【インタビュー】Яu-a、二十歳の決意が導いた『ネオンサイン』再構築の理由を語る

2025.12.11 07:00

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キューティーとエッジーを兼ね備えた歌詞とハイパーポップサウンドが注目を集め、SNSやストリーミングを中心にバイラルヒットを記録している新世代アーティスト・Яu-a。彼女が代表曲のひとつであり、1st single「ネオンサイン」のリミックスEP『ネオンサイン(Remixes)』をリリースした。

同作には18歳で制作したオリジナルバージョンに加え、二十歳を迎えた今の心情を交えて歌詞をリライトした“ハタチVersion”、テクノポップアレンジの“Heisei Version”、ストリングスとピアノによるバラードアレンジの“あこーすてぃっくVersion”、英語詞の“English Version”、ポップパンクアレンジの“Band Version”と5パターンが収録されている。ヴォーカルもリレコーディングし、それぞれ異なる趣の「ネオンサイン」が出来上がった。様々な変化を迎えた2025年に、彼女は初作品とどのようなマインドで向き合ったのだろうか。

――Яu-aさんは2025年、活動の幅が格段に広がりましたね。

Яu-a:そうですね。それまではジャケットもMVもイラストがほとんどで、わたしはほぼ表に出てなかったんですが、活動が広がったことで表に出ることがすごく多くなって。自分の映像や写真を観ると、まだまだ表情が硬いなと思います(笑)。それもあって「いま自分はどんな表情をしているかな?」と客観的に考えることが増えました。

――2025年の大きな変化というと、もうひとつは10代から二十歳になったことではないでしょうか。7月にリリースした1stアルバム『HYPERTEEN.』は10代の出来事をテーマに制作なさったそうですが。

Яu-a:二十歳になるにあたってこれまでの自分を振り返ったときに、10代の自分は多感だったなと思うんです。考え方もひねくれていたし、そういう生き方をしてきたんですけど、ちょうど二十歳を目前にしたタイミングでガラッと落ち着いてきたというか。だから多感な10代の時期をテーマにしたアルバムを作りたいと思いました。

――ガラッと落ち着いたきっかけというと?

Яu-a:この環境になったことがいちばん大きいです。支えてくれる人たちが増えて、みんな親身になってくれて。そういう環境になったことで自然と落ち着いてきて、冷静になったしポジティブに考えられるようになりました。やっぱり10代の頃は考えるよりも感情が先に走っていて。だから『HYPERTEEN.』は10代の思い出を曲にしたというか、「こういうときもありました」という記録のようなアルバムです。

――10代の多感な時期のご自分は、いまのЯu-aさんにどう映っていますか?

Яu-a:すごく子どもだったなと思います(笑)。いろんなことに立ち向かっては逃げての繰り返しで、とにかくすべてにおいて必死だったんだろうなって。もともと小さい頃から「自分を変えたい」という気持ちを強く持っているタイプで、定期的に「こんな自分やだ」の時期が来るので、そのたびに立ち向かっていって…。その結果いまこうしていられるんだと思います。

――いま理想的な自分になれているのも、10代のご自分が必死に生きてきたからこそ。

Яu-a:そうです。だから10代の頃の自分を恥ずかしいとは思っていないんです。

――今回リリースされるEP『ネオンサイン(Remixes)』には、Яu-a さんが10代の頃に初めて制作した楽曲「ネオンサイン」の5つのリアレンジバージョンとオリジナルバージョンが収録されています。まず「ネオンサイン」という楽曲をおさらいしたいのですが、この曲は18歳で失恋なさったとき、16歳の頃にノートに書いていたことを元にして制作したそうですね。

Яu-a:16歳で「これが“好き”という感情なんだな」とわかったんです。それまでの恋愛は、相手がわたしのことを好きだからわたしもその相手を好きになることがほとんどだったんですけど、16歳のときに初めて自分から好きになって。でも相手はわたしに恋愛感情を持っていなくて。でも自分から誰かを好きになったことが印象深かったので、その思い出を忘れないようにノートに書き留めておきました。その後にほかの人に恋愛感情を持って、その相手もわたしに恋愛感情を抱いたんですが、18歳で失恋をして。それで16歳のときに書いたものを引っ張り出して、その当時のリアルタイムの感情と混ぜて書いたのが「ネオンサイン」です。

――16歳の頃と18歳の頃、どちらもЯu-aさんの感情が走り出して始まった恋愛という共通点があったんですね。そうして生まれた「ネオンサイン」はSoundCloudにショートサイズをアップした後、TikTokにサビだけ載せたところ反応が良く、フルをSoundCloudに上げたら再生数が伸び、ストリーミングサービスに上げたところさらに広がったという経緯があります。

