【インタビュー】大柴広己、デビュー20年目に刻む新たな始まりの『JUNK HOPE』完成「これは未来に繋がっていく希望」

2026.05.05 17:00

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■波瀾万丈の音楽人生を物語る
■デビュー20周年に欠かせぬギターたち

“名は体を表す”という言葉は、“名前は、性質や特徴や本質をありのままに表している”という意味を持つが、ミュージシャンの使用楽器はサウンドそのものを表し、音楽人生すら物語る。本人曰く「ヴィンテージ価値はあまりない」とのことだが、ここに紹介する4本のギターは、大柴の音楽に寄り添い続けてきたという意味では、金銭的な価値に換算することなどできるはずもない。しかも1本1本にまつわる逸話はあまりにも興味深く、大柴の隠れた一面を表すエピソードが盛りだくさんだ。

1966 Fender Telecaster

2009年、馴染みの都内楽器店から「いいギターが入ったんですけど、素性が謎めいているうえ、いろいろ手が加えられてるので、懇意のミュージシャンにお声がけしてるんです」という連絡が大柴に。半信半疑のまま楽器店へ向かい、出会ったのがこの1966年製テレキャスターだ。

最大の特徴は、一見するとバタースコッチが経年変化で極度にくすんだようなボディーカラーと、ローステッド加工を施したような茶褐色のネック、ヘッドのデカールにこの年代のトランジションロゴではなくスパゲティロゴが採用されているという謎めいたルックスにあったという。さらに、フロントピックアップはシングルコイルではなくギブソンのナンバードPAFに交換されていたほか、ビグスビーアームの後付け、トーンノブのプッシュ/プルによるコイルタップ機能など追加仕様も。極めつけは、ボディ表裏に正体不明な年号や人名が刻みつけられているなど、エイジングもカスタム度合いも並大抵ではない。が、そこにロマンを感じて一目惚れしたという1本だ。

しかしこれだけでは終わらない。経年変化による褪色と思われていたボディー塗装の一部が、弾き込むうちに剥ぎ取られ、ブルーの下地が見え隠れ。手入れをするべく、ラッカー対応のポリッシュで拭いたところ褪色だと思っていたものが剥がれ落ち、下地だと思っていたブルーはカスタムカラーのソニックブルーであったことが露呈したという。つまりこれは、タバコのヤニが長い年月の間に積み重なったものであり、あまりに稀な経年変化の妙だったというわけだ。ちなみに、その風合いを残すためにボディー磨きは途中でやめたとのこと。

サウンド面では「テレキャス特有の耳をつんざく高音域はなく、低音が強く太いのに抜けがいい」とのこと。なお、ヴァン・モリソンのツアーに同行したDON SNOW(前オーナーだったと思われる)の名が刻み込まれたこのテレキャスは、長い年月を経てネックとボディがヤニによって癒着し、もはや一体化している。下手に外せば音が変わってしまうためそのままの状態を維持しながらロッド調整は不要というグッドコンディションは、まさにヴィンテージとしての極致に達している。大柴が入手して以降は、ブリッジをMastery製に載せ替えるカスタムを施し、レコーディングやライブなどの現場で活躍中だ。


 

1962 Fender Jazzmaster

クレイドット・ポジションマーク、ラウンド張りのローズウッド指板、スリムなCシェイプネックという仕様を持つ1962年製ジャズマスター。大柴曰く「入手前からリフィニッシュされていたんですけど、キャンディアップルレッドよりも黄色味が強い」というメタリック系のレッド。大柴自身の手によってペグやネジをクロームパーツに、ブリッジはMastery製に交換されているが、フローティングトレモロはオリジナルのゴールドパーツだったという貴重なモデルだ。また、アッセンブリーはオリジナルのままに、プリセットスイッチの配線のみノイズ低減や音抜けの向上を考慮して排除している。

サウンド面では、ジャズマスター特有の豊かな残響音と音の広がりを重視しており、生音が大きくヴィンテージ特有のノイズも少ないため、あまり歪ませずにフロントピックアップを中心に使用。今回のレコーディングでは「YOMOSUE feat.憂現歌」のワウパートで使用したほか、ダブルでエレキギターをレコーディングする際には、前述のテレキャスターを右チャンネル、ジャズマスターを左チャンネルで鳴らすことが多いとのことだ。


