【インタビュー】ココラシカが切り拓く新章、「踊りまくっていいじゃないか!!!」誕生の裏側

2026.07.01 12:00

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2005年生まれのメンバーが高校時代に結成したギターレス3ピースバンド、ココラシカが2026年初楽曲となる「踊りまくっていいじゃないか!!!」をリリースした。多くの人へ届けたいという思いのもと生まれた同曲は、ここまで構築してきた自分たちの音楽観の枠を超えて、メロディ、コード、アレンジなど楽曲に関わるすべての要素に工夫を凝らした、まさに挑戦の1曲である。

このように書くと、これまでのココラシカの良さが失われているのではないか?と思う人もいるかもしれない。だが彼らの「多くの人に届けたい」という熱い思いや、歌詞に込められた「つまずいてへこんでも大丈夫」「踊って元気を出していこう」という哲学は、今の彼らの正真正銘の素直な気持ちである。それらがダイレクトに伝わる抜群にキャッチーなサウンドは、彼らの新たな観点での自己表現と言えるだろう。完成に至るまでの詳細をメンバー3人に話してもらった。

――ココラシカは高校を卒業した年の2024年7月から4人の大御所音楽プロデューサーと制作を行い、2025年5月にリリースした1stミニアルバム『Freedom』以降はセルフプロデュースを再開していますよね。そもそもプロデューサーを招いた制作は、セルフプロデュースで活動していくための勉強として行ったとのことで。

こうき(Vo, Key):まだまだ勉強したいことはありつつ、今は一旦これまでに教わったことを自分たちなりにアウトプットしてみようという期間です。

らな(B):プロデューサーの皆さんの個性が全然違って、音の使い方やアレンジの工夫など、いろんな方法をたくさん教えていただいたんです。『Freedom』以降は、それを実際に自分たちなりにどのように曲に落とし込むかを試行錯誤しています。

――たとえばどんなところが勉強になりましたか?

こうき:固定観念を壊してくれたのは大きいです。それまでは3人の音でどうやってやりくりするかを考えていたけれど、3人の音をどうやって強化していくかという視点をもらったというか。「もっと変なことをしてみようよ」と言ってくださったり、新しいアイデアに引っ張っていただきました。

こた(Dr):表現力の幅は研究や遊び、実験を経て広がることを学びましたね。安全策を取るのではなく、挑戦的な視野を持って制作することが大事なんだなって。

らな:高校生の頃は知識もないから、やってみたいことがあっても「ちょっと変かもしれない」「これは合わないかも」と決めつけていたところがあって。でもプロデューサーの皆さんは「面白いアイデアだから1回やってみたら?」と言ってくださって、いざやってみると面白みが足されていいパンチになって曲のクオリティが上がった感覚があって。たくさん背中を押していただきました。

こうき:プロデューサーの皆さんからバンドの壁を破るきっかけをいただいたので、自分たちの力で突破口を開きたくて、3人で悩みながら制作をしていますね。この壁を突破できたら、いい曲が生まれる気がしているんです。

――その“壁”というのは?

こうき:最近の壁は「届けていくためにはどんな音楽を作ればいいんだろう?」というところですね。どういうサウンドでどう自分を表現して、どう届けるのがいいのかを模索しています。というのも、僕は伝えたいことと自分たちの音楽への誇りと自信があって、それを届けたいというエゴがあるから音楽をやっているし、ココラシカの音楽は聴いてくれた人たちに訴えかけられるものがあると思うんです。

――となると「多くの人が共感できる音楽を作りたい」という観点ではなさそうですね。

こうき:音楽をはじめ、芸術は自己表現だと思っているんです。だから自分はどんな人間であるかがしっかりアウトプットできることが大事で、ココラシカはこの3人がどんな人間であるかがそのまま音楽になると思っているし、それを大事にして作った音楽こそが、聴いてくれる人に届くもの、訴えかけられるものになる気がしているんです。

