【ライブレポート】鈴華ゆう子、ソロアルバム『SAMURAI DIVA』を掲げ初ツアー。唯一無二のDIVAがここに

2025.11.30 18:00

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鈴華ゆう子が10月29日に発売したソロアルバム『SAMURAI DIVA』を掲げ、ソロ初のツアー<鈴華ゆう子LIVEツアーSAMURAI DIVA 東名阪台ノ陣>を開催。12月6日(土)の台北公演を残し、11月22日(土)日経ホールにて、セミファイナルを迎えた。

アルバム、ツアータイトルともに掲げられている“SAMURAI DIVA”。自身が母親になったことで日本の未来のことをより鮮明に考えるようになった鈴華は、この時代の日本において、いま一度日本人としての喜びや誇りを取り戻してほしい、世界に誇れる民族であることを実感してほしいという思いを持った。そしてエンターテインメントに関わる身として「一層自分のやるべきこと」を考えるようになったという。それが『SAMURAI DIVA』という作品に繋がった。

私自身も取材をしている中で次の構想としてこの言葉を初めて鈴華の口から聴いたとき、「これは鈴華だからこそ名乗れるものだ」と非常に腑に落ちたものだ。と、同時に言葉の重みも感じた。和を背負い、歌を歌い続けていくという“SAMURAI DIVA”という彼女の名乗りはとても重くて責任感のあることなのではないか──そう思っていたのだがいまはひとつの結論に行き着いている。そう至った<鈴華ゆう子LIVEツアーSAMURAI DIVA 東名阪台ノ陣>東京公演の模様を振り返ってみたいと思う。

   ◆   ◆   ◆

舞台となった日経ホールのステージにスモークがたかれ、荘厳なSEが流れ始めた。バンドメンバーに続き、ゆっくりと鈴華が登場。そして張り詰めた緊張感を切り裂いたのは、篳篥の音。そう、幕開けは今回のアルバムの表題曲であり、田中公平作曲の「SAMURAI DIVA」。オーケストラと和楽器が融合した豪華絢爛な一曲だ。地底を這うような低音から、空高く届くようなファルセットなどとにかく鈴華の歌の凄さがこれでもかと詰め込まれている。歌詞も《天に歌えば 地が吼える》《胸にもゆるは 不滅の魂》などとかなり壮大で強力だ。ピンスポに照らされ歌ったラストの叫びは圧巻で、曲が終わった後も鳥肌が立つほど。正直、もう一曲目にしてクライマックスのような感動だ。

だがもちろんクライマックスではなく、ライブはここから。「SAMURAI DIVA」で一気に鈴華ワールドに引き込んで、次に放たれたのはメタル曲「Incubation」。バンドメンバー、新保惠大(Dr)のツーバスとわちゅ〜(B)のベースのリズムが心を躍動し、鳴風(G)のギターソロと匹田大智(津軽三味線)にも気持ちが乗せられていく。そこへZIN(鼓)の煽りが入り、会場には熱い拳が上がる。

「盛り上がっていく準備はOK?」という鈴華の言葉には、当たり前と言わんばかりに大きな声が上がり「ケサラバサラ」へ。前回のワンマンライブではダンサーと共に鈴華もヘッドマイクで踊りながら披露されたこの曲が今回はバンドセット、違う味わいがまた楽しい。間奏ではファンも一緒になって《ケサラバサラ》の大合唱、振り付けも一緒に楽しみ、一体感が生まれた。疾走感ある和ロックは本当に鈴華に似合う。

そんな“SAMURAI”モードから、ジャジーな「泥棒猫」でしなやかな“DIVA”モードへスイッチ。ピンクの照明で艶っぽく《あなたの腕に抱かれて死ぬまで》なんて歌われるのだから、ドキドキしてしまう。猫のようにしなやかな身のこなしと手つきも扇情的だ。

時計の針の音が響きスモークでステージが覆われたと思ったら、そこには白いベールを纏った鈴華が。死生観を描いた「巡り巡る」を舞いながら、歌が始まった。《人はなぜ生きるのか 過ちを重ねて》《死を受け入れた夜に》と、たくさんの経験を経てきた大人の歌手だからこそ歌える言葉には重みがある。それに対比するような軽やかな布を使った舞も美しく、そのコントラストに生と死のあり方を考えさせられてしまう。真っ白な照明の中、アカペラで《人はまた生まれゆく》と響かせたその姿は天女のようで思わず息を呑んだ。