 

1966 GIBSON J-45

高校3年の時に購入した初めてのヴィンテージギターは、1966年製のGIBSON J-45。カスタムカラーであるチェリーレッドのボディにビス止めされた白いピックガードが特徴的な一生ものの相棒だ。

しかし楽器店の通販で入手したというJ-45は開封してみれば、ボディーは割れ、指板は波打ち、パーツというパーツはボロボロ。大柴曰く「購入当時はとんでもなくひどくて、まったく鳴らなかった」とのこと。そんななかでも弾き続けていたある日、近所に凄腕のギターリペア職人がいるという噂を聞きつけ、J-45修復作戦がスタートした。

ボディ割れの修繕、内部の木材骨組みの再接着、ネック反りの矯正、ブリッジの作り直し、フレットの打ち替え、ペグなどパーツの交換、マイクの取り付けなどを経て、大手術が成功。晴れて再生したのがこのギターだ。リペアや改造を重ねたことでヴィンテージとしての資産価値は失われたものの、活動初期のライブから大切なワンマン、最新アーティスト写真まで、共に歴史を刻みながら大柴の歌を最も近くで支え続けた唯一無二の存在だ。


 

ForM TRUTH TN-35BB CUSTOM

愛知県のギター工房“ForM”によるTRUTHは、大柴がプロになる以前から愛用しているモデル。大柴はTRUTHのモニターであり、色違いで数本所有しているとのこと。そして2006年から現在まで、20年にわたり節目節目のステージで愛用され続けているTRUTH TN-35BBこそ、ファンから“青鬼”の愛称で親しまれている現在のメインギターだ。経年によるボディの割れにも風格が漂う。

以前のメインであるオレンジに続く2号機TRUTH TN-35BBは、エボニーのカラーリングにピックガード等をホワイトでオーダーしたものの、手元に届いたものはピックガードやバインディング等にTRUTHのフラッグシップカラーのひとつである鮮やかなクールミントが採用されていたという。その事実からも、ForMから大柴への愛が感じられる仕上がりだ。

スペックはJ-45と同様のシトカスプルース・トップとマホガニー・サイドバック。指板とブリッジはエボニー、ニトロセルロースラッカー塗装を施した仕様により、力強い中低音と豊かな鳴りを実現している。大柴曰く「ピックアップはコンデンサーマイクを搭載していて、単三電池2個を6倍に昇圧した18V仕様。低音域から高音域までカバーするワイドなダイナミックレンジがある」とのこと。すべてのニュアンスが素直に出るため、「鳴りは豊かだけど、しっかり弾かないと逆に良い音がしない」とのことだ。

また、巨大なヘッドストックやヘッドとネックの強度を高めるボリュートはTRUTH TN-35ならではのこだわり。ピックガード、バインディング、ロッドカバーにはフレームメイプルが採用されるなど、精度と美しさに関しては細部まで妥協がない。

なお、20年もの間、弾き込まれたことを証明するようなピッキングによるボディーの擦り傷は“青鬼”の勲章でもあるが、その損傷があまりに激しいため、「ピックガードもガードする」透明のピックガードが後付としてボディーに施されている。


取材・文◎宮本英夫 / BARKS編集長 梶原靖夫(機材)
撮影◎緒車寿一

 

■9thアルバム『JUNK HOPE』
2026年4月28日(火)配信開始
配信リンク:https://zula.link-map.jp/links/eKy_iDmp
▼収録曲
1 ええぇぇぇぇああぁい
2 希望の鐘
3 UN HAPPY WORST DAY
4 僕とギターと星空と
5 世の中さん
6 よくばり
7 キクチくん
8 YOMOSUE feat.憂現歌
9 笑ってくれよ

 

■<大柴広己 弾き語りワンマンライブ>
5月7日(木) 福岡・大名シャングリラ
open19:30 / start20:00
チケット:チャージ3900円(1D別途)
6月9日(火) 東京・仙川せんがわ劇場
open18:30 / start19:00
チケット:前売 4000円
詳細:https://oshibab.wixsite.com/oshibahiroki/ticket

 

 

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