【インタビュー】MUCC、YUKKEが語る最高のポップとタイムラプス「歩んできた人生は茨のようなトゲトゲの道」

2025.12.16 18:00

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MUCCが2025年ラストを飾るシングル「Never Evergreen」を12月10日にリリースした。表題曲「Never Evergreen」は逹瑯(Vo)、2曲目「夜風(よるかぜ)」はミヤ(G)、3曲目「茨-イバラ-」はYUKKE(B)がそれぞれ作詞と作曲を手掛け、三者三様の解釈で“MUCCの最高のポップ”を探求し、表現した。

曲調はまちまちだが、歌詞には共通して切なさや郷愁が漂っているため、コンセプトを決めて制作に臨んだのかと想像したが、そうではなかった。3人が同じ時代を生き、メンバーとしてバンドの状況を共有しているからこそ、自然と醸し出されたものなのだという。

3曲中最もラウドにして、ライヴのフロアで既にファンを暴れさせている「茨-イバラ-」の作者YUKKEに登場してもらい、楽曲誕生の背景を尋ねた。11月5日には46歳のバースデーライヴを開催、<LUNATIC FEST. 2025>等のイベントにも出演するなど濃密だった11月を振り返りながら、MUCCの現在地を掘り下げたロングインタビューをお届けする。

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■結成から28年、人生的には46年
■タイムラプスのイメージがあった

──シングル「Never Evergreen」はメンバー三者三様の個性が際立つ曲揃いで、歌詞には切なさや郷愁が統一感として漂っている印象を受けました。シングルが完成した今、手応えはどうですか?

YUKKE:まず、しっかりとCDで新曲を出すのは久しぶりな感じがしています。たまたま同時期に3人が制作をした結果、ひとり1曲の作詞作曲をひとつのシングルに収録する形に落ち着いた、という感じです。今の時期にリリースする新譜としては特別なものになってるんじゃないかな。やっぱり同じ状況下、時間の流れで生きている3人なので、同じぐらいの時期に歌詞を書くとどこか通じ合う部分があるんだな、と。

──事前に「こういうコンセプトでつくろう」という話はなかったんですね?

YUKKE:歌詞に関してはなかったですね。曲に関してはレコード会社のスタッフやプロデューサーから「今回、MUCCの最高のポップを全員つくってみましょう」という提案があって。そこに向かってつくっていきました。

──YUKKEさん作詞作曲の「茨-イバラ-」は、ホップとは言っても、ラウドでパンクな要素も感じます。ご自身の中で、ポップはどういう解釈だったんでしょうか?

YUKKE:ポップって、たぶん人それぞれの定義がある幅広い言葉だと思っていて。自分的には、ライヴの後半ブロックでお客さんと一緒に上げていくような曲をつくろうとしている期間が、ここ3年ぐらいずっとあったんです。だけど、なかなか形にならなかったのもあって。その“つくりたい”とずっと思っていた部分を、今回作曲に向けたという気持ちでした。ラウドな部分やヘヴィな部分は、プリプロの作業中とかにバンドで触っていく中でつくり出されたアレンジで、ライヴ用になっていったという感じです。

──なるほど。

YUKKE:「茨-イバラ-」に関しては、結構早い段階で、表題というよりカップリング前提で進めていこうという話をリーダー(ミヤ/G)としていて。もし「茨-イバラ-」が表題だったら、またアレンジも違っていたと思います。

──メロディーを聴いていると、バラードに仕上げても名曲になるポテンシャルを感じましたが、具体的にはどういったところからつくり始めたのですか?

YUKKE:順番的に言うとサビのイメージはずっと前からあって。わりと高いテンションで始まって、そのサビの落ち着くところでほんの少しでもいいから懐かしい気持ちになる部分を入れたかったですね。歌詞で言うと“旅の途中”のところで、ちょっと懐かしい雰囲気のあるメロディーも入れたいというイメージは、2年前ぐらいからありました。

──そんなに前からあったんですね。

YUKKE:鼻歌を歌いながら“旅の途中”という歌詞だけがずっとあったので、歌詞に関しても、過去を振り返るようなものになるだろうな、というのは考えていました。

──“コワレタ世界の隙間に”とか、“未来なら笑えてる気がして”という歌詞は、逆に言うと現在は笑えていない状況なんだな、と感じられるというか。

YUKKE:バンド結成から28年で、自分の人生的には46年で。過去と未来を見た時に、自分が時間の軸の中心に立っているとして、タイトルにはしなかったんですけど、星空とかを観測する“タイムラプス”のイメージがあったんですね。

──一定の感覚で撮影した静止画を、連続してコマ送りで見せる動画ですね。

YUKKE:いろいろな星がずっと流れていく、その中心に自分は立っている、というイメージで書いていったんです。

──タイムラプスというモチーフは、YUKKEさんの中で昔からあったものなんですか?

