【インタビュー】LUV K RAFT、結成13年目のメジャーデビューに貫いた信念「’80年代が音楽史の最高峰だとしても、我々はそれを今やりたい」

2026.09.30 18:30

Share

■2枚はKARENとMishuのイメージカラー
■アルバムに相反する色をつけたい

──1stフルアルバムにしてアルバム2枚同時配信リリースというのは驚きですが、どんな意図でこのリリース方法に至ったのか教えてください。

北野:まず、僕らは今までアルバムを出さなかったんです。“アルバムリリースはメジャーとして活動させていただくときまでとっておこう”と思っていたので。今、そのときが来て、出したいものが24曲あったということです。なので、2枚同時ありきではないんです。

──ちなみに、メジャーレーベルからじゃないとアルバムを出したくなかった理由というのは?

北野:僕らが影響を受けたものだったりやりたいものって、語弊があるかもしれませんが、常にアイドルビジネスなんです。たとえば、ボン・ジョヴィやマドンナ、シンディ・ローパーとかは、当時アイドル的な人気を誇っていて。中身は違えど、我々見た目はトンプソン・ツインズですし(笑)。先ほどもお話したように、我々は’80年代当時のあの音楽文化をやりたいんです。当時はメジャーがすごくカッコよかった時代で、リリース形態もアルバムありきでしたよね。だから、アルバムをリリースするなら絶対メジャーだっていう僕の勝手な価値観に、ふたりも寄り添ってくれたというか。

KAREN (Vo)

──タイトルの『GREEN』『PURPLE』にはどんな意味があるのでしょう。

北野:やっぱりアルバムを2枚出すとなると、ザ・ビートルズの赤盤と青盤じゃないですか。

──急に’60〜’70年代に遡りましたね(笑)。

北野:ビートルズも大好きですし、赤盤と青盤のイメージは作りたかった。でもそこにビートルズを投影させる意味もないので、テイストやニュアンスだけいただいて、我々にしかできないものや我々のカラーを出そうと。Mishuのイメージカラー的な緑と、KARENの根底にある紫。深い意味があるわけではないんですけど、真っ先に『GREEN』と『PURPLE』というアイデアが出てきましたね。

KAREN:私とMishuは声質がまったく違ったり、ライブでも生演奏の上にデジタルサウンドが乗っていたり。LUV K RAFTっていう名前もそうですけど、相反する色をつけたいっていうのもありましたね。

Mishu:“懐かしさと新しさが交差するタイムマシンサウンド”というLUV K RAFTらしさを『GREEN』と『PURPLE』という2つの異なるカラーで表現した感じです。24曲もそうやって2つのアルバムに分けました。

──ジャケット写真で北野さんが小さくなってるのは?

北野:これはユニコーンのアルバム『PANIC ATTACK』へのオマージュです。’80年代オマージュつながりで言うと、1stミニアルバム『ROCK A TRONICA』(前述の「Troublemaker」収録)はゲストボーカルとしてLÄ-PPISCHのMAGUMIさんにコラボしていただいていますし、次のライブのサポートベースは1stミニアルバムの頃からお付き合いがあるTHE BOOMの山川浩正さんなんです。’80年代の邦楽シーンを築いてきたレジェンドたちの胸を借りているつもりでオマージュをいっぱい入れてます。

Mishu (Vo)

──では収録曲について訊かせてください。『GREEN』収録曲の「The day dragged on」はこれまでの歩みと音楽をやっていく意思が込められた曲に聴こえました。

Mishu:サビのメロディを書いたのがKARENさんで、メインのラップ部分は私が書いた曲です。もともとはラブソングとして書いていたんですけど、メンバーに歌詞を見てもらったとき「いや、そうじゃない。Mishuが思ってること、本当にちゃんと考えてることってあるんじゃない?」って返してもらって。そう言われてから、“なるほど”と思って自分自身にすごく向き合って書いた曲です。それまでは“自分の感情は外に出さないほうがいい”と思ってたんですけど、“出していいんだ”って。私の中での分岐点になった曲ですね。

──内なる気持ちを外に出さないほうがいいと思っていたのは、なぜだったんでしょう。

Mishu:悲しいことを“悲しい”って言うのが恥ずかしかったのかもしれないですね。歌詞にも書いてるんですけど、やっぱりずっと気丈に振る舞ってきたタイプで。

──《気丈に振る舞い 気が休まる日ない》と歌っています。

Mishu:私の10代は、素直にもなれなかったというところがあったので……強がってたんですよね、きっと。

KAREN:サビ部分は、《喝采のない孤独なステージ》っていうところから、“ひとりの女の子が頑張って歌にして感情をぶつけようとしてるよ。みんな聴こえてるか?”ってストーリーテラーみたいな感じで、遠くから第三者的に見ているような視点の歌詞にしています。