Яu-a:当時は再生数がどんどん伸びて、何が何だかわからなかったです。やっぱり自分の失恋の感情のままに作った曲で、バズを狙ったわけでもなかったので「今後(自分の楽曲や自分に対してリスナーから)何を言われるんだろう」という怖さはありました。でも同じような気持ちを抱えた人から肯定的なリアクションをもらうことも多くて、作ってよかったな、音楽活動に踏み出してよかったなと思いました。

――もともとそれ以前から音楽活動に憧れはおありだったんですよね。

Яu-a:そうです。でもなかなか勇気が出なくて踏み出せなくて。

――失恋で感情がかき乱されたからこそ、頭よりも先に心が動いたのかもしれませんね。ですが初めて制作した楽曲が予期せずヒットしたという事実は、その後の活動に大きな影響を与えたのではないでしょうか。

Яu-a:「ネオンサイン」を越えなきゃいけないという気持ちがどうしても膨れ上がりました。考えすぎると何にもできなくなっちゃうタイプなので、何を作ったらいいのかわからなくなってしまって。それも少しずつ落ち着いてきてはいるんですが、完全になくなったかというとそうではなくて、今でもたまにそういう気持ちが高ぶることはあります。そのたびに「SNSやTikTokとかでバズで一時的に聴かれる音楽というよりは、長年ずっと聴いてもらえるような中身がちゃんとある曲を作りたいな」と自分に言い聞かせています。

――いまのЯu-aさんから見る原曲の「ネオンサイン」はどんな楽曲でしょうか。

Яu-a:時間を掛けず、さらさらっと感情のままに書いた曲なので、バースの歌詞に対して「もうちょっとここをこういう言葉にしたかったな」という後悔があって。作った当時は「早く出そう」という気持ちが強すぎて、ちょっと雑になっちゃったというか。

――では今作『ネオンサイン(Remixes)』に収録されている「ネオンサイン(ハタチVersion)」は、そのあたりを解消したものですか?

Яu-a:それもあるし、やっぱり18歳のときに書いた内容はちょっと恥ずかしくて(笑)。

――「ネオンサイン(ハタチVersion)」には二十歳のЯu-aさんの哲学とスキルが反映されているということですね。リライトした歌詞も、もともとの文言を生かしつつ人間的な成長を感じました。相手への依存心が消えていますよね。

Яu-a:18歳の失恋をなぞりながらも「二十歳になったいまのわたしはこうだ」みたいな意思も交えて書きました。依存心が消えていると感じていただいたのは、18歳で「ネオンサイン」を作ったときに相手への執着心みたいなものを出し切った感覚があって「もういいかな」と思えたのが大きいと思います。あと、もともとの歌詞よりもリズムを大切にして韻を踏んだり、耳でも気持ちよく楽しめるものを目指しました。

――18歳で「ネオンサイン」を作ったことで、本当の意味で歌詞どおり「行くよgoing my way》」ができるようになったと。

Яu-a:はい(笑)。

――そしてEPにはほかにテクノポップの「Heisei Version」、ピアノとストリングスの「あこーすてぃっく Version」、英語詞の「English Version」、ポップパンクの「Band Version」と4アレンジ収録されていますが、すべてЯu-aさんの未成年期と深い関わりがある音楽ジャンルですよね。

Яu-a:「ネオンサイン」のリミックスEPはスタッフさんたちに提案していただいて、単純に面白そうだし、どのバージョンもまったく違う曲に聴こえるものにしたいなと思いました。いろいろ意見交換をしてこの5バージョンになったので、もともとは自分のルーツと「ネオンサイン」をくっつけようと思っていたわけではないんですけど、おっしゃっていただいたように結果的にそういうものになってるなと思います。小学校のときにアヴリル・ラヴィーンが大好きだったのでポップパンクを聴いていたし、カーリー・レイ・ジェプセンやアリアナ・グランデが好きだったので英語詞の曲もたくさん聴いていたし、幼稚園から小学校までピアノも習っていたし、その頃にガラケーを持った平成ギャルの女子高生とかに憧れてたので。だから10代が詰まったEPだなと感じています。

――「ネオンサイン(あこーすてぃっく Version)」で、この曲はこんなにストリングスとピアノのバラードアレンジが似合う楽曲なんだなという発見がありました。

Яu-a:メロディは大事にしています。サウンドに合うバラードを意識した歌声にしたりしましたね。目をつぶって歌えるような、ゆったりとした雰囲気を大事にしました。ピアノは練習で怒られることが多くて、子どもの頃は正直嫌いなほうだったんですけど(笑)、いつか人前でも披露できるといいのかなとも思います。どのアレンジも原曲に引っ張られないように、歌い方やリズムに変化をつける工夫は心掛けました。