少し感傷的になった気分にそっと寄り添ってくれたのが「永世のクレイドル」。メロディアスなバンドサウンドにあわせ、ステージの端から端まで移動してファン一人一人と目を合わせながら歌う鈴華。彼女の歌声のスケール感が実感させられたワンシーンだ。これまでも度々披露されてきた人気曲だが、「巡り巡る」からの流れで、今日改めて“一人ではない”と伝えてくれるような温かな歌詞だったのだと気付かされた。

ここまでの盛り上がりに、会場からは「ゆう子さーん!」と大きな声援が上がった。それに「バンドと違って“ゆう子さん”しか聞こえてこないのにもだいぶ慣れてきたけど、本当にありがとう!」とにこやかに答えた鈴華は、「これからも私を応援していただいて、一段夢の舞台に連れていってください!」とファンに一礼。“SAMURAI DIVA”としての使命は、ファンあって成し遂げられるものだ。

なお、鈴華は4月に詩吟の新流派「吟道鈴華流」を立ち上げ。初代宗家「鈴華慶晟(すずはな けいせい)」としても活動している。ずっと追っているとつい忘れそうになるが、そもそも歌手としてメジャーデビューしつつ詩吟の宗家でもあるということがどれだけすごいことか。名実ともに“SAMURAI DIVA”と名乗れるのはやはり、この日本に鈴華だけだ。そんな宗家として、今回はアカペラ詩吟を披露。

これまでライブではバンドやEDMとあわせて詩吟の一部をアレンジして披露することもあったが、今回はシンプルに詩吟だけを味わえる貴重な機会となった。各地で違った詩を披露してきたというが、東京公演では隅田川の光景を歌った「月夜三叉口に舟を泛ぶ」をセレクト。詩吟の細かいことは正直わからないのだが、独特の節回しに月の見える夜、船に乗っているようなゆったりとした気持ちが見えるような気がする。

なかなか何の素養もないところから詩吟を聞きに行くのはハードルが高いが、こうしてライブの一環で本物の詩吟を味わえることが面白い。そしてそこからひとりでもふたりでも詩吟の世界を知ってくれたら──和の魅力を体現する鈴華にはそんな気持ちもあるのだろう。

さて、場面は転換し「傷を知っているからこその優しさを持った人の寂しさや苦しさに寄り添いたい」と思って書き下ろしたと語る「月の兎」から再び歌唱へ。ピアノと箏の柔らかな音色にのってゆったりと歌われる優しいメロディーに心がほぐれていく。その雰囲気に雅楽の音が加わり、「Bloody Waltz」が始まる。吸血鬼をテーマにしたムーディーな一曲だが、ジャズに和楽器が使われているという、これまた鈴華のオリジナリティ溢れる一曲だ。鈴華は物語の主人公のようにドラマティックに歌い上げ、観客を異世界へと誘う。いつか楽曲に参加している東儀秀樹とのステージも見てみたいものだ。

ここで鈴華が一旦ステージを捌けると、匹田大智がセンターステージに立ち三味線ソロを披露。力強い津軽三味線ならではの速弾きはもちろん、ハンマリングやピックスクラッチのような奏法まで見ることができてとても面白い。和楽器というと敷居が高いように思われがちだが、いろんな可能性を秘めていて、和楽器バンドしかり、鈴華のライブではそれを知ることができるのも醍醐味。

匹田の三味線で会場が温まったところに新保惠大のドラムが一打。赤い照明が灯り、刀を構えた鈴華が登場すると「月の兎」「Bloody Waltz」の雰囲気あるムードから一変、凛々しい剣舞を披露。ZINも加わり、小鼓で彩を添える。鈴華、匹田、ZINの決めポーズもかっこよかった。

その和の雰囲気を引き継ぐ「百年夜行」では、ファンもグッズの舞扇子を使って振り付け。鈴華のおハコのひとつである和ボカロナンバーなので、会場も「オイ!オイ!」と声を出して大盛り上がり。サビで会場全体に広がる舞扇子の波は、本当に美しい光景だ。その盛り上がりのまま「The Battle of the Monkey and the Crab」へ突入。シライシ紗トリ、ORANGE RANGEのHIROKIとのコラボで制作された、『さるかに合戦』をテーマにしたラップ曲だ。ファンも曲タイトルを一緒になってラップしたり、間奏ではヘドバンしたりとスパーク。

