【ライブレポート】wyse、<1999-2001 Complete>が鮮明にした変化「過去と向き合うだけではなく、未来を作れた1年だった」

wyseが12月7日、東京・Veats Shibuyaにてインディーズ時代にフォーカスしたライブツアー<1999-2001>の完結編にして、2025年ラストライブとなる<1999-2001 Complete>を開催した。同公演のレポートをお届けしたい。
結成26周年を迎えたwyseは2025年、インディーズ時代にフォーカスしたツアー<1999-2001>を全国各地で開催。その理由は後述するMCの中で語られたが、11月15日および16日の2日間、幕張イベントホールに1990年代後半から2000年代のシーンを盛り上げたヴィジュアル系バンドが集結した<CROSS ROAD Fest>の2日目に出演したことと、同様の意味合いを持つようだ。それら試みが彼ら自身に新たな刺激を与え、バンドの細胞を活性化させたことを、この日のライブが物語っていた。
フロアは超満員。ライブの一発目は1999年に販売されたwyse初の1000本限定デモテープ収録曲「wade」だ。ステージが赤く染まり、続いて投下されたのは<CCROSS ROAD Fest>でも披露された「Feeling」。Hi!コールの中、重量感とキレを兼ね備えた演奏が序盤から場内を熱くさせていき、視界から月森(Vo)が消えたと思ったら、客席で歌っていたというハプニングまで飛び出した。

跳ねるビートに合わせてオーディエンスがジャンプする「D&D」では、MORIとHIROが背中合わせでギターを弾くツインギターならではの見せ場もあったほか、ここまでデモテープ時代から存在していた曲が3曲続けて披露された。もちろん、ステージで演奏しているのはサポートドラマーにshuji (ex.Janne Da Arc)を迎えた今のwyseなのだが、そこにはロック特有の焦燥感にも似たヒリヒリした感覚がある。
重量感のあるドラムにTAKUMAの骨太ベースなフレーズが絡み、月森が「あの頃のように! あの頃以上に熱いライブにしようぜ!」と煽った「My name is Japanese Breaker」は、ラップも取り入れたハードチューン。月森もTAKUMAも前の柵に片足をかけてフロアに身を乗り出し、その勢いの塊のようなアクトに大歓声が上がる。
ツアー<1999-2001>では新曲も披露された。「紫陽花のころ」「Get Out」「Missing you」は、インディーズ時代に制作された未発表曲を今のwyseによるアレンジで完成させた曲たちであり、ツアー後にEP「Reflect」としてCD化。今回のツアーがなければ埋もれていたまま、披露されることはなかったかもしれない。その1曲であり、ハードロックテイストのギターサウンドとキャッチーなメロディのバランスが絶妙な「Missing you」は、当時の青臭さと今の彼らの円熟した表現力あってこそ。HIROの饒舌なフレーズが曲を加速させる。前半からドーパミン噴出の場内をクールダウンするように2000年リリースの1stミニアルバム『With..』収録曲「am0:00の警笛の中で」が切なさと懐かしさを伴い、響いてきた。

「2024年が25周年だったんですけど、できること全部やろうと思って、めちゃくちゃ走り切った。それが終わったら、真っ白になって、“次どうする”?っていう話になった時、“インディー曲に向き合って、もう一回しっかりやってみようよ”ってことになったのが、今回のツアー<1999-2001>だったんです。今年1年やってみたんですけど、知らない間にあの頃の若さというか、熱さに触れて、僕らも盛り上がって。本当にやって、見ていただいて、よかったなと思ってます」──月森
そして、「次はちょっと特別な曲」と語り、早朝の渋谷スクランブル交差点でミュージックビデオを撮影した思い出と、その後でメジャーデビューのことを知らされたというエピソードを明かしてアルバム『the Answer in the Answers』(2001年発表)収録曲「3 years later, I…」へ。月森とTAKUMAのボーカルの掛け合いにより、届けられる歌詞が染みてくる。
中盤はwyseの情緒的な世界観がたっぷり味わえるセクション。洗練されたアプローチが今の彼ららしい未発表新曲「紫陽花のころ」に続いて、wyseの名曲であり代表曲のひとつ「With…」はシンプルで繊細なアンサンブルだ。それぞれの人生の思い出をフラッシュバックさせる曲を月森が深みと優しさを増した歌で届け、HIROがその心象風景を彩るようなギターソロを響かせた。そしてデモテープ配布曲でもあった「19回目の夏に僕に見えたものと見えなくなったもの」は月森とTAKUMAの歌が心地よく溶け合い、心揺れる時期を綴ったTAKUMAの歌詞をMORIのギターソロが際立たせる。会場には女子はもちろんメンバーの名前を絶叫する男子も。

