【ライブレポート】片平里菜、NakamuraEmiを迎えたツアー<愛するたびに>セミファイナルに相互敬愛と祝祭感「音楽で心がほぐれる時間を」

片平里菜が10thシングル「愛するたびに」を掲げて、4月18日の沖縄・那覇Sound M’sを皮切りに8月8日の福島・郡山Hip Shot Japanまで全国ツアー<“愛するたびに” Release TOUR 2026>を開催した。全国25ヵ所を巡り、各地で多彩なゲストを迎えた同ツアーの東京公演にしてセミファイナルは7月30日、渋谷duo MUSIC EXCHANGEにNakamuraEmiを迎えて行われた。
「昨年初めてツーマンライブを行い、共に飲み明かした」という片平里菜もNakamuraEmiも、再び共演できたことへの喜びを全身で放ちながら、互いへのリスペクトが心地よい緊張感を生むステージとなった。
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まず登場したのは、NakamuraEmi。「“愛するたびに” Release TOUR2026。ご一緒させていただきます、NakamuraEmiです。よろしくお願いします」という言葉から、自己紹介代わりに放ったのは「I」、そして「痛ぇ」。カワムラヒロシ(G, MPC)によるパーカッシヴで鮮やかなギターと語りかける歌というミニマムなスタイルで、観客を惹きつける。
「まさにこの渋谷という場所でライブをご一緒した竹原ピストルさんとの出会いから生まれた曲」だと語り演奏した「痛ぇ」は、竹原の音楽によって心を丸裸にされるような衝撃を受けて湧き上がった衝動が、今のNakamuraEmiの音楽のエンジンになった…そんな思いが高いボルテージで放たれているようだ。演奏するたびに当時の思いも解凍されて、歌と共に奔流するピュアなエネルギーに、会場は拍手で応えた。


また中盤では、片平の「愛するたびに」を聴いて「“大人だな”という感覚の歌に刺激を受けた」と語ったNakamuraEmiは、「私の曲では数少ない恋愛の歌を」と告げて「All My Time」で会場を酔わせる。NakamuraEmiが奏でる物憂げなフルートの音色や、タイトなビートによる都会的で甘美なR&Bサウンドが印象的な恋愛の曲だが、そこにはNakamuraEmiらしい自立心がうかがえる。
後半に演奏した最新曲「今夜cruise」もまた然り。「ラブソングを書こうと思っていたのに、“ひとりでも生きてやる!”っていう曲になった」と笑い、グルーヴィなサウンドに乗せてちょっぴりシニカルで、またゆるりと力を抜いたしなやかな歌で観客を揺らしていく。


グルーヴの濃度を上げていったこの後半では、「YAMABIKO」で大きなコール&レスポンスを起こすなど会場の熱を上げて約1時間のステージを完全燃焼。片平里菜のステージへとバトンをつないだ。
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ツアー<“愛するたびに” Release TOUR 2026>は、ファイナルシリーズ4公演のうち、大阪、名古屋、東京公演が片平里菜TRIOによるバンド編成でのライブとなる。そして、髙橋飛夢(B)とマコトU.S.A(Dr)がステージへ。続いて白いシャツにデニムという飾り気のない姿で登場した片平里菜はアコギを持つと、「渋谷、よろしくお願いします」と気負わずに挨拶した。


軽やかにギターを刻んでスタートしたのは「女の子は泣かない」。メジャーデビュー間もない2014年にリリースした楽曲であり、前述の10thシングル「愛するたびに」には、弾き語り一発録りによるセルフカバー「女の子は泣かない room ver.」を収録している。恋愛がモチーフの曲だが、目まぐるしく変わりゆく当時の景色が重なるようでもある。日々の出来事に流されないように踏ん張り、凛とした姿と反骨心も滲ませた歌声をピュアに響かせつつも、約10数年の時を経て今歌う「女の子は泣かない」は晴れやかなエールとして届く。ギターをかき鳴らし、メンバーとバンドアンサンブルを楽しみながら会場内の空気を解きほぐして盛り上げていく生き生きとした姿が眩しい。しっかりと時を重ねてきた、その豊かさが感じられる歌だ。
「今日は楽しい1日にしましょう」と呼びかけてスタートした「密かな幸せ」では、ロックンロールなギターのリフやビートに観客の高らかな手拍子が重なった。
MCでは、各地でいろんな人に会い、いろいろな景色を見て過ごしたツアーが、もうすぐ終わってしまう寂しさを語った。また、「昨年のツーマンでお酒を飲み交わしてギュッと心が近くなって、今日という日を迎えた」とゲストのNakamuraEmiを改めて紹介。片平にとってNakamuraEmiは、「“あんなふうに歳を重ねられたら”と思う大好きな女性の先輩。強さを持っているけど、それは酸いも甘いも噛み分けた経験や思考で構築されてきたしなやかな強さで、自分の道標になる存在」だという。音楽的にはそれぞれ異なるスタイルだが、自分のやり方や闘い方で、自分の音楽と人生を紡いでいるふたりだけに、女性シンガーソングライターとして同時代を生きている心強さを感じているのだろう。