――いまおっしゃったことは、人と人が信頼関係を深めていくことと似ていますよね。本当の意味で仲を深めるためには、自己開示が必要ではあるので。

こた:そもそも“生きる”って価値観の押し付け合いだと思うんです。押し付けられて押し付けて、その繰り返しで人間は形成されていくし、音楽に深く関わるうえでいろんな人と関わりを持つことは、自分を成長させられる1個の材料だと思うんです。だからココラシカの楽曲を聴いてくれる人とも身近でありたいというか。親近感をおぼえる距離にいるからこそ話してくれることは絶対あると思うんですよね。

こうき:3人とも「届けたい」という思いは持っているけれど、理由はそれぞれ若干違う気がしていて。でもちゃんと同じ目線で、同じ熱量を持てる3人なんですよね。自分の持っている価値観を話したうえでそれを受け入れ合って、3人の理想とするかたちに持っていけば、自ずといい音楽が生まれていくんだろうなと思っています。

――ココラシカが広義のポップスを追求しているのも、そういうマインドに通ずるのでしょうか?

こうき:単純に僕がそういう曲が好きというのもありますけど(笑)、確かにその節はあるかもしれません。

らな:それぞれのルーツや価値観、コアの部分がありつつも、3人とも音楽を自己満足のままで終わらせたくないんですよね。だから自分たちのコアとなる部分を伝えるためにも、耳馴染みのあるポップなサウンドやメロディと融合させることが必要だと思っています。そうすると多くの人に伝わりやすくなるし、自分たちの思いが伝わったと感じられたときに、聴いてくれた方々にも自分たちにも大きな感動が生まれたんです。コアな部分をちゃんとポップスにすると、しっかりとコミュニケーションが取れると思っています。

こた:ポップスは多くの人に届きやすいと同時に、いろんなジャンルを内包しているとも思うんです。ハードロックを取り入れたものもあれば、ジャズ、オルタナ、ヒップホップ、R&Bなど多種多様で、そのぶん聴き手も聴きたいポップスを選ぶことができる。だからこそ個人的には、偏った一部分しか聴かない人からも「ココラシカいいよね」と言ってもらいたい、選ばれたいという気持ちが大きいです。将来的にはどのジャンルを好む人にも選んでもらえるようなバンドになりたいですね。

――となると新曲「踊りまくっていいじゃないか!!!」も、いまおっしゃっていただいた3人の思いが結実した1曲ではありそうですね。これまでのココラシカの楽曲は、こうきさんが心の中に抱えるもやもやとした感情をポップスに昇華している印象を受けましたが、今作は強いメッセージ性が宿っています。

こうき:普段の制作は「これに対して僕はどう感じたんだろう」「何を感じているんだろう」と自分の心に向き合いながら、その時その時の気持ちを落とし込んでいくけれど、今回は「ココラシカが多くの人に届く音楽を作るならどんなものだろう?」というゴールを決めたうえで制作していったので、逆算していくような感覚で。だからこの1曲を作るのに半年ぐらいかかりました。これまでの音楽のスタイルと違ったとしても、届けたいという目標がある以上は、ちゃんとそこに向き合っていきたかったんです。

こうき

らな:自分たちの内面を表現するだけでなく外の世界に向き合った曲なので、自分たちのエゴだけでは作れないぶん最初はほんとに苦戦して(苦笑)。「キャッチーでポップな、だけどココラシカの良さは捨てない曲」というゴールにたどり着くために、半年間何度も何度もお互いの意見をぶつけ合って、ちょっとずつお互いの納得するところを見つけていって、それを楽曲に落とし込んで……。

こうき:これまでの流れを汲みつつ、どういい塩梅で攻めていくかがいちばん難しかったね。

――その結果、歌詞やメロディは圧倒的にキャッチーで、サウンド面は随所にギミックを効かせた聴きごたえのある楽曲になったのではないでしょうか。それは自分たちの大切にしたい音楽観を諦めなかったから実現できたのではないかとも思いました。

