから演奏するのは難しそうですよね。

内田:今スタジオで練習し始めている最中なんですけど、ここまでスイッチする曲ってあまりないですね。yutoriは結構あるほうだと思うんですけど。そのメリハリが難しいなとは思ってます。急ストップとかも多いし。それがみんなでピシッと止められたら、よりこの曲のソリッドさやシリアスな部分が伝わるのかなって。それを再現するのを、ひたすら千本ノックでやってますね、今。