このMCに続いたのは、「ラブソング」だ。「周りの期待に応えるなかで、自分の歌いたいことがわからなくなってしまった。そんなときに作った歌」だという。ここでは、そんな葛藤の渦中をも愛するような大らかさと伸びやかな歌声で会場を包んでいった。
続く「BAD GIRL」「Blah Blah Blah」では、トリオ編成の分厚いサウンドやノリを楽しむようにボリュームを上げていく。アグレッシヴなサウンドと共にアクセルを踏み込んでいくような「Blah Blah Blah」の語りやボーカルが最高だ。



大きな拍手や歓声の余韻のなか、ここからはひとりで弾き語りを披露。MCでは、数日前に起きた熊本の地震(令和8年熊本地震)に触れ、今も予断を許さない状況の熊本に心を寄せる。片平自身、出身地である福島が東日本大震災に見舞われた。さまざまなサポートがあるなかで、特に最初の混乱した状況では自衛隊員が尽力してくれたことを回想し、また現在改憲案のなかで自衛隊のあり方が議論されていることに触れながら、「守るということが、平和的でありますように」と続けた。
そして「平和の歌を」と歌ったのは昨年リリースした「夏の祈りのなかで」だ。この曲は2024年から2025年にかけて行なった約13ヵ月全73本のロングツアー<風の吹くまま>の最終地・沖縄にて、慰霊の日(6月23日)を過ごしたなかで生まれたもの。沖縄の風を練り込んだようなギターの爪弾きに、優しい歌声がのる。そこに生きた記憶や果たせなかったたくさんの夢を普遍的な歌へと刻み込んだ曲だ。
続く10thシングル「愛するたびに」収録曲「うたのふるさと」も含めて、平和について、生きることについてシンプルに綴った大きな歌。願いを込めながらも力むことなく、ギターを手に口ずさむように歌う姿が、言葉に込めた温かな体温を伝える。またこの弾き語りのセクションでは、母のような存在である人へと書いた詩「アナーキーの少女」のポエトリーリーディングから、マイクを通さない生の声で「愛のせい」を歌った。観客は一言一言を飲み込んでいくように耳を澄まして、記憶の底に強く焼き付けた。



ライブ後半、再びメンバーをステージに呼び込んだ片平里菜。同ツアーでは、片平里菜TRIOとしてのステージはこの日が最後となる。名残惜しい気持ちをこぼしながら3人でプレイしたのは、ツアーの冠でもある「愛するたびに」だ。
「皆さんどうですか? 愛する旅をしていますか?」と問いかけてスタートしたこの曲では、シンプルでいて難しい愛というものに翻弄されながらも、愛を求め続ける旅が描かれる。幸せを願いながらも、少しの恐れや臆病さが愛に翳りを落とす。ならば、その恐れや臆病さも抱き締めていけばいい。自分の心を映す鏡でもある愛やその成長が刻まれた曲は、柔らかな音の余白や言葉の行間が居心地がいい。音源ではゆったりとしたビートに染み入るような曲だが、ライブで、さらにこのトリオ編成での演奏は、音に抱擁される熱さやタフさをもってダイレクトに届けられた。


「そんな旅の途中で、あなたに手を差し伸べてくれる人がひとりでも、ふたりでもいますように」という言葉に続いたのは、「ロックバンドがやってきた」。ダイナミックなプレイに《ロックバンドがやってきた》とシンガロングを起こし高揚感で包まれたフロアに、続く「オレンジ」では歌詞を《本当にありがとう 今日ここにきてくれて》と変えて笑顔で感謝を伝えた片平里菜。
「また一緒に、音楽で心がほぐれる時間を過ごしてください」と告げて、ラストは観客とのシンガロングから「Come Back Home」へ。大きなシンガロングは、再びこうして会えることを願い、またそれぞれが戻る日常を讃えるアンセムとして力強く放たれた。