――「ネオンサイン(English Version)」はよりリズムが強調されて、スピード感が増していると感じました。唯一日本語として残っている「秘密のネオンサイン」の部分が、ちょっと英語風の歌い方になっているところもアクセントになっています。

Яu-a:英語詞訳をしてくださった方が「“秘密のネオンサイン”だけ日本語で残したほうが面白いんじゃない?」と提案してくださって、確かにそうだなって。「ネオンサイン」の部分だけちょっと英語風の言い回しにしています。洋楽は昔から聴いていたけど英語詞を歌うのは初めてだったので「English Version」はめっちゃ練習しました(笑)。

――「ネオンサイン(Heisei Version)」をテクノポップになさった理由というと?

Яu-a:普段可愛い感じで歌うことを心掛けているので、平成の懐かしいアレンジで、なおかつ「ネオンサイン」に合う可愛らしさのあるものを考えたときに、やはりテクノポップのイメージだったんですよね。

――“ネオンサイン”という言葉もレトロポップなイメージが湧く言葉ですものね。テクノポップと相性がいいと思います。

Яu-a:実はわたし、ネオンサインという言葉の意味を知ったのは後からなんです。

――えっ、そうなんですか?

Яu-a:自分でもびっくりしてるんですけど、高校生の頃に普通にメイクをしていたらパッと頭の中に“ネオンサイン”って言葉が浮かんできて。いい言葉だなと思ってメモしておいたんです。その後に調べてみて、本当にある言葉だと知りました。

――お話をうかがっていると、いろんな偶然がつながっていますね。そしてЯu-aさんにはハイパーポップのイメージが強いので「ネオンサイン(Band Version)」も新鮮でした。

Яu-a:レコーディングでいちばん楽しく歌えたのが「Band Version」で、いちばん気に入っています。バンドサウンドに乗せて歌えることに高揚もしましたし、バンドサウンドに合わせた歌い方ができた手応えもあります。この先バンドアレンジの曲も作りたいなと思いました。

――今回5パターンの「ネオンサイン」が生まれて、ここからЯu-aさんがハイパーポップを軸にさらに音楽性を広げていくのではないかと期待も膨らみますが、今後Яu-aとしてリリースする楽曲において譲れない要素とは?

Яu-a:ほかの人が書かないようなものが書きたいです。ありきたりなことは言わないように、わたしの音楽だからこそわたしオリジナルの、わたししか思いつかないものを曲にしていきたいです。そのためにも気持ちが揺さぶられるようなことを常にしておかないとなと思っていて。絶対に心がウッとなる、落ち込んじゃうような映画を観たりしています(笑)。

――(笑)。オリジナリティの追求のためには、どんなものも厭わない?

Яu-a:落ち込む映画を観るのは好きなので(笑)。全然苦しくはないんです。

――「ネオンサイン」も衝動で生まれた楽曲ですし、Яu-aさんはビートのインスピレーションから歌詞とメロディが生まれることが多いとのことなので、Яu-aさんの気持ちが動けば動くほど、オリジナリティが生まれていくんだろうなと思うお話でした。二十歳になった2025年を、ルーツを反映させた初楽曲のリミックスで締めくくって、現在どのような心境ですか?

Яu-a:ひと区切りついたというよりは、これからどんどん前に進んでいきたいなという気持ちです。いまも曲作りはしていて、リズム感がすごく気に入っているデモがこの前できました。だから2026年もひたすら頑張る1年にしていきたいです。

――二十歳になって心境の変化があったとおっしゃっていましたが、ライブへの苦手意識は消えました?

Яu-a:うーん、正直ライブはいつまで経っても慣れてはいない(笑)。人前に立ちたい願望はあるんですけど苦手というか。自分でも難しいんですけど、ちょっと矛盾してるところが昔からあります。

――「自分を変えたい」という気持ちを強く持っているタイプとおっしゃっていましたし、いつかそのあたりも変わるといいかもしれませんね。

Яu-a:そうですね。変に考えすぎない人間になりたいです。10代よりは落ち着いて冷静になったぶん、自分の直感を大事にすることが減ってしまったなとは思うので、直感を大事にしつつ、でも考えるところは考えつつ、バランスよくやっていきたいです。

取材・文◎沖さやこ
撮影◎野村雄治

EP『ネオンサイン(Remixes)』

2025年12月10日(水)発売
1.ネオンサイン(ハタチ Version)
2.ネオンサイン(Heisei Version)
3.ネオンサイン(あこーすてぃっく Version)
4.ネオンサイン(English Version)
5.ネオンサイン(Band Version)
6.ネオンサイン

Яu-aインスタグラム https://www.instagram.com/vill_xxk/
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