【インタビュー】deadman、25周年YEARファイナルを前に語るホール公演の意図と名古屋系「たかだか音楽だし、たかだか人生。瞬間瞬間で面白いことを」

2025.10.31 18:00

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■LEGOブロックを炙って溶かして変形させて
■全然違う形にする。そういうことです

──『鱗翅目はシアンブルー』はよりディープに、deadmanというバンドのサウンドや世界観を追求している作品になっていると思います。

aie:そう。まず人の意見を無視してやるところがあるので(笑)。

眞呼:ただ歌のメロディは、ちゃんとしたい感じはあるんですよね。

aie:我々なりにね。なかなか最近は今の音楽やチャートを追えてないけど、ファストフードのように消費されるスピードが早い音楽もあるじゃないですか。もちろん、いいミュージシャンも多いですけど。我々としては、20年後にも演奏できる曲や、時代を超えて通用する音楽をちゃんと作っていきたいんですよね。今25周年だけど、結成したばかりの頃の曲を現在もやれているのは、やり方が変わってないからだと思いますし。

眞呼:独自性は必要だと思うんですよ。“誰々っぽいね”って、悪ふざけとしてあえてそうすることはありますけど。それ以外は、自分たちじゃなきゃできない音や、他がやっていないことをやらないと意味がない。自分たちの独自性を表現するというのは、バンドの醍醐味というか、それこそバンドをやってる意味だと思うので。

──オリジナリティですね。

眞呼:坂本龍一さんも言ってましたけど、音楽って遊びだと思うんです。いろんな音があって、それを組み合わせるものだし、“これをこうしたら楽しいな”っていうものだと思う。それは我々もそうだし、聴いてくれる人もそう思ってくれるような、そういう形になるといいなと。同じLEGOブロックで同じ形を作っても、面白くないんですよね。

──それでは、ただのコピーですし。

aie:そう。だから我々は、そのLEGOブロックも一回ライターで炙って溶かして変形させて、全然違う形にするっていう。そういうことですよね。

──そのいびつさを、また楽しむと。では、自分たちが面白いと思うことやdeadmanの姿勢を、25年もの間、貫いてこられたのはなぜだと思いますか?

aie:たまたま同じようなやり方をしているバンドが周りにいなくて。受け入れてくれるフィールドもそこそこあって。俺たちはそこが嫌じゃなかったということが、今も続いている理由かな。聴いてくれる人が10人とかだったら、やっていくことを考えたかもしれないし、趣味にしてたかもしれないけど。その微妙なバランスが良かったのかな。

──バランスですか。

aie:もし紅白に出るようなバンドになったとして、それで俺たちの意識が変わるかどうかはわからないですけど……でも、やっぱりなんか悪いことしちゃいそうだな(笑)。紅白本番で長渕剛のコピーを弾いちゃったりするかも。

眞呼:怒られるな。

aie:でも、たかだか音楽だし、たかだか人生なので。いい意味でね。人に気を遣ってやるんじゃなくて、その瞬間瞬間で面白いことをやったほうがいいなと。そのほうが充実すると思うから。

──12月のファイナル公演<deadman 25th anniversary TOUR 2025 “to be and not to be final -被覆する造形は人、腫れる風船の奇病-”>は、チケットに新曲1曲入りCDが付きますが、ここに合わせて新曲を発表しようというのも25周年のプランのなかで考えていたものですか?

aie:最初は、25周年だから、そのファイナルは渋谷公会堂でやるチャンスだと思って狙っていたんですけど、渋谷公会堂の12月のスケジュールが全然空いてなくて。結果、会場は変わったんですけど、東京・大手町三井ホールっていう会場を良い日程でおさえることができたんですね。

──年末の日曜日だから、いろんな人が来られそうです。

aie:そうですね。で、ホール公演をやるとなったら“何か新しい音源が必要だよな”とは思っていたので。でも、それはあくまでもおまけというか、25周年だからって泣かせにいかない曲というか、“くだらねえな、このバンド”ってニヤッとしてもらえるやり方でいこうと。大人の悪ふざけを見せつけてやろうかなっていうものなんです。

──その大人の悪ふざけとなる新曲が、“名古屋系サウンド”を感じさせるものになると聞いています。

aie:これはもともと、少し前にMUCCのミヤくんに会ったとき、「MUCCの新しいアルバムを聴いてくださいよ」って『1997』(2025年4月発表)のCDを貰って。「aieくんに聴いてほしい、俺なりのZI:KILLリスペクトを込めた曲(「Round & Round」)があるんですけど」って言われたので、「なるほど。ミヤくんがZI:KILLにいくなら、俺は黒夢の「中絶」にいってみるわ」「それ、いいっすね」って会話をしたときの流れがあったんですよね。

▲ZI:KILL Respect Session feat.deadman

──MUCCの『1997』は“’90年代オマージュ”をキーワードとしたアルバムですね。

aie:その流れから今回、deadman25周年で音源を出すとなったときに、“俺たちなりの黒夢リスペクトを込めて”というコンセプトで作ってみましょうかって。そういう打ち上げ話の延長で遊びながら作った感じだったんです。そもそも、25周年というターニングポイントの作品という意味では『鱗翅目はシアンブルー』で仕上がっているから。

眞呼:ただ困ったことにですね、黒夢にならないんですよ、これが(笑)。

aie:なってないですね。こうやって言わないと、誰も気づかないと思う。

──この取材時にはまだ音源が完成してないので、早く聴きたいです。

眞呼:ですよね。そもそも「黒夢にしよう」って言ったaieさんが、ちゃんと黒夢っぽく弾かないんですよ。そうなると、結果的に歌メロもそうはならないので。

aie:ならないですね。でも、それでいいと思うんです。出発点はそこだったという話なので。曲作りのスタジオで煮詰まって、休憩したときに「ちょっと一回Laputaを聴いてみていいですか」って聴いて、「なるほど、こういうアプローチがあったか。じゃあBメロはLaputaにしてみます」っていうのもあったんですけど(笑)。でも、これも言っても気づかれないかもしれないですね。

眞呼:まだ制作途中で、これからレコーディングに入るんですけど、果たしてどうなるのか。

──スタッフさんに聞いたところによると、黒夢の「中絶」っぽいツービートが活かされているとか。

眞呼:たしかに。

aie:今回のレコーディングスタジオは、2002〜2003年くらいまでdeadmanが使っていたところですし、そのスタジオはLaputaやMerry Go Roundの名盤が生まれたところでもあって。そのスタジオで、当時と同じエンジニアで録ろうかと話しているところです。これは、東京のスタジオのスケジュールがたまたま取れなくて、「じゃあ名古屋に行ってレコーディングをしよう」っていうところからなんですけど。