下ろしていた髪を結ってアンコールに登場した片平里菜は、「1曲、弾き語りをさせていただいます」と、旅の景色が印象的で作った曲だと「いつの日か」をプレイ。ハーモニカとギターを奏でて歌い上げた。
再びメンバーを呼び込んだ片平はふたりに向かって「またやりましょうね」と告げ、「このトリオ編成に背中を押され、NakamuraEmiというカッコいい先輩に刺激をもらえた」と、このライブへの想いを語った。8月8日は<“愛するたびに”Release TOUR 2026>の最終日であり、地元・福島で竹原ピストルを迎える。「ツアーファイナルを私らしい闘い方で挑めれば」と、この日はひとり、弾き語りでステージに立つ。そしてセミファイナル東京公演の最後に演奏されたのは「カントリーロード」。ひとつのツアーとしては終わるけれども、“この道はあなたの街へと続いている”と歌い、この先へのさらなる期待も込めて祝祭的に東京公演を締め括った。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎石井麻木
■<片平里菜 “愛するたびに” Release TOUR 2026>
7月30日(木)@東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE セットリスト
【NakamuraEmi】
01: I
02: 痛ぇ
03: 雨のように泣いてやれ
04: All My Time
05: ボブ・ディラン
06: スケボーマン
07: 今夜cruise
08: 梅田の夜
09: YAMABIKO
10: UBU
【片平里菜】
01: 女の子は泣かない
02: 密かな幸せ
03: ラブソング
04: BAD GIRL
05: Blah Blah Blah
06: 夏の祈りのなかで
07: うたのふるさと
08: アナーキーの少女
09: 愛のせい
10: ロックバンドがやってきた
11: オレンジ
12: Come Back Home
encore
en1: いつの日か
en2: カントリーロード

■<片平里菜 “愛するたびに” Release TOUR 2026>
4月18日(土) 沖縄・那覇Sound M’s
w/ abukutatta, Etranger
4月19日(日) 沖縄・コザCROSSOVER CAFE 614
w/ abukutatta, Etranger
4月21日(火) 神奈川・横浜F.A.D
w/ ホリエアツシ (ストレイテナー)
5月07日(木) 石川・金沢vanvanV4
w/ 片桐(Hakubi)
5月23日(土) 熊本 NAVARO
w/ 関取花
5月24日(日) 鹿児島 Live HEAVEN
w/ 関取花
5月26日(火) 福岡 LIVE HOUSE OP’s
w/ Predawn
5月28日(木) 広島 ALMIGHTY
w/ 花男
5月30日(土) 山口・周南LIVE rise SHUNAN
w/ 花男
5月31日(日) 島根・出雲APOLLO
w/ 花男
6月02日(火) 兵庫・神戸VARIT.
w/ 林萌々子(Hump Back)
6月03日(水) 京都 LIVE HOUSE GATTACA
w/ ザ・バクマイズ
6月09日(火) 愛知・安城rock bar Neverland
w/ BENBE(Vo, G, Accordion)
6月12日(金) 埼玉・越谷EASYGOINGS
w/ BENBE(Vo, G, Accordion)
6月30日(火) 宮城・仙台ROCKATERIA
w/ おおはた雄一
7月01日(水) 岩手・盛岡the five morioka
w/ おおはた雄一
7月03日(金) 茨城・水戸LIGHT HOUSE
w/ FUNNY THINK
7月04日(土) 栃木・宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-4
w/ FUNNY THINK
7月07日(火) 千葉 LOOK
w/ とまとくらぶ
7月19日(日) 北海道・札幌KLUB COUNTER ACTION
w/ BENBE
7月20日(月/祝)北海道・旭川CASINO DRIVE
w/ BENBE
【FINALシリーズ】
7月23日(木) 大阪・心斎橋Music Club JANUS
open18:00 / start19:00
出演:片平里菜TRIO / locofrank (アコースティックセット)
7月25日(土) 愛知・名古屋TOKUZO
open17:00 / start18:00
出演:片平里菜TRIO / 関取花×岡田梨沙
7月30日(木) 東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
open18:00 / start19:00
出演:片平里菜TRIO / NakamuraEmi
8月08日(土) 福島・郡山Hip Shot Japan
open17:00 / start18:00
出演:片平里菜(弾き語り) / 竹原ピストル
※片平里菜TRIOはアコースティックバンド編成