昔からwyseを聴いている人にとっても、当時だから感じられたこともあれば、年月を経た今だからこそ刺さるものもあるだろう。そのことひとつとっても今回のツアーの意味は大きい。そしてMCでは懐かしいだけではなく、いろいろなことを感じるツアーだったとTAKUMAが、「過去は過去だからさ」と前置きして、変化について触れた。
「メンバーにもいろいろな時代があって変化してきたし、wyseとの関係もみんなとの関係も変化してきた。過去は変わらないんだけど、俺たちがどうするかによって色味が変わるとか、感じが変わるっていうのはあるのかなって。“あの頃、すごく悲しかったな。でも今、こうやって歌えてるのは幸せだな”とか。そう思うとwyseはちゃんとこの2025年を生きていると思います。生きるために活動してるわけじゃないです。だけど、音楽が好きで、wyseが好きで、みんなもこうやって求めてくれて。今日という日にwyseという音楽を一緒に楽しめてることをすごく幸せに思います。いろいろなことがあったけど、今日がいちばんだよ。ありがとう」──TAKUMA
お客さんが場内に入り切らないほどパンパンのフロアに、TAKUMAが「少しだけ前に詰められる? 後ろの人が見えないみたい。出来る範囲で一歩前に」とお願いし、月森も「つらい人、いないですか?」と声をかけるなどすし詰め状態の中、ライブは後半戦に突入。

再びここからの加速を想像する中、起こったのは予期せぬハプニングだった。「言葉を失くした僕と空を見上げる君」の歌い出しのタイミングを月森がミスして、TAKUMAが演奏をストップさせた。しかも中断は二回も。フロアが笑いと月森コールで沸く中、TAKUMAからは怒られ、MORIからはエアで蹴りを入れられて、苦笑する月森。曰く、「この曲はヴァージョンがたくさんあるから、どのアレンジか見失った」とのこと。TAKUMAからは「今回は、生き急いでいた頃のヴァージョンだから」と言われ、ついに3回目で成功。MORIの肩に手を回しながら歌い、“頼りない僕を”という歌詞の部分でTAKUMAを見て笑顔でコンタクトをとる月森は、やはりチャーミング。wyseに加勢するようにフロアに歌声が響いていたのも印象的だった。メジャーアルバム収録曲の4つ打ちのダンスナンバー「You gotta be」ではTAKUMAのうねるグルーヴィなベースがフィーチャーされ、MORIのカッティングが冴える「Scribble of child」へ。
「もっともっと熱くいこうぜ、渋谷! ここまで届かせてくれよ! ここまで届いたら面白いもの見せてあげるよ!」──月森
そう前置きした未発表の「Get Out」は新曲の中で最もパンキッシュで衝動的なナンバー。初期からwyseの音楽性は多彩だったのだが、この曲ではファンが既に振りをマスターしていて、月森も照れ笑いをしながら振りで盛り上げていたのが実に新鮮。フロアの熱量も半端なく、初期wyseのキラーチューンだったロカビリーテイストの尖りまくりの曲「路地裏のルール」では振り切れたアクトとみんなの大合唱で沸騰状態。間髪入れずに当時のストリート思春期感爆発のヘヴィチューン「Miss t×××」になだれ込み、フロアからは拳が突き上がった。