北野正人 (G / Manipulator)

──そもそも北野さんはどういう曲にしようと思っていたのでしょうか。

北野:オアシスの「Wonderwall」に影響されて作りました。なので、そういう感じのチェロが入っていたり、YouTubeで公開している「The day dragged on」デモ音源では、ドラムももろにあの音っぽくしているんですね。KARENとMishuの歌によってどんどんサウンドは変化していったんですけど、「The day dragged on」を聴いたときに、「Wonderwall」MVのノエルがガムを噛んでる姿とか、あういう絵が浮かぶような雰囲気が出ればいいなって。

──ブラック・アイド・ピーズとかのイメージだと思っていました。

北野:それはMishuのラップじゃないですかね。彼女は大好きなんで、ブラック・アイド・ピーズ。

──ここからはおひとりずつ、アルバムごとに推したい曲や思い入れがある曲について紹介してもらえますでしょうか。まずは『GREEN』収録曲から。

北野:我々が絶対的に推したいのがリード曲「ココア」です。イントロが流れたときに、“おおっ!”って思わせたかったんです。たとえば、ボン・ジョヴィの「Livin’ On A Prayer」の最初に“ウワ~ン”ってパッド音が流れたときに、「きたきた!」ってなる感じありますよね? そういうの最近全然聴かないじゃないですか?

──ギターソロやイントロ不要論もあるのが現在ですから(笑)。

北野:ははは。LUV K RAFTも歌始まりの曲は多いんですけど、「Livin’ On A Prayer」みたいなOVERTURE的要素がほしくて作ったイントロです。そして、曲に少し切なさを含んでいるっていうのは、やはり王道ヒットソングの定番。なので「ココア」を入り口として、我々の音楽を聴いていただきたい。

──なるほど。北野さんの個人的な欲求を満たしているような曲は?

北野:「グッバイ・マイ・ラブ」は、ティアーズ・フォー・フィアーズのオマージュで。いろいろ詰め込みましたね。あと少しマニアックな話ですけど、サビの浮遊感あるギターフレーズは完全にルカサーのアームプレイを意識したので。

──TOTOのスティーヴ・ルカサーですか。

北野:はい。まんまルカサーがやってることをやっちゃったところもあったり。そういう隠し味というか、フックの部分に気づいていただける人がいたら嬉しいなって。

──さすがのこだわりです。KARENさんの推したい曲や思い入れが深い曲はいかがでしょう。

KAREN:「SOMEDAY」ですね。コロナ禍で2年以上皆さんに会う機会がなくて。そのときに「LUV K RAFTっていう存在がいるんやで」ってことを毎日ネット配信して伝えながら、2週間に1曲のペースで新曲を作って、MVまで完成させて動画公開するっていうことを何ヶ月もやっていたんです。その時期に作った曲のひとつですね。

──歌詞からも伺い知れます。

KAREN:“そう遠くない未来、LUV K RAFTの前にあなたたちはいてくれますか?”っていう気持ちを、本当にもう倒れそうになりながら書いた歌詞なので、すごく思い入れがあります。それと、この曲から、“私とMishuでツインボーカル”っていうスタイルをしっかり作ることができたんです。完成形というか、今に至るきっかけになった曲です。

──Mishuさんはいかがですか?

Mishu:6曲目の「Day by Day -Happy Birthday 2021-」です。LUV K RAFTで初めて私が作曲したので。さっきお話した「悲しいことを悲しいと言いたくない」っていうのとつながってるんですけど、誕生日ってパーティを開いてみんなでケーキ食べてっていうポジティヴなイメージがあると思うんですね。だけど、誰からも祝われることのない誕生日を経験する人もいる。誕生日の概念を覆したかったっていうのもあったので、歌詞はそういう内容なんです。“大切な人におめでとうって言ってほしいけど、そんな連絡も来えへんしな”っていう、ちょっと悲しい歌詞をポップな曲調に乗せて歌ってみたっていうのが、「Day by Day -Happy Birthday 2021-」です。

──ツインボーカルも聴きどころです。

Mishu:この曲もKARENさんとのボーカルの掛け合いみたいなところを考えていたので、ひとりでは完成しない曲…ひとりでは歌えない曲だと思っていて。だからこそ、私の思いとか歌いたい気持ちを、初めて自分の曲としてLUV K RAFTで表現できたので、皆さんに愛していただきたい曲でもあります。