【ライブレポート】神はサイコロを振らない、自身初のアリーナ公演<T.W. -Traversable Wormhole->で「みんなが絶対必要です」

神はサイコロを振らないが6月14日(日)、神奈川・ぴあアリーナMMにて自身初のアリーナ公演<Special Live for Double Anniversary Year 2026 “T.W. -Traversable Wormhole-” at Pia Arena MM>を開催した。特別な絆で結ばれた同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
2025年2月11日に開催した自身初の日本武道館公演を経て、結成10周年、メジャーデビュー5周年のダブルアニバーサリーイヤーを駆け抜けた神はサイコロを振らないは、2026年4月15日に2年7ヵ月ぶりとなる3rdフルアルバム『EINSTEIN = ROSEN BRIDGE』をリリース。本アルバムを引っ提げた自身初のアリーナ公演が、<Special Live for Double Anniversary Year 2026 “T.W. -Traversable Wormhole-” at Pia Arena MM>だ。
2025年6月9日に結成10周年、7月17日にデビュー5周年というダブルアニバーサリーを迎えた神サイはこの節目の年に、バンドとして挑戦したい目標を“10の叶えたいこと”として掲げ、そのひとつひとつを着実に実行してきた。今回のぴあアリーナMMワンマンは、その最後のひとつに位置づけられた公演である。3rdフルアルバム『EINSTEIN = ROSEN BRIDGE』収録曲を軸に、新旧の楽曲を織り交ぜながら、ダブルアニバーサリーイヤーを締めくくる集大成的なステージを展開した。

定刻を迎え、黒いスーツに身を包んだ柳田周作(Vo, G)、吉田喜一(G)、桐木岳貢(B)、黒川亮介(Dr)がステージに登場。背後にはモノトーンの幾何学模様が描かれた短冊状のフラッグが下り、その無機質な意匠が4人の佇まいをいっそう際立たせている。ドラムやアンプ、楽器類はステージ中央にぐっと寄せられ、4人が互いの音を感じ合える距離に。そのフォーメーションからは、自身初のアリーナ公演であっても、あくまで“バンド”として勝負するのだという覚悟が伺えた。
オープニングを飾ったのは、2017年発表の2ndミニアルバム『subim』を締めくくる初期曲「白に融ける」。バックライトに照らされた4人のシルエットが浮かび上がり、陰影の強い演出は、彼らがこれまで楽曲の中で描いてきた“陽と陰”“表と裏”の二面性を象徴するようでもあった。
続く「白昼夢」では、真っ白なスクリーンに歌詞が投影されるなか、吉田と桐木がシンセを操り、柳田はリードギターを担当。レイドバックしたギターソロが、楽曲の幻惑的なムードをより濃密なものにしていく。さらにミドルテンポの「Smoke」では、淡々としたビートの上で柳田の伸びやかな歌声がゆったりと広がり、抑制の効いたメロディの切なさを際立たせていた。

「ようこそ、神はサイコロを振らないです。みんな元気?」と柳田が挨拶し、「今日1日よろしくお願いします。最高の1日にします」と告げると、「Lovey Dovey」へ。MVの舞台となり、かつ2025年開催された<Hall Tour 2025 “Lovey Dovey City”>のステージセットを模した映像がスクリーンいっぱいに映し出され、まるでそのホールツアーの実物大セットを背負って演奏しているかのようだった。続く「LOVE」では柳田がアコースティックギターをかき鳴らし、吉田が爽やかなアルペジオを重ねていく。サビではオーディエンスが両手でハートマークを作り、それを頭上で揺らした。晴れ渡った夏の日を思わせる映像と相まって、会場には幸福な一体感が広がっていった。
その空気をさらに大きく膨らませたのが「夜間飛行」だ。タンバリンを振りながらステージを端から端まで歩き、観客にしゃがむよう促す柳田。「いくぞ!」の合図でアリーナとスタンドが一斉にジャンプすると、《I wanna be a Rockstar》のリフレインとともにギターサウンドが壁のようにせり上がり、ディストーションギターの洪水が会場を包み込んだ。
ステージ上の6つのミラーボールが一斉に回り出した「クロノグラフ彗星」では、まるで宇宙空間をワープして別次元へ連れ去られるような感覚に。間髪入れずに放たれた「タイムファクター」では、目まぐるしく飛び交う光のなか、生バンドの躍動感とエレクトロサウンドが融合。桐木のドライヴしたベースも強烈な推進力を生み、ロングブレスで歌い切った柳田に大きな歓声が送られた。

中盤では、神サイの深い叙情性と音響的な探究心が浮かび上がった。「夜永唄」では桐木がピアノ、吉田がシンセを演奏し、黒川もパッドでエレクトロビートを繰り出す。「凪」では吉田と桐木がシンセと弦楽器を持ち替え、柳田も間奏のブレイクからピアノを演奏。アンビエントな響きが楽曲にコントラストをもたらし、4人がそれぞれの楽器を行き来しながら、新たな音の組み合わせを探っていく様子が印象的だった。「静寂の空を裂いて」では、柳田のアコギ、音数を削ぎ落とした黒川のドラム、吉田のタッピング奏法によるアルペジオが重なり、音のテクスチャーにこだわるバンドの真骨頂を見せた。
スクリーンいっぱいに無数の藤の花が咲き誇った「藤雨」では、幻想的な紫の光のなか、オリエンタルな旋律とシューゲイズなギターサウンドが交錯。その余韻を断ち切るように、ライブはヘヴィな「火花」へ突入する。飛び散る火の粉の映像は、先ほどまで咲いていた藤の花びらが爆ぜるようにも見えた。さらにオレンジの光で包み込まれた世界観で「The Ssyba」が披露されたかと思えば、ノイズを挟み後半ブルーの光で「The Abyss」が披露され、うねるような高密度のファンクへ。吉田のワウギターと柳田のファルセットが官能的に絡み合った。
ここでスクリーンには、現在の横浜と世界が崩壊した近未来の横浜が並ぶように映し出され、ラッパーのRin音がサプライズで登場し「六畳の電波塔」を披露、Rin音の太く豊かな声と柳田の抜けるような高音がコントラストを描き、2人はメロディを重ね、ラップを掛け合いながら息の合ったコンビネーションを見せた。