こた:これまでの曲はソングライターのこうきの根っこから生まれているから、いろんな方向に派生していたと思うんです。ジャンルとしてまとまりきらない何かがあって、純粋なぶん良くも悪くも未完成でふわっとしていた。でも確実にココラシカならではのポップスが眠っているし、曲を作るごとに少しずつ確立していくんだろうなと感じたから、去年のミニアルバムに『Freedom』というタイトルを提案したんです。だから「踊りまくっていいじゃないか!!!」は意図的に見つけてもらいやすくするための確率を上げていったんですよね。

らな:「踊りまくっていいじゃないか!!!」は、まとまりきっていなかったココラシカのポップスの要素をぎゅっとひとつにまとめたような気もしていて。「この曲に込めた想いがココラシカだよ」と示せるものになったと思っています。

こうき:自己表現は大事にしていきたいけど、届けるとなると名刺が必要だよなと思ったんです。そうしたときにまずは「ポップで踊れて楽しいバンドで、ライブで聴いても最高だよね」という面を伝えていきたくて。興味を持ってくれる入り口を作りつつ、自分たちの内面や自己表現も知ってもらう。その第1歩が「踊りまくっていいじゃないか!!!」なんですよね。

――“踊る”という言葉は、高校時代にリリースしSNSで話題になった「恋よ、踊り出せ」、メジャーデビュー曲「手のひらで踊らせて」と、バンドのターニングポイントに欠かせないですよね。今回この言葉とどう向き合いましたか?

こうき:今回の制作を通していろいろと考えるなかで、踊ることって自己表現だなという結論に至ったんです。というのも、ステージングで悩んでいたんですよね。ステージ上で自分を出しきれない自分を客観視して、いろんな人から見られているなかで自由でいるのはすごく難しいことだなと感じて。

――こうきさんはソングライティングにおいては自由に振る舞えていたけれど、ライブではそれがうまくアウトプットできなかった?

こうき:恥じらいがあったんです。いろんな自意識が自由でいることを邪魔して、でも自由にならないとほんとの自分は見えてこないし、ライブでもステージの上にいる自分が自由にならないとお客さんにも自由になってもらえない。そういうなかで、何よりも心を自由にしてただ踊っていることは究極の自己表現なんじゃないかと思ったんです。恥ずかしかったとしても、その感情を無理して消す必要もない。そういうものを音楽で伝えられたらいいなと思ったんです。

――そのマインドが歌詞にも表れていますよね。1番では踊ることを宣言して、2番では踊らないことも踊れないことも自分なりのダンスになるという旨が綴られています。

こうき:《君は君って切り分けて/オリジナルなステップ踏んで》という歌詞は、「それぞれの踊りがあって、自分は自分でいればいい」という思いを書いています。心の中だけで踊っているのも、楽しかったなと思いながら帰路につくのも踊りのひとつだし。それぞれの生き方があって、それぞれが受け入れ合っている、それぞれがそこにいる事実だけで幸せな空間が生まれているという状態が素敵だなと思うんです。そういう意識になってから、ライブパフォーマンスも変わりました。

――リズム隊のおふたりは“踊る”に対してどのような考えのもとアプローチをしましたか?

らな:ルーツがばらばらの3人でもダンスミュージックは共通点だったし、3人ともボトムを支えるグルーヴが重要な楽器でもあるので、“踊る”はこの3人の共通言語として大切にしたくて。だからこそ普段ドラムとベースで作っているグルーヴに、しっかりとキーボードと歌を乗せる必要があるなと思いました。これまで大切にしてきたグルーヴをとにかく発揮することを考えました。

らな

こた:この曲はライブで真価を発揮するし、ライブにおいての鍵はドラムであるという自負があるんです。やっぱりバンドのなかでいちばん全身を動かす立場だから、熱量や自由度を音だけでなく自分の身体で表現して、自分がいちばん楽しんで暴れないとお客さんに楽しんでもらえないし、誠意を表せないと思っているんですよね。それに呼応してこうきとらなのふたりが動いたり声を上げてくれたり、お客さんが手を挙げてくれたり、踊ってくれたりと伝播していくと思う。着火剤になりたいんですよね。こうきが「踊りまくっていいじゃないか!!!」に込めた、みんなの自由を引き出したい、自分も自由になりたいという思いを体現できたらなと思っています。