力強さと優しさを兼ね備えた「サムライハート」のあと、鈴華から改めて『SAMURAI DIVA』に込めた思いが語られた。「今回のアルバムはバンドがお休みに入っているので、私自身の全てを注ぎ込もうと思って制作した」作品だそう。さらにファイナル公演は台北であることも踏まえ、「日本のかっこよさとかいいところに誇りを感じている。そして海外の方々にもそんな日本に興味を持ってもらいたい」との決意も。そしてなんと、この日公演を見にきていた和楽器バンドの尺八・神永大輔を呼び込む。

実は本公演の前に台北公演のリハをしてたそうで、そのついでに公演を見て帰ろうとしていた神永を「いるなら出れば?」と急遽ステージに誘ったとのこと。なんと神永はそれも予知しており、ちゃっかり衣装も準備。鈴華と縁の深い神永の登場に、ファンも大喜び。神永を加えた体制で「甲賀忍法帖」へ突入した。この曲のイントロの尺八、やはり生披露が嬉しい。より一層豪華になったバンドサウンドで聴く鈴華の「甲賀忍法帖」は最高だ。

いよいよライブはラストスパート。「甲賀忍法帖」の熱のまま疾走感あふれる「Dark spiral journey」へ。力強いボーカルにのってファンのペンライトもより高く上がる。そして本編最後はポップロックナンバー「ミトコンドリア」だ。コミカルな歌詞と可愛いらしい歌唱で、“一緒に一歩を踏み出そう”という前向きなメッセージを届けてくれる。タオルを振り回したり、掛け合いが生まれたりと、ハッピーな空気が充満していく。曲の終わり、鈴華もバンドメンバーも、そしてもちろんファンも、笑顔で手を振り合っていた光景が印象的だった。

そんな楽しいライブがここで終わるわけもなく、ファンの熱烈なアンコールに応えて鈴華が再び登場。そして素直な言葉でツアーを回ってみて、ファンに想いを伝える。

「SNSの時代ですけど、SNSだけだと心細くなってしまう。顔と顔を直接合わせて、面と向かって会ったとき、“ずっと歌っていかなきゃな”という力をもらっています。大切なお金と人生のエンタメの時間を鈴華ゆう子にささげてくださっていること、本当に感謝しています」

「直接顔を見ながらパワーを浴びると、もっともっと音楽でみんなの人生を少しでも豊かにしてあげられたらいいなと思っています。一人一人に寄り添える音楽を続けていきたいと思っていますので、これからも“ソロでも武道館”という夢を叶えるまでよろしくお願いします」

そして「いつまでもみなさんのうたいびとでありたい」という願いを伝え、大事に歌い続けてきた「うたいびと」を歌い始める。情景が浮かぶ柔らかな歌。伸びやかなボーカルが心の柔らかいところを埋めていくようだ。歌詞にあわせた鈴華の表情も聖母のようで美しい。年々、こういった優しいバラードこそが鈴華の真骨頂だと思うようになってきた。うたいびととしての鈴華は、どんどんと深みを増している。

ファンからの大きな拍手に「歌わせてくれてありがとうございます。みんながいるから歌ができる。これからも家族みたいによろしくね」と応えた鈴華は、「パピヨン」でファンに“ありがとう”を伝えて本公演を締め括った。鈴華の心からの感謝はこの場にいた全員の心に深く響き渡り、確かな感動となって残っただろう。

   ◆   ◆   ◆

SAMURAI DIVA、鈴華ゆう子。私はこの言葉を背負うことを、すごく重いことだと捉えていた。もちろん強い思いと決意が込められていることは間違いないのだが、この公演を見て実感したのは、「銘打つ前からすでに鈴華はSAMURAI DIVAだった」ということ。和を核とした多ジャンルとの融合、詩吟や剣舞といった本物の和の伝統表現、和楽器を使ったサウンドの提示、クラシックの素養から成り立つ音楽性、そもそもの歌の実力──。鈴華ゆう子のアイデンティティそのものが、SAMURAI DIVAだったことに改めて気付かされた。唯一無二の歌姫は、ここにいる。

