【インタビュー】LUV K RAFT、結成13年目のメジャーデビューに貫いた信念「’80年代が音楽史の最高峰だとしても、我々はそれを今やりたい」

LUV K RAFTが9月26日、徳間ジャパンコミュニケーションズより1stフルアルバム『GREEN』『PURPLE』を2作品同時配信リリースした。結成13年を迎えたLUV K RAFTが満を持して放つメジャーデビュー作は、新録・新曲を含む全24曲収録の大ボリュームで届けられる。
LUV K RAFTサウンドに1980年代音楽シーンへの愛情と敬意が散りばめられていることは明白で、洋楽・邦楽共に次々と名曲や大ヒット曲を生み出したポップス黄金時代を現代的なアレンジ、歌詞、そしてツインボーカルで昇華し、瑞々しく表現していることは特筆に値する。さらには、フルアルバムというリリース形態にこだわった『GREEN』『PURPLE』は時代や国を超えて現在を鳴らす仕上がりだ。
KAREN (Vo)、Mishu (Vo)、北野正人 (G / Manipulator)、3人それぞれのルーツや曲づくり方法、2枚のアルバム収録曲の聴きどころなど、たっぷりと語ってもらった10000字超えのロングインタビューをお届けしたい。


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■スペルだけ見るとこんなポップなのに
■やってることは怪奇小説なんだ!?って
──メジャーデビュー、おめでとうございます。現在の3人体制になったのは 2016年からということですが、 どんな経緯で今の編成に至ったのか、お話いただけますか。
KAREN:最初は私と北野とドラムとベースという4人での完全なバンド編成が3年くらいあって。そこからベースとドラムが抜けて。その時、当時後輩バンドで活動していたMishuに1stミニアルバム収録曲「Troublemaker feat.MAGUMI from LÄ-PPISCH and Mishu from BUTTERFLY KNOT」にフィーチャリング参加してもらってラップを入れたんですけど、すごく声が合ったんですよね。で、「LUV K RAFTに入らへん?」って声をかけてみたら、Mishuのバンドもちょうど解散するっていう話だったので、「じゃあ、終わったらうちにおいでよ」と声をかけさせてもらって。そこから今の3人体制がスタートしました。
──そもそもLUV K RAFT結成当初はどんな音楽からスタートしたんですか?
北野:ゴリゴリのロックですね。
KAREN:私が女性ラウド系ロックバンドが好きだったので、みんながそれに音を合わせてくれて、すごく激しい曲が多かったです。ライブに来てくれるお客さんにも「頭振れ!」みたいな感じで、ステージから客席へ突っ込みそうになったりしてたので(笑)。

──KARENさんはどんなアーティストから影響を受けているんですか?
KAREN:パラモアのヘイリー・ウィリアムス(Vo)がすごく好きなんです。初めて観たのが<SUMMER SONIC 2009>で来日したときの映像なんですけど、そのときセーラー服でステージに出てきて、“パンツ見えるんちゃうか?”っていうぐらい足を開いて頭振ってるのがすっごくカッコよくて(笑)。そのとき私はまだ10代だったんですけど、「これになる!」って決めて。アルバムを全部聴いて、髪をいきなり赤に染めて、見た目からステージングから全部真似して、みたいな感じでした。
──パラモアは近年のアルバムが驚くほどポップになりましたよね。
KAREN:アルバム『アフターラフター』からガラッと音楽性が変わったパラモアもめちゃくちゃ好きで。LUV K RAFT寄りのサウンドになった感覚もあったので、すごく親近感を持ちましたし、“ここは採り入れよう”みたいなところもめっちゃあります。

──Mishuさんはどんな音楽がお好みですか。
Mishu:私個人はTLCがすごく好きなんです。TLCの3人って全員声質が全然違うんですよ。低音がめちゃくちゃいいT-ボズ、すごく伸びやかなチリ、ラップをしてるレフト・アイ、その3人を自分ひとりでできひんかな?っていう目標みたいなものがあって…大それたことを今言ってるんですけど(笑)。そこが原点になってると思います。最初にLUV K RAFTからラップでフィーチャリングのお話をいただいたときも、自分がやりたかったところでもあるし、LUV K RAFTのことがもともと大好きだったので、そこに自分の要素もプラスすることができたらいいなと思って加入したんです。
──北野さんはday after tomorrowのメンバーとしてもご活躍されてきましたが、ご自身の嗜好は?
北野:すごくミーハーで(笑)、何でも好きでした。僕はギターを弾いてるんですけど、自分のことをギタリストだと思ったことはなくて。だから「好きなギタリストは?」って訊かれると、毎回違うことを言っちゃうんですよね。「ルーツは?」って訊かれたら、ダニエル・アッシュ (バウハウス)って答えるときもあるし、ジェームズ・イハ (スマッシング・パンプキンズ)と答えるときもあるし、デイヴ “ザ・スネイク” セイボ (スキッド・ロウ)って答えるときもある……「なんでやねん!」っていう(笑)。でも、毎回答えが違うだけで、本当に全部好きだから、全部正しいんです。