こうき:実際にライブで演奏してみて、これまでの曲とお客さんの反応が全然違って。すごくライブ映えする曲だなと感じています。

らな:頭を空っぽにして踊ってみようというメッセージも込められた曲なので、自分たちもそれくらい弾きながら楽しめるんです。お客さんの笑顔もたくさん見られるのもうれしいです。

こた:この曲をライブで演奏すると、お客さんの笑顔の割合がぐっと増えるんです。今までなかったレスポンスもたくさんあって、こみ上げてくるものがありますね。かなり強い引力を持っている曲なので、ココラシカにおいて重要なポジションになってくる予感がしています。

こた

――<LuckyFes’26>でも活躍してくれそうですね。

こうき:間違いないですね。<LuckyFes’26>は僕らにとって初の大型野外フェスなので、「踊りまくっていいじゃないか!!!」をきっかけにいろんな人にココラシカの音楽が届いて、さらに大きなステージに行けたらいいなと思っています。完成まではものすごく苦労したけれど、まさかこんなに楽しい曲になるなんて!と自分でも驚いているので……。

――それも皆さんのお人柄の賜物だと思います。《私を笑ったあの人も/踊っちゃえばいいのに》のくだりが象徴するように、皆さんが自分自身にも関わる相手にも誠実だから根気強い制作ができて、その結果がこの曲なのだろうなと。

こうき:心にもやもやを抱えたときって、大きく分けると“ふざけんなよ!”と“まあいっか”のどちらかになると思っていて。モヤモヤしている気持ちは書きたいけど、このサウンドでネガティブすぎることを言うとポップになりづらいかな……と考えた結果、その真ん中を取った“踊っちゃえばいいのに”という言葉を使いました。これまでは自分の心の中のもやもやを曲にしていたけど、みんなが抱えるもやもやを軽くできたらいいなと思って、ユーモアに振るというか。

――ココラシカをシティポップバンドだと思っている人が聴いたら違和感があるかもしれないですが、これまでの楽曲を聴いていても広義のポップスを発信しているバンドという印象があったので、そのうちのひとつとして最強の手札になっていると思います。セルフプロデュースでここまで殻を破ったのですから、達成感もあるのではないでしょうか?

こうき:そうですね。でもこの制作で課題がたくさん生まれたし、この曲にはいい意味での未熟さもある気がしていて。ここから洗練させていけるという意味でも重要な1曲になりました。この先振り返ったときに面白い立ち位置の曲になるんじゃないかとも思っています。今後も自分たちの哲学を大事にして、それを届けるためにはどうするか?をしっかりと見極めていきたいですね。自分たちのマインドが付随するものを選択していきたいです。

らな:ココラシカは固定のジャンルをやりたいメンバーが集まったのではなく、音楽に対して同じ熱量を持った波長の合うメンバーが集まったので、音楽のジャンルやサウンドよりも人間性が先にあるんです。だから今後も3人の意見やマインドをいちばん大切にしたいです。

――ココラシカの今後の動きが楽しみになる楽曲でした。ここからまた新たな世界が広がると思います。

こうき:今回の制作でバンドの中に火をつけられた感覚があるので、この先ドカン!といけるように引き続きたくさん曲を作っている段階です。しっかり足元を固めて前を向いて、チーム一丸となって精力的に動いていきたいですね。

らな:「踊りまくっていいじゃないか!!!」でココラシカの意志や目標、芯となる思いを曲にできたので、今後もそのような曲を出していけたら嬉しいなと思っています。「ココラシカはこういう思いを持ったバンドだよ」と音楽を通してアピールしていきたいです。

こた:自分たちの想いや考えを世の中に広めていく第1歩に相応しい曲になったと思っているので、ここからどんどん名刺を配っていきたいですね。そのためにもいまのココラシカだから作れる曲をどんどん発信していきたいです。

取材・文◎沖さやこ

ココラシカ「踊りまくっていいじゃないか !!!」

◆ココラシカ・オフィシャルサイト