「過去の自分たちと向き合う、そんなツアーだったけど、向き合うだけじゃなく、未来を作れた1年だったと思う。次の曲は、どんなふうになっても自分たちを忘れない。そんな気持ちで作った曲です。変わってもいい。俺たちの芯が変わらなければ。いつまでも一緒にこの曲のように生きましょう」──TAKUMA
月森とTAKUMAが肩を組んで歌う場面も飛び出した「あの日の白い鳥」が届けられ、本編ラストは最新CDのタイトル曲で、これまでの日々をいつかの僕たちに宛てて肯定するメッセージが込められたメロディックで疾走感のある「Reflect」。拍手と歓声はすぐさま、力強いアンコールの声へと変わっていった。
ツアーTシャツに着替えてメンバーが登場したアンコールでは、バースデーソングをバックに本ライブが誕生日だったHIROにMORIからバースデーケーキが手渡され、HIROが「ありがとうございます。ちゃんとサプライズありましたね。よかったです。このまま何もなかったら、僕は拗ねて帰るところでした」と笑わせ、shujiを含む5人で記念撮影をしたり、お互いの年齢の話になったりとメンバーの仲の良さが伝わるやりとりが繰り広げられた。そして改めて感謝の言葉を伝えたTAKUMAから2026年の報告も。

「音源も届けていきたいけど、やっぱりライブしたいよね。ライブバンドでありたい。生きてる実感を感じるから。これからも、特に来年はライブをどんどんやっていきたいと思っています。みんなのひとつのピースが必要なので、一緒に道を作ってほしいと思います。2026年2月14日にはwyseの誕生日会(結成記念日公演<27の奇跡>)がありますので、ぜひ参加してください! そのライブは期間とか時代の縛りじゃないので、ベストなライブになると思います」」──TAKUMA
アンコールに届けられたのは月森、MORI、HIRO、TAKUMA、KENJIの5人体制だった時代に生まれ、様々な時を経て、歌詞も変化してきたというメンバー紹介が盛り込まれた「RESET」だった。TAKUMAはまだ叶えたいもの、掴みたいもの、挑みたいものがあると伝え、2026年は対バンも積極的にやっていきたいとも表明した。
「最後はこの年代、この曲やらないと終われないかなっていう曲があるんでね。月森さん」と呼びかけ、月森が「そうですね。ライブ曲と言ったら、当時はこの曲だったと思います」と答え、オーディエンスを煽っての最後の曲は「Plastic Monkey」。暴れ倒して完全燃焼。最後までステージに残ったHIROは「ありがとう!」と生声で叫んだ。

原点に向き合ったからこそ見えてきた景色は、wyseにとってもファンにとってもかけがえのないものだったに違いない。この日の熱いアクトがそのことを雄弁に物語っていた。
取材・文◎山本弘子
撮影◎Lestat C&M Project
■<1999-2001 Complete>2025年12月7日(日)@東京・Veats Shibuya セットリスト
SE Pluto
01 wade
02 Feeling
03 D&D
04 My name is Japanese Breaker
05 Missing you
06 am0:00の警笛の中で
07 3 years later, I…
08 紫陽花のころ
09 With…
10 19回目の夏に僕に見えたものと見えなくなったもの
11 言葉を失くした僕と空を見上げる君
12 You gotta be
13 Scribble of child
14 Get Out
15 路地裏のルール
16 Miss t×××
17 あの日の白い鳥
18 Reflect
encore
19 RESET
20 Plastic Monkey

■<wyse 結成記念日公演『27の奇跡』>
2026年2月14日(土) 東京・Shinjuku ReNY
open14:30 / start15:00
▼チケット
スタンディング ¥7,000-
https://eplus.jp/sf/detail/4432180001-P0030001

■<Psycho le Cému presents「ライバルズ」2026>
2026年2月28日(土) 神奈川・川崎SUPERNOVA
open17:00 / start17:30
▼チケット
スタンディング ¥8,800-
※当日:¥9,900-
※ドリンク別
【オフィシャル先行】
受付期間:12/20(土)12:00〜12/24(水)23:59

■<THE MICRO HEAD 4N’S presents MONTHLY 2MAN「B-EAST」>
2026年4月12日(日) 神奈川・川崎セルビアンナイト
open17:00 / start17:30
出演:THE MICRO HEAD 4N’S / wyse
w.pia.jp/t/tmh4ns-26/
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