サプライズに沸く客席の熱気を引き継ぐように、メンバーはいったんステージを離れる。袖で着替えている様子までLEDモニターに大写しにされ、会場が大いに湧くなか、再登場した吉田、黒川、桐木は全身シルバーの衣装にカラフルなサングラス姿。柳田も全身シルバーに白い羽根を背負い、高さ3メートルのトロッコに乗ってフロアを移動する。ダンサブルなトラックに乗せて全力でふざける「ちょっとだけかゆい」では、プリンスやマイケル・ジャクソンを思わせる音作りを突き詰めながら、エンターテインメントとしての馬鹿馬鹿しさも真正面からやり切る。そんな振れ幅の大きさも、今の神サイの魅力だ。
笑いと興奮が落ち着いたところで、4人はフロア中央に設けられた人工芝のステージへ移動。あぐらを組んで円陣のように向き合い、この日初めてじっくりと言葉を交わした。結成からの年月に触れた黒川は、学生だった人が結婚したり、子供が生まれたり、関係性が変わったりする11年という時間を思いながら、「かけがえのないみんなの人生のなかに、僕たちの音楽を置いてくれてすごい嬉しい」と口にした。吉田も「20代を全部捧げた」と振り返り、「俺らだけじゃ本当に11年間やってこれなかった」と感謝を伝える。桐木は「繋がってくれて、ありがとうございます」と短い言葉に思いを込めた。
柳田は、「メンバーやスタッフと本気でいいものを作ろうとするなかで衝突もあった」と明かしながら、それは喧嘩ではなく、より良いものを目指すためのものだったと語る。そして「チーム戦というか、そこにはみんなが絶対必要です」と観客へ言葉を重ねるうち、次第に声を詰まらせた。
その思いを受けて始まったのは、「スケッチ」。柳田と吉田はアコースティックギター、桐木はアコースティックベース、黒川はシンプルなドラムセットというアンプラグドな編成で、4人が輪になって演奏する姿は、部屋に集まってセッションしているところを覗き込んでいるようだった。

続く「Balloon of Shooting Star」では、4人の子供たちが小さな楽器を持って中央ステージに登場。子供時代の自分たちと現在の4人が円を作り、ともに音を鳴らすような演出が、楽曲のノスタルジックな響きをさらに深めていく。吉田はカンタリールを使い、アコギからバグパイプのような音を奏でる。そして少年時代の柳田を演じる子がバルーンの星を空へ放つと、それに合わせて歪んだギターサウンドが降り注ぐ。さらに子供時代の夢を象徴するゴーグルが少年から大人の柳田へ手渡され、“夢のバトン”を受け継ぐような場面に、会場は温かな感動に包まれた。
メインステージに戻った4人は、ソウルフルな新曲「ソユーズに乗って」を披露しラストスパートへ。吉田の合図で観客が一斉にスマホライトを掲げると、ぴあアリーナMMには光の絨毯が広がった。ラストは清々しいポップチューン「Baby Baby」。2024年のZeppツアー「開眼するケシの花」にて初披露され、ライブとともに育ってきた曲だ。疾走感あふれるサウンドのなか、オープニングと同じモノクロの幾何学模様がスクリーンに投影され、それが徐々に白く塗りつぶされていく。まるでこの日の物語がいったん白紙に戻され、新たなチャプターへ向かうことを示すようにライブは幕を閉じた。
終演後には、9月から始まる全国Zeppツアーの開催を告知。『EINSTEIN = ROSEN BRIDGE』で新たなフェーズへと踏み出した神サイの現在進行形を示したこの日のステージには、アレンジ、楽器演奏、サウンドのテクスチャー、映像演出に至るまで、挑戦の跡が随所に刻まれていた。11年目に突入した4人が、ここからさらに大きく飛躍していくことを確信させる、Wアニバーサリーイヤーの集大成にふさわしい一夜だった。
取材・文◎黒田隆憲
撮影◎toya

■<神はサイコロを振らない Zepp Tour 2026>
11月14日(土) 北海道・Zepp Sapporo
open17:30 / start18:30
(問)WESS info@wess.co.jp
11月21日(土) 福岡・Zepp Fukuoka
open17:00 / start18:00
(問)BEA 092-712-4221
11月23日(月/祝) 大阪・Zepp Osaka Bayside
open17:00 / start18:00
(問)GREENS 06-6882-1224
11月29日(日) 愛知・Zepp Nagoya
open17:00 / start18:00
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
12月06日(日) 東京・Zepp Haneda
open17:00 / start18:00
(問)DISK GARAGE https://info.diskgarage.com/