取材・文◎服部容子
写真◎KEIKO TANABE

セットリスト
1.SAMURAI DIVA
2.Incubation
3.ケサラバサラ
4.泥棒猫
5.巡り巡る
6.永世のクレイドル
7.月の兎
8.Bloody Waltz
9.三味線ソロ~ドラム剣舞~ドラム三味線剣舞
10.百年夜行
11.The Battle of the Monkey and the Crab
12.サムライハート
13.甲賀忍法帖
14.Dark spiral journey
15.ミトコンドリア
en1.うたいびと
en2.パピヨン

<鈴華ゆう子 Acoustic JAPAN Tour 2026 SAMURAI DIVA Premium Edition ー 粋 と 麗 ー>
【麗】広島・Live Juke
【日時】2026年1月10日(土)
第一部 14:30開場/15:00開演
第二部 18:30開場/19:00開演
【会場】Live Juke(広島県広島市中区中町8-18 クリスタルプラザ19F)
【チケット】一般7,900円(税込)/学生3,000円(税込)
【出演】鈴華ゆう子、広田 圭美(Piano)、 山下 由紀子(Percussion)、ゲスト出演有

※第一部と第二部では、一部セットリストを変更してお届けいたします。

【麗】福岡・Border
【日時】2026年1月11日(日)
第一部 14:30開場/15:00開演
第二部 17:30開場/18:00開演
【会場】Border(福岡市中央区警固1丁目15-38
カイタック スクエアガーデン ウエストサイド3F)
【チケット】一般7,900円(税込)/学生3,000円(税込)
【出演】鈴華ゆう子、広田 圭美(Piano)、 山下 由紀子(Percussion)

※第一部と第二部では、一部セットリストを変更してお届けいたします。

【粋】神戸・クラブ月世界
【日時】2026年1月17日(土) 16:30開場/17:00開演
【会場】クラブ月世界(神戸市中央区下山手通1丁目3−8 ​)
【チケット】一般9,000円(税込)/学生4,000円(税込)
【出演】鈴華ゆう子、広田 圭美(Piano) 李 令貴(Drums&Percussion) 蓮池 真治(Bass)

【麗】仙台・STAR DUST
【日時】2026年2月21日(土)
第一部 14:30開場/15:00開演
第二部 18:30開場/19:00開演
【会場】STAR DUST(仙台市青葉区本町2-5-18 カルラ本町ビル4F)
【チケット】一般8,500円(税込)/学生3,600円(税込)1ドリンク付き
【出演】鈴華ゆう子、広田 圭美(Piano)、 山下 由紀子(Percussion)

※第一部と第二部では、一部セットリストを変更してお届けいたします。

【粋】水戸・ザ・ヒロサワ・シティ会館(小ホール)
【日時】2026年2月28日(土) 17:30開場/18:00開演
【会場】ザ・ヒロサワ・シティ会館(小ホール)(茨城県水戸市千波町東久保697番地 ​)
【チケット】一般9,000円(税込)/学生4,000円(税込)
【出演】鈴華ゆう子、広田 圭美(Piano) 李 令貴(Drums&Percussion) 蓮池 真治(Bass)、ゲスト出演有

【麗】札幌・PLANT HALL
【日時】2026年3月22日(日)
第一部 15:30開場/16:00開演
第二部 19:00開場/19:30開演
【会場】PLANT HALL(札幌市北区北23条西4丁目2-39 第42ビッグビル)
【チケット】一般7,900円(税込)/学生3,000円(税込)
【出演】鈴華ゆう子、広田 圭美(Piano)、 山下 由紀子(Percussion)

※第一部と第二部では、一部セットリストを変更してお届けいたします。

【粋】金沢・REDSUN
【日時】2026年3月28日(土) 17:00開場/18:00開演
【会場】REDSUN(石川県金沢市片町1丁目3-9​)
【チケット】一般9,000円(税込)/学生4,000円(税込)
【出演】鈴華ゆう子、広田 圭美(Piano) 李 令貴(Drums&Percussion) 蓮池 真治(Bass)、ゲスト出演有

【先行抽選】ローソンチケット(抽選)
受付期間:2025年11月22日(土)20:00~11月30日(日)23:59
結果確認&入金期間:2025年12月2日(火)15:00~12月4日(木)23:00
発券開始:各公演1週間前12:00~
https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=717848

【一般発売】ローソンチケット(先着)
発売日:2025年12月7日(日)12時(正午)~
入金期間:予約日含まず3日間以内
発券開始:各公演1週間前12:00~