YUKKE:いや、今回初めてです。

──どこから湧いてきたイメージなんでしょうか?

──ロマンティックですし、インパクトの強いタイトルですよね。

YUKKE:やっぱり過去にはいろいろなことがあって、今まで歩んできた人生は茨のようなトゲトゲの道だなと思ってて。MUCCの道のりって本当にすごく凸凹してるよなって思ったんですね。個人的には、キャンプに行くようになったから……と言っても、キャンプ場で歌詞を書いたわけではないんですけど(笑)。山の中とかでいろいろと考えたりすることが多くなって。その状況を自然と頭の中に置いて書いていましたね。星空ってやっぱり流れていくし、“さっきはあっちにあったのが今はこっちにある”というような……まぁそれは当たり前のことなんですけど。タイトルは、自分の過ごしてきた長い時間に置き換えたら、タイムラプスより漢字一文字とかのほうが“らしい”かもしれないなって。

YUKKE:自分から“茨”という言葉ってあまり出てこなかったので、最後に付けたんですけど、すごくしっくりきました。

──愚問かもしれませんが、地元の茨城も関係ありますか?

YUKKE:“そう言えばそうだな”というところで。そういう意味も含めて、より良くなりましたね(笑)。

<YUKKE(5)46歳BIRTHDAY LIVE ♰夢幻♰>

──この曲は11月5日のバースデーライヴ<YUKKE(5)46歳BIRTHDAY LIVE ♰夢幻♰>でも披露されています。お誕生日おめでとうございました。

YUKKE:ありがとうございます。<Love Together>という対バンツアーでは、もう既に3曲とも披露していたんですけどね。僕のバースデーライヴはLa’Mucc(※90年代ヴィジュアル系の様式美を踏襲した、MUCCの幻影バンド)とのツーマンだったので、多くてもMUCCで10曲、その中で新曲を3曲やってしまうのもなって。

──バースデーライヴにはGLAYのJIROさんがサプライズで登場したんですよね。イベント<V系って知ってる?>のGLAY Respect SessionではJIROさんからご本人のベースを借りて出演されましたし、JIROさんへの憧れを公言しているYUKKEさんですから、ちょっとした事件でしたよね。

YUKKE :事件ですよ! いまだに同録だったり映像だったりを観てますからね(笑)。

──茨の道だったかもしれませんが、夢もたくさん叶えてこられているYUKKEさんであり、MUCCの軌跡なのかなと。

YUKKE:高校生の自分からしたら、「JIROさんに会いたい」が夢だったと思うんですよね。数年前にお会いすることはできて、もちろんうれしかったんですけど、まさか一緒のステージに立ってツインベースで大好きな曲(GLAYの『SHUTTER SPEEDSのテーマ』)を演奏できるなんて。本当にサプライズで、僕も予想していなかったことです。ビックリするような初めてのことがまだたくさんあるんだな、と。

──夢を叶えていくYUKKEさんの姿を見ることによって、ファンの方も生きる希望が湧いたのではないでしょうか?

YUKKE:希望が湧いてくれたらうれしいですけど、あの瞬間はそこまでファンの子のことを考えられなくて、JIROさんしか目に入らなかったです(笑)。“嘘でしょ!?”って。11月は本当にそういう月間で、先日出演した<LUNATIC FEST. 2025>もそうだし、<CROSS ROAD Fest>も本当に良かったし、希望が湧いたのは僕のほうで。高校生時代の自分の衝動を、目の前でまた思い出させてもらえて。「先輩の背中が大きい」とかよく言いますけど、先輩の背中の数が多いので、本当にすごいなと。先輩たちに挟まれながら、自分たちもそういう背中見せられたらいいな、と思いました。

──MUCCの皆さんは後進のバンドに大きな影響を与えていると思います。

YUKKE:そうだといいですね。

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