──ユニット名の由来は、小説家のハワード・フィリップス・ラヴクラフトからなんですよね。これは初期の音楽性が関係しているんですか?
北野:実は音楽性は関係なくて。まず僕は、ホラー的なジャンルが好きすぎて、それが自分の原点になっているんですね。それと、日本だとLINDBERGとか、海外だとピンク・フロイドとか、偉人の名前を冠したバンド名に憧れを持ってた時期でもあったので、このバンド名にしました。ラヴクラフトさんのお名前って、英語表記は本当に“love”なんですね。しかもそこに“craft”って続くと“愛を作る人”みたいな意味だから、“スペルだけ見るとこんなポップなのにやってることは怪奇小説なんだ!?”っていうギャップがあって、僕の中で完全にスティーブン・キングと同じイメージがあるんですよ。
──スティーブン・キングも小説家ですね。
北野:「ミザリー」とか「シャイニング」みたいな作風の一方で、「スタンド・バイ・ミー」「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」とかも作っている。すごく面白い二面性を持っていて、おそらくハワード・フィリップス・ラヴクラフトもそうだろうと。LUV K RAFTの音楽性は、当初から基本的にゴリゴリなんですけど、ポップでもある。そして今回の我々の2枚のアルバム『GREEN』『PURPLE』の中にも、ラウドロック的な部分の名残りがあったり。そういう二面性を出せたらな、というところがコンセプトとしては強いですね。

──2枚のアルバム『GREEN』『PURPLE』を聴かせもらって感じたことですが、1980年代の音楽を意識していますよね。
北野:もう’80年代がすべてだと思ってるので。’80年代は『MTV』とか『BEST HIT USA』とか洋楽だけのテレビ番組があったり、邦楽も歌謡曲、アイドル、ニューミュージック、バンドとかがムーブメントとして頑張っていた。洋楽邦楽ともに抜群のヒット曲が生まれて、際立った曲が多すぎた……僕はあの時代が音楽の歴史の最高峰だと思っているんです。だけど、我々はそれを今やりたいぞと。洋邦問わず’80年代ミュージックがルーツで、そのいいとこ取りをしています。
──そういう’80年代のテイストを3人でどのように曲にしていくのでしょうか? アレンジは北野さんが担当しているそうですが、作詞作曲クレジットは曲によって結構違いますよね。
KAREN:「次はこんな曲をやる」っていう土台を北野がまず作ってくれて。それに対して歌詞のイメージを探しつつ、実際に歌詞を書くのが私なのかMishuなのかを決めていきます。歌詞は、自分だけで書くときもあれば、全員で持ち寄って作ることもありますね。これまでは私が歌詞を書くことが多かったんですけど、『GREEN』の1曲目に収録した「ココア」は、初めて3人で歌詞を持ち寄って、それぞれの一番良いところを抽出するようにコライトしたんです。
Mishu:私はラップの歌詞を書くことが多かったので、主旋律の歌詞を書いたのは「ココア」が初めてでした。
KAREN:その経験によって歌詞とか曲の作り方が変わりましたし、『GREEN』リード曲であり1曲目に据えた「ココア」はアルバム全体の物語を象徴していると思います。
──3人の役割はボーカル、ラップ、ギターとマニピュレーターですが、曲によって形を変えていくこともあるのでしょうか。
Mishu:KARENさんがラップする楽曲もありますし、私がメロディーを歌うこともありますし。曲ごとにラップ担当とかボーカル担当というよりは、ツインボーカルというイメージですね。
──2025年からハイペースで配信リリースしている印象ですが、今回徳間ジャパンからメジャーデビューするにあたって、改めて確認し合ったことや変化はありましたか?
KAREN:今回は歌のレコーディング方法をいつもとガラリと変えたんです。全員宅録環境があるので、今までは自分だけの感性で自分で録ったテイクが多かったんですね。だけどこのアルバムからは、お互いの良さを引き出すために、私の歌を録るのはMishu、Mishuの歌を録るのは私っていう形で、ふたりでお互いをディレクションし合ったんです。
──具体的にはどのように?
KAREN:私はMishuの良い部分の引き出し方を一番知ってると思っているので、「今の歌はそんな歌い方じゃない」とか「Mishuはもっとこうやったほうがいいよ」みたいなことを全曲について、お互いに言いながら録りました。自分のほうが自分自身のことをよく知らないっていうこともあったりするじゃないですか(笑)。
Mishu:もう10年以上一緒にやってきているので、KARENさんにしか出せないクセとか声の良いところとか、「ここがKARENさんの強みだろう!」って自信を持って言える部分が私にはあるので。とにかくKARENさんの良さを引き出せるようにディレクションしました。
──北野さんは歌に合わせてアレンジを変えることも?
北野:ないです。僕、歌のレコーディング現場にも立ち会わないんですよ。我々はすごく一緒にいてめっちゃ話をするし……もう10数年もプライベートもず~っと一緒にいるから大喧嘩もめちゃくちゃしますし、すごい山を乗り越えてきているんです。けれども、音楽制作の場になったら、ふたりは僕が打ち込んでるときとか絶対に顔を出さないです。
KAREN:言い方が悪いな(一同笑)。
北野:彼女たちの歌が上がってきたときに、「うん、そうなるよね…」っていう納得の仕方は一切ないんです。もうただただ「おー!いい!」っていう歌が上がってくる。レコーディング現場で聴くより、後から音源をもらって聴いたほうがめっちゃ上がりますよ。
KAREN:私たちも北野に「うわ!そうきたか!」って言わせたくて、あえてギミックを入れて録ったり。
北野:現場で作ると終わりがないというか。お互い、そのときのジャストアイデアのエゴばっかり出て来がちじゃないですか。ところが仕上がりを聴くと、本当に誰かの新曲を聴いたような気持ちで「おー!」ってなれるので、すごく新鮮です。それはお互いへの信頼ありきの話なんですけどね。




